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37話
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「んっ」
ふわふわと闇の中に堕ちていた意識がゆっくりと浮上してきた。薄っすらと片目だけを開けて部屋の中を確認すればまだ暗かった。この部屋ってこんなに暗かったっけ?なんて思いながら時間を確認しようとゴロって横を向いたら、隣に大我の姿はなかった。
いつもだったら、一人で寂しいとか、置いていかれたのかなとか、不安な気持ちが湧くんだけど不思議と今の俺は落ち着いていた。
とりあえずベッドから降りようかと思い身体を起こして気が付いた。最小限の明るさにしながら机で何かをやってる大我の後ろ姿を見つけた。極力音をたてないようにと気を使いながら作業をしてるのかもしれない。
「たい、が」
その背に声を掛けたけど、思ってる以上に自分の声は掠れて小さかった。集中して作業してる大我には届かないかもしれない。そう思い、俺はベッドから降りて傍に行こうと動いた。
「起きたのか、悪い起こしたか?」
俺が動いたことで、ギシリとベッドが軋み、その音に気が付いた大我が振り返った。
「だい、じょぉ、ぶ、目が、覚めた、から」
ベッドに座り答えれば、
「取り合えず、唯斗はこれを飲んでくれ」
そういいながら差し出されたのはスポーツドリンクと水のペットボトルだった。その理由は考えなくてもわかる。さっきまでバカみたいに大泣きしてたからだ。俺はそれを受け取り飲んだ。スポーツドリンクは全部飲み、水は半分残した。
「今何時なんだ?」
水分を補給した分だけ咽喉が潤って普通に話せるようになった。
「今か、今は午前3時を少し回ったところだな」
俺の問いに大我が机の上にある携帯を見て教えてくれた。
「大我は寝てないのか?」
もしそうなら、悪いことをしたなって思う。
「いや、ちゃんと寝た。さっきまで一緒に寝てたんだ。で、目が覚めたらちょっと描きたいって思う絵が浮かんできたから、それを描いてた。完成したら唯斗にも見せるからな」
小さく笑いながら言われた言葉に俺は大きく頷いた。
「起きるにはまだ早い時間だし、もう少し寝るか?」
大我の言葉に考えこむ。確かに起きるにはまだ早い時間だ。だけど、泣き疲れて寝てた分だけ眠気がない。さて、どうしたものか?って考えこんでたら
「ゴロゴロしながら話でもするか?」
って聞かれて
「うん、話がしたい」
俺は大きく頷いた。
「わかった。なら布団の中に入ってゴロゴロしながら話そう」
大我は俺の頭を撫でてから布団をまくり上げる。俺はいそいそとその中に入り込み横になった。そんな俺を見て大我は小さく笑いながら隣に横になり俺に腕枕をしてくれた。俺はそんな大我の胸に頬を寄せた。
「…俺さ…本当はずっと、生まれてきちゃいけなかったんじゃないかって思ってた。…実の両親に捨てられて、内藤さんたちにも捨てられて、自分は生まれてきちゃダメだったんだってずっと思ってた…」
自分は生まれてきちゃいけない子だったんだ。だから捨てられたんだ。ずっと、そう思ってた。だから、自棄を起こしてたし、他人と関わらない様にもしてた。誰かに捨てられるんなら、他人に興味なんか持たなくてもいいって、自分で距離を開けてた。そうすれば傷付くこともないし、変に期待することもないからって…。
「…でも…でもさ…大我に触れて、大我の優しさに触れて、大我に甘やかされて、気付いたんだ…こんな俺でもちゃんと愛してくれる人も、大切に思ってくれる人もいるんだって…」
大我は甘やかしてくれるけど、ちゃんとダメな時は叱ってくれる。俺が自分の命を粗末にしたときは、もの凄く怒った。それこそ朝から晩までずっと…。
「…だから…だから俺は…これからの人生、大我と一緒に過ごしたい…大我に愛してもらいたい…大我との子供が欲しい…」
施設に2度も捨てられた時には浮かばなかった思い。この場所で、神尾大我に出逢って、触れ合って、恋に落ちて、芽生えた気持ち。俺はこれからも神尾大我と共に生きたい。大我と家庭を築き、共に過ごしたい。それが今の俺には小さな願い。それを叶えてくれるのは他ならぬこの男ただ一人だけなのだ。
「プロポーズするはずが、逆プロポーズされたな」
なんて言われて、あって思った。確かにプロポーズかもって。
「だって…それだけ俺にとって大我は必要不可欠な存在なんだ…」
俺のとってなくてはならない存在。大我に捨てられたら俺は間違いなく死ぬ。廃人になって死ぬ。それだけは断言できる。
「俺は唯斗を幸せにするためにアレコレやってるからな。唯斗がもうムリ―!って音を上げるまでずっと甘やかすつもりだ」
なんて、とんでもないことを言ってくれる。もうムリ―って今でも言ってるのに、これ以上の事をされたら本気でムリ―って叫びながら逃げ出しそうだ。本気で逃げ出せないけどさ。
「えっと…ほどほどでお願いしたいです…」
とりあえず、そうお願いしてみる。
「無理だな。唯斗には両親が4人もできたからな。後、兄貴が二人と甥っ子も」
笑いながら言われて
「そうだった…」
今日の出来事を全部、思い出した。バカみたいに大泣きして記憶がぶっ飛んでたけど、今の会話で全部思い出した。俺はまさパパとみきママの子供になったんだった。そして、大我と一緒になることを選んだから、なおパパとゆきママの子供にもなるんだ。ヒロさんは大我のお兄さんだし、こうちゃんはそんなヒロさんのお嫁さんで、劉くんは2人の子供だから…。
「どぉしよぉ…大我…」
思い出して考えたらまた泣けてきた。
「好きなだけ泣けばいい。俺はそれをちゃんと受け止めるから」
俺の頭を撫でながら言われる言葉に俺は何度も頷いた。
だって、悲しいことだけじゃなくて…
俺にとって信じられないぐらい嬉しいこともあって…
大我だけじゃなくて、パパたちにも愛されてるんだってちゃんと気付いたから…
今度は嬉し涙が止まりそうにないよ…
ふわふわと闇の中に堕ちていた意識がゆっくりと浮上してきた。薄っすらと片目だけを開けて部屋の中を確認すればまだ暗かった。この部屋ってこんなに暗かったっけ?なんて思いながら時間を確認しようとゴロって横を向いたら、隣に大我の姿はなかった。
いつもだったら、一人で寂しいとか、置いていかれたのかなとか、不安な気持ちが湧くんだけど不思議と今の俺は落ち着いていた。
とりあえずベッドから降りようかと思い身体を起こして気が付いた。最小限の明るさにしながら机で何かをやってる大我の後ろ姿を見つけた。極力音をたてないようにと気を使いながら作業をしてるのかもしれない。
「たい、が」
その背に声を掛けたけど、思ってる以上に自分の声は掠れて小さかった。集中して作業してる大我には届かないかもしれない。そう思い、俺はベッドから降りて傍に行こうと動いた。
「起きたのか、悪い起こしたか?」
俺が動いたことで、ギシリとベッドが軋み、その音に気が付いた大我が振り返った。
「だい、じょぉ、ぶ、目が、覚めた、から」
ベッドに座り答えれば、
「取り合えず、唯斗はこれを飲んでくれ」
そういいながら差し出されたのはスポーツドリンクと水のペットボトルだった。その理由は考えなくてもわかる。さっきまでバカみたいに大泣きしてたからだ。俺はそれを受け取り飲んだ。スポーツドリンクは全部飲み、水は半分残した。
「今何時なんだ?」
水分を補給した分だけ咽喉が潤って普通に話せるようになった。
「今か、今は午前3時を少し回ったところだな」
俺の問いに大我が机の上にある携帯を見て教えてくれた。
「大我は寝てないのか?」
もしそうなら、悪いことをしたなって思う。
「いや、ちゃんと寝た。さっきまで一緒に寝てたんだ。で、目が覚めたらちょっと描きたいって思う絵が浮かんできたから、それを描いてた。完成したら唯斗にも見せるからな」
小さく笑いながら言われた言葉に俺は大きく頷いた。
「起きるにはまだ早い時間だし、もう少し寝るか?」
大我の言葉に考えこむ。確かに起きるにはまだ早い時間だ。だけど、泣き疲れて寝てた分だけ眠気がない。さて、どうしたものか?って考えこんでたら
「ゴロゴロしながら話でもするか?」
って聞かれて
「うん、話がしたい」
俺は大きく頷いた。
「わかった。なら布団の中に入ってゴロゴロしながら話そう」
大我は俺の頭を撫でてから布団をまくり上げる。俺はいそいそとその中に入り込み横になった。そんな俺を見て大我は小さく笑いながら隣に横になり俺に腕枕をしてくれた。俺はそんな大我の胸に頬を寄せた。
「…俺さ…本当はずっと、生まれてきちゃいけなかったんじゃないかって思ってた。…実の両親に捨てられて、内藤さんたちにも捨てられて、自分は生まれてきちゃダメだったんだってずっと思ってた…」
自分は生まれてきちゃいけない子だったんだ。だから捨てられたんだ。ずっと、そう思ってた。だから、自棄を起こしてたし、他人と関わらない様にもしてた。誰かに捨てられるんなら、他人に興味なんか持たなくてもいいって、自分で距離を開けてた。そうすれば傷付くこともないし、変に期待することもないからって…。
「…でも…でもさ…大我に触れて、大我の優しさに触れて、大我に甘やかされて、気付いたんだ…こんな俺でもちゃんと愛してくれる人も、大切に思ってくれる人もいるんだって…」
大我は甘やかしてくれるけど、ちゃんとダメな時は叱ってくれる。俺が自分の命を粗末にしたときは、もの凄く怒った。それこそ朝から晩までずっと…。
「…だから…だから俺は…これからの人生、大我と一緒に過ごしたい…大我に愛してもらいたい…大我との子供が欲しい…」
施設に2度も捨てられた時には浮かばなかった思い。この場所で、神尾大我に出逢って、触れ合って、恋に落ちて、芽生えた気持ち。俺はこれからも神尾大我と共に生きたい。大我と家庭を築き、共に過ごしたい。それが今の俺には小さな願い。それを叶えてくれるのは他ならぬこの男ただ一人だけなのだ。
「プロポーズするはずが、逆プロポーズされたな」
なんて言われて、あって思った。確かにプロポーズかもって。
「だって…それだけ俺にとって大我は必要不可欠な存在なんだ…」
俺のとってなくてはならない存在。大我に捨てられたら俺は間違いなく死ぬ。廃人になって死ぬ。それだけは断言できる。
「俺は唯斗を幸せにするためにアレコレやってるからな。唯斗がもうムリ―!って音を上げるまでずっと甘やかすつもりだ」
なんて、とんでもないことを言ってくれる。もうムリ―って今でも言ってるのに、これ以上の事をされたら本気でムリ―って叫びながら逃げ出しそうだ。本気で逃げ出せないけどさ。
「えっと…ほどほどでお願いしたいです…」
とりあえず、そうお願いしてみる。
「無理だな。唯斗には両親が4人もできたからな。後、兄貴が二人と甥っ子も」
笑いながら言われて
「そうだった…」
今日の出来事を全部、思い出した。バカみたいに大泣きして記憶がぶっ飛んでたけど、今の会話で全部思い出した。俺はまさパパとみきママの子供になったんだった。そして、大我と一緒になることを選んだから、なおパパとゆきママの子供にもなるんだ。ヒロさんは大我のお兄さんだし、こうちゃんはそんなヒロさんのお嫁さんで、劉くんは2人の子供だから…。
「どぉしよぉ…大我…」
思い出して考えたらまた泣けてきた。
「好きなだけ泣けばいい。俺はそれをちゃんと受け止めるから」
俺の頭を撫でながら言われる言葉に俺は何度も頷いた。
だって、悲しいことだけじゃなくて…
俺にとって信じられないぐらい嬉しいこともあって…
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今度は嬉し涙が止まりそうにないよ…
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