Another Of Life Game~僕のもう一つの物語~

神城弥生

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サバイバル島15

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 そこは鏡の迷路だった。鏡に囲まれた部屋だった。鏡を使った迷路だった。

 いたるところに僕がいて、いたるところに卍さんがいて、いたるところにフクチョーがいて、いたるところに座長さんがいた。

 僕が動くと鏡の中の僕も動くし、鏡の中の僕が動くと僕も動いている。

 僕が止まると鏡の中の僕も止まるし、鏡の中の僕が止まると、僕は動く。

 ん?

 今ずれたか?

 いやいや、そんなはずはない。試しに走ってみる。鏡の中の僕も走る。急停止してみる。鏡の中の僕は急停止して、あ、転んだ。

・ミラーゴースト LV49

 鏡ん中にいた僕はモンスターだった。

「ウィルさん!!貴方はモンスターだったのですね!?だと思ってました!!」
「だとしたら病院に行った方がいいぞ?僕は人間だ。あっちはモンスターみたいだけど。これどうやって倒すんだ?」
「弓を射ってみればわかります!!「インパクトショット」!!」
「あ。避けられた…。ってうお!?なんだ!?」

フクチョーが射った矢は鏡の中に入ったかと思ったら、後ろの鏡から出てきてまた前の鏡に入っていく。
無限ループをしているみたいだ。

「これどうするんだ?」
「ほっときましょう?」
「そうやな。そのうち止まるやろ。」
「せっかく放った矢が。あ。」

 鏡の中の僕は転んでいたが、ゆっくりと立ち上がり、矢に当たって消えていく。

「「「「……」」」」
「アイツなんだったんだ?」
「なんかよく分からへん存在やったな」
「モブってやつですかね?」
「脇役ですか。まるでウィルさんみたいですね」
「誰が脇役だ。お前はいちいち僕を傷つけないと気が済まないのか?」
「こんなもので傷つくなんて豆腐メンタルなのですね。冷ややっこメンタルなのですね。湯豆腐メンタルなのですね」
「それは全部同じ素材だ。僕はそこまでメンタル弱くはないぞ」
「どうだか。先ほどまでビービー泣いていたのはどこのどいつですか?」
「泣いてない。勝手に僕の過去を変えるな」
「では問題です」
「いきなりなんだ?まぁいいや。ドンとこい」
「パンツの略はパンティ。ブラの略はブラジャー。では、「自分はかわいそうな人アピールがすごい人」を指すメンヘラは何の略?」
「例えが例えになっていないが。「メンタルヘルス」の略語だろ?もしかして僕のことを言いたいのか?」
「正解です!!」
「腹立つクイズだな。何ポーズ決めて「正解です」って言ってんンだ。どうあって僕を豆腐メンタルにしたいみたいだな」

 だいたい何故パンティとかブラを例えに出した。関係ないだろ?言いたかっただけか?

「そう言えばパストとパンストって似てますね」
「急に何言ってんだ?「過去」と「パンティストッキング」を一緒にするな」
「英語の授業で「My past」と言われたとき「私はパンストです」って訳して皆に笑われた記憶があります」
「だろうね。そんな間違い初めて聞いたぞ。それこそ変えたい過去だな」
「私はパンストです。違う!!私はパンストが好きな女子なんです!!」
「何の告白だ。何の怒りだ」
「パンストを履いた女子を襲ってパンストを破ってやりたいのです!!」
「もっと変態になったぞ?」
「これ、セクハラ協会のテストに出ます」
「どこの部分が?どんなテストだ」
「因みにテストを受けるのに10万円かかります」
「高すぎだろ。国家資格でもあるまいし」
「テロテロ代がかかるので」
「だからテロテロ代ってなんだ。お前の話はめちゃくちゃだな」

 もうわけわからない。頭が痛くなってくる。

「いいなフクチョー。ウィルさんとあんなに仲良くなって」
「だからって今話に入っていったらあかんで?テロテロされるで?」

 しませんよ。

 というか座長さんはテロテロが何かわかってるんですか?

 その後僕らは迷路を進んでいった。

 鏡は2枚が対になっていることが分かった。どこかに入ると、その近くのどこかの鏡から出てくる。変わった仕組みの迷路だな。

 攻略にはなかなか手間取っていた。

 そこら中に座長さんと卍さんが映っている為、フクチョーが興奮して鼻血を出し倒れたり、思わず抱き着こうと駆け出し、しかしそれは鏡でどこかに行ってしまい探すのに手間取ったりと・・・。

 そして僕らは部屋を一周してしまった。

「また出口がないな」
「ということはどこかの鏡がどこかに通じているってことですかね?」
「そうなるなぁ。これ一個一個調べるの大変やで?」
「何かヒントはありませんかねぇ」

 4人で悩む。

 部屋には鏡がだらけでそれ以外の家具一つ見当たらない。最初に入ってきた鏡は玄関ホールにつながっているし。それ以外の正解の鏡といわれても200枚以上はあるもんな。

 僕はふと自分の映っている鏡を見る。

 もしかしたら。

「なぁ。あのミラーゴーストはどっから入ってきたんだ?」
「最初からあそこにいたのでは?」
「いや、そんなことあらへんやろ。鯛かに最初はウィルさん自身が映っていたで?」
「なるほど。つまり何が言いたいんですか?」
「なんで一回わかったフリをした?つまりいつの間にか鏡に映っていた僕は僕ではなくなっていて、モンスターになっていた。ではあのモンスターはどこから来たのか、という話になるだろ?」
「つまりあのモンスターはどこか別の部屋からやってきたって事ですか?」
「なら、あのモンスターが現れた鏡を探せばいいという事やな!?」
「なら答えは簡単ですね!!よくやりましたウィル!たまには使えますね!!」
「フクチョーよりはな」
「何ですと!?喧嘩を売っているなら買いますよ!!」

 フクチョーは短い腕を必死に使いシャドーボクシングを始めた。この人本当に年上なのだろうか?

 僕らは急いで先ほどのモンスターが現れたとされる鏡に触れる。するとこの部屋に入ってきた時と同様に鏡に吸い込まれていき、景色が歪む。

 次の部屋は長い廊下のようだ。

「違う!!そっちじゃない!!」
「馬鹿!!そっちは、うぁああああ!!」
「クソ!!またか、がはっ」

 廊下の先の方にプレイヤーが5人ほどいたが、次々に壁や天井から飛んできた矢に刺さって死に戻りぢていく。

「トラップ部屋か?」
「そうみたいですね」
「せやな。気をつけて進まんと」
「大丈夫です!!私が付いてます!!だから安心、とまぁふぁ!?」

 フクチョーが一歩歩き出した瞬間、足元にあったワイヤーを踏んでしまい横から矢が飛んでくる。

 何とかよけたみたいだが、酷いよけ方だった。

「ふう。危なかったですね」
「おい。本当に危なかったぞ?あの矢かなり太いぞ?」
「あんな矢に刺される私ではありません!!私の初めてはまだまだ渡しませんよ!?」
「刺されてしまえばよかったのに」

 フランジェシカといいこいつといい、変態の脳みそはどうなってんだ?

 僕が先頭を歩く。

 僕はジィジとの訓練でこういったリアルな罠なら解除できるように学んでいる。

 魔法の罠なら無理だが。

 「空間把握」も使い神経を研ぎ澄ませる。

「そこレンガが出っ張っているところ踏むなよ?下にワイヤーが通ってる」
「それは押すな押すな的なあれですか?芸人のテンプレってやつですか?」
「あんたは踏んで死に戻りしろ」
「なんてこと言うんですか!?可愛いレディに向かって!」
「あーはいはい。可愛いですねぇ」
「え?本当ですか?なんだか照れますね」
「チョロインかお前は。いや、ただのアホか」
「ひどい!!ドイヒーです!!」
「今のはフクチョーが悪いで?」
「というかウィルさんはなんでそんなことまでわかるんですか?確かにレンガは見ればわかりますが、下のワイヤーまではわかりませんでしたよ?」

 卍さんが鋭いところを突いてくる。

 スキルの詮索はゲームではマナー違反なんだがなぁ。

 どうするか。

「そう言えば最初の時にも「念話が通じない」って言ってはったなぁ・・・。」
「スキルですね!?私たちの知らないスキルですね!?言いなさい!吐きなさい!教えなさい!!」
「なんだその3原則みたいな言い方は。スキルの詮索はよくないですよ?」
「そやったな。今のは聞かんかった事にしてくれへん?」
「何でですか!?この男が知っていて私が知らないことがあるのは納得いきません!!言わないとこのワイヤー踏みますよ!?踏んでしまいますよ!?」
「いいけど、それたぶん踏んだ人しかダメージ受けないから」
「と~め~て~!!冗談です!!止めてください!!そんな寂しいこと言わないで下さい!!」
「フクチョーちゃん。だんだんキャラがおかしくなってるわよ?」

 僕らはフクチョーを無視して先に進む。罠は合計30もあった。なんて質の悪い部屋だ。

 そおの後の部屋も、罠が多く、僕らは攻略にとても苦労した。 階段を上ると岩が転がってきたり、落とし穴があったり、天井が落ちてきたり。

「はぁはぁ。ここで最後の部屋だといいな」
「はぁ。それもう5回は聞きましたよ?」
「ほんまウィルがいなかったら何回死に戻りしている事か」
「ほんとです。さすがウィルさんです」

 そして僕らは大きな扉を開ける。

 そこではすでに戦闘が始まっていた。

・ケロケロケロべロス  LV84

「お兄ちゃん!?」
「ウィル!!無事だったのね!!」
「ん。ウィル助けて!!」
「早く来て!!さすがに厳しいわ!!」
ーーーーーーーーーーーー
特殊フィールドボスに遭遇しました。

これより「ケロケロケロべロス」との戦闘を開始します。

尚この戦闘はモンスターを倒すか、プレイヤーが死亡するまでこのフィールドからは出られません。

頑張ってください。

ーーーーーーーーーーーーーー
 こうして僕らはこの城のボスとの戦闘を開始するのだった。

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