Another Of Life Game~僕のもう一つの物語~

神城弥生

文字の大きさ
192 / 215

集結

しおりを挟む
「「国」とは人です!!」
「そうね。「法」とは願い!そして「国」は国民だわ!」

 アレクサンドラ達はまっすぐアレンを見て答える。辺りに数秒の静寂が訪れ、とうとうアレンがゆっくりと口を開く。

「ふふ。フォフォフォ!!「国」とは「人」か!!フォフォフォ!!若い!若いのぉ!!」

 その笑いがアレンの気持ちを動かせたのかどうかはまだ僕には判断がつかなかった。

「ふふ、すまんすまん。して、その答えにたどり着いた理由を聞いてもいいかの?」
「はい。まずは俺から。俺はこの旅で沢山の事を学びました。国に裏切られ、兵士に追われ絶望もしました。ですが俺たちは今もここに立っている。それは「カンパニー」の皆さんがいてくれたからだと思ってます。」

 アレクサンドラは僕らを見まわし力強く頷く。

「沢山の兵士を失いました。沢山戦いました。沢山追われました。人の死を見ました。俺は一人だったら何もできませんでした。ですが仲間がいて道を示してくれ、そこから沢山の人に触れ大きな輪が今できようとしてます。人ひとりの力なんかちっぽけな物でした。ですが、それが大きく繋がって一つの輪になり、やがてそれが国になるんだと感じたからです」

 アレクサンドラはゆっくりと、はっきりとそう答える。

「次は私ね。私は兵士も国もただのシステムのようにとらえてました。ですがそれは間違ってました。「国」はただの集合体で、沢山の人が居て、沢山の考え方ががって初めて「国」ができるのだと。確かに間違った方向を向いてる人もいます。でもそう言う人もひっくるめて、皆で未来を見つめそれが繋がり「国」が出来て未来に進めるのだと思います。沢山の人がより良い未来を願い、それが受け継がれ、皆が幸せになれる様に「法」が存在し願う。人一人一人があって初めて「国」が成り立つのだと、そうこの旅の中で感じました」

 エミリアは澄んだ声で、しかしその声ははっきりと聞こえ、心に響くものがあった。

 二人の答えはこれ以上ない素晴らしいものだろう。アレンは髭を撫でながら何度も頷いてから答える。

「ふむ。まだまだ若いな。だが悪くない。少し待たれよ。旅の支度をしてくる」
「では!?」
「ああ、お主らについていくとしよう。「大国筆頭大魔導士アレン」の復活じゃ」

 僕らは喜びの声を上げハイタッチをする。アレクサンドラとエミリアは安どの表情を見せ深くため息をつく。

 確かに彼らはこの旅で急成長をしたと思う。

 特にアレクサンドラは初めて「試練の塔」で見た時の傲慢も慢心もない。しっかりと地に足つけて考えを話せている。

 なんだか成長せた我が子を見る様な気持ちになってくるな。

「待たせたの。では行こうか」

 僕らは馬に乗り、アレンも自分の飼っている白馬を出し進む。やはりアレンは強かった。温泉好きのサルの大群に会ったがそれを魔法で全て上空まで持ち上げ地面に叩きつけていた。チートだよあんなの、一生彼には勝てない気がする。

「何だい。また来たのかい」

 僕らは以前突然現れた森へと足を運んだ。

「ん?ジーバか?久しいの!!50年ぶりくらいか?」
「ん?なんだいアレンじゃないか。まだ生きとったんかい。それに100年ぶりくらいじゃろうて」
「そうか!!そりゃ懐かしいわけじゃ!!」
「そうじゃの!あっはっはっは!!」

 長生き過ぎるだろ二人とも。100年ぶりの再会って凄すぎる。

「アレンがいるという事はもしかして薬草を?」
「ああ、じゃが儂は何もしていない。こ奴らが全てやったことだ」
「そうか……。無茶をさせてしまったの」
「あの、失礼ですがジーバってあの「薬学の神」とまで言われたジーバ様ですか?」
「あっはっはっは!!懐かしい名を知っているの。いかにも。まぁ昔はそんな名前で呼ばれていたの」
「ええ!!「薬学の神」ジーバ様でしたか!!王宮から突然姿を消したとお聞きしていましたが」
「王宮?ん?お主らもしかして」
「ああ、この二人は「アレクサンドラ第二王子」と「エミリア第一王子」じゃ」
「そうか……。しかし何故こんなところに?」
「それはお主らを直しながら話すことにしよう。まずは村に入っても?」
「ああ、薬草があるなら構わんじゃろう」

 その後アレクサンドラ達はジーバと共に薬の生成の手伝いをし村人たちを直していく。緑色だった体は見る見るうちに元の人らしい色に変わり、薬が効いたことがわかる。

 そしてアレクサンドラ達はこれまでの事を丁寧にジーバに話し、彼女もついてきてくれるように説得を開始した。

「ふむ。なるほどのぉ。あいわかった。アレンの頼みでもあるし行かないわけにはいかんね。ならその前に寄ってほしいところがあるさね」
「寄ってほしいところですか?」
「ああ、フェラール伯爵のとこさね」

 始まりの街フェラール。

 僕らはここから始まり、そこには沢山の新規プレイヤーが未だ増え続けている。なんだかもう何年もここに来ていなかった気分になりながら大通りをムギ達に乗って駆ける。

 僕らの行動は大いに目立っていたが街に入るという事は指名手配中の僕らにとってかなり危険な行為だ。あまり時間をかけてたくない為馬での行動となった。

「何奴!!ここは伯爵様の家だ!!」
「わかっておる。フェラール伯爵を呼べ。ジーバが来たと言えばわかる。」
「わ、わかりました……」

 門番は僕らを疑いながらも屋敷の中に入っていき、そしてものすごい勢いで出てくる。

「お、お待たせいたしました!!どうぞ中で伯爵様がお待ちです!!」

 手のひらを返したような態度に驚いたがアレンとジーバは当然だという顔で入っていく。本当にこの二人は凄い人たちなのかもしれないな。

「お、お、お久しぶりですジーバ様、あ、あ、アレン様!?何故ここに!?あれ?王子!?王女!?なんだ!?何がどうなっている!?」
「元気にしてたかい?フェラールの坊ちゃん。ちょっと太ったんじゃないか?」
「うむ。久しいの坊主。ところで頼みがあってきた。今すぐフェラールの兵を8割貸せ。あとお主もついてこい」
「は、八割ですか!?い、今すぐ?」
「なんじゃ?儂等の言うことが聞けんのか?ん?」
「い、いえ!門の外でお待ちください!!1時間もあれば集めて見せます」
「あたし等を1時間も待たせるのかい?15分でおやり」
「は、はい!!」

 それからフェラールの門の外に出ると、本当に15分で1000名を超えるフェラールの兵士が見事に隊列を組みながら出てきた。そしてその先頭には鎧を着たフェラール伯爵の姿がある。

「あ、あの、どこに戦争に出るのですか?帝国とか?」
「そんなめんどくさいところに行くわけないじゃろ。王都じゃよ」
「王都!?」

 その後アレンが指揮を執りジーバがフェラール伯爵にこれまでの経緯を話し、無理やり納得させていた。僕らは100名を超える兵士を引き連れ王都へ向かう。

「ん?あれは……」

 僕らが王都を目視した距離に立った時、西から大群の兵士を見つけた。

 その先頭の騎馬が数騎こちらに走ってくる。乗っているのはノアの弟イアン、パランケ伯爵、エヴァンナ、パライスの族長だった。

「おお、アレン様、ジーバ様まで。王子、王女、よくぞご無事で」
「ふふ。すごい二人を連れてきたわね」
「ガッハッハ!!これはすでに勝ち戦じゃな!!」
「ですね。お二人がいれば百人力です」
「おお、皆元気にしておったか。懐かしいのう」
「ほらアレンや、懐かしがってる場合じゃないぞ?やれをやるんじゃろ?」
「ああ、そうじゃった」

 僕らと、パランケ伯爵達の兵を合わせると万を優に超えている。その先頭に僕らが立ち王都へ向かう中、アレンは天に向かって手を上げ何かをつぶやく。

 すると王都全体を包むように大きな雲が出来、辺りが薄暗くなる。そしてその一部だけが裂け、丁度アレンとエミリアを中心に天から光が下りてきた。

 アレンは天候を操り僕らだけを照らしている状態だ。なんて神秘的なんだ。

「す、凄い……」
「これが「大魔導士アレン」様……」

 馬に乗りながらアレクサンドラ達も開いた口が塞がらない様だった。

「ま、待たれよ!!ここから先は」
「煩いのう。ほれ」

 王都に近づくと門番が僕らを止めようとするが、アレンが空いている片手の指をタクトのようにして一振りすると門番は宙に浮き壁に叩きつけられて気絶してしまう。

 この爺さんめちゃくちゃだ。めちゃくちゃ強いしなんかやる事めちゃくちゃだ。ごめんよ門番さん。

 門から中に入ると僕らだけに天からの光を浴びている状態を見た市民たちは「奇跡だ」と口々に言い、膝をつきこちらに祈りをささげる。

「止まれ!!ここから先は!!……あ、アレン様!?」
「何じゃ?ここから先はなんじゃ?わしとやりあう気か?」
「あ、いえ、その……」

 彼はかなりの身分の者だろう。数100人の兵士を連れて来た男をアレンは人睨みで道を開けさせる。

「お主らはここで待っておれ。あとは儂等だけで行く」
「「「「ハッ!!」」」」

 アレンは兵士に待機命令を出し、「カンパニー」王子と王女、アレンにジーバ、伯爵二人に族長、エヴァンナの14名で城に登っていく。

 いよいよこのクエストの最終段階だ……。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

処理中です...