焼きそばパン大戦争

清泪─せいな

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最終章 焼きそばパン大戦争

第九十二話 四神伝心

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「それで、このミニチュア錫杖を渡されて、どうしたらいいんですか?」

 奈菜から西生家について詳しく聞いたことはなかった。今のうちに訊いてみたい気持ちもあったが、和美はぐっと堪え、花菜に説明を促した。戦争がどうとかと言われて間もないのだ。悠長に話している場合ではないだろう。

「せやね、その説明をちゃっちゃと済ませるか。高城さんにはそのミニチュア錫杖を持って、乃木市の東西南北にある四つの点を巡って欲しいんや」

 花菜は右手で指を四本立てて見せる。

「四つの点?」

「そう、四つの点。高城さん、四神とか四象って聞いたことある? あ、矢附さんは知ってそうやな?」

 和美が首をかしげる横で、矢附は小さく頷いた。

「神道に仏教に続いて、今度は中国系ですか」

 矢附の指摘に、花菜は指を一本だけ残して横に振り、チッチッチッと舌を鳴らす。

「四神が関わるのは、西生家やなくて鬼の方やね。由来に五行とか絡むのは向こうやし。まぁ鬼への対抗から派生したもんと考えれば、西生家と縁がある言い方もできるけど」

 花菜の説明に矢附は感心してうなずいたが、和美はいまいち理解できず「そういうものか」と流すしかなかった。

「東西南北、東は青龍、西は白虎、南は朱雀、北は玄武。それぞれが方角を守護する聖獣や」

「えっと……聖獣に会いに行けってことですか?」

 耳にしたことのある名前が出て、和美はようやく腑に落ちた。龍に虎、炎の鳥に亀。乃木市でそんな聖獣レジェンドモンスターの目撃談は聞いたことがないが、小鬼と同じように何か条件がなければ見えない存在なのだろう。

「いやいや、こんなややこしい事態の最中に、さらにファンタジーぶち込もうなんて思っとらんよ。世の中、鬼ひとつで大混乱やのに、聖獣なんておるとかなったら大騒ぎやろ?」

 守護してくれるなら助かりそうな気もしたが、確かに混乱は避けられない。和美は納得してうなずいた。

「聖獣そのものはおらんけど、それに関わる力を授かるんよ。ファンタジーはファンタジーやけどな」

「力を授かる?」

「せや。そのミニチュア錫杖にちょちょいと力を込めてもらってきて欲しいんよ。最終的には、それを奈菜に渡したって」

 花菜はジェスチャーを交えながら説明を続ける。

「四点の場所やけど、最初はここ――坂進高校や。偶然やなくて、玄武の守護があるからここに建てられたんや。……その辺りの話、鎮魂祭の特集で調べたりした?」

 花菜の言う「鎮魂祭特集」とは、二年D組の展示のことだろう。和美を探している最中に目にしたのかもしれない。

「手伝いましたけど……学校に関して四神の話は出てこなかったと思います」

 資料を隅々まで読んだわけではないが、少なくとも和美の記憶にはなかった。

「そうなん? 別に隠してるわけやないんやけどな。まぁ坂進高校が亀祀ってるわけでもないしな」

 校内に銅像があるわけでもなく、校章にそれらしい意匠もない。

「ともかく、坂進高校ここを最初の地点にして、あとは東でも西でも好きな方から回ればええ。最後にまたここに戻ってきたら完了や」

「他の場所はどこなんですか?」

 和美の問いに、花菜は彼女の手の上にあるミニチュア錫杖を指差した。

「玄武の力を授かったら、自ずと次の場所が分かる仕組みや。焦らんでええよ」

 焦ることなのかと和美は思ったが、どうせさらに聞いても同じ答えが返ってくるだろう。仕方なく「はぁ」と納得したふりを見せる。

「力を授かるにはどうしたらいいんですか?」

「それは、そこにおる元・黒鬼さんに答えてもらおうやないか。なぁ、オッサン?」

 花菜が指を差した先で、齋藤が眉をひそめた。微笑みを引きつらせていた顔が、一転して般若のような険しさを帯びる。

「元、黒鬼……?」

 名前のある鬼と呼ばれていたことは知っていたが、それを色付きの鬼と結びつけて考えたことはなかった。和美も矢附も驚いて、齋藤を見やる。

「名前のある鬼、と呼ばれるともなれば色々調べられるもんだな。しかしもう百年以上も前のことだ。調べるのは大変だったろう?」

「その長生きの秘訣も、玄武に関わるんやろ? 回りくどい会話はもうええから、さっさと高城さんに教えたって」
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