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第71話 聞いてガラージュ見てガラージュ 3
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制服警官の指示でパトカーの助手席側のドアを開ける八重。
後部座席には、怯える愛依とその愛依にナイフを当てるツーブロックの金髪の男。
唇の端にはピアスがついていて、七分袖のシャツから見える腕やら首筋にはみっちりとタトゥーが彫られていて、警察関連の人物には見えない。
さっさと乗れと焦った様子で八重を睨む。
目の下に深い隈が出来ていて、頬もやつれている。
クスリの常用者か、と八重は金髪の男を刺激することは避けようと思った。
下手に激昂されたら、愛依の命が危ない。
八重が乗り込むのを確認すると、制服警官は運転席のドアを開けた。
その時である。
乗り込むために少し前屈みになった肩に手がかけられる。
「まだ森川八重さんにお帰り頂くよう指示は出してないはずだが、お前、誰の指示で動いてる?」
制服警官が振り向くとそこには深い茶色のよれよれの背広を着た男性──若菜が立っていた。
邪魔が入ることを予想していた制服警官は、用意していた答えを口にしようとしたが若菜の視線は既にパトカーの後部座席に向いていた。
薬狂いが余計なことしやがったせいだ、そう制服警官が愚痴を頭に思い浮かべた時には、天地は逆転していて、どういう原理でそうなったのかわからない早業で地面に押さえつけられていた。
「テメェ、どこ所属の馬鹿だ、アァッ!? 中のヤツもここが署の前だってわかって、誘拐沙汰やろうとしてんだろうなぁ!!」
若菜は署内にも聞こえるように大声でそう言った。
騒ぎになれば直ぐに誰かが駆けつける。
署の入り口でこんな犯罪を起こそうだなんて、舐められ過ぎだ。
その舐められた結果が警察内部からの犯罪協力なのだから、苛立ちを過ぎて悲しくもなってくる。
「ば、馬鹿はアンタだぜ。若菜さんだったか、アンタ、警察署前なら自分達の領域だと思ってねぇか? 人数有利で、俺達が無謀なことをしてると思ってねぇか?」
押さえつけられた制服警官が、そう言うと合図のように駐車場に停まっていた白いバンから男たちが降りてきた。
まっさらな作業服に身を包むカラフルな髪色の男が五人。
「そんな用意があんなら、パトカーなんかに乗せてんじゃねぇよ」
「パトカーで誘拐、だから面白いんじゃねぇか」
1対7。
状況の優位に制服警官は押さえられたままなのに、余裕な顔をしている。
「オッサン一人でやれますか? 若菜さん」
煽る制服警官に舌打ちをする若菜。
入り口の方を見やるも、誰も応援には駆けつけてくる気配はない。
「あー無理だと思うぜ。ほら、アンタも横切ってきたろ、今日の異様な混雑具合。受付対応にてんやわんやじゃねぇかな。何人かお邪魔させてもらってる」
喧嘩沙汰にヤクザの抗争と思われる殺人事件、街で起こる騒動が続くものだから住民の不満が殺到してる。
そう解釈しても、普段頼りにならないと公言される警察署に人が殺到するのは異様だと思うべきだった。
そう思うべきだとわかっていても、警察官としてそんな考えが正解だと想定できるわけがない。
若菜は騒動の早期解決に身を引き締める、そう感じていただけだった。
「混雑で混乱する署内なら動きやすいかと考えたが、勘のいい刑事ってのは必ずいる。まぁ、アンタみたいなヤツさ。それを警戒してたんだが、用意周到過ぎたか? 独りだけとは御愁傷様」
迫りくる作業服の男、五人。
若菜は押さえつけた制服警官の頭を、一度持ち上げて地面に叩きつけ気絶させる。
まずは一人。
問題は外の五人より、中の後部座席の男か。
若菜は助手席の八重に視線をやる。
目が合い、八重は首を横に小さく振った。
どうやら、八重からでは金髪の男から隙を作る手は無いらしい。
金髪の男は愛依に当てているナイフをグッと構えるも、若菜と五人の男の様子を窺っているようだ。
運転手を気絶させられて、その後の展開を考えていなかったのだろう。
若菜はもう一度八重に視線を向け、近寄る五人を一瞥すると、また視線を八重に戻した。
今度は八重は小さく頷いた。
若菜としては五人を相手にしてくるから待っていてくれ、というアイコンタクトだったのだが、八重はその間に愛依が逃げれるチャンスを作れということだなと解釈した。
「あーあ、警官さん、気絶しちゃってんじゃん。金か薬かしんねぇけど、その為に仕事棒に振ってさ、失敗してやんの」
右手に持ったスパナをクルクルと回転させながら、作業服の男の一人が軽快な歩みで前に出てくる。
目の前で一人倒されたのに、一人突出してくる慢心は何故生まれるのだろうか?
集団で個を殴ることばかりを覚えたせいで、ロクな喧嘩の場数を踏めていないのは最近の若いヤツらの残念なところだと、若菜は思う。
タイマンでの決闘上等!、という気合いの入ったヤツらは少なくなったなと、懐かしくもあった。
「じゃあ、オッサン、俺らその警官さんの手柄もらってくんで、さっさと死んじゃっ──」
相手の間合いも図れないで何をいきがれるというのだろうか。
摺り足。
距離を詰めるのに前傾姿勢を取らない歩の進み。
作業服の男には若菜が急に間近に来たように見えただろう。
叩かれた右手首、落ちるスパナ。
殴られた顔面、飛び散る鼻血。
襟首を捕まれ、腕を捕まれ、足を払われ。
見下ろした小柄なオッサンを、一瞬にして見上げる形。
地面に打ちつける背中、強い衝撃に呼吸が止まる。
背負い投げ一本。
華麗に舞う一瞬の技。
若菜はおまけに、顔を踏んづけた。
後部座席には、怯える愛依とその愛依にナイフを当てるツーブロックの金髪の男。
唇の端にはピアスがついていて、七分袖のシャツから見える腕やら首筋にはみっちりとタトゥーが彫られていて、警察関連の人物には見えない。
さっさと乗れと焦った様子で八重を睨む。
目の下に深い隈が出来ていて、頬もやつれている。
クスリの常用者か、と八重は金髪の男を刺激することは避けようと思った。
下手に激昂されたら、愛依の命が危ない。
八重が乗り込むのを確認すると、制服警官は運転席のドアを開けた。
その時である。
乗り込むために少し前屈みになった肩に手がかけられる。
「まだ森川八重さんにお帰り頂くよう指示は出してないはずだが、お前、誰の指示で動いてる?」
制服警官が振り向くとそこには深い茶色のよれよれの背広を着た男性──若菜が立っていた。
邪魔が入ることを予想していた制服警官は、用意していた答えを口にしようとしたが若菜の視線は既にパトカーの後部座席に向いていた。
薬狂いが余計なことしやがったせいだ、そう制服警官が愚痴を頭に思い浮かべた時には、天地は逆転していて、どういう原理でそうなったのかわからない早業で地面に押さえつけられていた。
「テメェ、どこ所属の馬鹿だ、アァッ!? 中のヤツもここが署の前だってわかって、誘拐沙汰やろうとしてんだろうなぁ!!」
若菜は署内にも聞こえるように大声でそう言った。
騒ぎになれば直ぐに誰かが駆けつける。
署の入り口でこんな犯罪を起こそうだなんて、舐められ過ぎだ。
その舐められた結果が警察内部からの犯罪協力なのだから、苛立ちを過ぎて悲しくもなってくる。
「ば、馬鹿はアンタだぜ。若菜さんだったか、アンタ、警察署前なら自分達の領域だと思ってねぇか? 人数有利で、俺達が無謀なことをしてると思ってねぇか?」
押さえつけられた制服警官が、そう言うと合図のように駐車場に停まっていた白いバンから男たちが降りてきた。
まっさらな作業服に身を包むカラフルな髪色の男が五人。
「そんな用意があんなら、パトカーなんかに乗せてんじゃねぇよ」
「パトカーで誘拐、だから面白いんじゃねぇか」
1対7。
状況の優位に制服警官は押さえられたままなのに、余裕な顔をしている。
「オッサン一人でやれますか? 若菜さん」
煽る制服警官に舌打ちをする若菜。
入り口の方を見やるも、誰も応援には駆けつけてくる気配はない。
「あー無理だと思うぜ。ほら、アンタも横切ってきたろ、今日の異様な混雑具合。受付対応にてんやわんやじゃねぇかな。何人かお邪魔させてもらってる」
喧嘩沙汰にヤクザの抗争と思われる殺人事件、街で起こる騒動が続くものだから住民の不満が殺到してる。
そう解釈しても、普段頼りにならないと公言される警察署に人が殺到するのは異様だと思うべきだった。
そう思うべきだとわかっていても、警察官としてそんな考えが正解だと想定できるわけがない。
若菜は騒動の早期解決に身を引き締める、そう感じていただけだった。
「混雑で混乱する署内なら動きやすいかと考えたが、勘のいい刑事ってのは必ずいる。まぁ、アンタみたいなヤツさ。それを警戒してたんだが、用意周到過ぎたか? 独りだけとは御愁傷様」
迫りくる作業服の男、五人。
若菜は押さえつけた制服警官の頭を、一度持ち上げて地面に叩きつけ気絶させる。
まずは一人。
問題は外の五人より、中の後部座席の男か。
若菜は助手席の八重に視線をやる。
目が合い、八重は首を横に小さく振った。
どうやら、八重からでは金髪の男から隙を作る手は無いらしい。
金髪の男は愛依に当てているナイフをグッと構えるも、若菜と五人の男の様子を窺っているようだ。
運転手を気絶させられて、その後の展開を考えていなかったのだろう。
若菜はもう一度八重に視線を向け、近寄る五人を一瞥すると、また視線を八重に戻した。
今度は八重は小さく頷いた。
若菜としては五人を相手にしてくるから待っていてくれ、というアイコンタクトだったのだが、八重はその間に愛依が逃げれるチャンスを作れということだなと解釈した。
「あーあ、警官さん、気絶しちゃってんじゃん。金か薬かしんねぇけど、その為に仕事棒に振ってさ、失敗してやんの」
右手に持ったスパナをクルクルと回転させながら、作業服の男の一人が軽快な歩みで前に出てくる。
目の前で一人倒されたのに、一人突出してくる慢心は何故生まれるのだろうか?
集団で個を殴ることばかりを覚えたせいで、ロクな喧嘩の場数を踏めていないのは最近の若いヤツらの残念なところだと、若菜は思う。
タイマンでの決闘上等!、という気合いの入ったヤツらは少なくなったなと、懐かしくもあった。
「じゃあ、オッサン、俺らその警官さんの手柄もらってくんで、さっさと死んじゃっ──」
相手の間合いも図れないで何をいきがれるというのだろうか。
摺り足。
距離を詰めるのに前傾姿勢を取らない歩の進み。
作業服の男には若菜が急に間近に来たように見えただろう。
叩かれた右手首、落ちるスパナ。
殴られた顔面、飛び散る鼻血。
襟首を捕まれ、腕を捕まれ、足を払われ。
見下ろした小柄なオッサンを、一瞬にして見上げる形。
地面に打ちつける背中、強い衝撃に呼吸が止まる。
背負い投げ一本。
華麗に舞う一瞬の技。
若菜はおまけに、顔を踏んづけた。
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