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IV
23 伝達とキナ臭さ
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デトハー中央通り、赤髪の女性──クルバの肩に伝書フクロウが舞い降りる。
クルバは伝書フクロウの伝えた情報をそのまま、その場にいた者たちに伝える。
すなわち、ギルドの傭兵であるブッレヤクサとスバード、それにノールとミュレットにもだ。
「キナ臭ぇ話だな、情報の出どころはわかってるのか、クルバ?」
ブッレヤクサは縮れた黒い髪をかきあげると、情報の伝達を終えて飛び去っていく伝書フクロウを目で追いかけた。
「フクロウからの情報によると、そこの青い鎧の騎士がソルの王子様だって話は三か所から出てるみたいね。あと、見かけない服装の男が放火の首謀者だって話も混ざってるみたい」
「三箇所、か。魔都の生き残りからの情報にしちゃあ、ちょっと多いかもな。ソルから逃れてきた者がこの街にいるだなんて俺様は小耳にも挟んじゃいねぇなぁ。なんか噂は聞いてるか、スバード?」
ブッレヤクサに話を振られ、スバードは自分を指さしながら驚く。
「オ、オレは何も知らないッス、ブッレヤクサさん!」
まるで隠し事がバレたかのような反応を見せる少年に、ブッレヤクサは、だろうな、と言い笑った。
「こんなキナ臭ぇ話に素直に従うつもりはねぇんだが、しかしよ──」
ブッレヤクサは手に持つ大きな斧をノールに向けて構える。
「話を聞いてからどこかへ行こうとしてるように見えるが、気のせいかい、あんちゃん? 逃げようなんてしてくれるなよ、捕まえなきゃいけなくなる」
構えた大斧の柄の部分に、ブッレヤクサの手のひらから発生した糸のように伸びた魔素が絡みつく。
「ソルから逃げのびた者がいると言うなら、確かめなければならない」
「王子様扱いは誤魔化す気もねぇんだな。なんだ生き残りに会って、口封じでもするつもりか?」
北の大国ソルが魔素に飲み込まれた大事件の原因は第一王子にあるというのは、他国にも伝わる話であった。
それがどれほどの信憑性があるのかは定かでは無いが、大事件が起きてから数年経った今はむしろその話しか聞かないほどであった。
「馬鹿な、そんなことはしない!」
魔狼にさえ向けなかった鋭い目つきで、ノールはブッレヤクサを睨み返した。
「俺はソルを、魔素から解放したいんだ。逃げのびた者がいると言うのなら・・・・・・」
どうしたいのだろうか、とノールは自問して言葉が詰まってしまった。
謝罪したい、という気持ちはある。
多くの国民が魔素に飲み込まれた。
その原因となったのは、王家だ。
それを謝罪したとして、逃げのびた者に何の救いになるのかとも思う。
言葉を尽くしたところで、あの日ソルにいた者達は魔素に飲み込まれたままだ。
許してくれとは思わない。だが、罰を乞うにはまだ何も成していない、早すぎる段階だった。
「……今夜だけじゃねぇ。この街でのあんちゃんの働きを考えりゃ、こんなタイミングで夜襲を仕掛けるのはどうにもおかしい話だ。ギルドの仕事をコツコツとこなしてから仕掛ける必要なんてねぇわな、そこで積み上げた僅かな信頼なんて一発で吹っ飛ぶ立場だもんな」
「嫌な言い方するね、斧のオジサン。ノールは悪の魔王じゃないんだからね!」
斧を向け、睨み返す。
そんな二人の緊迫した状態に口を挟むミュレット。
手に持った杖をブッレヤクサの後ろで構えるクルバに向ける。
静かに立つ赤髪の傭兵は、ブッレヤクサが動いたならいつでも続くことが出来ると言わんばかりに棍棒を構えていた。
「国ひとつ、しかも大国のソルを魔素に飲まれさせたって噂のヤツなんだぜ。素性がバレれば信頼もクソもねぇって話よ」
「アンタらとやり合う気なんて無い。斧を下げてくれ。ミュレットも、あまり刺激するな」
ノールはブッレヤクサとミュレット双方に、矛を収めろと手を伸ばす。
「オイオイ、俺様を舐めるなよ、あんちゃん。俺様の話をちゃんと聞けってんだ。俺様はあんちゃんが疑われてるこの状況を疑ってるってんだよ。キナ臭ぇと何度も言ってんだろ? だが、下手な動きを見せてくれるなとも言ってるんだぜ。ギルドとしては動かなきゃならなくなるって話をしてるんだ。冷静に判断してくれよ、勝手に動くな」
制止する側はこちらだと圧をかけるブッレヤクサ。
その意図を汲んでノールは手を下げ、視線を送りミュレットの杖も下げさせた。
「話がわかるヤツで助かるぜ、あんちゃん。余計な混乱を招かねぇように近くにいててもらうぜ。俺様達がやらなきゃならねぇのは潰し合いじゃねぇ。協力しての魔狼退治とキナ臭ぇ情報をバラ撒いてる犯人探しだ──」
街に響く魔狼の咆哮。
そこに気を向けた途端、街の北側で大きな爆発が起こった。
「あ、あれは、北門の方ッス、ブッレヤクサさん!」
夜の街を火事の明かりよりも照らす閃光。
驚きの声を上げるスバードの頭に手を置いて、ブッレヤクサは舌打ちを鳴らす。
「クソ野郎共の動きが速ぇな。火事場泥棒狙いなんて、読みが甘かったか」
行くぞ、とブッレヤクサが駆け出す。
それに続いて、クルバとスバードも走り出した。
ノールとミュレットは視線を交わし、頷いてから後を追った。
クルバは伝書フクロウの伝えた情報をそのまま、その場にいた者たちに伝える。
すなわち、ギルドの傭兵であるブッレヤクサとスバード、それにノールとミュレットにもだ。
「キナ臭ぇ話だな、情報の出どころはわかってるのか、クルバ?」
ブッレヤクサは縮れた黒い髪をかきあげると、情報の伝達を終えて飛び去っていく伝書フクロウを目で追いかけた。
「フクロウからの情報によると、そこの青い鎧の騎士がソルの王子様だって話は三か所から出てるみたいね。あと、見かけない服装の男が放火の首謀者だって話も混ざってるみたい」
「三箇所、か。魔都の生き残りからの情報にしちゃあ、ちょっと多いかもな。ソルから逃れてきた者がこの街にいるだなんて俺様は小耳にも挟んじゃいねぇなぁ。なんか噂は聞いてるか、スバード?」
ブッレヤクサに話を振られ、スバードは自分を指さしながら驚く。
「オ、オレは何も知らないッス、ブッレヤクサさん!」
まるで隠し事がバレたかのような反応を見せる少年に、ブッレヤクサは、だろうな、と言い笑った。
「こんなキナ臭ぇ話に素直に従うつもりはねぇんだが、しかしよ──」
ブッレヤクサは手に持つ大きな斧をノールに向けて構える。
「話を聞いてからどこかへ行こうとしてるように見えるが、気のせいかい、あんちゃん? 逃げようなんてしてくれるなよ、捕まえなきゃいけなくなる」
構えた大斧の柄の部分に、ブッレヤクサの手のひらから発生した糸のように伸びた魔素が絡みつく。
「ソルから逃げのびた者がいると言うなら、確かめなければならない」
「王子様扱いは誤魔化す気もねぇんだな。なんだ生き残りに会って、口封じでもするつもりか?」
北の大国ソルが魔素に飲み込まれた大事件の原因は第一王子にあるというのは、他国にも伝わる話であった。
それがどれほどの信憑性があるのかは定かでは無いが、大事件が起きてから数年経った今はむしろその話しか聞かないほどであった。
「馬鹿な、そんなことはしない!」
魔狼にさえ向けなかった鋭い目つきで、ノールはブッレヤクサを睨み返した。
「俺はソルを、魔素から解放したいんだ。逃げのびた者がいると言うのなら・・・・・・」
どうしたいのだろうか、とノールは自問して言葉が詰まってしまった。
謝罪したい、という気持ちはある。
多くの国民が魔素に飲み込まれた。
その原因となったのは、王家だ。
それを謝罪したとして、逃げのびた者に何の救いになるのかとも思う。
言葉を尽くしたところで、あの日ソルにいた者達は魔素に飲み込まれたままだ。
許してくれとは思わない。だが、罰を乞うにはまだ何も成していない、早すぎる段階だった。
「……今夜だけじゃねぇ。この街でのあんちゃんの働きを考えりゃ、こんなタイミングで夜襲を仕掛けるのはどうにもおかしい話だ。ギルドの仕事をコツコツとこなしてから仕掛ける必要なんてねぇわな、そこで積み上げた僅かな信頼なんて一発で吹っ飛ぶ立場だもんな」
「嫌な言い方するね、斧のオジサン。ノールは悪の魔王じゃないんだからね!」
斧を向け、睨み返す。
そんな二人の緊迫した状態に口を挟むミュレット。
手に持った杖をブッレヤクサの後ろで構えるクルバに向ける。
静かに立つ赤髪の傭兵は、ブッレヤクサが動いたならいつでも続くことが出来ると言わんばかりに棍棒を構えていた。
「国ひとつ、しかも大国のソルを魔素に飲まれさせたって噂のヤツなんだぜ。素性がバレれば信頼もクソもねぇって話よ」
「アンタらとやり合う気なんて無い。斧を下げてくれ。ミュレットも、あまり刺激するな」
ノールはブッレヤクサとミュレット双方に、矛を収めろと手を伸ばす。
「オイオイ、俺様を舐めるなよ、あんちゃん。俺様の話をちゃんと聞けってんだ。俺様はあんちゃんが疑われてるこの状況を疑ってるってんだよ。キナ臭ぇと何度も言ってんだろ? だが、下手な動きを見せてくれるなとも言ってるんだぜ。ギルドとしては動かなきゃならなくなるって話をしてるんだ。冷静に判断してくれよ、勝手に動くな」
制止する側はこちらだと圧をかけるブッレヤクサ。
その意図を汲んでノールは手を下げ、視線を送りミュレットの杖も下げさせた。
「話がわかるヤツで助かるぜ、あんちゃん。余計な混乱を招かねぇように近くにいててもらうぜ。俺様達がやらなきゃならねぇのは潰し合いじゃねぇ。協力しての魔狼退治とキナ臭ぇ情報をバラ撒いてる犯人探しだ──」
街に響く魔狼の咆哮。
そこに気を向けた途端、街の北側で大きな爆発が起こった。
「あ、あれは、北門の方ッス、ブッレヤクサさん!」
夜の街を火事の明かりよりも照らす閃光。
驚きの声を上げるスバードの頭に手を置いて、ブッレヤクサは舌打ちを鳴らす。
「クソ野郎共の動きが速ぇな。火事場泥棒狙いなんて、読みが甘かったか」
行くぞ、とブッレヤクサが駆け出す。
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