書簡体小説集、綴

穏人(シズヒト)

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純白

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 私達三人は警察署へ連れて行かれました。事情を聞かれましたので、私は真摯に正直に、詳しい事情を話しました。翔太がクラスの餓鬼共に嫌がらせを受けたこと。翔太は被害者であるにも関わらず、停学という不当で理不尽で横暴な扱いを受けたこと。翔太とあなたが恋人同士であること。私は愛し合う二人が誰にも邪魔されずに会えるようにお膳立てをしただけのこと。翔太は話を聞かれると「僕……僕は……」と泣きじゃくってしまいましたが、無理もない話です。頭のイカれた人間に囲まれ、怖かったに違いありません。だってあの糞野郎共、こともあろうに私に向かって「あなたのしたことはストーカー規制法に抵触するかもしれません」などと抜かしたのですよ? 挙げ句、他の罪もあり得るなどと。開いた口が塞がらないとはまさにこのことと思いました。ああ本当に、この国は何処までおかしくなってしまったのでしょうか。
 ですが、そんな頭のイカれた公僕よりも、その後のあなたの態度の方が余程ショックを受けました。私でさえそうなのだから、翔太の受けた衝撃はいかほどばかりか知れません。脳に蛆の湧いた公僕共から解放され、私達母子は疲れながらもようやく帰路に着こうとしました。そんな私達二人の前に、両親らしき男女を連れたあなたが姿を見せました。翔太はあなたを認めると、急に嬉しそうな顔をして、あなたに駆け寄ろうとしました。しかし翔太を出迎えたのは、あなたの平手打ちでした。
「二度と私に近寄らないで!」
 呆然とする翔太にあなたはこう言いましたよね?
「私が学校を案内したのは先生に頼まれたからよ!」
「学級委員長だからって……先生に言えなかったけど、本当は嫌で嫌でたまらなかった」
「だってあなた臭いし! 変な臭いがするし……デブだし! それなのに毎日毎日付きまとわれて本当に嫌だった!」
 ねえ、何故、あなたはあんなことを言ったのですか。翔太の何処が臭かったと言うのですか。付きまとわれている? 翔太に付きまとっていたのはあなたの方ではないですか? 小学生のくせに男に擦り寄って……見ていたんですからね? 私は見ていましたからね? それにそんなに嫌なら面と向かって嫌と言えばいいものを、あなたは翔太に笑顔を向けて媚びを売っていましたよね? 自分から好意を見せておきながら都合が悪くなると手のひら返し? まったく、十歳にも満たなかった頃からなんという女でしょうか。親の顔が見てみたいという言葉がありますけれど、確かにあなたに瓜二つの、性根がねじ曲がっていそうな糞共でございました。そう言ってやれば良かった。そんな言葉も出てこなかった。ショックを受けて立ち尽くす私達母子二人に向かって、あなたは唾を飛ばしながらこのように吐き捨てましたね。
「本当に、二度と私の傍に来ないで。気持ち悪い」
 あなたは筆舌に屈しがたいような醜い顔でそう言うと、翔太を置いて立ち去りました。あなたの両親も私達を睨み付けると去りました。私は顔を真っ青にした翔太をなんとか引っ張っていき、よろよろとした足取りで自宅へと帰りました。
 その後、翔太の停学処分は解けましたが、翔太は学校に行くことを拒むようになりました。仕方ありません。恋人であるあなたにあんな仕打ちを受けたのですから。転校することも勧めましたが、翔太は返事もしないどころか、私と目を合わせようともしてくれなくなりました。可哀想な翔太。本当に、この子がどうしてこのような仕打ちを受けなければならないのでしょうか。
 そうそう、丁度この時期に、便宜上夫だった糞男とは離婚することになりました。翔太がこうなったのは私のせいだと。一体、何処をどう見ればそんな言葉が出るのでしょうか。翔太の親権を巡って裁判にもなりましたが、翔太は私と一緒に暮らしていること、翔太の世話の一切は全て私が行っていること、翔太が虐められている時期に支えていたのは私であることなどを踏まえて、母親である私が親権を勝ち取りました。当然の判決ですね。まあ養育費は貰えることになりましたし、あんな役立たずで父親の資格もない糞屑と縁が切れて、翔太にとっては良かったのかもしれません。
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