最強料理人~三ツ星フレンチシェフの異世界料理道~

神城弥生

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サーペント

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「小島が見えた!皆戦闘準備だ!」

 騎士隊長ケイトの一声で、船の上が緊張で包まれる。船は風を受け、ゆっくりと小島に近づき、その時を待つ。

「……おかしい。何もいないぞ?」

 誰かが呟く。確かに小島の近くにはそれらしい影は見えず、島の上には沢山の人々が手を振り叫んでいた。

「……ハハッ。もしかしたら海に帰ったのかもしれんな」

 騎士の一人がそう呟き、そして皆の緊張は徐々に和らいでいった。

「なんだと!?サーペントはいないのか……」

 いつの間にか、背丈ほどある大きな盾を持ったクロエのみが残念そうに項垂れ水面をみえていた。船は順調に小島に近づき、そして人々を救出するため、騎士たちは小舟を用意し始める。だが何か様子がおかしい。小島の人々は必死に何かを伝えようと叫んでいる様だった。

「おいアドルフ。彼らが何を言っているか聞こえるか?」
「ん?ああ、ちょっと待ってろ」

 アドルフは手に魔力を集め、それを耳にかざす。彼は魔力はあまり多くはないらしいが、その分魔力操作に長けていた。それを上手く使えば、遠くのものが見えたり、遠くに音を聞くことが出来るらしい。

「……、「後ろだ」。後ろ後ろと叫んでいるぞ?」

 アドルフがそう言うのと同時に、クロエが突然船の後ろへと走り出し、そして叫んだ。

「後ろだ!!戦闘準備!!」

 皆が叫ぶクロエを見た瞬間、彼女は船の最後尾から飛び出し、そして巨大な水の塊を受け船の先端の方へ吹き飛ばされる。

「クロエ!?」
 
 テツは反射的に飛び、クロエを受け止めると船の上に着地する。

「いたぞ!サーペントだ!いつの間にか後ろを取られてる!」

 騎士が叫び、そして皆が慌てて武器を手にする。危なかった。クロエがあれを防がなければ、恐らく船はそれだけで大破していただろう。それほどの水量と威力のある攻撃だった。

「クロエ!大丈夫!?」

 メアリーが、慌てて彼女に近づき容態を確認する。だが恐らく彼女は大丈夫だろう。顔は蕩け、「いい一撃だった」と満足そうにしている。とりあえず彼女は幸せそうなので放っておいていいだろう。

「姫!ここは危険です。どうか船内へ」

 レイはメアリーを船内へと連れていき、そして皆は船の最後尾へ。渾身の一撃が外れ、機嫌の悪いサーペントとの戦闘が始まった。

「取舵一杯!船を横にして砲弾をぶち込め!」

 騎士隊長ケイトの指示で、船はゆっくりと進路を変更する。だがそれをサーペントが待ってくれるはずがなかった。口を大きく開けると、人の何倍もある水の塊を二つ飛ばしてくる。

「「人間を舐めるなよヘビが」」

 ケイトとアドルフがそう言うと、最後尾の手すりを使い高く跳躍すると、剣を抜きそれを真っ二つに切断する。

「ほう、腕は鈍ってないようですな」
「ハッ。あんたこそ」

 二人が船に着地をすると同時に、二つに斬られた水の塊は凄まじい水しぶきを上げながら船の脇に着弾した。

 二人の活躍に騎士たちの士気が高まる。だが戦いは始まったばかり、油断はできない。

「さて、どうやってあれに近づくかが問題だな」
「だな。恐らく砲弾だけではあれに当てる事は難しいだろうな」

 またも攻撃を防がれたサーペントは警戒しているのだろう。こちらに近づかずに、低いうなり声を上げこちらを睨んでいた。

 ウミヘビには二種類いる。爬虫類に分類されるタイプと、魚に分類されるタイプだ。

「テツ、お前はどうするべきだと思う?」

 あまりいい結論が出なかったのだろう。ケイトと話していたアドルフは、テツ助言を求めた。

「そうだな。少し試したいことがある。いいか?」

 テツは少しの思考の後、その手を明後日の方向へ向けだす。テツが一体何をするのかと、一同が見守る中、テツはその手に先ほどサーペントが放った水の塊ほどある氷の塊を作り出し飛ばす。

 並みの魔力ではあれ程の氷魔法は作りだせない。その事に驚く一同は、さらに驚くことになる。

 ウミヘビから大きく離れた所に着水した氷の塊の方向に向かって、怒ったサーペントが水の塊を放ったのだ。アイツは何をしているんだ?と疑問に思う一同の中で、テツは一人確信をした。

「お、おいテツ。何一人で納得してんだ?」
「ああ、一つ分かったことがあってな。アイツは魚タイプのウミヘビだって事だ」

 先も述べた通り、ウミヘビには二種類いる。そしてそれにより対処法も変わってくる。

 爬虫類のウミヘビにはヒレがなく、水の中では呼吸ができない。その代わりに尾がオール上になっており、それによってうまく泳ぐことが出来る。その肉は固く、淡白だ。

「でだ。アイツはヒレがあり、その代わり鱗が退化している。。つまりその肉は淡白だが割とジューシーで、あのサイズだ。恐らく実がぷりぷりしていてかなり旨味を持っている」

 嬉しそうに口元を歪ませるテツに対し、それを聞いていた一同は天を仰ぎ同じことを思う。

(((((凄く、どうでもいい)))))

「な、なぁテツさんや。あれが美味い事は分かったが、他に何かないのか?こう、なんかアイツの対処法とかさ」

 呆れてものが言えない騎士ケイトに代わり、アドルフが再度テツに問いかける。

「ん?対処法か?まぁなくはないな。爬虫類方は他の生き物を温度で感じて捕食する。それに対し魚タイプは、目がほとんど見えず、水の動きなどで他の生き物を感知する。あいつが今俺たちの位置を割り出しているのは動く船によってできる波の動きだろう。だからさっき俺がやったみたいに水をいたずらに叩けば、アイツは混乱して俺たちの位置を割り出せなくなるし、アイツを誘導することが出来るんじゃないか?」
「「「「「先にそっちを言え!!」」」」」」

 アドルフやケイトだけでなく、テツと面識のない騎士達も一緒になって叫ぶ。何故味について先に話したのか。テツを知るもの以外は、彼が何故対処法をついでのように話すのか分からなかった。

「ま、まぁだがこれで戦い方がわかったな」
「そ、そうだな。とりあえず助かった」

 そんな事より、あれをどう料理するかだが。と一人語るテツを無視してアドルフとケイトはサーペントにの方に向き直す。サーペントは相変わらずじっとこちらを睨んでいた。船は徐々に横を向き、そして砲弾は完全にサーペントを狙える位置までやってくる。

「聞け!アイツは水の動きでこちらの動きを察知する!それを上手く利用するんだ!」

 ケイトは決断し、そして指示を飛ばす。騎士たちは砲弾をサーペントの周りに標準を定める。

「放て!!」

 ケイトの号令と共に、大砲が放たれる。耳が痛くなるような火薬の音と共に、放たれた砲弾は、サーペントの奥へ、半円で囲うように着弾する。突然背後の水面が揺らいだ事に驚いたのだろう。サーペントは慌てて大砲が着弾しなかったこちらへと下がってくる。サーペントと船の距離は、先ほどの半分ほどまで近づくことに成功する。

「今だ!放て!!」

 すぐさま補充された砲弾をサーペントに向け放つ。その音でサーペントは何とか躱そうと水に潜るが、数発は被弾することに成功した。

 だがサーペントは水の中。船の上に再び緊張感が増し、皆武器の柄を強く握りしめる。
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