焼きそばパン大戦争

清泪─せいな

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最終章 焼きそばパン大戦争

第百三十六話 人々を守る為に

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「・・・・・・その話をするのに、お姉ちゃんの姿で現れるなんてことはしないんだね?」

 希望総合病院で現れた笠沼正太の様に、四神の力であれば誰かを模した姿で現れるなんて容易な話だ。和美が白鬼の力を使い《なかったこと》にしようとした理由として姉のことは何よりも大きな要因であると、霊園に居座る白虎であるなら把握してることは疑う余地もないだろう。

「蒼龍が試練にて笠沼正太の姿を用いたのは、同じく緑鬼として覚醒した小早志真里亞を退治できるのか見極める為だ。これは覚悟を見極める為の申し出ではなく、ただの提案である。今はまだ強要する時ではなく、強制する力も働かない」

 白虎からの威圧感は拭えない。しかし、それは神と崇められる存在自体から和美が勝手に受けているものであり、白虎が和美に対して発しているものではないらしい。

「四方の守護者としてまだ、黒鬼である齋藤さ・・・・・・齋藤が一つの席を担ってるだけだからって話しよね、その強要だとか強制だとかの話って?」

「左様、現状四神の下にいるのは黒鬼のみ。覚醒した緑鬼は蒼龍の影響下にあることを拒み抗っている。白鬼である其方は覚醒にまで至っておらず、赤鬼の力を示すものはおらぬ。一方の守護者だけでは効力は薄く、二方で僅かばかりの強制力が働く。これは世を守護する事への強要ではなく、大いなる力に覚醒した鬼を管理する為の処置である。その管理は三方となればより強くなり、四方で完成し、絶対の物となる」

 玄武の試練の時に齋藤や花菜から聞いた話と合致する。北の守護者として玄武に任命された齋藤と、東の守護者として蒼龍に任命されている小早志は出逢えば殺し合いになる状態らしい。齋藤によれば、やらされたくも無い守護者などに縛られるのが嫌だから、だとか。

「それじゃあ、小早志さんが素直に東の守護者になっていたら私は強制的に西の守護者になっていたということ?」

 和美の問いに、白虎は少し煩わしそうに首を横に振った。

「否、先程も申した通り其方はまだ覚醒にまで至っていない。白鬼の力を使いながらも人として自覚を保っている、ただそれだけに過ぎない。それでは本来守護者足りえない」

「本来?」

「南の守護者──赤鬼の覚醒者が現れた場合は話が変わる。三方が埋れば、鬼の力を使えるという者の脅威への警戒度が上がる。故に早急に残りの守護者としての取り込みが働き、力の覚醒は強制的に行われる」

「覚醒が強制的に? 無理やり人を鬼に飲み込ませるってこと?」

 それでは使える手駒を作ろうしているようで四神が鬼という存在の親玉のようだ、と和美は眉をひそめ白虎の顔を睨んだ。

「その力を《鬼》と名付けたのは人である。人の欲望から生まれた超常的な力を《鬼》という異質なものと定義した。つまり、《鬼》に飲み込まれるのでは無い。覚醒とは──人が己が欲望を受け入れたというだけの話」

 哀願を、憤怒を、興味を、再起を。
 受け入れて人は、超常的な存在へと成り代わる。

「我々四神は、人々から神として崇められて存在する者。故に人々を守護することこそあれど、人々の進化を妨げることはしない。しかし、その進化が人々に害をなすというのであれば、それはまた人々を害より守護するよう願われる者である」

「あくまでも、人間の為の管理であるってこと?」

「左様。あくまで、などと付ける必要も無い。力の見極めの為のシステムであり──そして、力の見極めの為の問いである」

 問い、と白き巨大な虎から言葉が発せられ和美は話が戻ったことを理解する。

「今一度、問おう。其方は望むままに他人を助ける力を手にしたいのか? したくないのか?」

 今ならまだ、自分の意思で道を選べるのだと、白虎は和美に問いを示す。
 選択に強要はしないと、言葉を含んでいることもわかった。

 何故、姉の姿となって目の前に現れてくれなかったのだろう。

 問いに対する答えを決めるのに、姉の姿を見ることは強い理由となりえたかもしれない。
 病院で再び笠沼正太と対峙して、覚悟を決められたように。
 和美の心の内とは別の場所に、理由を求められたかもしれないのに。

「私は──」

 和美の選んだ言葉は、静寂なる霊園に僅かに響いた。
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