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最終章 焼きそばパン大戦争
第百三十話 ビンで飲むのも良いけどパックで飲むのも美味しいよね
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十分とかからない走行でバンは店舗の前に辿り着いた。白を基調とした建物で大きなガラス張りで覗くことの出来る店内には、見るからに美味しそうな種類豊富なパンが陳列されている。よく見るとサイズ感など和美にとって見慣れたモノであった。
「高城さん、お腹空いてる?」
紗菜はそう和美に聞きながら、シートベルトを外していた。和美の分も、と手を差し伸べてくれたがようやく動けるようになった和美は自分で出来ると遠慮した。
「そう言われると、お腹空いてますね、ものすごく」
バンに設置されてるカーナビに表示されたデジタル時計が昼過ぎであると示していた。戦いが続いたので空腹であることに気は回っていなかったが、そう言えば今日は乃木市内を走り回っているのだ、普段よりお腹が空いていたとして不思議では無い。
「そう、それは良かった。今日坂進高校に届ける分が余っちゃってね」
「え、ウチの高校の購買部で買えるパンって奈菜のお母さんのところから仕入れてるんですか?」
「そうなのよ。高城さんも食べてくれてるのかしら?」
「ハイ、毎日のようにお世話になってます」
それはありがとうね、と微笑みを浮かべ紗菜は車を降りた。和美もそれについて車を降りた。紗菜はバンの後ろに回り込むと、積んでいた商品の入った平べったい形の折りたたみコンテナを引っ張り出して両手で持ち抱えた。
「助けて貰った礼がまだですし、手伝いますよ」
「動けるようになったからって怪我人運んどいて仕事手伝わせてたら、何してんだか意味わからないじゃない。いいから先に店の中に入って待っといてくれない」
紗菜に断られ和美は言われるままに先に店内へと入る。身体を動かせずにいた自分を助けて貰った恩を返したいという気持ちはあるのだが、厚意に対して我を通すのも違うなと従うことにした。
姉の墓がある、ということに加えてそれ以前から和美は乃木市の西側に来ることがあまり無かった。
三日月形をしている乃木市は、南東部に駅がある為にその周辺にショッピングやレジャーなどの施設が集中していて主に買い物などに出かけるとなると南東部の駅周辺か北にあるエル・プラーザになる。小中と学校の校区も分かれてしまうので、西側に友人知人も居なかった。《お手伝い》で訪れたことは一度や二度程度あったが、姉の墓を意識してしまい見回ることも無くすぐ離れてしまっていた。
なので、ライトガーデンという店がここにあるということも和美は初めて知ったのだった。
店内に入ると安らぎを目的としてそうなチルなBGMがかかっていて、香ばしいパンの匂いに満たされていた。
和美は空腹だと気付かされたばかりなので、陳列されている種類豊富なパンを見るや、腹の虫が鳴ってしまった。
「奈菜も、お腹空いてたりすんのかな?」
鳴ってしまったお腹を押さえながら和美は、花菜に頼まれたお使いについて思い出す。
焼きそばパンを妹に届けて欲しい、なんてらしくない依頼だったように思う。らしくない、と言い切れるほど和美は花菜についてよく知らないのだけど。
市の中心で戦う妹に食べ物を差し入れすることぐらい無茶苦茶な跳躍力で移動する花菜なら、和美に頼むより自分でやってしまった方が幾分も早く済むはずだ。
改めて考えても、何故自分にこんなお使いを頼むのだろうと和美は花菜の本意を探りきれずにいた。
「お待たせ、高城さん。とりあえず、まずはこれどうぞ」
数分と待たないうちに紗菜は作業を終えたようで、裏口から入ったのか店内のレジ裏のドアから姿を現した。手には小さい牛乳パックを持っていて、そのひとつを和美に投げ渡した。
「渡してから聞くのもアレなんだけど高城さん、牛乳飲める?」
「ハイ、頂きます」
パックの背面についたストローを飲み口に差して和美は牛乳を吸い上げた。空腹に気を回してなかったのと同様に喉の乾きにも気づいてなかったようで、口の中に染み渡る牛乳が美味しい。
「あ、待っててって言っておいて椅子も用意してなかったわね。ごめんなさいね、アレもコレも後になっちゃって」
紗菜はそう言うと店の奥から小さな丸椅子を持ってきた。和美は遠慮しながらそれを受け取り、座る。子供用の椅子なのか随分背の低い丸椅子だったので、視点がかなり低くなった。自分が幼くなったみたいで不思議な感覚だった。
「たまたま出会った私に、アレもコレもしてもらってばっかりで申し訳ないかぎりです。なんとお礼を言えばいいのかわからないぐらいですよ」
レジカウンターの椅子に座る紗菜を見上げる形になりながら、和美は頭を下げた。
「いいのいいの、そんなに畏まらなくても。それにきっとこの出会いはたまたまってわけじゃないわ。高城さんもきっと西生の使命に巻き込まれた人でしょ?」
紗菜は手に持った牛乳パックにストローを差しながら、ごめんなさいねとそう言葉を付け加えた。
「高城さん、お腹空いてる?」
紗菜はそう和美に聞きながら、シートベルトを外していた。和美の分も、と手を差し伸べてくれたがようやく動けるようになった和美は自分で出来ると遠慮した。
「そう言われると、お腹空いてますね、ものすごく」
バンに設置されてるカーナビに表示されたデジタル時計が昼過ぎであると示していた。戦いが続いたので空腹であることに気は回っていなかったが、そう言えば今日は乃木市内を走り回っているのだ、普段よりお腹が空いていたとして不思議では無い。
「そう、それは良かった。今日坂進高校に届ける分が余っちゃってね」
「え、ウチの高校の購買部で買えるパンって奈菜のお母さんのところから仕入れてるんですか?」
「そうなのよ。高城さんも食べてくれてるのかしら?」
「ハイ、毎日のようにお世話になってます」
それはありがとうね、と微笑みを浮かべ紗菜は車を降りた。和美もそれについて車を降りた。紗菜はバンの後ろに回り込むと、積んでいた商品の入った平べったい形の折りたたみコンテナを引っ張り出して両手で持ち抱えた。
「助けて貰った礼がまだですし、手伝いますよ」
「動けるようになったからって怪我人運んどいて仕事手伝わせてたら、何してんだか意味わからないじゃない。いいから先に店の中に入って待っといてくれない」
紗菜に断られ和美は言われるままに先に店内へと入る。身体を動かせずにいた自分を助けて貰った恩を返したいという気持ちはあるのだが、厚意に対して我を通すのも違うなと従うことにした。
姉の墓がある、ということに加えてそれ以前から和美は乃木市の西側に来ることがあまり無かった。
三日月形をしている乃木市は、南東部に駅がある為にその周辺にショッピングやレジャーなどの施設が集中していて主に買い物などに出かけるとなると南東部の駅周辺か北にあるエル・プラーザになる。小中と学校の校区も分かれてしまうので、西側に友人知人も居なかった。《お手伝い》で訪れたことは一度や二度程度あったが、姉の墓を意識してしまい見回ることも無くすぐ離れてしまっていた。
なので、ライトガーデンという店がここにあるということも和美は初めて知ったのだった。
店内に入ると安らぎを目的としてそうなチルなBGMがかかっていて、香ばしいパンの匂いに満たされていた。
和美は空腹だと気付かされたばかりなので、陳列されている種類豊富なパンを見るや、腹の虫が鳴ってしまった。
「奈菜も、お腹空いてたりすんのかな?」
鳴ってしまったお腹を押さえながら和美は、花菜に頼まれたお使いについて思い出す。
焼きそばパンを妹に届けて欲しい、なんてらしくない依頼だったように思う。らしくない、と言い切れるほど和美は花菜についてよく知らないのだけど。
市の中心で戦う妹に食べ物を差し入れすることぐらい無茶苦茶な跳躍力で移動する花菜なら、和美に頼むより自分でやってしまった方が幾分も早く済むはずだ。
改めて考えても、何故自分にこんなお使いを頼むのだろうと和美は花菜の本意を探りきれずにいた。
「お待たせ、高城さん。とりあえず、まずはこれどうぞ」
数分と待たないうちに紗菜は作業を終えたようで、裏口から入ったのか店内のレジ裏のドアから姿を現した。手には小さい牛乳パックを持っていて、そのひとつを和美に投げ渡した。
「渡してから聞くのもアレなんだけど高城さん、牛乳飲める?」
「ハイ、頂きます」
パックの背面についたストローを飲み口に差して和美は牛乳を吸い上げた。空腹に気を回してなかったのと同様に喉の乾きにも気づいてなかったようで、口の中に染み渡る牛乳が美味しい。
「あ、待っててって言っておいて椅子も用意してなかったわね。ごめんなさいね、アレもコレも後になっちゃって」
紗菜はそう言うと店の奥から小さな丸椅子を持ってきた。和美は遠慮しながらそれを受け取り、座る。子供用の椅子なのか随分背の低い丸椅子だったので、視点がかなり低くなった。自分が幼くなったみたいで不思議な感覚だった。
「たまたま出会った私に、アレもコレもしてもらってばっかりで申し訳ないかぎりです。なんとお礼を言えばいいのかわからないぐらいですよ」
レジカウンターの椅子に座る紗菜を見上げる形になりながら、和美は頭を下げた。
「いいのいいの、そんなに畏まらなくても。それにきっとこの出会いはたまたまってわけじゃないわ。高城さんもきっと西生の使命に巻き込まれた人でしょ?」
紗菜は手に持った牛乳パックにストローを差しながら、ごめんなさいねとそう言葉を付け加えた。
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