28 / 57
IV
10 戦いの終焉と浄化神術
しおりを挟む
一人当たり十何体とリザードマンを退治し続け、ついにその時が訪れる。
ミュレットの制御から完全に離れた業火が、あの巨大であった緑の龍を焼き尽くしたのである。
最後となった尻尾の先が焦げ炭となり、魔素として宙に溶けていく。
「ようやく終いとなりましたな――」
ヴィンドが静かに呟く。
グリーンドラゴンは焼き尽くされたが、それでもリザードマンはまだ残っていた。
ヴィンドの言葉を受けて、ノールが前に出てヴィンドと対峙していたリザードマンの相手を受け持つ。
魔素が形となった斧を振りかざすリザードマン、それを大剣で受け止めるノール。
ヴィンドは僅かに頷くと、距離を開けるように後ろに跳ねた。
低い跳躍から着地すると、刀を仕込んだ杖を垂直に構える。
「白銀の月よ、この手に集い来たれ。祓えよ、業。今、再び安らかなる救済を。エクソシズム!!」
大気を震わせる詠唱。
鬱蒼とした森の木々が揺れる。
ヴィンドの構えた杖が神々しく光り出すと、ヴィンドは杖の先端で地面を叩いた。
杖から大地へと伝う光、瞬く間に辺りへと広がっていく。
波のように押し寄せる光が廃墟となった村を包み込み、リザードマンたちを呑み込んでいく。
やがて彼らは魔素へと還り、宙に溶けていった。
リザードマン達の様子を見て、武志は足下に広がる光を避けようとするが、すぐ様ノールの、大丈夫だよ、という助言が入る。
「ヴィンド爺みたいな僧侶が扱う神術のひとつさ。穢れた魔素を神の御力で浄化するんだって。仕組みについて知りたかったら、ヴィンド爺に後で聞くといい」
魔素と同じで俺は使えないから、ノールは付け加える。
神術というものの仕組みはわからないが、魔素も神術も使えないということを別段残念であると捉えてないような表情をノールがしてるように、武志には見えた。
忌み子と蔑まれてるはずなのに、それを苦と捉えていないのだろう。
あるいは、捉えないようにしてるのだろう。
「神術の仕組みをヴィンド爺に聞くって、それって、女神信仰の大事さをとくとくと語られるだけだよ。……長話になるから、覚悟してね」
武志とノールの側にミュレットが寄ってきて、小声気味の忠告をしてくる。
「ええ、信仰の賜物です」
ヴィンドに聞こえないようにと遣った気が、無駄になったことを知ってミュレットは、げ! と零した。
「め、女神は私も信仰してるけどさ、あの、長話はちょっと……」
「ミュレットには、信仰のことよりも魔法の扱いについて話をしなければなりませんね?」
「え、いや、今回はほら、アースカがやれって言うからやったまでで。私もほらあそこまで大きな火球は制御出来ないって自覚はあったし」
面倒な説教というわけではない。
ヴィンドの話は、実際為になる授業だとも言える。
しかしながら、集中出来る長さというものは考慮してくれない。
長い長い眠気との戦いは、一種の修行のようで嬉々として受けたいものでは無かった。
ミュレットは、アースカに視線を向けて救いを求める。
頼んだのは事実なので、アースカは渋々頷いた。
「ヴィンド爺、ミュレットの言ってることは本当だ。オレが彼女にあの火球を頼んだ、だから――」
アースカは一歩前に出て、言葉を悩む。
だから、長話をするのはやめてやってくれ。
という言い方は正直好ましくない。
アースカ自身はヴィンドの講釈を好んで聞いているからだ。
かつての戦功を混じえた、偉大なる先人の有益な教えだ。
どこを取ってもこの先の旅への糧となる話だ。
「――あー、オレも一緒に話を聞こう」
「え? ちょっ、アースカ!?」
助け舟どころか単なる同乗者になったアースカに向けて、抗議の視線を向けるミュレット。
ヴィンドはうんうんと頷き、では後ほど、と授業の確定を宣言した。
「俺も聞いた方が良いのかな? 魔素とか、神術とか、わからないことだらけだし」
「タケシは勉強熱心だな。遠慮なく聞いてやってくれ、年寄りってのは話が好きだからな」
ノールはそう言って武志の肩を軽く叩き、リザードマンたちが消えた跡へと向かった。
リザードマン達、そしてグリーンドラゴンがいた場所まで歩くとノールは屈み、地面から何かを拾い上げる。
「これで、四つ目か……」
ノールが拾い上げたのは、ボロボロに錆びた金属製の小さな鎖だった。
武志は気になって近寄ってみると、そのサイズ感から首に巻いていたものだと推測する。
「四つ目って、その首飾りみたいなヤツを集めに来たのか?」
「いや、違うよ。これはこの村の住人の遺品さ。四つ目と言ったのは俺達が浄化してやれた村の数だ。やっと、四つ……まだ、四つ目って感じだよ」
自分のことについて何とも思ってないような表情を見せていたノールが、苦しみを帯びた悲しげな表情をしていて、武志はかける言葉を思い悩んだ。
ミュレットの制御から完全に離れた業火が、あの巨大であった緑の龍を焼き尽くしたのである。
最後となった尻尾の先が焦げ炭となり、魔素として宙に溶けていく。
「ようやく終いとなりましたな――」
ヴィンドが静かに呟く。
グリーンドラゴンは焼き尽くされたが、それでもリザードマンはまだ残っていた。
ヴィンドの言葉を受けて、ノールが前に出てヴィンドと対峙していたリザードマンの相手を受け持つ。
魔素が形となった斧を振りかざすリザードマン、それを大剣で受け止めるノール。
ヴィンドは僅かに頷くと、距離を開けるように後ろに跳ねた。
低い跳躍から着地すると、刀を仕込んだ杖を垂直に構える。
「白銀の月よ、この手に集い来たれ。祓えよ、業。今、再び安らかなる救済を。エクソシズム!!」
大気を震わせる詠唱。
鬱蒼とした森の木々が揺れる。
ヴィンドの構えた杖が神々しく光り出すと、ヴィンドは杖の先端で地面を叩いた。
杖から大地へと伝う光、瞬く間に辺りへと広がっていく。
波のように押し寄せる光が廃墟となった村を包み込み、リザードマンたちを呑み込んでいく。
やがて彼らは魔素へと還り、宙に溶けていった。
リザードマン達の様子を見て、武志は足下に広がる光を避けようとするが、すぐ様ノールの、大丈夫だよ、という助言が入る。
「ヴィンド爺みたいな僧侶が扱う神術のひとつさ。穢れた魔素を神の御力で浄化するんだって。仕組みについて知りたかったら、ヴィンド爺に後で聞くといい」
魔素と同じで俺は使えないから、ノールは付け加える。
神術というものの仕組みはわからないが、魔素も神術も使えないということを別段残念であると捉えてないような表情をノールがしてるように、武志には見えた。
忌み子と蔑まれてるはずなのに、それを苦と捉えていないのだろう。
あるいは、捉えないようにしてるのだろう。
「神術の仕組みをヴィンド爺に聞くって、それって、女神信仰の大事さをとくとくと語られるだけだよ。……長話になるから、覚悟してね」
武志とノールの側にミュレットが寄ってきて、小声気味の忠告をしてくる。
「ええ、信仰の賜物です」
ヴィンドに聞こえないようにと遣った気が、無駄になったことを知ってミュレットは、げ! と零した。
「め、女神は私も信仰してるけどさ、あの、長話はちょっと……」
「ミュレットには、信仰のことよりも魔法の扱いについて話をしなければなりませんね?」
「え、いや、今回はほら、アースカがやれって言うからやったまでで。私もほらあそこまで大きな火球は制御出来ないって自覚はあったし」
面倒な説教というわけではない。
ヴィンドの話は、実際為になる授業だとも言える。
しかしながら、集中出来る長さというものは考慮してくれない。
長い長い眠気との戦いは、一種の修行のようで嬉々として受けたいものでは無かった。
ミュレットは、アースカに視線を向けて救いを求める。
頼んだのは事実なので、アースカは渋々頷いた。
「ヴィンド爺、ミュレットの言ってることは本当だ。オレが彼女にあの火球を頼んだ、だから――」
アースカは一歩前に出て、言葉を悩む。
だから、長話をするのはやめてやってくれ。
という言い方は正直好ましくない。
アースカ自身はヴィンドの講釈を好んで聞いているからだ。
かつての戦功を混じえた、偉大なる先人の有益な教えだ。
どこを取ってもこの先の旅への糧となる話だ。
「――あー、オレも一緒に話を聞こう」
「え? ちょっ、アースカ!?」
助け舟どころか単なる同乗者になったアースカに向けて、抗議の視線を向けるミュレット。
ヴィンドはうんうんと頷き、では後ほど、と授業の確定を宣言した。
「俺も聞いた方が良いのかな? 魔素とか、神術とか、わからないことだらけだし」
「タケシは勉強熱心だな。遠慮なく聞いてやってくれ、年寄りってのは話が好きだからな」
ノールはそう言って武志の肩を軽く叩き、リザードマンたちが消えた跡へと向かった。
リザードマン達、そしてグリーンドラゴンがいた場所まで歩くとノールは屈み、地面から何かを拾い上げる。
「これで、四つ目か……」
ノールが拾い上げたのは、ボロボロに錆びた金属製の小さな鎖だった。
武志は気になって近寄ってみると、そのサイズ感から首に巻いていたものだと推測する。
「四つ目って、その首飾りみたいなヤツを集めに来たのか?」
「いや、違うよ。これはこの村の住人の遺品さ。四つ目と言ったのは俺達が浄化してやれた村の数だ。やっと、四つ……まだ、四つ目って感じだよ」
自分のことについて何とも思ってないような表情を見せていたノールが、苦しみを帯びた悲しげな表情をしていて、武志はかける言葉を思い悩んだ。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる