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プロローグ、ペンは剣よりも強し編
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CランクPTのメンバーの男の一人が逃げ疲れて足がもつれ、ついに成体ゴブリンに脚を掴まれてしまった。
「…ひぃッ、た、助けてくれぇッ!!」
その必死な男の顔を見て笑う美裸。
「…わたしはねぇ、人を小馬鹿にするのは好きだけど、小馬鹿にされるのは嫌なんだよね~(笑)」
そう言いつつ、このまま掴まって死なれても面白くないので、スキルを使ってゴブリンと男を一度引き離す美裸。
そして再び、無限追いかけっこをさせる。
そんな美裸に、苦笑いを見せつつエリスが突っ込む。
「…美裸。アンタそれ、言ってる事が無茶苦茶だからね(笑)?」
改めて美裸の無茶苦茶な能力を見たエリスは若干、引きながらも今度こそ強くなれると確信した。
「ギルドにいた時にあの人達のレベル確認しといたんだよね~。既にもうヤツらのレベルは超えている(笑)!!」
ギルドにいた時点で美裸のレベルは23、CランクPTのレベルは25だった。ギルドにいた時、美裸は数回スキルを発動していた。PTの情報を確認する為に一回、そしてPTメンバーの装備全てにちょっとした細工をした時に一回。
更にダンジョンの資料を読む為に一回、計3回スキルを使った。その時点でCランクPTのレベルを超えていたのだ。
美裸はPTメンバーの言動とエリスの様子を見て、ヤツらが必ず現場に来る事を確信していた。美裸はこういう時のパターンを読んでいたのだ。しかし、正直来ても来なくても良いと思っていた。
その時点で、ヤツらのレベルを越えていたからだ。どっちにしろエリスと美裸を小馬鹿にしたヤツらには遅かれ早かれ、天誅を加えるつもりだった。
「そろそろ開放してやろうかな(笑)」
全裸PTで散々遊んだ美裸は、スキルを停止してPTを逃がした。ちゃんと前に進める事を知ったCランクPTは、一目散にダンジョンから逃げて行った。
「これでもう2度とわたしらには絡んで来ないでしょ(笑)?」
「…でしょうね…」
意外と根に持つ美裸に、エリスは苦笑いで顔を引き攣らせていた…。
◇
その後、停止していた成体ゴブリンの残りをエリスがタガーを使って退治したように美裸が編集していく。再生した瞬間に心臓を貫かれ、首を斬り落とされて血飛沫を上げる成体ゴブリン達。
そしてエリスが『短剣スキル』を獲得。併せて『連斬』も獲得した。『連斬』はタガーを使って複数回、高速で斬り付けるスキルだ。
「よしッ、タガースキルも獲得したッ!!」
スキル獲得にガッツボーズするエリス。
「レベルも上がったし、弓スキルもタガースキルも付いた。ネックレスも回収出来たし、わたし達も帰ろうか?」
そんなエリスに、美裸はニヤニヤと笑って答えた。
「ダメよ。まだ時間あるでしょ(笑)?行けるとこまでここでレベル上げして、ついでに金稼ぎもしていくナリ~(笑)」
「…えぇッ!!マジで!?まだやるの…!?」
「エリスはまだレベル16でしょ?」
「…うん…」
「じゃ、レベル20になるまでやるよ~(笑)」
美裸の言葉に、げんなりするエリス。
「…美裸はどこまでレベル上がったのよ…?」
「もう32ナリ~(笑)」
「はぁッ!?ウッソォ!!なんでそんなにレベルアップ速いのよォォッ!!」
「そんなの知らんがな~(笑)」
美裸本人もエリスも、美裸の異常に高過ぎる思念力がレベルアップに関係しているなど知る由もなかった…。
「それより続けるのは良いんだけど、もうお昼過ぎてるんじゃない?お腹空いて来たんだけど…?」
そんなエリスに、美裸が暗闇の奥を指さして言う。
「…じゃ、アレ倒したらお昼にしよ?」
美裸の指差す方を見たエリスは、顔を蒼褪めさせた…。
「…アレ、何よ…?」
「見たそのまんま、『ゴブリン総長』ナリよ~(笑)」
「…ゴブリンキングとかじゃなくて、なんで『ゴブリン総長』なのよッ!?」
二人の目の前に立ちはだかっていたのは、体長3メートルを超える超デカいゴブリンだった。
「わたしのスキル、相手の名前とレベルが見える様になったよ~。このスキル、ホント当たりだわ~(笑)」
喜ぶ美裸の隣で、エリスが一人呟いていた。
…ゴブリン総長…。暴走族のヘッドじゃあるまいし…。ここのダンジョンモンスターどうなってんのよ…?
目の前のゴブリン総長は、手に巨大な釘バットを持ち、二人に襲い掛かろうとしていた。襲い掛かろうとして、そのまま動きを止められていた。
言うまでもなく美裸のスキル『エディットモード』の強制停止効果である。
…あんなデカいのも止められるんだ…。美裸のスキルは反則過ぎるよね…。っていうかあの総長、何で棍棒じゃなくて釘バットなんだろう…(笑)?
「…さてチョチョイとヤッちゃいますか(笑)?」
美裸が、ゴブリン総長の両脚を斬り、エリスが放った矢で総長の眉間、心臓を貫く。再生した直後、ゴブリン総長は何が起きたのかも解からず、血飛沫を上げて絶命した…。
ゴブリン総長が持っていた釘バットを見た美裸が、ニヤッと笑う。
「いいもの見付けたナリ~。わたしの武器にしよっと(笑)!!」
そう言うと、何か言いたげなエリスに構わず、巨大釘バットを極小サイズに縮小する。美裸は、それを嬉しそうにポケットに入れた。
ゴブリン総長を倒して美裸のレベルは37、エリスのレベルは17まで上がった。
◇
フロアボスの総長を倒した二人は、その奥にある転移帰還フィールドのスペースに入ると、そこで昼食を食べる事にした。
「…ていうか…わたし食べるもの持って来てないんだけど…?」
そう言うエリスを、笑いながらたしなめる美裸。
「…エリス、ダンジョン入るのになんで食べ物持ってこなかったの(笑)?」
「いや、だってすぐ終わらせて帰るつもりだったから…」
そう言うエリスをチラッと見た美裸は、ニヤッと笑う。
「仕方ないなぁ、の〇太くんは(笑)!!」
「くぅ~っ、なんかその言い方、腹立つ~(笑)」
そう言いつつ、エリスは美裸が出してくれたパンとハムを笑いながら受け取った。
「何で美裸はパンとハム、持ってるのよ?」
「わたしは王都中のスラムと路地裏を一日掛けて稼いで周るつもりだったからね~。ちゃんと宿屋でお昼用にパンとハム貰って来たのよ(笑)」
「…宿屋?美裸ってどこの宿屋に住んでるの?」
聞かれた美裸は、パンをかじりつつ答えた。
「貴族街の向かいにある商業通りの宿屋だけど?」
「…そこって地味だけどかなり綺麗な宿屋でしょ…?美裸。そこ、高級宿屋だからね…?」
「…そうなの?最初はおじさんもおばさんも従業員もわたしを不審がってたけどね~。お金あるよって見せたら泊って良いよって(笑)。だから初日からそこに住んでるよ~(笑)」
「…美裸。アンタどんだけチンピラから金巻き上げたの…?」
エリスの問いに、内緒ナリ~と笑う美裸。パンとハムを食べ終わった後、飲み物も二人で分けて飲む。一息付いた二人は帰還転移フィールドから出ると、ダンジョン地下二階への階段を降りて行った。
◇
階下に降りると、同じ様な大きな洞窟の延長だった。
「美裸、食料と水の備蓄はあとどれくらいあるの…?」
「もうないよ?さっきので終わり(笑)」
「…じゃあこのフロアのモンスター倒してレベル上げしたら、すぐに帰らないとね…」
しかしそんなエリスの言葉を美裸が軽く流す。
「心配しなくてもたぶんすぐ終わるよ?」
「…何でそんな事言えるの?」
「だって、依頼資料に書いてあったよ?」
美裸は事前にギルドでスキルを使い、この出来立てダンジョンについての資料を見ていた。ミカの持っていた依頼書の下にあったものだ。
出来たばかりで地下二階までしかないと記載があった。という事は広さもさほどではないと美裸は考えていた。しかも地下一階は暗闇の奥からゴブリンが勝手に沸いて出て来てくれたのだ。
恐らくダンジョンに侵入した時点で、ダンジョンコアはそれに気付いているはず。だから排除しようと向こうからモンスターを繰り出して来たのだ。
この階も、やみくもに動く事をせず、待ってれば出て来ると美裸は考えていた。その読みは当たっていた。洞窟の奥から無数の蜘蛛がゾロゾロと迫っていた。
「エリス!!強制停止範囲に入る前に弓で牽制!!」
「…わ、解かったッ!!」
美裸に指示されたエリスがすぐに弓を構えて矢を『連射』スキルを使って放つ。漬物石サイズの蜘蛛がエリスの放った矢を受けて即死した。
その後ろから迫っていた蜘蛛は散開して再び二人に迫る。蜘蛛達が散開したのでその数を確認出来た。
迫る無数の蜘蛛に慌てて美裸を振り返るエリス。
「…美裸ッ、来るよッ!!」
「OKOK~。んじゃイクよ~っ(笑)!!」
美裸の視界にモンスターの情報が表示される。
「『ポイズンスパイダー』レベル15、全部で40匹か…」
迫るポイズンスパイダーは二人の手前20メートルの位置で強制停止した。
「エリス、矢筒の中の矢を全部撃ち込んで!!」
矢筒にある20本の矢を、エリスが美裸の視界へとどんどん撃ち込んでいく。美裸はすぐにエリスの矢が蜘蛛の急所を貫くように編集する。
そして再生。瞬間、前衛のスパイダー20匹がエリスの放った矢によって即死。すぐに残りの蜘蛛20匹を強制停止させた美裸は、ペンタブで片っ端から蜘蛛を真っ二つに斬っていく。
瞬間、残った20匹のスパイダーが緑の体液を噴き出しながらその場に転がって死んだ。ポイズンスパイダー退治で、美裸のレベルは40まで上昇。エリスのレベルは18になった。
油断せず、二人は次のモンスター襲来に備える。
次に奥から現れたのは、中型犬サイズの蟻だった。美裸の視界に蟻の情報が表示される。
「『軍隊蟻』レベル17。60匹…」
蟻の大群だ。
矢を回収し終わったエリスが再び矢を撃ち込み、前衛の蟻を20匹射殺した。残り40匹は美裸がバラバラに解体する。
美裸のレベル44、エリスのレベルは20まで上昇、更にエリスはパッシブ弓スキル『致命傷』を習得した。更に奥から鶏サイズの蜂が現れる。
不穏な羽音と共に急速接近する蜂の大群。
「『殺人蜂』レベル18。80匹…」
美裸がモンスターの情報を確認している間に、エリスが素早く弓を連射して蜂の前衛20匹を撃ち落とす。
今回のダンジョンモンスター退治で自信を持ったエリスは、美裸の指示が出る前に動くようになった。それを見てうんうんと満足そうに頷く美裸。
更に強制停止範囲に入った殺人蜂10匹を、横から次々とタガーの『連斬』で切り落としていく。美裸のスキルの範囲に入ると確実に停止するのを見ていたエリスは恐れる事無く、更に10匹の蜂を斬り殺した。
「エリス、わたしが倒す分も残してよ(笑)?」
「…あぁ、そうね。思わず殺っちゃった(笑)」
ギルド内でオドオドして、ハンター達にバカにされて笑われ、俯いて歯噛みしていたエリスはもういなかった。その動きは今や立派なハンターだ。
残り40匹の殺人蜂は、美裸がペンタブで切り刻んでいく。殺人蜂の大群は美裸とエリスの前で何も出来ず、緑の体液を撒き散らして死んだ。
美裸、レベル47。エリス、レベル22。更にエリスにはパッシブスキル『瞬動』が付いた。
『瞬動』攻撃、防御、体捌き、移動のスピードを2倍速に上げるスキル。
レベルが上がり、スキルも付いたエリスは確実に強くなっていた。殺人蜂80匹を手早く処理した二人は、次のモンスターを待つ。
しかし殺人蜂以降、暫く経っても奥からモンスターが出て来る気配がなかった。思わず顔を見合わせる二人。
「…おかしいな~。もうそろそろダンジョンボス出て来そうな気がするけど…」
「…そうね。さっきので終わりって事もないだろうし…」
美裸とエリスが話していると、その奥から肉まんサイズの小さな半透明のモノが赤く濁った体を引き摺る様に、ゆっくりと出て来た。
「…ひぃッ、た、助けてくれぇッ!!」
その必死な男の顔を見て笑う美裸。
「…わたしはねぇ、人を小馬鹿にするのは好きだけど、小馬鹿にされるのは嫌なんだよね~(笑)」
そう言いつつ、このまま掴まって死なれても面白くないので、スキルを使ってゴブリンと男を一度引き離す美裸。
そして再び、無限追いかけっこをさせる。
そんな美裸に、苦笑いを見せつつエリスが突っ込む。
「…美裸。アンタそれ、言ってる事が無茶苦茶だからね(笑)?」
改めて美裸の無茶苦茶な能力を見たエリスは若干、引きながらも今度こそ強くなれると確信した。
「ギルドにいた時にあの人達のレベル確認しといたんだよね~。既にもうヤツらのレベルは超えている(笑)!!」
ギルドにいた時点で美裸のレベルは23、CランクPTのレベルは25だった。ギルドにいた時、美裸は数回スキルを発動していた。PTの情報を確認する為に一回、そしてPTメンバーの装備全てにちょっとした細工をした時に一回。
更にダンジョンの資料を読む為に一回、計3回スキルを使った。その時点でCランクPTのレベルを超えていたのだ。
美裸はPTメンバーの言動とエリスの様子を見て、ヤツらが必ず現場に来る事を確信していた。美裸はこういう時のパターンを読んでいたのだ。しかし、正直来ても来なくても良いと思っていた。
その時点で、ヤツらのレベルを越えていたからだ。どっちにしろエリスと美裸を小馬鹿にしたヤツらには遅かれ早かれ、天誅を加えるつもりだった。
「そろそろ開放してやろうかな(笑)」
全裸PTで散々遊んだ美裸は、スキルを停止してPTを逃がした。ちゃんと前に進める事を知ったCランクPTは、一目散にダンジョンから逃げて行った。
「これでもう2度とわたしらには絡んで来ないでしょ(笑)?」
「…でしょうね…」
意外と根に持つ美裸に、エリスは苦笑いで顔を引き攣らせていた…。
◇
その後、停止していた成体ゴブリンの残りをエリスがタガーを使って退治したように美裸が編集していく。再生した瞬間に心臓を貫かれ、首を斬り落とされて血飛沫を上げる成体ゴブリン達。
そしてエリスが『短剣スキル』を獲得。併せて『連斬』も獲得した。『連斬』はタガーを使って複数回、高速で斬り付けるスキルだ。
「よしッ、タガースキルも獲得したッ!!」
スキル獲得にガッツボーズするエリス。
「レベルも上がったし、弓スキルもタガースキルも付いた。ネックレスも回収出来たし、わたし達も帰ろうか?」
そんなエリスに、美裸はニヤニヤと笑って答えた。
「ダメよ。まだ時間あるでしょ(笑)?行けるとこまでここでレベル上げして、ついでに金稼ぎもしていくナリ~(笑)」
「…えぇッ!!マジで!?まだやるの…!?」
「エリスはまだレベル16でしょ?」
「…うん…」
「じゃ、レベル20になるまでやるよ~(笑)」
美裸の言葉に、げんなりするエリス。
「…美裸はどこまでレベル上がったのよ…?」
「もう32ナリ~(笑)」
「はぁッ!?ウッソォ!!なんでそんなにレベルアップ速いのよォォッ!!」
「そんなの知らんがな~(笑)」
美裸本人もエリスも、美裸の異常に高過ぎる思念力がレベルアップに関係しているなど知る由もなかった…。
「それより続けるのは良いんだけど、もうお昼過ぎてるんじゃない?お腹空いて来たんだけど…?」
そんなエリスに、美裸が暗闇の奥を指さして言う。
「…じゃ、アレ倒したらお昼にしよ?」
美裸の指差す方を見たエリスは、顔を蒼褪めさせた…。
「…アレ、何よ…?」
「見たそのまんま、『ゴブリン総長』ナリよ~(笑)」
「…ゴブリンキングとかじゃなくて、なんで『ゴブリン総長』なのよッ!?」
二人の目の前に立ちはだかっていたのは、体長3メートルを超える超デカいゴブリンだった。
「わたしのスキル、相手の名前とレベルが見える様になったよ~。このスキル、ホント当たりだわ~(笑)」
喜ぶ美裸の隣で、エリスが一人呟いていた。
…ゴブリン総長…。暴走族のヘッドじゃあるまいし…。ここのダンジョンモンスターどうなってんのよ…?
目の前のゴブリン総長は、手に巨大な釘バットを持ち、二人に襲い掛かろうとしていた。襲い掛かろうとして、そのまま動きを止められていた。
言うまでもなく美裸のスキル『エディットモード』の強制停止効果である。
…あんなデカいのも止められるんだ…。美裸のスキルは反則過ぎるよね…。っていうかあの総長、何で棍棒じゃなくて釘バットなんだろう…(笑)?
「…さてチョチョイとヤッちゃいますか(笑)?」
美裸が、ゴブリン総長の両脚を斬り、エリスが放った矢で総長の眉間、心臓を貫く。再生した直後、ゴブリン総長は何が起きたのかも解からず、血飛沫を上げて絶命した…。
ゴブリン総長が持っていた釘バットを見た美裸が、ニヤッと笑う。
「いいもの見付けたナリ~。わたしの武器にしよっと(笑)!!」
そう言うと、何か言いたげなエリスに構わず、巨大釘バットを極小サイズに縮小する。美裸は、それを嬉しそうにポケットに入れた。
ゴブリン総長を倒して美裸のレベルは37、エリスのレベルは17まで上がった。
◇
フロアボスの総長を倒した二人は、その奥にある転移帰還フィールドのスペースに入ると、そこで昼食を食べる事にした。
「…ていうか…わたし食べるもの持って来てないんだけど…?」
そう言うエリスを、笑いながらたしなめる美裸。
「…エリス、ダンジョン入るのになんで食べ物持ってこなかったの(笑)?」
「いや、だってすぐ終わらせて帰るつもりだったから…」
そう言うエリスをチラッと見た美裸は、ニヤッと笑う。
「仕方ないなぁ、の〇太くんは(笑)!!」
「くぅ~っ、なんかその言い方、腹立つ~(笑)」
そう言いつつ、エリスは美裸が出してくれたパンとハムを笑いながら受け取った。
「何で美裸はパンとハム、持ってるのよ?」
「わたしは王都中のスラムと路地裏を一日掛けて稼いで周るつもりだったからね~。ちゃんと宿屋でお昼用にパンとハム貰って来たのよ(笑)」
「…宿屋?美裸ってどこの宿屋に住んでるの?」
聞かれた美裸は、パンをかじりつつ答えた。
「貴族街の向かいにある商業通りの宿屋だけど?」
「…そこって地味だけどかなり綺麗な宿屋でしょ…?美裸。そこ、高級宿屋だからね…?」
「…そうなの?最初はおじさんもおばさんも従業員もわたしを不審がってたけどね~。お金あるよって見せたら泊って良いよって(笑)。だから初日からそこに住んでるよ~(笑)」
「…美裸。アンタどんだけチンピラから金巻き上げたの…?」
エリスの問いに、内緒ナリ~と笑う美裸。パンとハムを食べ終わった後、飲み物も二人で分けて飲む。一息付いた二人は帰還転移フィールドから出ると、ダンジョン地下二階への階段を降りて行った。
◇
階下に降りると、同じ様な大きな洞窟の延長だった。
「美裸、食料と水の備蓄はあとどれくらいあるの…?」
「もうないよ?さっきので終わり(笑)」
「…じゃあこのフロアのモンスター倒してレベル上げしたら、すぐに帰らないとね…」
しかしそんなエリスの言葉を美裸が軽く流す。
「心配しなくてもたぶんすぐ終わるよ?」
「…何でそんな事言えるの?」
「だって、依頼資料に書いてあったよ?」
美裸は事前にギルドでスキルを使い、この出来立てダンジョンについての資料を見ていた。ミカの持っていた依頼書の下にあったものだ。
出来たばかりで地下二階までしかないと記載があった。という事は広さもさほどではないと美裸は考えていた。しかも地下一階は暗闇の奥からゴブリンが勝手に沸いて出て来てくれたのだ。
恐らくダンジョンに侵入した時点で、ダンジョンコアはそれに気付いているはず。だから排除しようと向こうからモンスターを繰り出して来たのだ。
この階も、やみくもに動く事をせず、待ってれば出て来ると美裸は考えていた。その読みは当たっていた。洞窟の奥から無数の蜘蛛がゾロゾロと迫っていた。
「エリス!!強制停止範囲に入る前に弓で牽制!!」
「…わ、解かったッ!!」
美裸に指示されたエリスがすぐに弓を構えて矢を『連射』スキルを使って放つ。漬物石サイズの蜘蛛がエリスの放った矢を受けて即死した。
その後ろから迫っていた蜘蛛は散開して再び二人に迫る。蜘蛛達が散開したのでその数を確認出来た。
迫る無数の蜘蛛に慌てて美裸を振り返るエリス。
「…美裸ッ、来るよッ!!」
「OKOK~。んじゃイクよ~っ(笑)!!」
美裸の視界にモンスターの情報が表示される。
「『ポイズンスパイダー』レベル15、全部で40匹か…」
迫るポイズンスパイダーは二人の手前20メートルの位置で強制停止した。
「エリス、矢筒の中の矢を全部撃ち込んで!!」
矢筒にある20本の矢を、エリスが美裸の視界へとどんどん撃ち込んでいく。美裸はすぐにエリスの矢が蜘蛛の急所を貫くように編集する。
そして再生。瞬間、前衛のスパイダー20匹がエリスの放った矢によって即死。すぐに残りの蜘蛛20匹を強制停止させた美裸は、ペンタブで片っ端から蜘蛛を真っ二つに斬っていく。
瞬間、残った20匹のスパイダーが緑の体液を噴き出しながらその場に転がって死んだ。ポイズンスパイダー退治で、美裸のレベルは40まで上昇。エリスのレベルは18になった。
油断せず、二人は次のモンスター襲来に備える。
次に奥から現れたのは、中型犬サイズの蟻だった。美裸の視界に蟻の情報が表示される。
「『軍隊蟻』レベル17。60匹…」
蟻の大群だ。
矢を回収し終わったエリスが再び矢を撃ち込み、前衛の蟻を20匹射殺した。残り40匹は美裸がバラバラに解体する。
美裸のレベル44、エリスのレベルは20まで上昇、更にエリスはパッシブ弓スキル『致命傷』を習得した。更に奥から鶏サイズの蜂が現れる。
不穏な羽音と共に急速接近する蜂の大群。
「『殺人蜂』レベル18。80匹…」
美裸がモンスターの情報を確認している間に、エリスが素早く弓を連射して蜂の前衛20匹を撃ち落とす。
今回のダンジョンモンスター退治で自信を持ったエリスは、美裸の指示が出る前に動くようになった。それを見てうんうんと満足そうに頷く美裸。
更に強制停止範囲に入った殺人蜂10匹を、横から次々とタガーの『連斬』で切り落としていく。美裸のスキルの範囲に入ると確実に停止するのを見ていたエリスは恐れる事無く、更に10匹の蜂を斬り殺した。
「エリス、わたしが倒す分も残してよ(笑)?」
「…あぁ、そうね。思わず殺っちゃった(笑)」
ギルド内でオドオドして、ハンター達にバカにされて笑われ、俯いて歯噛みしていたエリスはもういなかった。その動きは今や立派なハンターだ。
残り40匹の殺人蜂は、美裸がペンタブで切り刻んでいく。殺人蜂の大群は美裸とエリスの前で何も出来ず、緑の体液を撒き散らして死んだ。
美裸、レベル47。エリス、レベル22。更にエリスにはパッシブスキル『瞬動』が付いた。
『瞬動』攻撃、防御、体捌き、移動のスピードを2倍速に上げるスキル。
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しかし殺人蜂以降、暫く経っても奥からモンスターが出て来る気配がなかった。思わず顔を見合わせる二人。
「…おかしいな~。もうそろそろダンジョンボス出て来そうな気がするけど…」
「…そうね。さっきので終わりって事もないだろうし…」
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高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
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