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IV
9 焼かれるドラゴンと生み出されるリザードマン
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ドラゴンの顔を飲み込むほどの大火球が直撃し、硬い皮膚を容赦なく焼き尽くしていく。
弾かれ散る火花が辺りを燃やし、悶え苦しむドラゴンが暴れ、巻き込まれないように距離を開けるノール達。
ドラゴンの顎の下にいた武志も、慌ててその場を離れる。
焼け焦げた皮膚は塵と化して宙に舞い、やがて微量な魔素として大気に溶け込んでいく。
大気に溶けた魔素がまた火球に取り込まれ、弾かれ散って縮小した分を補填して、縮小と拡大を繰り返しながら、ドラゴンを焼いていく。
「おお、すごいな」
悶え苦しむドラゴンを執拗に焼いていく大きな火球。
その光景に、武志は素直に感心していた。
元の世界でもいくらかの戦闘をこなして来たが、これ程の規模の大きさ、迫力のある光景は初めて見た。
「ぼうっと見とれてると危ないぞ、タケシ君。ここからが本番、まだまだ厄介なんだからな」
無防備に眺めてるだけの武志に、背後からアースカが忠告を入れる。
振り向く武志に、アレを見ろ、とアースカは焼けていくドラゴンを指差す。
宙に散る皮膚とは違い、焼け落ちた肉片は魔素の塊へと変わり、そこからリザードマンの姿を取っていく。
「げ、まだやるのかよ!?」
「これが、ドラゴンの厄介なところですな。なかなかキリのないしぶとさと言いますか、面倒臭さと言いますか」
いつの間にか武志の横で仕込み杖を構えていたヴィンドがそう言う。
武志はヴィンドに気配を感じさせず近づいた意味を問いたかったが、今はそれを問うタイミングではなさそうだった。
「村を崩壊させる程の魔素の塊、それを打ち崩すとなるとこういうことになりましてな。あのリザードマン共を退治できてようやく終いとなります。ただし、まだまだ続々と生み出されますがな」
「終いって、ドラゴンの方はもう大丈夫なのか? ミュレットの火球の凄さはわかるけど、まだ悶え苦しんでるだけだぜ?」
「ご心配無く、あの火球はミュレットの手を離れ、ドラゴンを焼き尽くすまで止まらぬ業火となっております」
それって制御不能になってるってことじゃないか?
武志はミュレットの方を見ると、ミュレットは悪びれた顔で下を向いていた。
アースカの指示で、解き放った魔法とはいえ、自分の制御から離れてしまうものを理解しながら作り出したのは、素直に胸の誇れるものではない。
未熟さをアピールしているようなものだ。
「ああ、その点もご心配無く。あの火球はドラゴンさえ焼き尽くせば維持する為の魔素を失う為、時間が経てば消滅します」
ヴィンドに『ご心配無く』と説明されても、武志には火球を維持する魔素の量など分かるはずもない。
納得できないながらも、疑う理由もないため、そういうものなのだと受け入れることにした。
「とにかく、目の前のリザードマンを倒していけば、一件落着ってことでいいんだよな?」
「そうそう、そんなに難しく考えなくていいんだよ」
ノールも武志達の傍に近寄ってきて、並び立つ。
ドラゴンの火炎放射に焼かれたはずの身体、鎧は焦げ跡一つついてなく、火炎放射に飲み込まれた事実すら無かったかのようだ。
まじまじと見つめる武志に、ノールは何かに気づいたように眉を上げる。
「ああ、説明は後だ、タケシ。今はゾロゾロ出てくるリザードマンの相手をしないとな」
そう言うとノールは、再び先陣を切ってリザードマン達へと向かって駆けていく。
それに合わせて、ヴィンドとアースカも動き始めた。
悶え苦しむドラゴンを横目にしながら、始まるリザードマンとの殲滅戦。
火球がドラゴンを焼くたび、ただれた肉片が落下し魔素へと変わり、それがリザードマンを生み出していく。
言わば終わりは見えているというわけだ。
ドラゴンが死に絶えるまで、それが次々に現れるリザードマンの終わりと言える。
だが、そのドラゴンの巨体がいつ焼き尽くされるのかまでは、武志には想像できなかった。
弾かれ散る火花が辺りを燃やし、悶え苦しむドラゴンが暴れ、巻き込まれないように距離を開けるノール達。
ドラゴンの顎の下にいた武志も、慌ててその場を離れる。
焼け焦げた皮膚は塵と化して宙に舞い、やがて微量な魔素として大気に溶け込んでいく。
大気に溶けた魔素がまた火球に取り込まれ、弾かれ散って縮小した分を補填して、縮小と拡大を繰り返しながら、ドラゴンを焼いていく。
「おお、すごいな」
悶え苦しむドラゴンを執拗に焼いていく大きな火球。
その光景に、武志は素直に感心していた。
元の世界でもいくらかの戦闘をこなして来たが、これ程の規模の大きさ、迫力のある光景は初めて見た。
「ぼうっと見とれてると危ないぞ、タケシ君。ここからが本番、まだまだ厄介なんだからな」
無防備に眺めてるだけの武志に、背後からアースカが忠告を入れる。
振り向く武志に、アレを見ろ、とアースカは焼けていくドラゴンを指差す。
宙に散る皮膚とは違い、焼け落ちた肉片は魔素の塊へと変わり、そこからリザードマンの姿を取っていく。
「げ、まだやるのかよ!?」
「これが、ドラゴンの厄介なところですな。なかなかキリのないしぶとさと言いますか、面倒臭さと言いますか」
いつの間にか武志の横で仕込み杖を構えていたヴィンドがそう言う。
武志はヴィンドに気配を感じさせず近づいた意味を問いたかったが、今はそれを問うタイミングではなさそうだった。
「村を崩壊させる程の魔素の塊、それを打ち崩すとなるとこういうことになりましてな。あのリザードマン共を退治できてようやく終いとなります。ただし、まだまだ続々と生み出されますがな」
「終いって、ドラゴンの方はもう大丈夫なのか? ミュレットの火球の凄さはわかるけど、まだ悶え苦しんでるだけだぜ?」
「ご心配無く、あの火球はミュレットの手を離れ、ドラゴンを焼き尽くすまで止まらぬ業火となっております」
それって制御不能になってるってことじゃないか?
武志はミュレットの方を見ると、ミュレットは悪びれた顔で下を向いていた。
アースカの指示で、解き放った魔法とはいえ、自分の制御から離れてしまうものを理解しながら作り出したのは、素直に胸の誇れるものではない。
未熟さをアピールしているようなものだ。
「ああ、その点もご心配無く。あの火球はドラゴンさえ焼き尽くせば維持する為の魔素を失う為、時間が経てば消滅します」
ヴィンドに『ご心配無く』と説明されても、武志には火球を維持する魔素の量など分かるはずもない。
納得できないながらも、疑う理由もないため、そういうものなのだと受け入れることにした。
「とにかく、目の前のリザードマンを倒していけば、一件落着ってことでいいんだよな?」
「そうそう、そんなに難しく考えなくていいんだよ」
ノールも武志達の傍に近寄ってきて、並び立つ。
ドラゴンの火炎放射に焼かれたはずの身体、鎧は焦げ跡一つついてなく、火炎放射に飲み込まれた事実すら無かったかのようだ。
まじまじと見つめる武志に、ノールは何かに気づいたように眉を上げる。
「ああ、説明は後だ、タケシ。今はゾロゾロ出てくるリザードマンの相手をしないとな」
そう言うとノールは、再び先陣を切ってリザードマン達へと向かって駆けていく。
それに合わせて、ヴィンドとアースカも動き始めた。
悶え苦しむドラゴンを横目にしながら、始まるリザードマンとの殲滅戦。
火球がドラゴンを焼くたび、ただれた肉片が落下し魔素へと変わり、それがリザードマンを生み出していく。
言わば終わりは見えているというわけだ。
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