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第二章 暗躍するもの
5 遺産
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「おはよ。おとうさん」
「ああ、おはよう加藤さん。惜しかったね。昨日は」
「ううん、上出来よ。それに、全国までいったら忙しくなるし」
「でも、ほんとにすごいよ。僕なんか、どんなに練習してもレギュラーにもなれない」
「……レギュラーになりたいの? おとうさんは」
「そりゃあ、まあ……」
「そうなんだ。でも、おとうさんは人が好すぎるからなぁ」
「……お人好しだとレギュラーになれないの?」
「う~ん……。だって、軟式のテニスって、打てるようになったら、あとは騙し合いだもん」
「……そう……なの?」
「そうよ。だからテニスのときだけ意地悪になればいいんじゃない?」
「意地悪ねえ……」
「極意はあれよ、『ハエのように舞い、蚊のように刺す』よ」
「……それって確か、『蝶のように舞い、蜂のように刺す』じゃなかった?」
「それはボクシングか何かの話でしょ。テニスは華麗に舞う必要ないし、必殺技もいらないよ。目障りに動いて、こそっと刺せばいいの」
「すごい……。なんか僕にもできそうな気がしてきた」
「それがなかなか難しいのよ。……お人好しには」
「そうなの?」
「うん、たぶん。体に染み付いてるからね。……特におとうさんは」
「……じゃあ、加藤さんの正体は悪人なの?」
「ひひひ。……そうよ。わたし、極悪人なの」
◇◆◇◆◇◆◇◆
加藤の家からの帰り道、自転車を漕ぎながら三上は、在りし日の加藤美咲がテニスの関東大会で惜しくも入賞を逃した翌日の会話を思い出していた。
わたし、極悪人なの……か。今にして思えば意味ありげだったな、あれ。
SDカードと手紙を財布に納めて自宅に着いた三上に、兄の洋一が言う。
「修一、お前どこ行ってたんだ。こんなときに」
父の葬儀は終わったものの、三上の自宅は親戚を含めてまだいろんな来客があって落ち着かないうえに、マスコミの取材もしつこかった。
「ごめん兄ちゃん。この前事故に遭ったクラスメイトのうちに線香あげに行ってたんだ。……なんか急にそんな気分になって」
「……そうか。まあいいや。それより母さんが心配してるぞ。お前、いつから学校に行く?」
「え……。明日から、じゃないの?」
「……大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ、たぶん。殺した方じゃないんだから」
「まあ……そうだけど、中学だと……いろんな噂で悩むんじゃないか?」
「でも、このまま不登校になるわけにもいかないよ」
「だから母さんは、最悪の場合は転校も考えてる」
そこまで考えるのは早すぎだよ……。
そう思いながら三上は母のところに行く。
母は疲れきった顔でテーブルに着いていた。
「ああ修一、あんた学校はどうするの?」
「どうもしないよ」
「大丈夫なの? お母さん心配なのよ」
「心配ないよ。茶化せる話じゃないんだから」
「でも、ヤクザとの付き合いとか、別居してたこととか……テレビでいろいろ言われてるし……」
「母さん、僕たちは被害者なんだ。堂々としてていいと思うけど」
「そう……。それならいいけど。なにかあったらすぐに教えて。いい?」
「うん、分かった」
これじゃ母さんの方が心配だな……。
会社のこととか、これからが大変なのに。
三上は後ろ髪を引かれる思いだったが、疲れた母を残して自分の部屋に入った。
今はこっちの方が優先だ。……僕にとっては。
三上は机にSDカードと手紙を置いた。そうして手紙を開き、あらためて文面を確かめる。
三上くんは信じて大丈夫……か。
既に亡き加藤美咲の言葉を読みなおして三上は胸を熱くする。
加藤さんは自殺だった……。そして自殺する10分前にメールを送って、このSDカードを僕に託した。
応えなきゃ。加藤さんの遺志に。
よし、と覚悟を決めて三上は自分の携帯電話の電源を落としてカバーを外すと、SDカードを自分の物から加藤美咲の物に挿し替える。
加藤さんとひとつになった……。
健全な男子中学生の不謹慎な妄想が頭をよぎる。
……駄目だ。何を考えてるんだ、僕は。
三上は邪念を断ち切るようにして携帯電話の電源を入れる。
開けるのは、まずは画像だな……。
三上は携帯電話を操り、SDカード内の画像を開く。
画像は3つのフォルダに分けられていた。
……「進学」「就職」それと「一般」……。
なんだこの、高校のクラス分けみたいな分類は。
三上はまず、一番上の「進学」のフォルダを開く。
「これ……は、名刺?」
三上は次々に画像をスクロールさせて確認した。
結果、フォルダ内に30ほどある画像は全部が名刺の画像だった。
大学教授や学校法人の理事など、ほとんどが教育関係者のものだった。
次に「就職」のフォルダを開く。
こっちも名刺だ……。
三上は同じように画像をスクロールしていく。
「あ……」
ため息に近い小さな声とともに三上の手が止まる。
父さん……。液晶画面に表示されたのは三上の父、俊一の名刺だった。
なんで父さんの名刺が加藤さんのSDカードにあるんだ?
加藤さんが死んだ理由、父さんが殺された理由……どう繋がるんだ? ……これから。
結局その「就職」のフォルダには20枚ほどの名刺が納められていた。
どれも有名な企業の立派な肩書きの名刺で、その中にあって自分の父は社長とはいえ、どちらかというと見劣りする方だと三上は思った。
三上は最後の「一般」というフォルダを開く。
ここは10枚ちょっとか。一般とは何だろう……。
「…………え?」
それは、三上が初めて見る名刺……国会議員の名刺だった。
衆議院が7枚、参議院が5枚……。たぶん現職だ。それも与党の。中学生の三上でも名前を聞いたことがあるベテランもいる。
……加藤さん……いったい何をしていたんだ? この名刺の人達みんなと知り合いだったのか?
……信じられないけど。
知り合いだったとして、何のために?
三上は「どんな想像も超える」と断じた加藤美咲の父の言葉を思い出して身震いした。
……よし、次は音声ファイルだ。
すごい数のファイルがある…が、音楽などではない。
作成日時がそのままファイル名になっているので、何かの録音データのようだ。
それにしてもかなりの数………百はかるく超えている。
三上は適当にひとつ選んでデータを再生する。
……ん? 何も聞こえない。これは中身がないのかな?
他のファイルにしよう。そう思ったとき、「バタン」とドアが閉まるような音がしたので思いとどまった。そしてまた無音……なんだ?
そうしてしばらく待つと、もう一度「バタン」と音がして、今度は話し声が聞こえた。
〝あ~先生やっと来たぁ〟
〝ごめん、遅くなった〟
〝やぁ……ん、まだダメだよ。ね、先生、これ解いて〟
〝ん? どれ? ……ああ、これはめんどくさいね〟
〝ほんとは分かんないんじゃないのぉ?〟
〝いや、分かるよ。難しくはないんだけど……。そうだな……全部aで計算するからめんどくさいけど、まずこの60°の扇形から三角形の面積を引くとここの部分が出るから、それを30°のやつから引けばいい。あとは計算だよ〟
〝え~、めんどくさ~い〟
〝だろ? でも、こんなのが分かんないんじゃ、おしおきがいるかな?〟
〝も~、先生のえっち~〟
これは……盗み録り、か?
先生ということは家庭教師かなにかだろうけど……。
しかし、女の子の甘えた声と、男のいやらしい感じは普通じゃない。
聞いたことがあるような声だけど加藤さんじゃないし……。なんだこれ。
そうしてその音声が示す状況は、三上の予想の斜め上に進んでいく。
〝さあ、ぜんぶ脱ぐんだ。一枚ずつな〟
〝え~、はずかしいよぉ〟
〝ダメだ。これはおしおきなんだからな、ユキ〟
……ユキ? ……有紀……これは、清水さん……か?
そうだ。いつもはこんな甘えた声は出さないけど……この声は清水さんだ。
清水さんが……あの清水さんが、何をやってるんだ?
音声はさらに過激になっていく。三上は慌てて携帯電話にイヤホンを差した。
言葉で辱しめられながら、清水さんは着ているものをぜんぶ脱いだ。
それから男に言われるままお尻を突き出して、「うわぁ、丸見えだよ」なんて言われてる……。
清水さんは恥ずかしいと言いながらも、その声は湿っている。激しい背徳感に苛まれながら三上は音声を止められない。
そして……とうとうアレが始まった。
三上は泣いていた。
三上が持つ性知識を軽々と飛び越えて、音声はどこまでも過激になっていく。
結局三上は耐えきれず、最後まで聞くことができなかった。
涙が止まらないが、その感情に当てはまる言葉が見当たらない。
たった一本の音声データによって、三上の心は焼き尽くされてしまっていた。
そして心に家を失なった三上は放心して焼け野原に立ち尽くす。
清水さんは拒んでいなかった……。
つまり古い言い方をすれば援交……か。
加藤さんはそれを隠し録りしていたのか?
いや、ファイルはまだたくさんあるのだ。
それに名刺も50人分以上あった。
三上は義務感を奮い起こして音声ファイルをもうひとつ再生する。
違う声……違う相手。でも、やることは同じだ。
再び涙が流れ出す。それなのにヘソ下三寸が固くなるのを抑えられない自分が情けなくてさらに涙する。
これはもう、援交なんてものじゃない。
これは……組織売春だ。加藤さんは、女子を囲って売春をさせていた……。
『失敗したみたい』……。これが自殺の理由なら……警察にバレたのか?
知る権利がある……。手紙にあった言葉はおそらく、僕の父さんが客のひとりだったということだ。
名刺の人たちがみんな客なら、とんでもない上客ばかり……。
国会議員にとっては致命的なスキャンダルだ。
……間違いなく。
単純な理屈で考えるなら、加藤さんは身分ある大人たちの弱味を握っていたことになる。
……危険だ。あまりにも。
惨禍から少し立ち直った三上は、携帯電話のファイル管理ソフトを立ち上げて、SDカード内の他のデータを確認する。
データは幾つかある……が、これらはアプリケーションのデータなので、携帯電話にそのアプリを入れないと開けない。
だが、どのアプリなのかが分からない。
他には……そう、メールだ。
僕は加藤さんのメールアドレスを知っている。そして加藤さんは手紙に、アカウントのパスワードを遺している。
『みさき‐おとうさんで開いてね』と。
三上はメールアカウントのログインページを開く。
必要なのはアドレスとパスワードだ。三上は上のボックスにメールアドレスを入力してから、下のボックスにパスワード入力を試みる。
misaki‐otousan
エラーメッセージが表示される。違うか……。
そうか、数字を含まなきゃいけないのか。
とすれば……こうか。
misaki‐0103
これも違う。……ハイフンは要らないのか?
misaki0103
……開いた。
ブラウザがクラウド上のメールを読み込む。
加藤美咲の死後もアカウントは活きているので、結局、先週金曜日……三上の父が殺されたとされる日が最後の受信だった。
「ああ……」
即座に三上は、自分の父が殺された理由のおおよそを悟った。
金曜日の昼前、「三上先生」なる送信者からのメールが最終だったのだ。
01/08 11:24
from:三上先生
もういい!
始業式だから直接見つけてやる。
あとで文句言うなよ。
01/05 15:33
from:三上先生
いい加減にしろ!
連絡しないと許さんぞ。
12/30 12:41
from:三上先生
メールは届いてるんだろ?
だったら返事しろ。
12/24 15:52
from:三上先生
おい、ほんとにどうなるんだ?
12/21 11:14
from:三上先生
メールは届くみたいだね。
誰が引き継いだの?
12/19 12:58
from:三上先生
届くかな? これ
「最低だ。……クソ親父」
殺されて当然……。三上は身体の芯から父親を軽蔑し、憎悪した。
このときを境に、三上の中で「父さん」は「クソ親父」になった。
つまりクソ親父は、メールがクラウド上に保存されるという仕組みを理解していなかったのだ。
恥ずかしいことに、このメールアドレスに関わっていた人間の中で唯ひとりだけ。
しかも加藤さんが死んだ二日後には様子見のメールをしている……。呆れたどころの話じゃない。
そして始業式の日に暴挙に出て、そして消された。
ヤクザに指示を出したのは誰だろう?そこまでは判らないな……。
そしてメールは加藤美咲の生前へと遡る。死の前、最期の送信は三上に宛てたものではなかった。
「……なんだ? これ」
12/17 22:15
from:自分
ここしかない!
(  ̄∇ ̄)/'↑
「…………。」
午後10時15分……。死の5分前に自分からのメール……。
ここしかない……とは、死に場所のことか?
それにしても……。これがこれから死のうとする人のメールか? 悲愴感の欠片もない。
死の間際の加藤美咲の心理がまったく掴めないまま、三上は受信メールをさらに遡る。
加藤美咲のメールアドレスで送受信されたメールをあらかた確認したところ、ほとんどが客と女子の日程調整のメールだった。
客のメールも女子のメールも「進学」「就職」「一般」に仕分けられていた。
三上とのやり取りは「☆おとうさん☆」というフォルダに収められていた。どうやら加藤美咲のメールアドレスを知っていた男子は三上だけだったようだ。
本当のお父さんとはメールをしてなかったのか?
そんなことを思いつつ、さらにメールを確認していると、携帯電話がメールの受信を告げた。
このアドレス宛てだ……無題……。
三上は背筋に冷たいものを感じながらメールを開く。
メールの送信者はアカウントを管理するIT企業だった。
『君は、継ぐ者か?』
三上は携帯電話を放り投げたい衝動に駆られたが、すんでのところで堪えた。
もう不正ログインがバレたのか?
三上が何もできずに固まっていると、さらにメールが来る。
『男とは意外だな。答えてくれ、君はこのアカウントを引き継ぐ者なのか?』
三上の血の気が引く。息をすることもできない。
男って、なんで……。まさか、作動してるのか?
……カメラが。
『まあいい。しばらくは様子を見よう』
3通目のメールを表示しても、三上はまだ茫然としていた。
「あ……」
たて続けに受信したメールが勝手に削除された。
受信した形跡すらなくなっている……。
抹消したのだ、クラウド……いや、サーバから。
ということは……本物の管理者なのだ、今のは。
三上は部屋を出て階段を降り、母に告げた。
「母さん、やっぱり1日だけ学校を休むよ」
翌朝、三上は東警察署の2階にいた。
来意を告げて廊下の長椅子で待っていると、父親の身元が判った時に対応してくれた女性刑事が声をかけてきた。
富永刑事、だったかな……。
綺麗で、感じの良い人だ。
「お待たせ。今日はどうしたの? 三上くん」
「はい、あの……そうですね。ここじゃ、ちょっと……」
富永刑事が優しく笑う。
「分かった。じゃあ小さい部屋に入りましょ」
小さい部屋とは取調べ室だった。この前は応接室のような部屋だったので、本物の取調べ室に入るのは初めてだった。
「これが本物の取調べ室……初めて入りました」
「そう? ……まあ、入らなくていい場所よね。さ、奥に座って」
「はい」
三上は灰色の机を挟んで奥の椅子に着いた。富永が口火を切る。
「今日は学校休んだのね。どうしてここに?」
「刑事さん、親父は、売春の客でした」
富永の顔が真剣になる。
「……どういうことかしら?」
「親父は加藤さんがしていた売春の客、それが原因で殺されました」
富永の眼に驚きが浮かぶ。そして三上を見据えて少し考える。
「……三上くん、どこまで知ってるの?」
「だいたい全部、のつもりです。刑事さんは加藤さんの件、どこまで知ってるんですか?」
「私も、だいたい全部……知ってるつもりよ」
「それは、判ったことを知っているだけじゃないんですか?」
「……どういう意味かしら」
「僕は、加藤さんからSDカードとメールアカウントを託されました。客のデータもメール記録もあります」
「……本当に?」
「はい、間違いなく」
「分かった。ちょっと待っててね」
そう言うと富永刑事は部屋を出ていってしまった。……生意気だったかな、言い方が。
すぐに富永刑事は戻って来たが、今度は体格の良い男を連れていた。鋭い眼が三上を射抜く。
え……この人って、まさか……。
「……刑事さん、その人、もしかして……父を殺したヤクザの人……ですか?」
一瞬の沈黙が部屋を包む。
「………ぶふっ」
突然、富永刑事が吹き出した。それを皮切りに富永刑事と男は大笑いし始めた。富永刑事は涙まで流している。
ひとしきり笑ったあと、腹を抱えながら富永刑事が言った。
「似たようなものだけど違うの。これはうちの刑事課長よ」
「……富永、上司はモノじゃない」
「……課長さん、ですか」
「ガラが悪くてすまねえな。おい坊主」
「は、はい」
「本当か? その……託されたってのは」
「あ、はい、本当です。加藤さんのお父さんにも会いました」
「……そうか。ちょっと待っとけ」
刑事課長は携帯電話でどこかに電話をかける。
「俺だ。仕事中悪いな。なんか昔のお前みたいな坊主が来て美咲ちゃんの話をな……ああ、なに? 本物? ああ、そうだ。……そうか、うん、お前がそう言うなら……分かった。じゃあ切るぞ」
電話の相手は加藤さんのお父さんのようだ。
ずいぶん親しいみたいだけど、どんな関係なんだろう。
「おい富永」
「はい」
「ぜんぶ話してやれ」
「え……いいんですか?」
「ああ、この失礼な坊主は加藤いわく『もうひとりの俺』だそうだ」
「ああ、おはよう加藤さん。惜しかったね。昨日は」
「ううん、上出来よ。それに、全国までいったら忙しくなるし」
「でも、ほんとにすごいよ。僕なんか、どんなに練習してもレギュラーにもなれない」
「……レギュラーになりたいの? おとうさんは」
「そりゃあ、まあ……」
「そうなんだ。でも、おとうさんは人が好すぎるからなぁ」
「……お人好しだとレギュラーになれないの?」
「う~ん……。だって、軟式のテニスって、打てるようになったら、あとは騙し合いだもん」
「……そう……なの?」
「そうよ。だからテニスのときだけ意地悪になればいいんじゃない?」
「意地悪ねえ……」
「極意はあれよ、『ハエのように舞い、蚊のように刺す』よ」
「……それって確か、『蝶のように舞い、蜂のように刺す』じゃなかった?」
「それはボクシングか何かの話でしょ。テニスは華麗に舞う必要ないし、必殺技もいらないよ。目障りに動いて、こそっと刺せばいいの」
「すごい……。なんか僕にもできそうな気がしてきた」
「それがなかなか難しいのよ。……お人好しには」
「そうなの?」
「うん、たぶん。体に染み付いてるからね。……特におとうさんは」
「……じゃあ、加藤さんの正体は悪人なの?」
「ひひひ。……そうよ。わたし、極悪人なの」
◇◆◇◆◇◆◇◆
加藤の家からの帰り道、自転車を漕ぎながら三上は、在りし日の加藤美咲がテニスの関東大会で惜しくも入賞を逃した翌日の会話を思い出していた。
わたし、極悪人なの……か。今にして思えば意味ありげだったな、あれ。
SDカードと手紙を財布に納めて自宅に着いた三上に、兄の洋一が言う。
「修一、お前どこ行ってたんだ。こんなときに」
父の葬儀は終わったものの、三上の自宅は親戚を含めてまだいろんな来客があって落ち着かないうえに、マスコミの取材もしつこかった。
「ごめん兄ちゃん。この前事故に遭ったクラスメイトのうちに線香あげに行ってたんだ。……なんか急にそんな気分になって」
「……そうか。まあいいや。それより母さんが心配してるぞ。お前、いつから学校に行く?」
「え……。明日から、じゃないの?」
「……大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ、たぶん。殺した方じゃないんだから」
「まあ……そうだけど、中学だと……いろんな噂で悩むんじゃないか?」
「でも、このまま不登校になるわけにもいかないよ」
「だから母さんは、最悪の場合は転校も考えてる」
そこまで考えるのは早すぎだよ……。
そう思いながら三上は母のところに行く。
母は疲れきった顔でテーブルに着いていた。
「ああ修一、あんた学校はどうするの?」
「どうもしないよ」
「大丈夫なの? お母さん心配なのよ」
「心配ないよ。茶化せる話じゃないんだから」
「でも、ヤクザとの付き合いとか、別居してたこととか……テレビでいろいろ言われてるし……」
「母さん、僕たちは被害者なんだ。堂々としてていいと思うけど」
「そう……。それならいいけど。なにかあったらすぐに教えて。いい?」
「うん、分かった」
これじゃ母さんの方が心配だな……。
会社のこととか、これからが大変なのに。
三上は後ろ髪を引かれる思いだったが、疲れた母を残して自分の部屋に入った。
今はこっちの方が優先だ。……僕にとっては。
三上は机にSDカードと手紙を置いた。そうして手紙を開き、あらためて文面を確かめる。
三上くんは信じて大丈夫……か。
既に亡き加藤美咲の言葉を読みなおして三上は胸を熱くする。
加藤さんは自殺だった……。そして自殺する10分前にメールを送って、このSDカードを僕に託した。
応えなきゃ。加藤さんの遺志に。
よし、と覚悟を決めて三上は自分の携帯電話の電源を落としてカバーを外すと、SDカードを自分の物から加藤美咲の物に挿し替える。
加藤さんとひとつになった……。
健全な男子中学生の不謹慎な妄想が頭をよぎる。
……駄目だ。何を考えてるんだ、僕は。
三上は邪念を断ち切るようにして携帯電話の電源を入れる。
開けるのは、まずは画像だな……。
三上は携帯電話を操り、SDカード内の画像を開く。
画像は3つのフォルダに分けられていた。
……「進学」「就職」それと「一般」……。
なんだこの、高校のクラス分けみたいな分類は。
三上はまず、一番上の「進学」のフォルダを開く。
「これ……は、名刺?」
三上は次々に画像をスクロールさせて確認した。
結果、フォルダ内に30ほどある画像は全部が名刺の画像だった。
大学教授や学校法人の理事など、ほとんどが教育関係者のものだった。
次に「就職」のフォルダを開く。
こっちも名刺だ……。
三上は同じように画像をスクロールしていく。
「あ……」
ため息に近い小さな声とともに三上の手が止まる。
父さん……。液晶画面に表示されたのは三上の父、俊一の名刺だった。
なんで父さんの名刺が加藤さんのSDカードにあるんだ?
加藤さんが死んだ理由、父さんが殺された理由……どう繋がるんだ? ……これから。
結局その「就職」のフォルダには20枚ほどの名刺が納められていた。
どれも有名な企業の立派な肩書きの名刺で、その中にあって自分の父は社長とはいえ、どちらかというと見劣りする方だと三上は思った。
三上は最後の「一般」というフォルダを開く。
ここは10枚ちょっとか。一般とは何だろう……。
「…………え?」
それは、三上が初めて見る名刺……国会議員の名刺だった。
衆議院が7枚、参議院が5枚……。たぶん現職だ。それも与党の。中学生の三上でも名前を聞いたことがあるベテランもいる。
……加藤さん……いったい何をしていたんだ? この名刺の人達みんなと知り合いだったのか?
……信じられないけど。
知り合いだったとして、何のために?
三上は「どんな想像も超える」と断じた加藤美咲の父の言葉を思い出して身震いした。
……よし、次は音声ファイルだ。
すごい数のファイルがある…が、音楽などではない。
作成日時がそのままファイル名になっているので、何かの録音データのようだ。
それにしてもかなりの数………百はかるく超えている。
三上は適当にひとつ選んでデータを再生する。
……ん? 何も聞こえない。これは中身がないのかな?
他のファイルにしよう。そう思ったとき、「バタン」とドアが閉まるような音がしたので思いとどまった。そしてまた無音……なんだ?
そうしてしばらく待つと、もう一度「バタン」と音がして、今度は話し声が聞こえた。
〝あ~先生やっと来たぁ〟
〝ごめん、遅くなった〟
〝やぁ……ん、まだダメだよ。ね、先生、これ解いて〟
〝ん? どれ? ……ああ、これはめんどくさいね〟
〝ほんとは分かんないんじゃないのぉ?〟
〝いや、分かるよ。難しくはないんだけど……。そうだな……全部aで計算するからめんどくさいけど、まずこの60°の扇形から三角形の面積を引くとここの部分が出るから、それを30°のやつから引けばいい。あとは計算だよ〟
〝え~、めんどくさ~い〟
〝だろ? でも、こんなのが分かんないんじゃ、おしおきがいるかな?〟
〝も~、先生のえっち~〟
これは……盗み録り、か?
先生ということは家庭教師かなにかだろうけど……。
しかし、女の子の甘えた声と、男のいやらしい感じは普通じゃない。
聞いたことがあるような声だけど加藤さんじゃないし……。なんだこれ。
そうしてその音声が示す状況は、三上の予想の斜め上に進んでいく。
〝さあ、ぜんぶ脱ぐんだ。一枚ずつな〟
〝え~、はずかしいよぉ〟
〝ダメだ。これはおしおきなんだからな、ユキ〟
……ユキ? ……有紀……これは、清水さん……か?
そうだ。いつもはこんな甘えた声は出さないけど……この声は清水さんだ。
清水さんが……あの清水さんが、何をやってるんだ?
音声はさらに過激になっていく。三上は慌てて携帯電話にイヤホンを差した。
言葉で辱しめられながら、清水さんは着ているものをぜんぶ脱いだ。
それから男に言われるままお尻を突き出して、「うわぁ、丸見えだよ」なんて言われてる……。
清水さんは恥ずかしいと言いながらも、その声は湿っている。激しい背徳感に苛まれながら三上は音声を止められない。
そして……とうとうアレが始まった。
三上は泣いていた。
三上が持つ性知識を軽々と飛び越えて、音声はどこまでも過激になっていく。
結局三上は耐えきれず、最後まで聞くことができなかった。
涙が止まらないが、その感情に当てはまる言葉が見当たらない。
たった一本の音声データによって、三上の心は焼き尽くされてしまっていた。
そして心に家を失なった三上は放心して焼け野原に立ち尽くす。
清水さんは拒んでいなかった……。
つまり古い言い方をすれば援交……か。
加藤さんはそれを隠し録りしていたのか?
いや、ファイルはまだたくさんあるのだ。
それに名刺も50人分以上あった。
三上は義務感を奮い起こして音声ファイルをもうひとつ再生する。
違う声……違う相手。でも、やることは同じだ。
再び涙が流れ出す。それなのにヘソ下三寸が固くなるのを抑えられない自分が情けなくてさらに涙する。
これはもう、援交なんてものじゃない。
これは……組織売春だ。加藤さんは、女子を囲って売春をさせていた……。
『失敗したみたい』……。これが自殺の理由なら……警察にバレたのか?
知る権利がある……。手紙にあった言葉はおそらく、僕の父さんが客のひとりだったということだ。
名刺の人たちがみんな客なら、とんでもない上客ばかり……。
国会議員にとっては致命的なスキャンダルだ。
……間違いなく。
単純な理屈で考えるなら、加藤さんは身分ある大人たちの弱味を握っていたことになる。
……危険だ。あまりにも。
惨禍から少し立ち直った三上は、携帯電話のファイル管理ソフトを立ち上げて、SDカード内の他のデータを確認する。
データは幾つかある……が、これらはアプリケーションのデータなので、携帯電話にそのアプリを入れないと開けない。
だが、どのアプリなのかが分からない。
他には……そう、メールだ。
僕は加藤さんのメールアドレスを知っている。そして加藤さんは手紙に、アカウントのパスワードを遺している。
『みさき‐おとうさんで開いてね』と。
三上はメールアカウントのログインページを開く。
必要なのはアドレスとパスワードだ。三上は上のボックスにメールアドレスを入力してから、下のボックスにパスワード入力を試みる。
misaki‐otousan
エラーメッセージが表示される。違うか……。
そうか、数字を含まなきゃいけないのか。
とすれば……こうか。
misaki‐0103
これも違う。……ハイフンは要らないのか?
misaki0103
……開いた。
ブラウザがクラウド上のメールを読み込む。
加藤美咲の死後もアカウントは活きているので、結局、先週金曜日……三上の父が殺されたとされる日が最後の受信だった。
「ああ……」
即座に三上は、自分の父が殺された理由のおおよそを悟った。
金曜日の昼前、「三上先生」なる送信者からのメールが最終だったのだ。
01/08 11:24
from:三上先生
もういい!
始業式だから直接見つけてやる。
あとで文句言うなよ。
01/05 15:33
from:三上先生
いい加減にしろ!
連絡しないと許さんぞ。
12/30 12:41
from:三上先生
メールは届いてるんだろ?
だったら返事しろ。
12/24 15:52
from:三上先生
おい、ほんとにどうなるんだ?
12/21 11:14
from:三上先生
メールは届くみたいだね。
誰が引き継いだの?
12/19 12:58
from:三上先生
届くかな? これ
「最低だ。……クソ親父」
殺されて当然……。三上は身体の芯から父親を軽蔑し、憎悪した。
このときを境に、三上の中で「父さん」は「クソ親父」になった。
つまりクソ親父は、メールがクラウド上に保存されるという仕組みを理解していなかったのだ。
恥ずかしいことに、このメールアドレスに関わっていた人間の中で唯ひとりだけ。
しかも加藤さんが死んだ二日後には様子見のメールをしている……。呆れたどころの話じゃない。
そして始業式の日に暴挙に出て、そして消された。
ヤクザに指示を出したのは誰だろう?そこまでは判らないな……。
そしてメールは加藤美咲の生前へと遡る。死の前、最期の送信は三上に宛てたものではなかった。
「……なんだ? これ」
12/17 22:15
from:自分
ここしかない!
(  ̄∇ ̄)/'↑
「…………。」
午後10時15分……。死の5分前に自分からのメール……。
ここしかない……とは、死に場所のことか?
それにしても……。これがこれから死のうとする人のメールか? 悲愴感の欠片もない。
死の間際の加藤美咲の心理がまったく掴めないまま、三上は受信メールをさらに遡る。
加藤美咲のメールアドレスで送受信されたメールをあらかた確認したところ、ほとんどが客と女子の日程調整のメールだった。
客のメールも女子のメールも「進学」「就職」「一般」に仕分けられていた。
三上とのやり取りは「☆おとうさん☆」というフォルダに収められていた。どうやら加藤美咲のメールアドレスを知っていた男子は三上だけだったようだ。
本当のお父さんとはメールをしてなかったのか?
そんなことを思いつつ、さらにメールを確認していると、携帯電話がメールの受信を告げた。
このアドレス宛てだ……無題……。
三上は背筋に冷たいものを感じながらメールを開く。
メールの送信者はアカウントを管理するIT企業だった。
『君は、継ぐ者か?』
三上は携帯電話を放り投げたい衝動に駆られたが、すんでのところで堪えた。
もう不正ログインがバレたのか?
三上が何もできずに固まっていると、さらにメールが来る。
『男とは意外だな。答えてくれ、君はこのアカウントを引き継ぐ者なのか?』
三上の血の気が引く。息をすることもできない。
男って、なんで……。まさか、作動してるのか?
……カメラが。
『まあいい。しばらくは様子を見よう』
3通目のメールを表示しても、三上はまだ茫然としていた。
「あ……」
たて続けに受信したメールが勝手に削除された。
受信した形跡すらなくなっている……。
抹消したのだ、クラウド……いや、サーバから。
ということは……本物の管理者なのだ、今のは。
三上は部屋を出て階段を降り、母に告げた。
「母さん、やっぱり1日だけ学校を休むよ」
翌朝、三上は東警察署の2階にいた。
来意を告げて廊下の長椅子で待っていると、父親の身元が判った時に対応してくれた女性刑事が声をかけてきた。
富永刑事、だったかな……。
綺麗で、感じの良い人だ。
「お待たせ。今日はどうしたの? 三上くん」
「はい、あの……そうですね。ここじゃ、ちょっと……」
富永刑事が優しく笑う。
「分かった。じゃあ小さい部屋に入りましょ」
小さい部屋とは取調べ室だった。この前は応接室のような部屋だったので、本物の取調べ室に入るのは初めてだった。
「これが本物の取調べ室……初めて入りました」
「そう? ……まあ、入らなくていい場所よね。さ、奥に座って」
「はい」
三上は灰色の机を挟んで奥の椅子に着いた。富永が口火を切る。
「今日は学校休んだのね。どうしてここに?」
「刑事さん、親父は、売春の客でした」
富永の顔が真剣になる。
「……どういうことかしら?」
「親父は加藤さんがしていた売春の客、それが原因で殺されました」
富永の眼に驚きが浮かぶ。そして三上を見据えて少し考える。
「……三上くん、どこまで知ってるの?」
「だいたい全部、のつもりです。刑事さんは加藤さんの件、どこまで知ってるんですか?」
「私も、だいたい全部……知ってるつもりよ」
「それは、判ったことを知っているだけじゃないんですか?」
「……どういう意味かしら」
「僕は、加藤さんからSDカードとメールアカウントを託されました。客のデータもメール記録もあります」
「……本当に?」
「はい、間違いなく」
「分かった。ちょっと待っててね」
そう言うと富永刑事は部屋を出ていってしまった。……生意気だったかな、言い方が。
すぐに富永刑事は戻って来たが、今度は体格の良い男を連れていた。鋭い眼が三上を射抜く。
え……この人って、まさか……。
「……刑事さん、その人、もしかして……父を殺したヤクザの人……ですか?」
一瞬の沈黙が部屋を包む。
「………ぶふっ」
突然、富永刑事が吹き出した。それを皮切りに富永刑事と男は大笑いし始めた。富永刑事は涙まで流している。
ひとしきり笑ったあと、腹を抱えながら富永刑事が言った。
「似たようなものだけど違うの。これはうちの刑事課長よ」
「……富永、上司はモノじゃない」
「……課長さん、ですか」
「ガラが悪くてすまねえな。おい坊主」
「は、はい」
「本当か? その……託されたってのは」
「あ、はい、本当です。加藤さんのお父さんにも会いました」
「……そうか。ちょっと待っとけ」
刑事課長は携帯電話でどこかに電話をかける。
「俺だ。仕事中悪いな。なんか昔のお前みたいな坊主が来て美咲ちゃんの話をな……ああ、なに? 本物? ああ、そうだ。……そうか、うん、お前がそう言うなら……分かった。じゃあ切るぞ」
電話の相手は加藤さんのお父さんのようだ。
ずいぶん親しいみたいだけど、どんな関係なんだろう。
「おい富永」
「はい」
「ぜんぶ話してやれ」
「え……いいんですか?」
「ああ、この失礼な坊主は加藤いわく『もうひとりの俺』だそうだ」
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