ファンキー・ロンリー・ベイビーズ

清泪─せいな

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第77話 聞いてガラージュ見てガラージュ 9

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 八丁目、警察署前。
 睨み合う三人。
 ここでの目的を達成した為撤退するタイミングを窺う、英雄。
 ここで絶対に捕まえると意気込む、井上。
 ここで英雄を仕留めておけば話は早いと狙う、遊川。

「・・・・・・そろそろ、か」

 確認するように視線を道路に向けて、呟く英雄。
 警察署へ突っ込むように黒いバンが二台、通りを荒々しい運転で走る。
 急カーブに急ブレーキ、アスファルトを焦がすタイヤ痕。

「行かせるかよ、梅っ!」

 井上と遊川の背後、バンから降りてくる数人の若者達。
 それを無視して井上は、英雄に突っ込んだ。
 ハッ、と嗤うように息を吐き英雄は後ろへと跳ねた。
 ずらされる間合い、井上の決死の体当たりはもう半歩、踏み込みを必要とされる。
 引いた弓を放つように僅かな踏み込みで、英雄は前蹴りを繰り出す。
 もう半歩踏み込もうと足を前にする井上へ迎撃の一撃。
 しかしそれを阻止する、遊川の中段回し蹴り。
 頭突きによって潰された左足では、しっかり踏み込むことはできないが、攻撃を阻止する程度ならば十分。
 バチっと音を鳴らし英雄の足を弾き、遊川はすぐに蹴りを引く。
 合わせたように前へ出る井上、肩からのタックルが英雄の鳩尾に刺さる。
 チィッ、と大きく舌打ちし前のめりになる英雄。
 すかさず投げへと移行する井上。
 後ろを警戒する遊川。

 一瞬の攻防、忙しなく状況が変わっていく。
 井上と遊川の背後に迫る、見知らぬ人ストレンジャーの増援。
 八名ほどのチンピラ。
 ただ、増援はバンからだけではなく、前方──警察署側からもやってくる。
 八重達を誘拐する際のフォロー役だった作業服姿の面々も、若菜から受けたダメージが少ない者が数人起き上がっていて近寄ってきていた。
 さらに、入り口受付で妨害行為を行っていた者達もぞろぞろと出てきている。
 ざっと合わせて二十人程度はいるだろうか。

「捨てゴマなら無制限に用意できる、ってか」

 遊川に取ってそこらのチンピラ程度、簡単に退ける相手ではあるのだが、数が多いというのは単純に面倒だ。

「そういうことだ、諦めなっ!」

 胸倉を掴まれた英雄は、井上が投げの姿勢に入りきる前に頭を縦に振った。
 警棒に遊川の蹴り、度々粉砕してきた頭突き。
 猛威を奮う爆弾パチキに、井上は真っ正面からぶつかっていく。
 ゴォンッ、鈍く重い音が聞くものにその強い衝撃を伝える。

「絶対に止めるって言ったよなぁっ!!」

 真っ向勝負。
 額から血が流れようと譲らない頭突き勝負。
 やるぅ、とニヤリと笑う英雄。
 井上は再び投げの姿勢に入る。
 しかし、頭突きの衝撃は足に来ていた。
 もたつくのは一瞬、然れど決定的な一瞬。
 再び頭を振り上げる英雄。
 二度目の真っ向勝負。

「何処までやれる、梅吉うめきちっ! 俺とお前の絶対・・はどっちが勝つんだ、梅吉っっ!!」

 ゴォンッ!
 ゴォンッ!
 ゴォォンッ!!

 三連続のぶつかり合い。
 胸倉から離れる手、膝から崩れそうになる井上。
 英雄の勝利に湧くバンからの増援組。
 歓声を上げ活気づいたところを、いつの間にか眼前まで迫った遊川に殴られる。
 英雄を仕留める前に退路の確保が必要だと判断した遊川は、後方バン増援組の対処に動き始めた。
 英雄の撤退方法もバンであろうからそれの阻害も合わせて行える。
 厄介なオッサンだ、英雄の注意が目の前の崩れゆく井上から遊川に向く。
 その瞬間──。

「井上さんっ!!」

 署内からようやく駆けつけた警官達。
 その呼び声に井上は気を取り戻す。
 崩れる膝に力を込めて身体の筋を伸ばす。
 額には一点に集中する割れたと錯覚するほどの痛み、それ以外が無くなったかと錯覚するほどの麻痺。
 しかし、数度の真っ向勝負、負けを認めたわけではない。
 頭一つ高い英雄の顎を、突き上げる井上の頭突き。
 
 英雄の背後、駐車場に集まりだした数人のチンピラを駆けつけた数人の警官が捕まえていく。
 人数差が無ければ、日頃の鍛練の成果が圧倒する。

 一瞬の攻防、目まぐるしく状況が変わっていく。
 突き上げられた顎、英雄の脳を激しく揺らす。
 脳震盪で遠退きそうになる意識と、倒れそうになる身体を、井上の右肩を掴み必死にしがみつかせる。
 オイ、どうすんだこの状況。
 頭に浮かぶ疑問に誰が答えてくれるわけもなく。
 どうにかするのは自分しかいねぇ、わかりきった自問自答。

 英雄は歯を食い縛り、膝を振り上げた。
 井上の腹部を突き上げる膝蹴り。
 クの字に曲がる井上の身体、前のめりになり垂れ下がる後頭部を英雄は頭突きで叩き落とした。

 揺れる脳、強い衝撃にハッキリとする英雄の意識。
 うつ伏せに倒れる井上から視線を上げると、バン増援組を叩きのめした遊川の姿があった。

「オイオイ、アンタ、マジで人間なのかよ?」

 呆れたように問いかける英雄を、何食わぬ顔で、次はお前だ、と指差す遊川。
 ハッ、と鋭く吐き出す英雄の呼吸は笑い声のようにその場に響いた。 
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