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Ep.4 兄弟
.4 飲み会
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入社三年目。
二年目の後半くらいから、一年目に参加した新人社員研修で一緒になった同期と飲みに行くことが増えた。
新入社員研修のグループワークの時に仲良くなったメンバーの中で、今でも連絡を取り合っている人達が結構多い。
もちろん、小鳥遊優希もその中の一人だ。
彼女とはあれから、何度か社内ですれ違うことがあったのだが、お互いに会釈を交わす程度しか関わり合っていない。
小鳥遊さんは総務部、僕は海外事業部所属なので、業務上のやり取りは特にない。
たまに廊下で会い、目が合う程度だった。
ただ一度だけ、彼女が何か言いたげな目でこちらを見てきたことがある。
その時はいつもと違って、小鳥遊さんの方から目をそらされてしまった。
あの時の目の意味はなんだったんだろうか?
気になりはしたが、直接聞けず、そのまま時が過ぎた。
そして今日、僕は同期の男数人と会社の近くの居酒屋に来ていた。
「いやぁ、お前はいいよな~。俺なんか、まだ女の子と付き合ったこともないんだぜ?」
ビールの入ったジョッキを片手に、同期の男が愚痴をこぼすように言った。
「いや、別に羨ましがられるようなことでもないけど……」
小鳥遊優希との関係を公言してはいないが、社内に二人いる以上、勘の働くヤツは一人や二人はいるものだ。
学生時代から思っていたが、勘の働くヤツほど空気を読めない。
僕と小鳥遊優希との関係性を良い感じであるとしたまま情報が止まっている。
僕が彼女の気持ちを蔑ろにしたせいで、関係が悪くなったとも言える。
この飲み会だって、最初は女性陣も参加予定だったのに小鳥遊優希が辞退したことを発端に次々と女性陣が辞退していった。
結局残ったのは男性陣だけだった。
「なんだよ、贅沢言うなよ! 俺はもうそっちの道を諦めたっていうのに!」
「そうそう! 俺たちなんて彼女いない歴=年齢だぞ?!」
「そんなこと言われても困る。まあ、僕の場合は向こうから来てくれたし、正直モテる方じゃないと思うけど」
「くっそぉ、これだからイケメンは!」
僕の言葉を聞いた男達が悔しそうな声を上げる。
実際、僕は顔立ちが整っているとかそういった類ではない。
どちらかと言うと、無愛想であまり笑わないタイプなので、人によっては怖いと思われてしまうこともある。
だけど、昔から女子にはよく好かれた。
理由はわからない。
中学高校大学と、周りの男子からはその点では妬まれることもあった。
だが、不思議と女子には嫌われることはなかった。
おそらく、そのおかげで今こうして楽しくやっていけているのかもしれない。
「ほら、もっと飲めよ!」
「ああ、ありがとう!」
同期の一人が半ばヤケクソ気味に注いでくれたお酒をノリに合わせて一気に飲む。
「おっ! やるじゃん!」
「じゃあ、こっちも!」
さらに別の同期が僕のグラスに自分のグラスをカチンと合わせてくる。
「かんぱーーーーーーーーーーーーい!!!」
そこからは飲んで騒ぐだけになった。
「そういえばさ、小鳥遊さんって彼氏いるのかな?」
「えっ? 知らないのか? あいつ、この間、男と一緒に歩いてたらしいぞ」
「マジか!?」
「なんでも、相手はうちの会社の社員だとか」
「えぇ? それって……まさか……不倫か?!」
小鳥遊さんの話題が出た途端、みんなが口々に話し始めた。
「おい、そのへんにしとけ。本人が聞いたらどうする?」
「あ、わりぃ!」
誰かが注意すると、その話はそれで終わりとなった。
僕はというと、何とも言えない気分になっていた。
やめろよ、なんて彼氏面の出しゃばった言葉は言える資格があるのかどうか危うかった。
僕と小鳥遊優希の関係を囃し立てられるのも、庇って誤解されるのも困る。
彼女の好意を拒んだのは僕で、彼女のことに率先して関わるのは躊躇われた。
どういう理屈で不倫だと疑っているのかはわからないが、彼女が幸せなら、それでいいと思うことにした。
二年目の後半くらいから、一年目に参加した新人社員研修で一緒になった同期と飲みに行くことが増えた。
新入社員研修のグループワークの時に仲良くなったメンバーの中で、今でも連絡を取り合っている人達が結構多い。
もちろん、小鳥遊優希もその中の一人だ。
彼女とはあれから、何度か社内ですれ違うことがあったのだが、お互いに会釈を交わす程度しか関わり合っていない。
小鳥遊さんは総務部、僕は海外事業部所属なので、業務上のやり取りは特にない。
たまに廊下で会い、目が合う程度だった。
ただ一度だけ、彼女が何か言いたげな目でこちらを見てきたことがある。
その時はいつもと違って、小鳥遊さんの方から目をそらされてしまった。
あの時の目の意味はなんだったんだろうか?
気になりはしたが、直接聞けず、そのまま時が過ぎた。
そして今日、僕は同期の男数人と会社の近くの居酒屋に来ていた。
「いやぁ、お前はいいよな~。俺なんか、まだ女の子と付き合ったこともないんだぜ?」
ビールの入ったジョッキを片手に、同期の男が愚痴をこぼすように言った。
「いや、別に羨ましがられるようなことでもないけど……」
小鳥遊優希との関係を公言してはいないが、社内に二人いる以上、勘の働くヤツは一人や二人はいるものだ。
学生時代から思っていたが、勘の働くヤツほど空気を読めない。
僕と小鳥遊優希との関係性を良い感じであるとしたまま情報が止まっている。
僕が彼女の気持ちを蔑ろにしたせいで、関係が悪くなったとも言える。
この飲み会だって、最初は女性陣も参加予定だったのに小鳥遊優希が辞退したことを発端に次々と女性陣が辞退していった。
結局残ったのは男性陣だけだった。
「なんだよ、贅沢言うなよ! 俺はもうそっちの道を諦めたっていうのに!」
「そうそう! 俺たちなんて彼女いない歴=年齢だぞ?!」
「そんなこと言われても困る。まあ、僕の場合は向こうから来てくれたし、正直モテる方じゃないと思うけど」
「くっそぉ、これだからイケメンは!」
僕の言葉を聞いた男達が悔しそうな声を上げる。
実際、僕は顔立ちが整っているとかそういった類ではない。
どちらかと言うと、無愛想であまり笑わないタイプなので、人によっては怖いと思われてしまうこともある。
だけど、昔から女子にはよく好かれた。
理由はわからない。
中学高校大学と、周りの男子からはその点では妬まれることもあった。
だが、不思議と女子には嫌われることはなかった。
おそらく、そのおかげで今こうして楽しくやっていけているのかもしれない。
「ほら、もっと飲めよ!」
「ああ、ありがとう!」
同期の一人が半ばヤケクソ気味に注いでくれたお酒をノリに合わせて一気に飲む。
「おっ! やるじゃん!」
「じゃあ、こっちも!」
さらに別の同期が僕のグラスに自分のグラスをカチンと合わせてくる。
「かんぱーーーーーーーーーーーーい!!!」
そこからは飲んで騒ぐだけになった。
「そういえばさ、小鳥遊さんって彼氏いるのかな?」
「えっ? 知らないのか? あいつ、この間、男と一緒に歩いてたらしいぞ」
「マジか!?」
「なんでも、相手はうちの会社の社員だとか」
「えぇ? それって……まさか……不倫か?!」
小鳥遊さんの話題が出た途端、みんなが口々に話し始めた。
「おい、そのへんにしとけ。本人が聞いたらどうする?」
「あ、わりぃ!」
誰かが注意すると、その話はそれで終わりとなった。
僕はというと、何とも言えない気分になっていた。
やめろよ、なんて彼氏面の出しゃばった言葉は言える資格があるのかどうか危うかった。
僕と小鳥遊優希の関係を囃し立てられるのも、庇って誤解されるのも困る。
彼女の好意を拒んだのは僕で、彼女のことに率先して関わるのは躊躇われた。
どういう理屈で不倫だと疑っているのかはわからないが、彼女が幸せなら、それでいいと思うことにした。
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