ファンキー・ロンリー・ベイビーズ

清泪─せいな

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第113話 グライムに教えられる 33

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 次に聞こえてきた足音は複数分であった。
 若菜を先頭に数人の制服警官と、救急隊員が駆けつけてきた。
 若菜は迅速に指示を行い、警官達は野上とチンピラ達を拘束し連行していく。
 救急隊員は遊川の応急処置を行いつつ、無線で下の階に駆けつけている他の隊員に応援を要請していた。

「北斗、陽治についてやってくれ」

 千代田の指示に平家は、ヘイ、と答え遊川を診てる救急隊員の側へと近寄った。

「若菜さん、華澄と井上さんは無事か?」

 傷の痛みと疲労感に、もう立ってるのもままならないと座り込んでいる文哉が若菜へ問いかける。

「斧宮んとこの嬢ちゃんなら本人は大丈夫だって言い張ってたが、念の為病院に運んでもらっておいたぞ。井上も一ヶ月かそこらは入院することになりそうだな」

 原型がどうだったかわからなくなりそうなぐらい青く腫らした顔をしていた井上は、それでも若菜の呼びかけにしっかりと応対出来ていた。
 七階までついて行くと無茶を言うので、若菜は救急隊員に頼んで強引に運んでもらった。
 抵抗する力も残ってなかったようで、井上はなされるがままにタンカーで運ばれていった。

「助かるよ、若菜さん」

「何他人事みたいに言ってるんだ、平田、お前もすぐ病院行きだからな。鏡見るか、ボロボロだぞ、お前も」

「頭を包帯でぐるぐる巻きにしてるアンタに言われなくても、わかってるよそんなこと」

 文哉の指摘通り、若菜は頭に包帯をぐるぐると巻いていて、頬にもガーゼが貼られていた。
 警察署前の誘拐騒ぎの際に受けた傷を、女性警官に応急処置してもらったのだが、どうも大雑把な性格な女性警官だった様で大袈裟な様相にされてしまった。
 若菜が途中で止めなかったら顔全体をぐるぐる巻きにされたのだろうと、三階で倒れる須藤を見て思っていた

「うるせぇ。病院へは怪我が酷い順番に判断されて運ばれることになる。今度は素直に従ってくれよ、平田」

「率先して乗せてくれなんて言わねぇよ」

「違ぇよ、ちゃんと病院に行けって言ってるんだよ。お前はすぐ強がるからな。これ以上、あの斧宮んとこの嬢ちゃんを心配させてやんなってことだよ」

 若菜にそう言われ、返す言葉を詰まらせた文哉は、下を向きながら、わかったよ、と呟いた。
 じゃあちゃんと行けよ、と念を押して若菜はその場を離れ千代田のもとへと歩いていった。

「警察と極道の協力のもと、大捕物になっちまったな」

「手前の者がお恥ずかしい限りで、協力出来る事はしますんで何なりと申しつけください、若さん」

 若菜はふっと一息零すと、煙草を吸いたくなって胸ポケットを探り始める。
 その様子に、千代田はすっと壁に向かって指を差した。
 丸い円の中にある煙草にバツ印がつけられているポスター。
 喫煙禁止と書かれたそれが倉庫の一作業場に貼られている。

「何処でも煙草吸って良い時代じゃないんですよ、若さん」

「人を昭和の遺物みたいに言わんでくれよ、組長」

 若菜は煙草の捜索を諦めた。
 そもそも簡単に取り出せないところからすると、あの乱闘騒ぎの際に落としたのかもしれなかった。

「手前の者なんて言って、梅吉英雄と野上花康の二人を破門にする気は無いのかい?」

「いえ、破門は……すでにしてあります。下手な温情は東條会にまで泥を塗る話になってしまう。しかしながら、アイツらは一度盃を交わした息子だ。親が責任取ってやらねぇと」

「筋ってやつかい? 極道そっちはそういうのがあって大変そうにも思えるし、羨ましくもあるな。だが、何でもかんでも親が責任取るもんじゃねぇよ。アイツらがしでかした責任はアイツらが背負うべきだ、そうだろ組長?」

 若菜にそう言われ千代田は何か思うことがあるのか一つ小さく息を吐くと、そうですね、と呟くように返した。
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