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テツの休日2
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「俺の名前はテツだ。地球では35歳、今は20歳だ。よろしくな」
日が真上にあった事もあり、二人は個室付きのレストランに入った。その方が少年も話しやすいだろうし、折角出会った年下の少年に美味いものを食べさせてあげたいというテツの想いもあったからだ。
「ダイスケ、地球では20歳の大学生だった。こっちに来たのは5年前、だからこっちでも今は20歳」
ダイスケは俯きながら、ぽつりぽつりと話し始める。相変わらず声が小さかったので、個室にしてなかったら聞こえなかったな、とテツは苦笑する。
「そうか。5年間も一人で大変だったな。どうやって過ごしてたんだ?」
テツは出来るだけ優しくゆっくりと聞く。こういうタイプには、ちょっとした言動で驚かせ傷つけてしまうからだ。
「さっきの奴らも言ってただろ?薬草採取をしてその日暮らしさ。くそ!折角異世界に気て奴隷ハーレムを作ろうと思っていたのに!あのくそ女神が!」
ダイスケは悔しそうに手を強く握る。奴隷ハーレムという新しいワードが出てきたが、とりあえず無視して話しを進めようとすると、今度は少年から話を振ってきた。
「で?アンタは一体どんなチートを貰ったんだ?どうやったらそんな高価そうな身なりになれる?」
「さっきも言ってたがそのチートってなんだ?」
「はぁ!?くそ女神から貰わなかったか!?チートだよチート!それのおかげでアンタは金を稼いでいるんだろ!?」
彼の話を詳しく聞いて漸く思い出す。「年が少し若返り、少しの力を貰う」そして「なにか欲しい能力を貰う」これがチートというやつらしい。
「ああ、それなら俺はこの「包丁」を貰ったな。よく切れて歯もかけない」
「はぁ!?それだけか?嘘をつくな!どうせ「聖剣」とか「創造魔法」とかもらったんだろ!?それで奴隷ハーレムとか作ってんだろ!?くそ!俺だってこんなはずじゃなかったんだ!英雄になってハーレム作って国を作って王女とかにモテる予定だったのに!」
どうしよう、彼が何を言っているのかよく分からない。あれ?セイケン?政権の事か?政権なんかどうするんだ?ソウゾウ魔法?想像の事か?妄想の事か?妄想魔法ってなんだ?最近の子の流行語か何かか?
手を額に当て、天を仰ぐ。料理しかしてこなかったテツには彼が何を言っているのか分からず、話が長引きそうだと深くため息をつくしかなかった。
「成程な。つまり「ラノベ」ってやつでそれらが「王道」なんだな?」
「なんで日本人なのにラノベしらねぇんだよ。本当におっさんなんだなテツは」
運ばれてきた料理を頬張りながら、ダイスケの話を聞いたテツは漸く彼が何を言っているのか理解できた。
彼が貰ったチートは意外な事に「スマートフォン」だという事だ。見せて貰ったが地球のそれと同様、インターネットに接続す出来るようだ。動力源は電気の代わりに魔力で補えるらしい。どうやらそのラノベでそう言った作品があり、その作品の中ではそれが無敵のアイテムらしいのだが、この世界ではそうではないらしい。
「マップを使えば、近くの魔物や生えてる薬草の位置がわかるんだが、戦闘では全く役に立たない。あのくそ女神に文句言ってやりたいよ」
それでも十分凄いが、と言いたいがテツはそれを飲み込む。折角仲良くなれたんだ。彼を怒らせても何の得にもならない。
彼は地球では太っていて引きこもりだったという。死因は運動不足による心筋梗塞。その為、少し若がえり少しの力を貰っても、元々運動が苦手だった彼が少し力を貰ったところで、こちらの平均と変わらなかったらしい。
彼の目標はとりあえずハーレムを作る事。アドルフと同じだ。チートを使い、奴隷を買ってハーレムを目論んでいた彼は、とりあえずラノベ主人公同様冒険者になった。が、運動が苦手な彼は仲なか成果を上げる事が出来なかった。そこで次に挑戦したのが料理、ラノベでもよく地球の料理を作り、それがウケいつの間にか女の子が寄ってくるといった展開があったらしい。
だがそれはあくまで想像の物だ、とテツは言いたい。そんな事なら三ツ星レストランのシェフにまで上り詰めた自分は何故結婚していないんだと。実際料理ができる男はモテるのかもしれない。だがそれは「ある程度」できる男性だ。本格的にできてしまうと「私より料理が上手い」「作っても美味しいって言われなさそう」などの理由からそもそも敬遠される。
つまり彼は手っ取り早く強くなってお金持ちになってモテたい、そう言いたいのだろう。それを理解するのに既に3時間近く経っている。これがジェネレーションギャップという奴か。
「最後に、大会ってのはなんだ?11時からだ、とか言ってなかったか?」
その話をすると、ダイスケは露骨に嫌そうな顔をする。
「ああ、あれな。料理の大会だよ」
「料理?」
ジュースを木で出来たストローで吸っているダイスケは気が付かないが、テツの目つきが変わる。
「明日あるんだ。料理の大会が。で、昔俺があいつらに話しちまったんだよ。「地球の料理は凄いんだ」って。そしたらそれを覚えていたあいつらが、勝手に大会に申し込んで、しかも予選なしのシード扱いにしやがったんだ!まぁ行かないけどな」
つまり明日11時から決勝戦が始まるという事だ。詳しく話を聞くと、出場者は「流れ人」となっていいて、大会運営側は、ダイスケの事をあまりよく知らないらしい。まぁ子供の嫌がらせといったところだろう。
「ケッ。そんなのに出て大恥かいたら、俺によって来るはずの女たちが寄ってこなくなっちまうよ」
「……なら俺が出る」
「は?」
「なら、俺が出よう。その大会、俺が出る」
馬鹿言うなよ、と言いかけたダイスケは口を開いたまま固まってしまう。何故なら目の前の男性が目をキラキラと光らせて自分を見ているからだ。だが同時に考える。別にいいんじゃないか?別にこいつが負けても自分に何のリスクもない。寧ろ約束は守ったんだ。全て解決じゃないか、と。
「ああ、いいぜ。地球人の力、見せてやれよ」
「任せろ。交渉成立だな」
二人はがっちりと握手をして、話は纏まった。
だが大会は明日だ。今はまだ昼過ぎ、食材も大会側が用意するらしいので、二人はダイスケがいつもやっている薬草採取のクエストに出かけることにした。
「ああ、こっちだ。今日はこっちに沢山生えている」
もう見ることもないだろうと思っていたスマートフォンを片手に、ダイスケはテツを先導する。スマートフォンのマップは「探す対象を正確に入力しなければならない」らしいので、組織の事を調べようとしたテツは断念した。
ネット検索で地球人の知識を調べられ、マップで対象の場所がわかる。十分チートだなと思いながらテツは彼に付いていった。
「なぁ、なんで引きこもっていたんだ?大学でいじめられたか?」
テツの何気ない質問にダイスケは顔を顰めるが、それでも答えてくれた。ちょっと変わった性格をしているが、この子は悪い事ではない。それにこの数時間で大分心も開いてくれたようだ。
「確かに虐められた時期はあったが、そんな大したことじゃなかった。一部のグループから無視されたくらいだ」
じゃあなんで?と問おうと思ったが、その前にダイスケは色々と話はじめた。
「地球ってクソみたいな世界だったろ?子供の頃から朝から晩まで勉強させられて競わされて。友達だって将来つるむことなんてない仮の物。見掛け倒しの友情だろ?何もかも疲れたのさ。頑張ったって無駄。かっこ悪いだけだろ」
彼の両親は毎日喧嘩ばかりだったそうだ。喧嘩は毎日平行線、そして両親の怒りは一人息子のダイスケに向けられた。虐待はなかったが、毎日意味もなく怒鳴られ、学校に行けば仮初の友情に何のためか分からない勉強の毎日。
「両親はかなりいい大学を出てさ。それでも結果、会社の下っ端、安月給に借金だらけ。世の中そんなもんだろ。年収1000万以上貰っている人間なんか日本全体で2%だけ。あとの人間は毎日馬鹿な上司に怒られながらぺこぺこ頭下げてアリンコみたいに働いてる。くだらなくないか?何のために人生の四分の一も使って勉強してるのか。結局努力したって無駄なのさ。そんなかっこ悪い事するなら、引きこもって好きなゲームしてラノベ読んでた方がマシだね」
成程な、そういう理由かとテツは納得する。つまり、彼は早々に諦めてしまったんだ。見限ってしまったんだ。人生に。世界に。大人としてはちゃんと説教して構成させてあげたいが、でも気持ちは分からんでもない。
「なんだよ。他の大人たちみたいに説教しないのか?引きこもって何になる、とか、立派な大人にならないといけません。みたいに。だったらまずは立派な大人ってやつを見せてくれよな。そんな奴見たことねぇよ。TVに映る政治家たちだって悪さばっかりしてんじゃん。芸能人は毎日不倫に麻薬のニュースばかり。どこに立派な人間がいるんだよ。働いてあんなクズになるくらいなら引きこもって犯罪に手を染めない方がまともだ」
最近の子供は聡い。大人たちはよく「最近の子供は」と言うが、寧ろいい年した大人たちより子供たちの方が賢いと思う事は沢山ある。
大人達が必死に人差し指でキーボードを打っているのに対し、子供はすぐに順応しPCを使いこなす。小学生のころからプログラミングを学び使いこなし、外国語だって喋れる。考え方も自由で、その可能性は無限大だ。今の大人たちが夢見た世界だって、彼らが大人になったらあっさり実現させてしまうだろう。
「何黙ってんだよ。ほら、着いたぜ?」
気が付けば辺り一面に葉の尖った特徴的な草が生い茂っていた。これが薬草なのだろう。二人は黙々とそれを切り取っていく。根っこからとったら次が生えなくなるからだそうだ。
彼は悪くない。いや、引きこもり、自分の可能性を否定してしまったことは良くない事だ。彼にだって、自分では知らない何かがあるだろう。人間環境が大事だ。環境で人間の性格なんて簡単に変わってしまう。彼が悪いんじゃない、彼の居た環境がたまたま悪かっただけだ。だが、だからといって諦めてしまうのは良くない。聡いからこそ、頭がいいからこそ、彼には色々見えすぎているのだろう。彼にはかっこいい大人の背中が必要だったんだ。一人、一人だけでいいから、彼に未来を見せてくれる大人が近くにいれば、それだけで彼は変われたんだろう。
だがテツにはうまく彼を説得できなかった。なんて言葉をかけていいのか分からなかった。その日は黙々と薬草を採取し、そしてギルドに足を運んだあと、宿に泊まることにした。
日が真上にあった事もあり、二人は個室付きのレストランに入った。その方が少年も話しやすいだろうし、折角出会った年下の少年に美味いものを食べさせてあげたいというテツの想いもあったからだ。
「ダイスケ、地球では20歳の大学生だった。こっちに来たのは5年前、だからこっちでも今は20歳」
ダイスケは俯きながら、ぽつりぽつりと話し始める。相変わらず声が小さかったので、個室にしてなかったら聞こえなかったな、とテツは苦笑する。
「そうか。5年間も一人で大変だったな。どうやって過ごしてたんだ?」
テツは出来るだけ優しくゆっくりと聞く。こういうタイプには、ちょっとした言動で驚かせ傷つけてしまうからだ。
「さっきの奴らも言ってただろ?薬草採取をしてその日暮らしさ。くそ!折角異世界に気て奴隷ハーレムを作ろうと思っていたのに!あのくそ女神が!」
ダイスケは悔しそうに手を強く握る。奴隷ハーレムという新しいワードが出てきたが、とりあえず無視して話しを進めようとすると、今度は少年から話を振ってきた。
「で?アンタは一体どんなチートを貰ったんだ?どうやったらそんな高価そうな身なりになれる?」
「さっきも言ってたがそのチートってなんだ?」
「はぁ!?くそ女神から貰わなかったか!?チートだよチート!それのおかげでアンタは金を稼いでいるんだろ!?」
彼の話を詳しく聞いて漸く思い出す。「年が少し若返り、少しの力を貰う」そして「なにか欲しい能力を貰う」これがチートというやつらしい。
「ああ、それなら俺はこの「包丁」を貰ったな。よく切れて歯もかけない」
「はぁ!?それだけか?嘘をつくな!どうせ「聖剣」とか「創造魔法」とかもらったんだろ!?それで奴隷ハーレムとか作ってんだろ!?くそ!俺だってこんなはずじゃなかったんだ!英雄になってハーレム作って国を作って王女とかにモテる予定だったのに!」
どうしよう、彼が何を言っているのかよく分からない。あれ?セイケン?政権の事か?政権なんかどうするんだ?ソウゾウ魔法?想像の事か?妄想の事か?妄想魔法ってなんだ?最近の子の流行語か何かか?
手を額に当て、天を仰ぐ。料理しかしてこなかったテツには彼が何を言っているのか分からず、話が長引きそうだと深くため息をつくしかなかった。
「成程な。つまり「ラノベ」ってやつでそれらが「王道」なんだな?」
「なんで日本人なのにラノベしらねぇんだよ。本当におっさんなんだなテツは」
運ばれてきた料理を頬張りながら、ダイスケの話を聞いたテツは漸く彼が何を言っているのか理解できた。
彼が貰ったチートは意外な事に「スマートフォン」だという事だ。見せて貰ったが地球のそれと同様、インターネットに接続す出来るようだ。動力源は電気の代わりに魔力で補えるらしい。どうやらそのラノベでそう言った作品があり、その作品の中ではそれが無敵のアイテムらしいのだが、この世界ではそうではないらしい。
「マップを使えば、近くの魔物や生えてる薬草の位置がわかるんだが、戦闘では全く役に立たない。あのくそ女神に文句言ってやりたいよ」
それでも十分凄いが、と言いたいがテツはそれを飲み込む。折角仲良くなれたんだ。彼を怒らせても何の得にもならない。
彼は地球では太っていて引きこもりだったという。死因は運動不足による心筋梗塞。その為、少し若がえり少しの力を貰っても、元々運動が苦手だった彼が少し力を貰ったところで、こちらの平均と変わらなかったらしい。
彼の目標はとりあえずハーレムを作る事。アドルフと同じだ。チートを使い、奴隷を買ってハーレムを目論んでいた彼は、とりあえずラノベ主人公同様冒険者になった。が、運動が苦手な彼は仲なか成果を上げる事が出来なかった。そこで次に挑戦したのが料理、ラノベでもよく地球の料理を作り、それがウケいつの間にか女の子が寄ってくるといった展開があったらしい。
だがそれはあくまで想像の物だ、とテツは言いたい。そんな事なら三ツ星レストランのシェフにまで上り詰めた自分は何故結婚していないんだと。実際料理ができる男はモテるのかもしれない。だがそれは「ある程度」できる男性だ。本格的にできてしまうと「私より料理が上手い」「作っても美味しいって言われなさそう」などの理由からそもそも敬遠される。
つまり彼は手っ取り早く強くなってお金持ちになってモテたい、そう言いたいのだろう。それを理解するのに既に3時間近く経っている。これがジェネレーションギャップという奴か。
「最後に、大会ってのはなんだ?11時からだ、とか言ってなかったか?」
その話をすると、ダイスケは露骨に嫌そうな顔をする。
「ああ、あれな。料理の大会だよ」
「料理?」
ジュースを木で出来たストローで吸っているダイスケは気が付かないが、テツの目つきが変わる。
「明日あるんだ。料理の大会が。で、昔俺があいつらに話しちまったんだよ。「地球の料理は凄いんだ」って。そしたらそれを覚えていたあいつらが、勝手に大会に申し込んで、しかも予選なしのシード扱いにしやがったんだ!まぁ行かないけどな」
つまり明日11時から決勝戦が始まるという事だ。詳しく話を聞くと、出場者は「流れ人」となっていいて、大会運営側は、ダイスケの事をあまりよく知らないらしい。まぁ子供の嫌がらせといったところだろう。
「ケッ。そんなのに出て大恥かいたら、俺によって来るはずの女たちが寄ってこなくなっちまうよ」
「……なら俺が出る」
「は?」
「なら、俺が出よう。その大会、俺が出る」
馬鹿言うなよ、と言いかけたダイスケは口を開いたまま固まってしまう。何故なら目の前の男性が目をキラキラと光らせて自分を見ているからだ。だが同時に考える。別にいいんじゃないか?別にこいつが負けても自分に何のリスクもない。寧ろ約束は守ったんだ。全て解決じゃないか、と。
「ああ、いいぜ。地球人の力、見せてやれよ」
「任せろ。交渉成立だな」
二人はがっちりと握手をして、話は纏まった。
だが大会は明日だ。今はまだ昼過ぎ、食材も大会側が用意するらしいので、二人はダイスケがいつもやっている薬草採取のクエストに出かけることにした。
「ああ、こっちだ。今日はこっちに沢山生えている」
もう見ることもないだろうと思っていたスマートフォンを片手に、ダイスケはテツを先導する。スマートフォンのマップは「探す対象を正確に入力しなければならない」らしいので、組織の事を調べようとしたテツは断念した。
ネット検索で地球人の知識を調べられ、マップで対象の場所がわかる。十分チートだなと思いながらテツは彼に付いていった。
「なぁ、なんで引きこもっていたんだ?大学でいじめられたか?」
テツの何気ない質問にダイスケは顔を顰めるが、それでも答えてくれた。ちょっと変わった性格をしているが、この子は悪い事ではない。それにこの数時間で大分心も開いてくれたようだ。
「確かに虐められた時期はあったが、そんな大したことじゃなかった。一部のグループから無視されたくらいだ」
じゃあなんで?と問おうと思ったが、その前にダイスケは色々と話はじめた。
「地球ってクソみたいな世界だったろ?子供の頃から朝から晩まで勉強させられて競わされて。友達だって将来つるむことなんてない仮の物。見掛け倒しの友情だろ?何もかも疲れたのさ。頑張ったって無駄。かっこ悪いだけだろ」
彼の両親は毎日喧嘩ばかりだったそうだ。喧嘩は毎日平行線、そして両親の怒りは一人息子のダイスケに向けられた。虐待はなかったが、毎日意味もなく怒鳴られ、学校に行けば仮初の友情に何のためか分からない勉強の毎日。
「両親はかなりいい大学を出てさ。それでも結果、会社の下っ端、安月給に借金だらけ。世の中そんなもんだろ。年収1000万以上貰っている人間なんか日本全体で2%だけ。あとの人間は毎日馬鹿な上司に怒られながらぺこぺこ頭下げてアリンコみたいに働いてる。くだらなくないか?何のために人生の四分の一も使って勉強してるのか。結局努力したって無駄なのさ。そんなかっこ悪い事するなら、引きこもって好きなゲームしてラノベ読んでた方がマシだね」
成程な、そういう理由かとテツは納得する。つまり、彼は早々に諦めてしまったんだ。見限ってしまったんだ。人生に。世界に。大人としてはちゃんと説教して構成させてあげたいが、でも気持ちは分からんでもない。
「なんだよ。他の大人たちみたいに説教しないのか?引きこもって何になる、とか、立派な大人にならないといけません。みたいに。だったらまずは立派な大人ってやつを見せてくれよな。そんな奴見たことねぇよ。TVに映る政治家たちだって悪さばっかりしてんじゃん。芸能人は毎日不倫に麻薬のニュースばかり。どこに立派な人間がいるんだよ。働いてあんなクズになるくらいなら引きこもって犯罪に手を染めない方がまともだ」
最近の子供は聡い。大人たちはよく「最近の子供は」と言うが、寧ろいい年した大人たちより子供たちの方が賢いと思う事は沢山ある。
大人達が必死に人差し指でキーボードを打っているのに対し、子供はすぐに順応しPCを使いこなす。小学生のころからプログラミングを学び使いこなし、外国語だって喋れる。考え方も自由で、その可能性は無限大だ。今の大人たちが夢見た世界だって、彼らが大人になったらあっさり実現させてしまうだろう。
「何黙ってんだよ。ほら、着いたぜ?」
気が付けば辺り一面に葉の尖った特徴的な草が生い茂っていた。これが薬草なのだろう。二人は黙々とそれを切り取っていく。根っこからとったら次が生えなくなるからだそうだ。
彼は悪くない。いや、引きこもり、自分の可能性を否定してしまったことは良くない事だ。彼にだって、自分では知らない何かがあるだろう。人間環境が大事だ。環境で人間の性格なんて簡単に変わってしまう。彼が悪いんじゃない、彼の居た環境がたまたま悪かっただけだ。だが、だからといって諦めてしまうのは良くない。聡いからこそ、頭がいいからこそ、彼には色々見えすぎているのだろう。彼にはかっこいい大人の背中が必要だったんだ。一人、一人だけでいいから、彼に未来を見せてくれる大人が近くにいれば、それだけで彼は変われたんだろう。
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