カイジン王の娘リミカ

藤田吾郎

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第2話 何かが始まる予感

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カイジン王。8年前のサウザンド・デイ戦争において、マギ・ワールドの覇権を握ろうとした読んで字のごとくカイジンの王様だ。

カイジンは何の前触れもなく突如としてマギ・ワールドに現れてはモンスターを食らい、森林を破壊して生態系をめちゃくちゃにしただけでなく、マギ・ワールドの住人を恐怖のドン底に落とした。

カイジン達は住人を恐怖に突き落とす事に躊躇はなく、むしろ心の底から楽しんでた快楽殺人者だ。

その殺害方法は今でも覚えている。

急所をわざと外して痛みに悶える住人を、ゆっくりと時間を掛けて執拗に身体をブスブスと鋭利な爪で突き刺し、住人の激痛の声に下品な笑い声。

何も痛みのあまり気絶する者が出てくるのは必然だ。その気絶を許さず、更なる痛みで叩き起こして、また痛ぶる。

そして最後には子供が飽きたオモチャの様に遺体を置き去りにする。生き物に対する尊厳もあったもんじゃない。

殺害しないカイジンは女子供を辱め、自分の欲望に忠実なまま精神も身体も壊し続ける。辱め、陵辱し快楽に突き落とす。

そして飽きれば別のカイジンによって同じように延々と無間地獄のようにループして廃人と化してしまう住人も居た。

また、カイジンは知能も働くので住人達の財産、資源、土地を無理やり奪い取り我が物顔で自分の所有物にして反抗する住人が居れば、見せしめとして殺害または陵辱する。

更にカイジン達はその知能を生かして商売を始めた。

《住人売買》。マギ・ワールドの住人を攫い、懸賞金をかけてオークションに掛けてカイジン自身の奴隷や娼婦として強制的な労働に人徳のカケラもない身体の相手。

もし言うことを聞かなかったり逆らうのであれば、もちろん命の保証はない。

もっと言えばカイジンが現れてから違法な薬物つまりドラッグの蔓延に住人達による犯罪など治安さえ悪くなり、中にはカイジンと共謀して汚職を働いた政治家までいると言う話も聞いている。

その頂点に立っていたのがカイジン王。

そして目の前に居るのが、その娘のリミカだ。

リミカは太刀筋、身体の身のこなしなど、新米ハンターとしては異例だ。暴食獣をたった一太刀で仕留めただけでなく。更に精霊術をこなし、魔法呪文までこなすという、とても新米ハンターのランクに見合わない。

むしろ新米ハンターがDランクと考えるとリミカは2ランク上のBランクのハンターは余裕でなれる腕前だ。

Bランクと言うのは強獣を簡単に追い詰めたっていう単純な評価だが、普通にやったらSランクに近いAランクハンターは余裕でなれると見込んでいる。

そう考えながら俺とリミカはクエ管のスタッフを無線で呼び、暴食獣2体と強獣1体の回収を依頼し、クエ管スタッフが確認した後、取り敢えず今は暴食獣2体の討伐分の金貨を受け取り依頼主の老人の元へ向かう。

「おぉ!ハンター様!よく、ご無事で。ハンター様の向かった先の森で強獣の鳴き声が聞こえてきましたので心配でして。」

「大丈夫です。しっかりと強獣を討伐しましたので。」

「さすがです!強獣は凶暴で時たま現れると耳にしておりましたので。」

「そうですか。まぁ、討伐したのは自分ではなく、この娘なんですけどね。」

「ほぉー!コレはたまげました。こんな可愛らしいお嬢様があの強獣を討伐したのでありますか!」

「はいなのです。まだまだ私も修行が足りないのです。」

「これはまた、若いのにご謙遜など。このような優秀なハンター様が育ってもらえればワシもまだまだ農業ができます!」

「ご老人。少しばかりですが、このお金で何とか飢えを凌いでください。」

「なんと?!有難き……」

俺は老人に金貨の入った袋を渡すと老人は袋にすがりつくように涙を零す。

「田畑は暴食獣に食い尽くされ、商売するものも食うものも無くなり、なけなしの貯金を切り崩して何とか貧しながらも生活していましたが、いつ、この貯金が底を付くか心配で心配で!ありがとうございます!ありがとうございます!!」

「ご老人。また何かありましたら、いつでも、ご依頼ください。お待ちしております。」

そう言った後に俺とリミカは男性老人の元を後にして街へと戻るが、お互いに終始無言のまんま。

なんだか気まずいな……

「ところでショウさん。」

「なんだ?」

その気まずい沈黙を破ったのは意外にもリミカからだった。

「私の事、やはり気になるのです?」

「気にならないと言えば嘘になるってか、気になる事が多過ぎて考えがまとまらないな。」

「そうですか。では、私から話すのです。」

リミカは歩きながらポツリ、またポツリとリミカ自身について話し始める。

「8年前。お父様の居城でありまするファントム城の陥落によってカイジン軍は敗走の一歩でありましたのです。」

「確かに、そうだよな。」

「私はと言うとファントム城の総攻撃の前夜。お供と一緒に、お父様から授かった愛刀ムラサメと拵えて逃げたのであります。この時、既にカイジン軍の敗退は目に見えていましたので、お供の方の計らいで私は各地を放浪としていました。」

「……」

「しかし、私は見た目は人間であるため素性を隠す事は容易でしたが、お供のカイジンは姿はカイジンのまま。私以上に姿を隠す事が必要だったのです。そのカイジンさんは人を喰らわず、暴力もせず、狡猾な性格でもなく、心優しく、常に私の事ばかり心配して自分の事は後回しな方なのです。」

なんとも言えない話だ。俺の聞いてるカイジン像とは、とても、かけ離れたカイジン。人を喰らわず、暴力もせず、心優しい。そこらへんの自己中な連中より人情味が溢れるカイジンじゃねぇか。

「ところが、そのカイジンさんは……ある時、人に見つかってしまい、国の兵隊さんに討伐されてしまったのです。」

確かに戦争が終わった後もカイジンの残党狩りが栄えてた時もあったな。その中にリミカを助けてくれたカイジンが居るとなると心が痛む。

「そして、私は、ある国の国王に私の素性を知ったのを覚悟で保護されたのです。」

「ある国の国王?」

「はい。ズーパーク国の国王。パンサー王なのです。」


「パンサー王だと……」

「はいなのです。パンサー王に暫くの間、私は戦争孤児として王宮に向かい入れられて、その中で育てて頂いたのです。」

どうしてだ?どうしてパンサー王はリミカがカイジン王の娘だと知ってまで保護したんだ?

パンサー王は確かに義理と人情味に溢れた人物だが、相手はあのカイジン王の血を引く娘だぞ?

確かパンサー王も戦争終結後はカイジンの残党狩りを国家命令で兵隊やハンター。そして国民には通報命令していたのは確かだ。

その時の俺は、モンスター狩りの方が忙しく、そのクエストの仕事を依頼はされなかったし、俺自身もファントム城の総攻撃以降はカイジンは1人も見かけていない。

「そして私には、ある目的があるのです。」

「目的?」

「はいなのです。私の目的はお父様の遺品を集めて、お父様の墓前に遺品を備え遺品と一緒にお父様に眠ってもらう事なのです。」

「遺品って《カイジン王の七宝具》の事か?それはダンジョンに封印されているんだろ?」

「はいなのです。だから私がハンターになったのもお父様の七宝具が眠るダンジョンを攻略できるかもしれないハンターを探すために私はハンターになったのです。」

「その事はパンサー王は知っているのか?」

「もちろんなのです。」

「だから、パンサー王の計らいでショウさんが新米ハンターである私の育成をする役割が当てられたのです。」

「なるほど、そういうわけか。」

つまり全部パンサー王に仕組まれてたって訳か。どうりでリミカと俺が初対面なのにセブン・ギアーズ時代の事を知っていたのも、戦争時の異名である神速のハンターの名前まで知ってた訳かよ。

でも、腑に落ちない事が多すぎる。まずカイジン王の七宝具は絶大な魔力を有するが故にダンジョンの中に封印したにも関わらずにだ。

リミカはその七宝具を欲しがっているのを知ってて、リミカを俺に送り込むって事はダンジョン攻略を許可するって事だよな。

なんでそんな危険満載で入ったら二度と帰ってこれないダンジョンを攻略して良いような真似をしてきたんだ?

謎は深まるばかりで考えても仕方ない。

明日、パンサー王に話を聞きに王宮に出向くか……

考えながら歩いているうちに街に着くと、ある疑問が思い浮かぶ。

「そういやリミカ。お前はどこで寝泊まりしてるんだ?」

「ハンターになってからここ2週間は野宿ですけど?」

「マジで言ってるの?」

「はいなのです。パンサー王自身はハンターになって独り立ちするまでは居ても良かったのですが、私としては、これ以上迷惑は掛けれませんので。」

パンサー王の元で育てられたとは言え、ある程度の年齢になったリミカは人に頼る事は人に迷惑を掛けると思っているのだろう。

だけどリミカは子供ではないけど大人ではない。誰かの助けが無ければ生き抜くには、まだ世知辛い社会だ。

だから……

「なんなら俺の家で寝泊まりするか?」

「良いのですか?」

「一人暮らしする家には広すぎてな。風呂は源泉の温泉だし、ベッドは1つしかないけど俺がソファーで寝れば良いし、料理は俺が作るから暖かい飯だって食える。着る物は……まぁ、後で俺が買えば良い。どうだ?」

リミカは目をキョトンとさせて驚いた様子でこっちを見てくる。

「ショウさん。そうやって、いたいけな年頃の少女を自宅に連れ込んで、あんな事や、そんな事を……」

「違えわ!なんでそうなるんだ?!」

「ショウさんはロリコンではないのですか?」

「ロ、ロ、ロ、ロ、ロ、ロリコンちゃうわっ!!」

あまりにリミカのぶっ飛び発言で言葉がしどろもどろになってしまう。

ロリコンではない!決してロリコンじゃない!!

俺は色気があって妖艶な雰囲気を持ったセクシーボイン姉ちゃんがタイプだわ!

モテないけどさ。

「ショウさん。本当に私がショウさんの家に行って良いのですか?」

「もちろんだよ。俺の家には誰も居ないし、リミカ1人くらい余裕で生活できるさ。」

「では、宜しくお願いしますのです。」

街の中心部に入ると何やら獣人達が集まっているのが分かるので何気なく見ていると道端で1人のピエロがマジックを披露していた。

顔に白塗りをして派手な紅色と緑と言ったペイントを施し、緩やかでダボっとした青と黄色のストライプ衣装。特徴的な円錐形の帽子。

大きなボールの上に片足立ちをしてバランスを取りながらジャグリングしてから、大きなボールからジャンプしてから空中でクルリと2回転してから見事に着地。

帽子を取り無言でタネも仕掛けもないと言わんばかりに帽子の中身を見せるとハンドサインで3、2、1とカウントをした瞬間に帽子の中から鳥が3羽と現れて飛び立っていく。

おぉー!と周りの歓声を浴びた瞬間に次はトランプを取り出して華麗にカードをシャッフルした後、ピエロはリミカに近付く。

「この人はどうしろと言うのですか?」

「このトランプから好きなカードを選んで欲しいんだろ?」

リミカは訳が分からず、取り敢えず。トランプのカードを1枚だけ引く。

すると黙ってピエロはリミカから少し離れて後ろを向く。恐らくピエロとしてはリミカの引いたカードを当てるってやつだろう。

「ショウさん?」

「どうやらピエロは声に出さずにお前が引いたカードを覚えておいて欲しいのだろう。」

リミカの引いたカードはハートのジャック。

リミカは引いたトランプのカードを後ろに向いていたピエロにトランプのデッキに戻すと次にピエロは俺にトランプのデッキを渡す。

「シャッフルしろと?」

ピエロは無言のまま笑顔で頷くと俺は適当にトランプをシャッフルした後、ピエロは次の指示をハンドサインで俺にする。

「そのトランプをデッキごと空中に投げろと。」

再びピエロは無言のまんま笑顔で答えると俺はトランプのデッキを空中に舞うように投げる。

ハラハラと花びらのように落ちてくるトランプの中から1枚のカードをピエロは手にしてそれを見せる。

「あっ!私の引いたカードなのです!」

ピエロが持っていた1枚はリミカの引いたハートのジャック。
その瞬間に周りの観客は大盛り上がりで帽子の中に金貨などを投げ入れてピエロのストリートショーのマジックショーは幕を閉じる。

その瞬間にピエロは俺に近づき静かに呟く。

「久し振りっすね。ショウさん。」

「っ?!」

久し振りってどういう事だ?
このピエロと俺は初対面のはずだが、でも聞いたことがある声と話し方……

まさか……

俺はピエロのストリートショーが終わった後もしばらく待つ事にする。俺の考えが当たっていれば、あのピエロの招待は奴に違いない。

「あの……ショウさん。帰らないのですか?」

「悪い。少し気になる事があってだな。」

「お待たせしましたっす。8年ぶりっすね。」

「やっぱり、お前だったか。」

中性的な顔立ちに爽やかなルックス。スラリと身長の高めのオッドアイの青年。

「ペイントしてから全く分からなかったよアスカ。」

「いや~まさか、こんな所でショウさんに会うなんてビックリっす。」

かつて、サウザンド・デイ戦争において一緒に戦ったセブン・ギアーズの仲間。マスターマジシャンの異名を持つアスカ。

「……?」

リミカはポカーンとした顔をしながら目をパチクリさせて頭の上にハテナマークを浮かべるしかない。

「リミカ。紹介するよ。こいつはアスカ。俺の昔の仲間だ。」

「アスカっす。宜しくリミカちゃん。」

「リミカと申しますのです。宜しくなのです。」

「そうだ。リミカちゃん。お近付きの印にこれを。」

「おぉ!凄いのです!」

リミカは深々とアスカにお辞儀した後にアスカは手を握らせ一瞬にして一輪のバラをリミカに差し出すとリミカはパチパチと拍手をする。

「アスカ。お前は相変わらずだな。」

「ショウさんこそ。聞いてますよ。何でもショウさんは凄腕のハンターだって噂はあちこちで聞きますよ?」

「そんな大袈裟だな。」

「またまた謙遜しちゃって~。ショウさんったら昔から人に褒められるの苦手なんっすから。このこの~。」

「お前なぁ。」

俺は良い意味で昔と変わらないアスカと8年ぶりの再会で話が盛り上がってしまい、リミカが1人取り残されてるが当の本人はアスカから貰った一輪のバラをジィーっと見つめている。

「ところでアスカ。お前はこの8年の間は何をしてたんだ?」

「ん~まぁ、世界のあちこちを放浪して戦争の恩給と今日みたいに街中のショーで生活してたっす。」

「そうか。他の5人とは会ったのか?」

「いえ、ヤマトさんとは最初は一緒だったんですが、すぐに別々に行動して以来それっきり。」

「まぁ、ヤマトは自分の音楽を世界中に広がるんだっぺ!って言ってたなぁ。」

「多分、ヤマトさんなら元気にしてると思うっすよ。」

「俺はそれは、同感だな。コウタの方は?」

「いえ、コウタさんについては8年前の終戦パレード以来っす。」

「そうか。確かタイガはスカイバードで研究員として招かれたっていう話を聞いたな。」

「あぁ。タイガさんは研究が出来る場所なら何処にでも行くって感じっすよね。あとケンジさんはウィザー国で戦争孤児の孤児院を任されたって話っすよね?」

「オズワルド王に頼んでたんだが、可愛いシスターも付けろって言ってたな。」

「牧師なのに酒、煙草、女が大好きで、とても神様に従事してる人間とは思えないっす。」

「おまけにアイツに関しては抜け目がないからな。」

「本当っすよ。自分がメンバーで1番の歳下っすから、良いパシリにされたっすよ!」

「俺がケンジにお願い事すると何かと条件付けてきやがったからな。良い酒買ってこいやらタバコのカートン買いとかよ。」

「マジすか?!あ!あとリュウジさんは確かウォーリア国で剣闘士っすよね?」

「そういう話は聞いたけど、どうなんだ?」

「自分は風の噂で聞いたっすけど、何でも連戦連勝で負けなし。おまけに傷一つ付けないで生還するらしいっすよ!」

「リュウジも相変わらずだよな。アイツが苦戦したのってファントム城でやりやったスクアーロっていう敵だったよな?」

「アレはマジで自分、ビックリっすよ!あのリュウジさんがボロボロになるなんて!」

「まぁ、あの時はアイツの覚悟もあったからな。」

そんな風に懐かしさのあまり昔話に花が咲いてしまい気がつくと太陽は傾き始めオレンジの様な色をした夕焼け空が見えていた。

「アスカ。積もる話もあるけど、この後はどうするんだ?」

「ん~特に予定も何もないっすよ。自分は自由気ままに放浪しているだけっすから。」

「良かったら俺ん家で飯でも食うか?」

「良いんすか?」

「リミカも大丈夫だよな?」

「大丈夫なのです。」

とりあえず俺はリミカとアスカの3人で今日は俺ん家で寝泊まりする事が決定した。お客が来るんだから取り敢えず街の市場で食材を買う事にする。

市場に行くと野菜や果物。新鮮な魚介類。熟成された肉など幾多の食材達が立ち並ぶ。

今日は何を作るか。取り敢えず。野菜とパスタ買って、ハムはまだ在庫があったな。あとは調味料を少し買って鶏肉と海老買ってからあとパンも買い足しておいて、リミカとアスカにそれぞれ飲み物も買うか。

今日、リミカとアスカに振る舞う料理を考えた俺は食材を買った後に街から少し外れた俺の家に向かう。

賑やかな街並みと打って変わり、少し高い丘の上にログハウスの広い敷地に煙突のある平屋が俺の家。

ハンターを始めて3年目の時、俺もいつかは女の子と付き合って結婚する年頃だからクエストで稼いだ貯金を使って源泉の温泉が出る地脈の土地を購入。

ローン一切なしの一括現金支払いで、この家を建てたのは良いが、唯一、予想してたのと違うところ。

俺が彼女が見付けられず、結婚もしてない独身貴族になってしまってるところ。

「ここがショウさんの家っすか?!結構広い家じゃないですか?!」

「まぁ、築5年ってところだな。」

「なんだかオシャレなお家なのです。」

「家を建てるならログハウスって言うのも良いかなって思ってさ。」

しかし、ログハウスはオシャレで暖炉は薪ストーブという魅力的に見えるがログハウスは冬になると、建物の特性上、隙間風が入ってくること。

そして暖炉が薪ストーブだから、定期的に業者を頼んで煙突のメンテナンスしないと煤(すす)で煙突が詰まってしまうという所。

あとは冬が終わり春には次の冬になる前に薪を切って乾燥させなくてはいけない事。

何かと物を所有するには買う事は出来るが維持が難しいというのが世の中の常だ。

乗り物にしてもマギ・ワールドの乗り物は調教したモンスターを荷車で乗せたりしたり、そのモンスターの背中に乗せて移動する事が主流。

まぁ、ウィザー国の魔法使いは自分の魔力を消費して箒や杖で空飛ぶ事が主流。

それとスピット国では自分の魔力を精霊に食わせる事で契約した精霊を操り、その精霊の背中に乗せて移動手段としている。

その為にはモンスターの餌台とかモンスター自身の性格や動作にクセなどを把握しないと乗り続けるには大変だ。それにエサ代やら飼育するには何かとお金が掛かるものだ。

まぁ、魔法使いは例外として基本的に移動手段は徒歩か調教されたモンスターか船に乗るかがマギ・ワールドでは基本となる。

最近ではどこぞの国にいる研究者が魔法鉱石をエネルギーにした原動機の開発に成功。近い将来、調教されたモンスターよりもコストパフォーマンスが良い乗り物が開発されるんじゃないかという話も聞く。

「んじゃ、少し散らかってるけど、ゆっくりしててくれ。」

「お邪魔しまーす。」

「お邪魔させていただくのです。」

玄関の扉を開けてから入って行くとリビングが広場とあり、キッチンもリビングとの仕切りがない為、更に広々とした空間が広がる。

「リミカ。今日はクエストで汗かいただろ?先に風呂に入ってろ。服は適当に俺の奴を置いておくから。」

「はいなのです。それとショウさん。」

「どうした?」

「私の裸を覗くと犯罪になりますのです。」

「覗かないわ!」

全く。リミカのやつは俺を何だと思ってやがるんだか。

俺はリミカを風呂場に案内して蛇口を捻れば源泉から引いてる温泉が出てくるので、それを教えて風呂に入らせる。

その間に俺は今日の着替えを探しに行く。

「ショウさん。結構、服持ってますね。」

「あぁ、殆ど8年前のデザインなんだけどな。」

「あ!コレ、自分が敵の諜報部に潜入した時の!」

「あー……確かに。よく覚えてるな。」

「忘れもしないっすよ!カイジン共を誘き寄せる為にこんなヒラヒラして動き辛い服を着せられたんてすから!」

戦争中。敵アジトと思われる場所に行きたかったが、ガードが固すぎる為、連合軍が苦戦していたわけで。

そんな折、その辺地域の年頃の娘が攫われるという話を聞いた時、これは敵側の何かしらの陰謀と判断した俺達はどうすれば良いかと考えていたら、アスカが誰か女に成りすまして侵入して内側から制圧作戦を考えたのだ。

そこで誰が女装するか相談したが誰1人として立候補しなかったので、シンプルにジャンケンで決めた結果、言い出しっぺのアスカに決定。

アスカは元々、中性的な顔立ちのせいか、女装をして化粧もすると、その辺にいる女より可愛いと思ったのは内緒だ。

それでアスカはわざと敵側に攫われ内部に侵入。そして、エボル・ギアでサギーに変身した後に敵のアジトをヤケクソと八つ当たりの混じった感情を爆発させて消し炭にしたって言う話。

アスカにとっては黒歴史の思い出の服。

「ってか、よく取っておいたっすよね。」

「まぁ、俺が殆どメンバー達の荷物やら何やらを片付けしたからなぁ。」

戦争終結後の凱旋パレードの後にメンバー達は色々と荷物を置いてしまった為、使えそうなやつを取っておいた内の1つが、この服だ。

「ショウさん。」

「なんだ?」

「ショウさんの手料理は久しぶりで楽しみっす!」

「そうか。腕が落ちてなきゃ良いんだけどな。」

脱衣所の前にリミカが着れそうな服を置いた後に俺は台所に立ち、コンロの中に火の魔法鉱石を入れて、更にハンマー衝撃を与えて火を起こす。

土鍋にたっぷりの水を入れて沸かし、その間にキャベツや人参、キュウリやハムを薄く切る。

そして、沸騰したらお湯の中にパスタを入れて麺の芯が針先くらいの硬さを残してから流しにお湯を流してオリーブオイルを麺の中で絡ませる。

そして麺をボウルの中に入れて同時に薄く切った野菜やハムを入れて粗挽き胡椒とマヨネーズを加えて混ぜたらサラダスパゲッティの完成。

次に市場で買ってきた鶏肉をすり下ろした生姜とニンニクとソイソースを入れて小さめのボウルに入れて臭み取りと味を染み込ませる。

そして海老のからを向き、ハラワタを爪楊枝(つまようじ)を使って丁寧にとっていき、フライパンには油を注ぎ、小麦粉とパン粉を浴びにまぶして、カラッとあげればエビフライ。

そして、下味で仕込んでおいた鶏肉を小麦粉をまぶして油であげれば鶏肉の唐揚げの出来上がり。

あとはパンを軽く直火で炙れば外はカリカリで中はふんわりとしたパンの出来上がり。

「うわぁ!どれも美味そうっす!」

「もう少ししたらリミカも風呂から出るだろうから、もう少し待ってろよ。」

「ショウさんって昔っから料理得意でしたもんね。」

「結構、料理するの好きだったしな。」

8年前の戦争中も食い物が中々、手に入らなくて何とか、近場の村人から野菜や果物を買い与えてくれたり、貴重なモンスターを狩っては保存食用の肉に加工したりと何かと大変だったのもあるけど、その中でも俺の料理を美味そうに食べる兵士達の束の間の至福の時。

その至福の時でまだ戦えると士気を高めていたのも、また思い出の一つだ。

「お先にお風呂をいただきましたのです。」

リミカは頭から少しばかり湯気が上がり顔を熱らせてる為、少し赤くなっている、そして、そのヒラヒラとした衣装は何処ぞのお嬢様みたいで品があり、また可愛らしくも見える。

「お、リミカちゃんが上がってきた。」

「ちょうど晩飯が出来たから冷めないうちに早く頂くか。」

「「「いただきまーす。」」」

リミカは椅子にチョコンと座ると俺とリミカとアスカは手の平を合わせて頂きますをすると腹を空かせてたのか口の中を食べ物で頬張りながら食べ始める。

「やっぱりショウさんの飯は最高っす!」

「私も、こんな美味しい料理は初めて食べたのです。」

「2人とも大袈裟だなぁ。」

「それに、この料理と酒は相性が良いっす!」


「おい、アスカ。お酒は成人になってからだぞ。」

「もう成人の年齢っすよ!」

「アスカさんは、お幾つなんですか?」

「え?自分は今年で24歳っすよ?」

「つまり、アスカさんはショウさんと違ってお兄さんなのですか?」

「ショウさん……まさかリミカちゃんに……」

アスカはリミカの言いたい事を悟りプルプルと声を震わせながら今にも笑いそうになっているのが分かる。

「うるせぇ!俺だって好きで年取ったわけじゃねぇ!それにテメェ、いつのまにか俺より身長が大きくなりやがって!」

「それは仕方ないじゃないっすか!あの頃は成長期でしたから戦争が終わった頃には安心して寝られたんですから。ほらよく言うじゃないですか?寝る子は育つって!」

「なんだ?昔、夜中にお化けが居るからトイレに1人じゃ行けないって言うから着いて行ってやったのになぁ!」

「あっ!それはズルいっすよ!ショウさんだって惚れた女の子には好きな人が聞いた瞬間にショックで寝込んでたって言うじゃないですか?!」

「テメェ!それは俺の青春の思い出じゃねぇか!」

「青春も、何も、ただ笑顔で優しく挨拶されただけで惚れちゃうなんてショウさんも中々のウブじゃないすか?」

「それとこれとは関係ないだろ!」

そんな風に俺とアスカで昔の思い出話って言うより、お互いの黒歴史暴露大会が行われている横でリミカは笑いながら食事を楽しみ夜は更けていった。

夜も遅くなっていき、リミカはお腹いっぱい食べたのか眠気が襲ってきたようなので俺はベッドに案内して布団を掛けるとグッスリとリミカは寝落ちしてしまった。

「それにしてもショウさん。リミカちゃんって不思議な感じな娘っすよね。ショウさんとの関係は?」

「そうだな。簡単に言えばハンターの師匠と弟子って感じだなって言っても今日、初めて会ったんだけどな。」

「へぇ~、でもリミカちゃんってどこの国の出身すか?刀を持ってるからウォーリア国とかすか?」

「いや、違うんだ。」

「んじゃ、何処の国の出身なんすか?」

アスカはグラスをクルクルと回しながらウィスキーのロックをゆっくりと口に含む。

アスカには言った方が良いのだろうか?それとも隠した方が良いのか?リミカがカイジン王の娘と知ればアスカはリミカにどんな態度を示すんだろうか。

「どうしたんすか?ショウさん。」

「アスカ。お前には本当の事を言わなくちゃイケナイって思ってる。それは8年前の戦争を一緒に戦い抜いた仲間だから言わなくちゃイケナイって思ってる。」

「だから、どうしたんすか?なんか変っすよ?」

アスカは俺が急に話の噛み合わない訳の分からない事を言ってるようにしか見えず不思議な顔をしながら俺を見る。

「あいつは……リミカはカイジン王の娘らしいんだ。」

「え?え?ちょっ……ちょっとショウさん。さすがにこの冗談はキツイっすよ~あはは……」

アスカは驚いた顔をして苦し紛れに乾いた笑いをしたが、それが返ってさらに気まずい雰囲気を作り出し、お互いに黙り込み、沈黙が続く。

「信じられねぇか?」

「信じられないっすけど、ショウさんがキツイ冗談を言わないのは知ってるんで信じるしかないと思ってるっす。」

「俺も今日、初めて出会って、そう言われた時は信じられなかった。でも、リミカ自身は剣術、精霊術に魔法の3つを使いこなしているのを俺はこの目で見た。」

「同時に3つすか?それって……」

「あぁ、剣術に魔法。又はは剣術に精霊術なら、才能やら血筋とかで賄えるけど同時に3つってなれば。」

「それなりの魔力を消費するって話っすよね。」

「おまけに俺が見たあの魔法は8年前の戦争時のウィザー国やスピット国の兵士達には使えるような威力じゃねぇ。」

「……」

「おまけに今日が初クエストに関わらずにB級のモンスターを余裕な表情で追い込んだ。」

「それがリミカちゃんの実力……でもなんで?ショウさんの元へ?!」

「そこなんだよ。それが1番の疑問だった。だけどリミカから聞けばパンサー王が絡んでいるらしい。」

「パンサー王がすか?」

「どういう訳か分からないけど、リミカの目的はカイジン王の七宝具を集めて父親であるカイジン王の墓に遺品である七宝具と一緒に弔うのが目的みたいだ。」

「確か七宝具はマギ・ワールド連合の7人の王が、それぞれ1つずつ持ち帰ってダンジョンに封印したって話っすよね?」

「あぁ。そのダンジョンを攻略するためにリミカは俺に新米ハンター育成という名のもとにパンサー王から送られたわけだ。」

「パンサー王の目的は……」

「それが分からねぇから明日にでも王宮に行ってパンサー王と話をしてこようって思ってる。」

「そう言うことっすか……」

アスカは再びグラスに入ったウィスキーのロックを口に入れてはテーブルにグラスを置くと何やら考えながら話し始める。

「8年の時を経て何か始まりそうな予感がするっすね。」

「それは俺も同感だな。何かが動き出そうとしている。それにダンジョンを攻略なんて王達が許しても、その上の世界政府の元老院ジジイ達が黙っちゃいないだろう。」

「カイジン王……実際に自分は目にした事はないっすけど天才的な頭脳を持ち絶大なる力で魔法、精霊、装飾武器を使い、その誰もが魅了する悪のカリスマって感じですよね。」

「まぁな。話を聞くとそんな感じだ。俺も目にした事はないけどな。」

「え?でもファントム城の時にショウさんとコウタさんとタイガさんにリュウジさんは会ったんじゃないすか?」

そうか。確かアスカはヤマト、ケンジの3人で広場に居た大勢のカイジン軍を相手にしてたからカイジン王とは会ってなかったんだな。俺はグラスに少し残ったウィスキーロックを飲み干し話を続ける。

「あのとき、途中でリュウジはカイジン軍の幹部と一騎打ち。その後、俺とコウタとタイガで城の屋上まで駆け上がったが、俺ら3人が屋上に着いた時には決着が着いてたんだ。」

「そうなんですね……」

「取り敢えず、明日パンサー王に会いに行くけど、お前も行くか?」

「はい!是非!自分も何か出来る事があればやりたいです!」

そして木漏れ日が窓から差し込むと俺は起き上がる。
ソファーの向かい側にはアスカが毛布に包まって寝息を立てながら寝ているのが分かる。

「さてと、朝飯の準備でもするか。」

俺は台所の食料庫を覗きながら朝飯のメニューを考える。

とりあえず、昨日買ったレタスと玉ねぎとトマトと人参を使いきって、あと卵があるから目玉焼きにして、厚切りのベーコンも使って、トーストにはチーズでも乗せるか。

俺はレタスを手でちぎり、玉ねぎを薄く包丁でスライスしてから水につける。そうすると辛味が抜けやすくなりシャキシャキで食べやすくなる。

オリーブオイルと粗挽きの胡椒と塩を少々入れてシンプルなドレッシングの出来上がり。

火の魔法鉱石に衝撃を与えて火を起こすとコンロから火が上がり空気の調節をしながらフライパンに油を引いて卵を3つ割り、目玉焼きを作る。

だいたい卵の白身が焼けてきたのを見計らい、水を入れてフライパンにフタを閉めて蒸すことで半熟の目玉焼きの完成。

最後に厚切りのベーコンを火を弱火にしてじっくりと焼き上げる。弱火で焼き上げることで焦げ付くことなく、ジューシーな厚切りベーコンの出来上がり。

好みでマスタードを付けて食べても良し。

最後に食パンを両面ずつ軽く焼いた後にチーズを乗せて弱火でフライパンに蓋を閉める事で良い感じにチーズが溶けてくれるので朝飯には最適だ。

「おはようございますのです……」

「おはようリミカ。」

俺が料理の盛り付けをしている頃にリミカは寝室から出てきて、目をこすりながら眠たそうにリビングにやってくる。

「ちょうど、朝飯が出来上がった頃だ。」

「とても美味しそうな匂いがするのです!」

リミカはぴょんぴょんと飛び跳ねながら嬉しそうに椅子に座る。

「ほら、アスカ!起きろ!朝飯の時間だぞ!」

「うぅ……あー……おはようっす……」

「相変わらず寝起きが悪いのは治ってねぇな。」

コイツは昔から寝たら中々、起きなくて、起きたら数分はフリーズしたまんまだ。

「ほら、コーヒー飲んで目を覚ませ。」

「あざーす……ふぁぁあ……」

アスカは大きな欠伸をしながら頭をボリボリかいた後にどっかりと椅子に座りコーヒーを一口飲んで眠気を覚ます。

「んじゃ、みんな揃った事だし。朝飯にするか。」

「「「頂きまーす。」」」

俺の作った朝飯はリミカとアスカには好評だったようで、全部平らげてしまい俺は皿を洗い食器を片付けている。するとリミカが俺のエプロンをくいっくいっと引っ張る。

「ショウさん。今日はクエストのお仕事はあるのでしょうか?」

「ん?あぁ。今日はオフの日だ。それに俺は今日はアスカと所用で出掛けなきゃなんだ。」

「それは昼間っから大人な遊びをする……」

「違ぇよ。なんでもかんでも、俺をそんな風に結びつけるなよ。まぁ、日が暮れる前には帰ってくる。それに昼飯もオヤツも用意しておくからリミカは俺の家で留守番しててくれ。」

「本当に帰ってきてくれるのです?」

リミカは顔を俯き、寂しそうな眼差しで上目遣いをしてくる。

「大丈夫だ。ちゃんと戻ってくるから安心しろよ。お昼はサンドウィッチとオヤツはクッキーと紅茶を用意しておくから。安心しろ。」

「はいなのです。くれぐれも、お店にぼったくられて無一文にならないように気をつけるのです。」

「だから違えっつーの!」

全く。俺がそういう店でぼったくりになんか会うわけねぇーだろ。まず昼間から行かねぇし!

俺とアスカは出掛ける準備をしてから出入口のドアに向かうとリミカが、お見送りをしてくれる。

「良いか?火の元には気をつける事。変な人が来てもドアを開けない事。あとは家から離れた場所には行かない事。良いな?」

「はいなのです。では、いってらっしゃいなのです。」

リミカはピシッと敬礼をしてからお見送りをした後に俺とアスカはパンサー王の居る城へと足を運ぶ。

「ショウさん。心配性の所は変わらないっすね。」

「お前の寝起きの悪さも変わらねぇだろ?」

こうやって歩いてアスカと話していると戦争時のマギ・ワールド連合を含めた王や兵士達とやった宴を思い出す。

ほっぺが落ちそうになる美味い飯。村人がお裾分けしてくれる地域の色が出る酒。それをお酌してくれる村の若い年頃の娘っ子達。

焚き火で囲いながら戦う日々を忘れさせてくれる宴はその馬鹿話に武勇伝、音楽に乗せて肩を組んで歌い、それにつられては響き渡る笑い声。

そんな日が懐かしく思えるのは苦しい日々を一緒に過ごしてきた仲間が居るからだと思ってる。

アスカと一緒に歩いて行くと街を抜けて国の中心部である王都に辿り着く。

王都には王宮に仕える政治家、軍人、使用人を含めたその家族が暮らしておりズーパーク国では高級物件の地区に当たる。

「あら!ハンターのショウ様でございますのでは?」

するとズーパーク国の官僚の奥様に声を掛けられる。垂れた耳に犬の姿だが、とても気品が溢れる奥様だ。

「どうも、ご婦人。ご機嫌麗しゅうございます。」

「ショウ様がこんな所に来るなんて珍しいでございますの。それにお連れ様は、お見掛けしない殿方ですわね?」

「はい。自分のかつての仲間でして。」

「初めまして奥様。自分はアスカと申します。以後お見知り置きを。」

「ショウ様のかつてのお仲間ですと、あの英雄であるセブン・ギアーズですの?!」

「ええ。自分は今はただの旅芸人をしております。奥様にお近付きの印を。」

何も無い手の平を握りしめてポンッと現れた一輪の花が現れる。

「カトレアの花言葉は《優美な貴婦人》。奥様にピッタリな花です。」

「まぁ!なんて素敵なお花かしら。それにアスカ様は手品もお上手ですのね!」

「タネも仕掛けもございません。」

昔からよく綺麗な女の人を見ると一輪の花を渡す所も変わらないなぁ。8年前と比べて大人になったのかよりキザが増してるって言うか。

「ご婦人。我々もそろそろ行かなくてはいけませんので、またお茶会にでも誘ってくださいませ。」

「おほほ。ではまた。」

そう言いながら、獣人のご婦人はセンスをパタパタと仰ぎながら歩き出して行く。

「それにしても、さすが王都。綺麗な街並みって言うか道行く人達はどこぞの御大臣っすか?」

「まぁな。ここは王宮で仕える政治家、軍人、使用人の他、その家族達が暮らす都だ。この国では王宮勤めってだけでもポテンシャルになるからな。」

「つまり安定した給料に高級取りで住まいまで一等地に住めるなんて最高じゃないっすか!」

「まぁ、お堅い職場だからな。窮屈だし拘束時間長いから、俺も最初は王都で暮らさないかってパンサー王に言われたが、こんな小綺麗な街並みより自然溢れる場所の方が落ち着くって蹴っ飛ばしたんだよ。」

「へぇ~。自分だったら、その辺のお嬢さんとかに声を掛けちゃいたいから住みますねー。」

「お前ね……昔から王宮に仕える家は代々、名の通った一族やら家系が多いから、アスカみたいな浮浪者には手が届かないと思うぞ。」

「浮浪者じゃないっす!旅芸人っす!」

浮浪者でも旅芸人でも、あんまり変わらないと思うが、敢えてツッコミは入れないでおこう。

王都に入り王宮に向かい歩き続ける事20分弱。王宮の正面門が見えてきて槍を持った獣人の兵士が門番に立っていた。

「お主ら人間が何用だ?」

「ここから先は神聖なる王宮だぞ。」

筋肉質の牛の獣人兵士が槍をクロスさせながら俺とアスカの行く手を阻む。

「済まないがパンサー王とお話がしたい。門を開けてはくれないか?」

「パンサー王は会議中。」

「下々の者が簡単にお会いできるようなお方ではござらん。」

2人の獣人兵士の門番は俺とアスカを見下ろしながら睨みつけるように見る。

「ショウさん。なんすか?あの門番の態度は?」

「静かにしろ。」

アスカが俺に近付き門前払いをする兵士の態度が気にくわない様子で小声でヒソヒソ話をする。

「パンサー王が国政の会議や打ち合わせなど多忙なのは重々承知の上でやってきましたが、どうしてもパンサー王と今、お話を願う事は出来ないでしょうか?」

「駄目だ。パンサー王はお主と違いお茶を飲みながら雑談する余裕などござらん!」

「それに、このズーパーク国で人間が居るのも変な話だ。怪しい他ない!」

こりゃ完全に話はさせてくれない雰囲気だわ。

「何をしているお前達!」

すると狐の姿に二足歩行をし門番の兵士より地位が高そうな鎧を着た狐の兵士が門の前に現れる。

その姿は何処かで見た事ある顔。

「お疲れ様です!軍曹!」

「軍曹。この人間達がパンサー王に会いたいと言っておりまして。」

門番2人が軍曹と呼ばれる兵士に敬礼した後に俺とアスカの目的を告げると軍曹は俺とアスカを見るなり一瞬で驚いた表情をする。

「あ、貴方様方は!」

「あぁ!8年前の若い兵士じゃないっすか?!」

「8年前……おぉ!ファントム城の前夜に来たあの時の!」

「8年前にお会いしたきりなのに覚えて頂いておられるとはなんと光栄です!ショウ様にアスカ様。」

「ショウにアスカ?!」

「まさか、8年前の戦で活躍した?!」

2人の門番兵士は俺とアスカの名前を聞いた瞬間に目を点にして顔を向き合い、ヤベェ事したって顔になるのが分かる。

その瞬間をアスカは見逃さずニシシと悪意に満ちた笑顔になるとアスカは軍曹に近づく。

「いや~自分とショウさんはパンサー王と少し大事な話をしたかったんっすよ。でも門番2人が怪しい人間とパンサー王と話す時間がないとか言っちゃうもんだからね。困ってたっすよ~」

「馬鹿者!この2人に無礼な態度を取ったのか?!早く王宮の中に入れぬか!!」

「も、も、申し訳ございません!」

「いいい今すぐ!開けますので少々お待ちを!」

王宮の正面門が開かれ俺とアスカは軍曹に案内される形で王宮の中へ足を踏み入れていく。

「ショウ様、アスカ様。先程は部下が失礼しました。」

「いやいや、こちらこそ急に押し掛けてきた形で申し訳ない。」

「とんでもない。かつての戦争で勝利を導いてくださったセブン・ギアーズが参戦しなければ今頃も戦争をしていたか、敗退していたか……私達の世界に平和を導いたのはセブン・ギアーズだって言うのは間違いありません。」

「そんな大それた事ではないですよ。軍曹。」

「そうっす!自分らは悲しむ人達を見たくないから戦争に参戦したに過ぎないっす!」

すると軍曹は目を涙で少し滲ませながらハッとして歩きながら声を少し震わせる。

「やはり、あなた方は損得を考えず世界の為、またこの住人の平和と幸せの為に名誉や名声、地位なんかこれっぽっちも考えてない方達……そんなあなた達を見て軍に志願して一緒に戦ってきたことを誇りに思います……」

その後は何も喋らず黙々とパンサー王の居る部屋に案内されて、ドアの前で軍曹が軽くノックした後にドアを開けると、パンサー王が俺とアスカを見て懐かしげに話しかける。

「おぉ!ショウにアスカ!久しぶりではないか!」

「久しぶりっす!パンサー王。」

「お久方振りです。パンサー王、折り入って話がございまして。」

「うむ。分かっておる。軍曹、少し席を外してはくれぬか?」

「ハッ!」

パンサー王は俺がやって来る事を予知していたのか一旦、俺とアスカだけを残し軍曹を部屋から外してもらい、その言葉に軍曹は部屋を退席する。

「パンサー王。お聞きしたい事が複数ありますがよろしいですか?」

「うむ。リミカ嬢の事であろう?」

「はい。」

「リミカは本当にあのカイジン王の娘なのでしょうか?そしてリミカの目的は本当にカイジン王の遺品である七宝具を集めて遺品と共にカイジン王の墓に供えるのが目的は本当なのですか?」

「うむ。調べた訳ではないが、リミカ嬢を連れていたお供のカイジンが言っておった。」

やはりリミカの言っていた事は嘘じゃなさそうだな。リミカも暫くの間はお供のカイジンと一緒に過ごしていたという話。

続けてパンサー王は喋り続ける。

「戦争が終結して3年後の話。とある国民の通報により秘密裏に余と複数の部下を連れてカイジン残党の討伐に向かう事になった時。」

「つまり5年前の話?」

「うむ。ダンジョン付近の住民から通報があったのだよ。」

確かこれぐらいの時期に国内でカイジンの残党が現れたって言う噂話を聞いた事があったな。パンサー王は秘密裏に討伐に向かったって話だから時期的に合致する。

「ダンジョン?なぜリミカ達がダンジョンに居たのです?」

「その、お供が言うにはリミカ嬢の頼みであったそうだ。」

「頼み?」

「うむ。リミカ嬢としては自分でダンジョンを攻略しカイジン王の遺品を持ち帰りカイジン王の墓前に供えようとしたが、お供は自分の事よりもリミカ嬢の心配をしており、そのお供1人単独でダンジョンを攻略しようとしたが、聞いての通りダンジョンはそんな簡単に出来てはおらぬ。入ったのは良いが数え切れないトラップに命からがら戻ってきた時には、傷だらけの状態だった。」

「手負いのカイジンを討伐したと?」

「討伐したのは間違いないが、そのお供が自ら倒される事を望んだのだ。」

「自ら?なぜ?」

「『自分は所詮はこの世界に仇をなす存在。しかしリミカ様は人の血が流れている。もし、リミカ様の命助けると言うなら、自分の命を差し上げよう。もし約束を違いリミカ様の命を葬れば世界は再び混乱を巻き起こす。』そういった後に、お供は自ら兵士の持つ槍を自分の頭に自害して余はリミカ嬢を戦災孤児として、つい最近まで育てたのだよ。」

「リミカに人間の血が混じってる?!」

「つまりリミカちゃんはカイジン王と人とのハーフという事っすか?!」

俺とアスカはパンサー王の言葉に驚きを隠せず声を大きく上げてしまう。

確かにカイジンと人のハーフなら、あの容姿は分かるし、カイジン王の娘ならあの精霊術に魔法、そして剣技にも納得いく。

「戦時中、このマギ・ワールドの年頃の若いオナゴ達がカイジンの元へ連れ去られたのも事実、幾多のオナゴ達が未だに行方不明なのだから、その1人にリミカ嬢の母親がいるのも可能性は低くわない。」

「なるほど。」

「確かにそれは否定出来ないっす。」

パンサー王の言う通り戦時中に年端もいかない女達がカイジンの元に連れ去られたのは事実だし、戦争が終わっても家族が行方不明のままの住人が居るのも事実。その家族にとっては、まだサウザンド・デイ戦争は終わってはいない。

「パンサー王。お言葉ですが、なぜ敵であるカイジンの言葉を鵜呑みにして、リミカを保護したのですか?」

「確かに鵜呑みにしたのは迂闊だと思ってる。その場に居た兵士でさえリミカ嬢の命を取ろうとしたが、しかしリミカ嬢の行動に余は保護する事に決めたのだ。」

「どういう事っすか?」

「うむ。それはリミカ嬢は死んだカイジンを弔ったのだ。」

「弔った?リミカが?」

「カイジンが死んだ後にリミカ嬢は見た事ない魔法の力で地面に穴を開ける形で刀で叩きつけて、穴を掘りカイジンを埋めて近場にあった木の苗を植えて樹木葬
して弔ったのだ。」

樹木葬。それは墓石の代わりに樹木を墓標にする墓の事だ。

「……」

「……」

俺とアスカは何とも複雑な表情をしながら何も考えられなかった。

「それで余は本当にリミカ嬢はその遺品を揃えてカイジン王の墓に遺品を供えて眠ってもらいたいと本気で思ってる事を信じる事にしたのだよ。」

確かにパンサー王の言う通り、誰かの死にそれが誰であろうと最後の手向けとして弔いたいって思わないとリミカのそういう行動は出来ない。

「それとパンサー王。聞きたい事がまだあります。ダンジョンを攻略しようとしてるのに世界政府の元老院達は何も言わないってのは変な話じゃないですか?」

「そっうすよ!あんな危険極まりない代物が他の者、ましてやカイジン王の娘が手に入れようとしてるのに……」

そう、それが問題だ。あの七宝具は終戦後にマギ・ワールドを統べる7つの国の王がそれぞれ1つずつ持ち帰り、そのカイジン王の呪いと言われるほどの強大で邪悪な魔力な為、ダンジョンに封印されたと言う。

ひとたび手にすれば暴走に近い形で温和で気の優しい者でさえ凶暴で反社会的な性格なまるでカイジンの様な性格になると言われる。

数え切れない犠牲を出して平穏が訪れた世界でカイジン王の七宝具なんて再び戦争の火蓋が落とされる要因になるにも関わらず、7つの国を治める王より上の立場の世界政府の元老院達が黙っちゃいないはず。

「それについてだが、世界政府の元老院達はダンジョン攻略についてはそれぞれ国の王達の一任で管理を任せるとダンジョンに封印される前に言われておってな。」

「「っ?!」」

「どう言う事だ?」

「だって、ひとたび手にすれば取り憑かれた様に破壊衝動が起きるって言うじゃないっすか?!」

「うむ。直接、それは手にすればの話。なので終戦直後にとある兄弟発明家が七宝具を1つずつ手の平サイズの【キューブ】と言われる物に収めてダンジョンに封印したのだ。仮にダンジョンを攻略したとしてもキューブに封印された七宝具を持ってる分には呪いを受けないと言われている。」

「兄弟発明家っすか?」

「なんでも、世界政府直轄の発明家らしい。名前は兄のヴィンチ。弟のガリレイ。その者らが開発されたキューブによってダンジョンを攻略しても悪用されない保険というやつだ。」

世界政府直轄の発明家兄弟。俺は今まで科学者やら発明家を知る限りではかつてのセブン・ギアーズのタイガともう1人しか見た事ない。

「一応だが、余の国ではリミカ嬢のダンジョン攻略を許可をしようと思ってる。だが、温情や優しさで許可はしないと思っている。」

「でしょうね。それじゃあ、周りに対する示しが付かない。ましてや他の国との軋轢になる可能性もありますしね。」

「んで?どうすればリミカちゃんはダンジョン攻略を許可して頂くっすか?」

「まずは、この資料を見てほしい。」

俺とアスカは机の上に置かれた束になっている資料をパラパラとめくり始める。

「これは……」

「名簿じゃないっすか?」

続けてめくり続けると最後のページには以上。クエスト行方不明者の名前。と書かれているではないか。

「「?!!」」

ハンターがクエストで行方不明となる者は少ないとは言えない。だけど資料を見る限りでは共通して言えるのは新種のモンスターの実態。

「見ての通りだが、最近になり異種交配による新種のモンスターが現れると聞いている。」

「新種のモンスターっすか?」

「あぁ、戦争が終わってからそう言う話は、ちょくちょく耳にしている。」

「やっぱりカイジンによる生態系が狂わされたからっすか?」

「俺らハンターの間ではそう言われている。俺はまだ見た事ないんだがな。クエ管からそう言うクエストの仕事はもらってないんだが、どう言う事です?」

するとパンサー王は冷や汗を少し滴りながら苦い表情で話す。

「うむ。この新種のモンスターについてはズーパークだけでなく、他の国の出身であるハンター達も行方不明になっている。」

確かにリストを見ると名前だけでなく出身国、生年月日などが載っている。

「つまり、この問題を片付けてくれればリミカちゃん及び自分らはダンジョン攻略を許可しても良いって事すか?」

「うむ。それに他の国のハンター達の行方も分かればその国の者を救出したとして、他のダンジョン攻略の許可の交渉材料にもなると思われよう。」


確かに自分の国の出身者を助け出したとなれば、嫌な気持ちにならない偉い奴は居ないだろう。パンサー王の言う通りコレはリミカにとっては大きい交渉材料になる。

「了解しました。このリストに載っている行方不明者を探し更に新種のモンスターの実態を探ればダンジョン攻略の許可をしていただけると言う事ですか?」

「うむ。やってくれるか?」

答えは決まっている。

「やらせて頂きます。アスカも良いよな?」

「もちろんっす!」

「くれぐれも気を付けてくれ。新種のモンスターの実態クエストとアスカ。お前にも新米ハンターの登録をこちらでしておく。」

「えっ?自分がハンターっすか?!」

アスカはどうやらハンターにならないとクエストに参加出来ない事は全く知らない様子。それもそうか。

「クエストをするにはハンターライセンスが必要なんだよ。そうしないと色々と法律に引っかかるんでな。」

「そうなんすか?まぁ、大丈夫っす!」

「アスカに関しては余の推薦でズーパークの国家直属のハンターとして余が登録しておく。職業は何が良いかの?」

ハンターにも色々と職業があって、リミカなら剣士、俺の場合は拳闘士に当たるんだけど俺は何か適当にパンサー王に勝手に拳闘士にされていた。

まぁ、白兵戦が得意だから良いんだけど。

「そうだの。アスカは狙撃手で登録しておくかの。」

「はい。元々、銃を使ってので良いっすけど。」

パンサー王の直筆の元、アスカも俺と同じズーパークの国家直属のハンターとしてライセンスを発行してもらい受け取ると明日にはクエ管からクエストが依頼される様だ。

ついでにアスカもリミカと同じ様に新米ハンター。アスカを育成する為の上司に当たるのが俺という形になる事で合意した。

明日から行方不明者の捜索のクエストが始まる。

それと同時にまた波乱を待ち受けている事だと俺はまだ知らなかった。

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