ファンキー・ロンリー・ベイビーズ

清泪─せいな

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第100話 グライムに教えられる 20

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 上階へと続く階段は三階の奥にある。
 荷物用エレベーターはまだ工事中の為、途中階までしか稼働していなかった。
 そういった半端な仕事になってるのも、上層階を取引場所として使うためだろう。
 倉庫建設の進捗具合は、遊川にも報告が上がっていた。
 フロント企業の案件とはいえ、デカいシノギであるのは確かなので、定期的に担当である沼田自身の監視の意味も込めて報告させていたのだ。
 故に、遊川は倉庫の構造を把握していて難なく最上階――七階に辿り着いた。
 途中に邪魔が入ることもなかった。
 駒扱いのチンピラ達を配置し忘れたのか、そもそも配置する余裕がなかったのか。
 、遊川はそう思いながら階段から続く七階の扉を開いた。

 扉を開くと、遊川の侵入に反応して照明が点いた。
 省エネ目的の自動照明というやつで、主に在庫保管場所となる七階は手動での点灯は行わない予定らしい。
 照明は入ってきた遊川の周りを照らす以外に、フロアの真ん中辺りが点いているようだった。

 目的の場所が分かるのと同時に、こちらの到着も把握されているだろう。
 救出目的の潜伏など小手先の仕掛けは出来ないか、と遊川はフロアに足音を響かせながら進んでいく。

 遊川の靴音と、自動照明が点灯していく音が、だだ広いフロアに反響していく。
 遊川を導くように点灯していく自動照明。

 数十歩と進んだ末、遊川は目的の場所に辿り着いた。
 森川八重と村山愛依、その二人を背後から拘束してるチンピラが二名。
 そして、片手に銃をこれみよがしと持って立っている野上花康。

「はぁぁ、若頭アンタはお呼びじゃねぇんだけど、まぁ来るんだろうとは思ってたよ。それにしても、なーさんと英雄さんは、若頭アンタのこと素通りさせたのか?」

 野上は大袈裟に溜息をつくと、ヘラヘラと笑いながら遊川に銃口を向ける。
 片手で構えるそれは、脅しという意味合いを持たない単なる指示棒のようで、遊川の返答を促す。

「梅吉から、テメェのことをちゃんと止めれるのかと釘を刺されたよ」

「ハッ、何だそれ、冗談キツイぜ英雄さん。東條会に一目置かれてる若頭アンタなら、オレなんて簡単にボコれるでしょうが」

 そう言って野上は銃を持たないもう片方の手で、自分の首を切るようなジェスチャーをとる。

「相変わらず、茶化さねぇと喋れねぇんだな、テメェは」

 遊川はその野上の軽口にうんざりしてる様な素振りを見せる。
 視線を八重の方に向けると、拘束具合を窺う。
 後ろ手に手首を拘束されているようで、それをチンピラに背後から掴まれているようだ。
 口にガムテープだとかの封じが無いのは、騒ぐことが無かったからだろうか。
 横に並ばされてる愛依も同様の扱いだが、背後にいるチンピラの目の動きがどうにも怪しい。
 薬切れ起こしてやがるのか、と遊川は察すると事を急いだ方が良いと判断した。

「無駄話をするつもりはねぇ、お嬢とその娘さんは解放してもらうぞ、野上」

「つれないなぁ、組長オヤジの代わりに来たんならもう少し相手してくださいよ、若頭カシラ

 父親の話が出てきて八重が反応するが、遊川が視線で制止すると大人しく従い、じっと堪えていた。
 今迂闊に動き刺激を与えて不味いのは、あの薬切れのチンピラだ。
 野上を仕留めた後、直ぐにあのチンピラを仕留める動きを考える必要がある。

「俺のテメェの扱い方への不満ってとこか? ガキの返しにしちゃあ、おいたが過ぎたな、野上」

 野上を煽っていく遊川。
 会話の中心――意識の中心を野上に集める。
 そうすることで、八重達を拘束するチンピラ達の虚を衝く動きを生み出すことが出来る。
 危険な賭けではあるが、短気な野上が逆上して銃を振りかざしてくれればいい。
 中途半端な男だ、組長との交渉材料となる八重には銃口を向けることすら躊躇うだろう。
 それにたまたま同行してた愛依に向けることもしない。
 偶然の拾い物を腹いせの為に処理するようなイカレきれるようなタマでもない。
 何かしらの利用方法を考えてるだろう。
 野上が銃口を向けるとしたら、変わらず遊川にだけのはずだ。
 煽って怒らせ手元を狂わせれば、一発二発致命傷を食らわなければ、銃相手でも仕留めるスキはある。

「ハハハ、その通りだよ、若頭カシラ。アンタがオレに散々言った、大義がねぇ、って言葉。そんなもんに意味がねぇって突き返してやろうと思ってさ! 別に極道ヤクザやるのに大義もクソもねぇってこと、証明してやろうと思ってさ!! そんなもん無くても兵隊は集めれるし、千代田組一つ、いや街一つ壊すこと出来るんだってな!!! 所詮は暴力と金、極道はぐれもんやるならそれで充分なんだよ!!」

 先程まで浮かべていたヘラヘラとした表情から、鋭い眼差しで遊川を睨みつける野上。
 その手に持つ銃、その銃口は遊川の眉間に向けられていた。
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