Another Of Life Game~僕のもう一つの物語~

神城弥生

文字の大きさ
34 / 215

再びクマさん

しおりを挟む
「さてさて、それじゃーしゅっぱーーつ!!」

 僕ら五人に加えレヴィのMr.にテイラーの8人でパーティを組み第二の街クロス町に向かう。

 クロス町は宿屋が中心の街である。クロス町の奥には漁業が盛んなボーズ街、そしてこの国の王都パラードがある。それに加え始まりの街フェラールの3つの街をつなぐのがクロス町である。 
 町の規模は小さく必要最低限の店しかないとのこと。

 他のプレイヤーはクロス町に少しずつ到達しだしているが武器の強化や食料調達などをするために結局フェラールに戻ってきている。しかし他のプレイヤーはいい武器に出会えずそれ以上進めてないらしい。

 原因はまずいい生産プレイヤーに出会えてないこと。そしてGが足りないの2つだ。

 現地人に頼むとプレイヤーより高く、始まりの街には初心者用の武器しか作れないものばかりだ。プレイヤーもまだクマさんの装備を扱えるものは少なく、扱えたとしても知り合いなどの依頼しか受けていない。

 理由は、例えば一人ができて戦闘プレイヤーがそこに集まりすぎると他の生産プレイヤーからねたまれる。仕方のないことといえば仕方のないことなのだが、そこは人と人。必ずトラブルが生じる。

 なので生産者は客を選ぶ。作った武器は.取引掲示板で、オークション形式で行われる。だがまだ出回っている素材が少ないためいい武器が作られていない。まぁまだ始まって1週間たっていない。こんなものか。


 そんな生産者の現状を聞きながら歩く。しかし……。

「なぁ、皆強くなりすぎじゃないか?」

「えへへー!一昨日頑張ったからね!」
「そうよ。ウィルにいろいろ買ってあげるためにね」
「ん。ウィルの為なら頑張れる」
「そういうこと。感謝しなさいよ?」

 ありがたいが、その代償がこれからずっと料理を任されるのかと考えると素直に感謝できない。

 4人はかなりレベルが上がり、アイリスに限っては僕より上だ。これでも僕Lv30超えのカバうさぎ倒したんだけどなぁ……。
 フォレストウルフたちは一撃で4人に虐殺されていった。


「ははっ。ほんと仲いいね。君たちは!兄弟と幼馴染だっけ?うらやましいなー」
「……確かにな」
「え、えっと。私もうらやましいです」
「皆は兄弟とかいないの?」
「こら。アイリス。すみません皆さんマナー違反でしたね」
「大丈夫よ。他の人たちに言わなければ。私は弟がいるけど生意気でねぇ。仲もよくないし、今一人暮らしだからもう2年くらいあってないし」

 レヴィは大学生だそうだ。気が強いし、もしかしたら弟さんも同じなのかもしれない。

「聞いてよ。それに「ゲームばっかりしてないで家事の手伝いしろ」ってうるさいのよ?お前は母親かっての。姉に口答えしてんじゃないわよ。全く」

 僕は弟さんに一票だ。クリスとアイリスは聞こえないふりをしているみたいだ。

「……俺はここ十年山にこもっている。家族はもういないから気は楽だがお前らを見ていると家族を思い出す」

 重い。重いよMr.。

「わ、私は妹がいるんじゃ、いるんだけど。す、すっごいギャルで性格きつくなっちゃって。あんまり帰ってこないし、ほとんど話さないかな」

 こちらも微妙に重い。

「それよりテイラーはそんな性格じゃこういうゲームは大変じゃないの?」
「う、うん。でもこの性格を直したくって。それでゲームなら平気なんじゃないかってレヴィが誘ってくれて……」

 二人は同じ大学生だそうだ。そこで一人でおろおろしていたテイラーにレヴィが声かけたそうだ。

「だってこの子門の前の隅っこで頭から鞄を被ってうずくまってたのよ?みんな怖がって声かけないし。私も初めはそういうプレーかと思ったけど近づいて見たら鳴き声が聞こえたから話しかけたの。今思えばおかしな話よね!」

 今じゃなくてもおかしな話だ。鞄を頭から被るプレーなど聞いたことないぞ。

「ち、ちょっとレヴィ!その話はしないでって!」
「あらいいじゃない。可愛らしいエピソードよ。私もその話だけで日本酒ひと瓶は飲めるわよ」

 レヴィはドsなんだろう。テイラーをいじってる時イキイキとしている。
 一方テイラーはドmだ。いじられてどこか嬉しそうだ。


「みんな、そろそろだよー!」

 先頭にいたアイリスが声をかけてくる。数日ぶりなのに凄く久しぶりなきがする。あれから強くなった。大丈夫。自分に言い聞かせる。

 僕らは森のクマさんのいるエリアに来ていた。

 街の移動は、エリアボスを一度倒すと、エリアボスと戦わずに進める安全ルートが出現する。稀に安全ルートがない場所もあるが。

 花畑が見えてきてテイラーは感動している、が、それもつかの間、花畑は消え戦闘フィールドとなる。

「久しぶりだな。クマさん」

 エリアボスはパーティメンバーの人数によって強さが変わる。あの時よりLvが10近く上がっている。しかし非戦闘員が3人いてうち一人は武器すら持っていない。持っているのは裁縫道具だけだ。

 今なら楽に勝て、非戦闘員3名の経験値稼ぎが目的だ。

「ねぇ。みんなクマさん装備なんだからフードかぶっていれば仲間だと勘違いして襲ってこないんじゃない?」

そんなアホな発想は捨ててくれ。

「いいかも!!お兄ちゃんやってみようよ!!

お兄ちゃんはやりません。

「グアァアァァァ!!」

あほなこと言ってたらクマさんが吠え出した。真剣勝負の前にふざけてたらそら怒るわ。

「行くよ。フォーメイションKM!」

それKUMAでしょ絶対。まじでやる気か?

「くぅーーん、くぅーん、だよ。クマさん!」

 ……。

「グォォォオオ?……クンクン」

 クマさんがアイリスに気づいて近づき、匂いをかぐ。

 一同息をのみ、その様子を見守る。

 クマさんはアイリスの周りを一周する。

 クマさんは考えている。

 クマさんは閃いた。

 クマさんは器用に、そして丁寧にアイリスのフード脱がす。

 クマさんとアイリスの目が合った。

 アイリスはクマさんに微笑んだ。

 クマさんも微笑んだ。

 クマさんはアイリスを張り手した。

 アイリスは「ぴゃ」と声をあげ吹き飛んだ

「グァァァッァァァ!!!」

 クマさんの遠吠え。

「さぁ、戦闘開始だ」

 こうしてクマさんとの戦闘が始まった。

 クマさんがこちらに走ってきた。皆が散開し、僕がギリギリまでひきつけ飛び蹴りをかわす。

 うん。見切りと身体強化、ダッシュスキルが育っているおかげで余裕をもってかわせる。

 そのすきにエリーゼが死にかけているアイリスを治し、クリスとエリザベスはアイリスを説教する。

 説教する時間は死ぬ気で作るから、しっかりと頼む。


 クマさんの飛び蹴りはだんだん慣れてきた。2.3度かわした後スレ違い際、剛力とスラッシュをする。一本目のHPが4割減る。

 よし、前よりダメージが多い。

 二度、繰り返したところでHPゲージが二本目に入る。

 こっからが本番だ。

 説教が終わった4人が帰ってくる。

「さ、さぁ仕切り直そう!!行くよクマさん。」

 アイリスは涙目で剣を構える。とりあえず頭を撫でておく。実際ちょっと面白かってからな。

 アイリスは嬉しそうに微笑む。よし大丈夫そうだな。

 クマさんがこちらに来る。僕らは散開、相変わらず僕狙い。

 見切りとダッシュを発動させできるだけひきつけよける。

 ……見える!!

 今度はしっかり見える。

 前回のぶれて見える手を勘でよけるのとは違う。上から振り下ろされる手を一歩下がりよけ、右からくる手を頭を下げてよける。

 その時クマの後頭部にファイアーボールが当たり爆発、弓が首に刺さる。そのすきにアイリスが剛力、魔力剣で背中を切る。クマさんは思わず叫び振り返ろうとする。
 僕は振り返ろうとする横腹を剛力、魔力剣で切る。

 クマさんは思わず膝をつく。

 そこを早斬りで左右の足の付け根を僕とアイリスで切る。クマさんは両手足をつ苦しそうに頭を左右に振る。
 HPバーが一本に入る。

 するとそこに大きなハンマーがクマさんの顔を左右からたたきつける。Mr.とレヴィだ。剛力を使った攻撃はHPを2割ほど削る。

 あれはひどい。

 するとクマさんは突然倒れる。頭上に気絶の文字が。皆と目が合う。

 二ヤリと笑いあう。

集 団リンチが始まる。


 こうして二度目のクマさん退治は圧勝で幕を閉じた。



「じゃあ今日はありがとね。すごく楽しかったわ」
「……うむ。感謝する」
「あ、ありがとね。わ、たしも楽しかっちゃよ」

 スルーするのが大人だ。

「いえいえ、こちらも楽しかったです。皆さんはこのままこの町で?」

「いいえ。またフェラールに戻るわ。あっちの方が鍛冶場の設備がいいのよ」

「そう。ならまた何かあったら連絡するわ」
「またねー!楽しかったよ!!」
「ん。またよろしく」
「またね。この前話した下着の方もよろしくね」

「わ、わかりました。がんんばります!」

 僕らは無事クロス町にと到着し、転移ポータルに登録するとレヴィたちは転移していった。

「また下着頼んだんだね」
「まぁね。スケスケなのをいっぱいね。今度着て見せてあげる」
「いえ、結構です」
「お兄ちゃん空腹度が表示されたから料理の方よろしくね!」
「ん。楽しみ」
「ちなみに私たちも下着買ったから見てね?」

 これから色々大変そうな予感がする……。

 そんな事を感じながらダイブアウトした。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

処理中です...