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Act 7
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「矢岳、おい、矢岳って」
風紀の部屋で仕事をしてたら急に呼ばれて驚いて顔を上げれば埜上がいた。
「なんだよ」
溜め息をつき埜上に向き合えば
「デートしよう」
急にそんなことを言ってきた。
「はぁ?」
見事に変な声が出た。
いや、まさかこんな言葉がこいつから俺に向かって出るなんて思いもしねぇだろ。この男は少女漫画のような恋がしたい、少女漫画に憧れる男だ。
「だから、俺とデートしろ!」
なんて今度は命令口調だ。
「お前、命令かよ」
呆れながら言えば
「こう言わないとお前してくれないだろ!」
なんて反対に言われた。
「まぁ、しねぇなぁ。俺はお前の望むようなデートはできねぇだろうからな」
頭の片隅でこの男が望むであろうデートプランを考えながら答えた。
「この際、そんなことはどうでもいい!いいから俺とデートしてくれ」
自分が望むであろうデートを蹴ってまでも俺とデートしたがるこいつがわからねぇ。
「てか、俺じゃなくて他のヤツを誘えばいいだろうが」
そう、なにも俺じゃなくてもいいはずだ。
「俺がお前と行きたいから、デートしたいからお前に頼んでるんだ!」
ドンと机を叩かれた。
部屋の中にいる他のやつらも俺たちの様子を伺いながら不思議に思ってたらしい。目の前の男が俺を誘うのを…。
確かに、俺と埜上が幼馴染みだというのは生徒会や風紀委員はたまたクラスメイトは周知してるからわかってはいるが、埜上から俺を誘うことがなかったのに、堂々とこの部屋でデートしろなんていうもんだから不思議らしい。
「で?デートの目的はなんだ?」
デートと言って違う目的があるかもしれねぇからな。
「ん?デートはデートだろ?他に何があるんだよ」
キョトリ顔で反対に聞き返された。
この男は本当にデート目的だったのか。
「わかったよ。お前に付き合ってやる。日にちと時間」
しょうがねぇなと溜め息をつき日程を聞けば
「ん、明後日の日曜日。外出届はもう受理してもらった」
なんてドヤ顔で俺の分の届け出も一緒に見せてくる。そこには寮長の許可印がしっかりと押されていた。
「お前…俺に相談する前に勝手に決めて受理してもらってんじゃねぇ!!!」
埜上の頭に拳をグリグリと押し付ける。
「いって、痛いって、それ痛いからヤダ!だってこうしないとお前、素直にいいって言わねぇじゃん!」
俺の攻撃から逃れて頭を押さえながらいう両目には本当に痛かったのかうっすらと涙が溜まっていた。
「全く、わかったよ。時間は何時だ?」
しょうがねぇから今回は素直に付き合ってやるか。
「んー、8時30分でいいか?行きたいところ色々あるし」
目的の場所を思い浮かべながらいわれる言葉に溜め息が出る。
この男はトコトンデートというお出掛けに俺を付き合わせる気でいるいうことだ。
まぁ、中学の初めの頃はよく一緒に出掛けてたけど、中2以降は俺が不良どもとつるんでたから出歩いてなかったもんな。
俺の想い人が自分だと聞いて、また一緒に出歩きたい気分になったんだろうと俺なりに解釈をすることにした。
「わかった、お前、言い出しといて遅刻すんなよ」
「誰が!しねぇよ!」
俺の言葉に反論しつつ嬉しそうな顔をして部屋を出ていった。
そんな埜上を見送って俺は深い溜め息をついた。
あいつ気づいてねぇんだもんな。
今、出てくときすっげぇ嬉しそうな顔して思いっきり音符が飛んでたぞ。
はぁ、これでまた変な噂が出そうだな。
まぁ、しょうがねぇか。
俺はもう一度溜め息をつきやりかけだった作業を再開した。
Fin
風紀の部屋で仕事をしてたら急に呼ばれて驚いて顔を上げれば埜上がいた。
「なんだよ」
溜め息をつき埜上に向き合えば
「デートしよう」
急にそんなことを言ってきた。
「はぁ?」
見事に変な声が出た。
いや、まさかこんな言葉がこいつから俺に向かって出るなんて思いもしねぇだろ。この男は少女漫画のような恋がしたい、少女漫画に憧れる男だ。
「だから、俺とデートしろ!」
なんて今度は命令口調だ。
「お前、命令かよ」
呆れながら言えば
「こう言わないとお前してくれないだろ!」
なんて反対に言われた。
「まぁ、しねぇなぁ。俺はお前の望むようなデートはできねぇだろうからな」
頭の片隅でこの男が望むであろうデートプランを考えながら答えた。
「この際、そんなことはどうでもいい!いいから俺とデートしてくれ」
自分が望むであろうデートを蹴ってまでも俺とデートしたがるこいつがわからねぇ。
「てか、俺じゃなくて他のヤツを誘えばいいだろうが」
そう、なにも俺じゃなくてもいいはずだ。
「俺がお前と行きたいから、デートしたいからお前に頼んでるんだ!」
ドンと机を叩かれた。
部屋の中にいる他のやつらも俺たちの様子を伺いながら不思議に思ってたらしい。目の前の男が俺を誘うのを…。
確かに、俺と埜上が幼馴染みだというのは生徒会や風紀委員はたまたクラスメイトは周知してるからわかってはいるが、埜上から俺を誘うことがなかったのに、堂々とこの部屋でデートしろなんていうもんだから不思議らしい。
「で?デートの目的はなんだ?」
デートと言って違う目的があるかもしれねぇからな。
「ん?デートはデートだろ?他に何があるんだよ」
キョトリ顔で反対に聞き返された。
この男は本当にデート目的だったのか。
「わかったよ。お前に付き合ってやる。日にちと時間」
しょうがねぇなと溜め息をつき日程を聞けば
「ん、明後日の日曜日。外出届はもう受理してもらった」
なんてドヤ顔で俺の分の届け出も一緒に見せてくる。そこには寮長の許可印がしっかりと押されていた。
「お前…俺に相談する前に勝手に決めて受理してもらってんじゃねぇ!!!」
埜上の頭に拳をグリグリと押し付ける。
「いって、痛いって、それ痛いからヤダ!だってこうしないとお前、素直にいいって言わねぇじゃん!」
俺の攻撃から逃れて頭を押さえながらいう両目には本当に痛かったのかうっすらと涙が溜まっていた。
「全く、わかったよ。時間は何時だ?」
しょうがねぇから今回は素直に付き合ってやるか。
「んー、8時30分でいいか?行きたいところ色々あるし」
目的の場所を思い浮かべながらいわれる言葉に溜め息が出る。
この男はトコトンデートというお出掛けに俺を付き合わせる気でいるいうことだ。
まぁ、中学の初めの頃はよく一緒に出掛けてたけど、中2以降は俺が不良どもとつるんでたから出歩いてなかったもんな。
俺の想い人が自分だと聞いて、また一緒に出歩きたい気分になったんだろうと俺なりに解釈をすることにした。
「わかった、お前、言い出しといて遅刻すんなよ」
「誰が!しねぇよ!」
俺の言葉に反論しつつ嬉しそうな顔をして部屋を出ていった。
そんな埜上を見送って俺は深い溜め息をついた。
あいつ気づいてねぇんだもんな。
今、出てくときすっげぇ嬉しそうな顔して思いっきり音符が飛んでたぞ。
はぁ、これでまた変な噂が出そうだな。
まぁ、しょうがねぇか。
俺はもう一度溜め息をつきやりかけだった作業を再開した。
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