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「ご飯よ、起きて」
声がして目が覚めた。見渡すと夜のようで、点いていなかったはずの明かりが天井から俺を照らしていた。身体を起こし、声のした方を見ると女がキッチンに立っていた。何やら作業をしているようで、カチャカチャとなんだか音がしている。
いつの間に夜になったんだ? 俺はいつの間に寝ていたんだ? 頭を押さえて考えていると「ご飯、どうぞ」と近くで声がした。見るといつの間にか女がいて、いつの間にかテーブルにはありふれた料理が並んでいた。一体いつの間にと思ったが、気にしても仕方が無い。とりあえず料理を口にする。相変わらず上手いのか不味いのかもわからない料理だった。
「おいしい?」
「あ、ああ、うん」
「そう」
それだけ言うと、女は微笑んだまま口を閉じた。女の料理に感想を述べたのは随分久しぶりなような気がする。同棲し始めた頃はなんと言っていたか……思い出せない。どうでもいい。
あっという間に平らげると、女は何も言わずに立ち上がり、食器をキッチンへと持って行った。そして聞こえるカチャカチャ音。俺はテレビの代換えとして、疑問に思っていることを女に聞いてみることにした。
「なあ、なんで俺達こんな所にいるんだっけ?」
カチャカチャ音が急に止み、女がこちらを覗き込んだ。目が穴蔵のように見えて一瞬だけギョッとしたが、そう見えたのは一瞬で、女は普通に口を開く。
「何言ってるの? 旅行でしょ?」
「そうだっけ」
「そうよ」
女は「何を言ってるの」と言わんばかりに鼻息を出し、もう俺には興味がないように皿洗いを再開する。旅行? まあ、そうかもしれない。旅行以外にこんな山の中にいる理由は思い付かない。しかし旅行でこんな所に来るか? こんな狭くて汚い山小屋なんかに。
洗い物を終えたのか女が隣にやってきた。ベッドに座り、先程のように俺に腕を絡ませてくる。他にすることもないし、久しぶりにヤるか? まあたまには構ってやるぐらいのサービスがあってもいいだろう。
そう思い腕を伸ばしかけたが、ふと、女の口元にババアの証拠たる深いシワを見つけてしまった。一度そうなったら芋づる式だ。肌もくすんでいる。シミも見える。十分オバサンの年齢の女。上げかけた手を戻すと、腕を絡ませたまま女が言った。
「どうしたの?」
「……いや」
曖昧に答えると、女は腕を絡ませたまま俺に頭をもたせ掛けた。いつもなら、コンビニに行ってくるなどと言って誤魔化して逃げることができるが、こんな山の中ではそれもできない。まして夜ではとてもじゃないが外には出れない。振り払いたいが、面倒を起こさずに済むような言い訳も思い付かず、俺は仕方なく女の好きにさせてやることにした。
声がして目が覚めた。見渡すと夜のようで、点いていなかったはずの明かりが天井から俺を照らしていた。身体を起こし、声のした方を見ると女がキッチンに立っていた。何やら作業をしているようで、カチャカチャとなんだか音がしている。
いつの間に夜になったんだ? 俺はいつの間に寝ていたんだ? 頭を押さえて考えていると「ご飯、どうぞ」と近くで声がした。見るといつの間にか女がいて、いつの間にかテーブルにはありふれた料理が並んでいた。一体いつの間にと思ったが、気にしても仕方が無い。とりあえず料理を口にする。相変わらず上手いのか不味いのかもわからない料理だった。
「おいしい?」
「あ、ああ、うん」
「そう」
それだけ言うと、女は微笑んだまま口を閉じた。女の料理に感想を述べたのは随分久しぶりなような気がする。同棲し始めた頃はなんと言っていたか……思い出せない。どうでもいい。
あっという間に平らげると、女は何も言わずに立ち上がり、食器をキッチンへと持って行った。そして聞こえるカチャカチャ音。俺はテレビの代換えとして、疑問に思っていることを女に聞いてみることにした。
「なあ、なんで俺達こんな所にいるんだっけ?」
カチャカチャ音が急に止み、女がこちらを覗き込んだ。目が穴蔵のように見えて一瞬だけギョッとしたが、そう見えたのは一瞬で、女は普通に口を開く。
「何言ってるの? 旅行でしょ?」
「そうだっけ」
「そうよ」
女は「何を言ってるの」と言わんばかりに鼻息を出し、もう俺には興味がないように皿洗いを再開する。旅行? まあ、そうかもしれない。旅行以外にこんな山の中にいる理由は思い付かない。しかし旅行でこんな所に来るか? こんな狭くて汚い山小屋なんかに。
洗い物を終えたのか女が隣にやってきた。ベッドに座り、先程のように俺に腕を絡ませてくる。他にすることもないし、久しぶりにヤるか? まあたまには構ってやるぐらいのサービスがあってもいいだろう。
そう思い腕を伸ばしかけたが、ふと、女の口元にババアの証拠たる深いシワを見つけてしまった。一度そうなったら芋づる式だ。肌もくすんでいる。シミも見える。十分オバサンの年齢の女。上げかけた手を戻すと、腕を絡ませたまま女が言った。
「どうしたの?」
「……いや」
曖昧に答えると、女は腕を絡ませたまま俺に頭をもたせ掛けた。いつもなら、コンビニに行ってくるなどと言って誤魔化して逃げることができるが、こんな山の中ではそれもできない。まして夜ではとてもじゃないが外には出れない。振り払いたいが、面倒を起こさずに済むような言い訳も思い付かず、俺は仕方なく女の好きにさせてやることにした。
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