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episode4:さて、来襲のこの時間(とき)は!
第22話 弾数ゼロの奮戦
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燃料電池からの電力を再接続。各部チェック異常なし。兵装二種類は機体との接続をたもっているが、垂直ミサイルと二十ミリライフル、ともに装弾数ゼロ。
「かーっ……まあしょうがねえよなあ、模擬戦だったし」
ただし、一つだけ現状でも使える装備はある。両手首に隠蔽装備された高周波ブレード「KODZUKA」なる代物だが、さっと諸元に目を走らせた限り、刃渡りが1メートルに満たない。
おそらくごく限定された、他にどうしようもない状況で使う隠し武器。さもなくば電工ナイフのような工具として使うものかもしれない。
「うん……こいつを当てにするのは、やめとこうな……!」
今やるべきことは、視界内をうろちょろしてゴルトバッハを攪乱する事と、あの輸送機パイロットを拾い上げて、安全な地点へ退避させることだ。
「くそったらぁ!! 行くぞぉ!!」
ドウジの脚部に組み込まれたホバージェットノズルが稼働開始。地面からわずかに浮上しつつ、しっかりと足裏でコンクリートを蹴って走り出した。実際に乗って動かしてみれば、この動きはつまり、異様にストライドの長い二足での走行だ。
「……ま、いいんじゃないか? 純粋なホバーよりはコケにくそうだ」
尻を突き上げる衝撃を噛み殺しながらうそぶく。実際これでもセンチネルのガタピシ具合からするとだいぶマシだ。
メーターの表示設定からすると最大で時速二百キロ程度には達するらしいが、擱座位置から件のパイロットまでの距離では、そこまでの加速はできそうにない。
ふと思いついて、上空のレダ機に頭部を向けた。ゴーグルの視界に表示される「通信を?」というサジェスト。
「やっぱりあったか、そういう機能」
ゴーグルを介して再起動手順を示してくれるほどだ、そういう方面でのサポートもないものかと期待したが、大当たりだった。
うなずいて「yes」のタイルを選択する。ドウジから低エネルギーのレーザー発振で信号が送られ、ネオンドールに暗号化通信の送受信リクエストを入れた。
高速戦闘中でもさすがはランキング五位。レダは即座に反応して、俺との回線をつないでくれた。
〈誰だよ、このクソ忙しいときに!〉
蓮っ葉な調子で誰何してくる声には、怒りよりも呆れたという空気が漂っていた。
「レダ! サルワタリだ」
〈おっさん!? 逃げてなかったの!?〉
素っ頓狂な声が耳を撃つ。俺としても残念だが、ここで逃げ出すわけにもいかないのだ。何となれば、今日のこの場をセッティングするに至った発端は俺の思い付きであって。
「乗り捨ててあったドウジを動かしてる。注意はそらせるだろうから、そこんとこなんか上手く利用してくれ。あと、邪魔してすまん!」
〈あはっ……! いいよいいよ、お喋りしてたって、ゴルトバッハ程度に負けるつもりはないから……わかった、そっちもうまくやって〉
「おう!」
彼女の声は俺を何やらほわっとしたいい気分にさせた。勇気が倍加するのを感じながら、うずくまるパイロットへとドウジを走らせる。そこへ不意に、レダから警告――
〈危ねぇ! 後ろ!〉
「げぇ!?」
後方上空についているらしいモルワイデからビームが一閃、俺のドウジが一瞬前にいた位置のコンクリートを赤熱させた。
(ああ、やべえ! やべえ! 次は背中を撃ち抜かれる気が……!)
ARゴーグルに機体側からの緊急操作指示が浮かぶ。俺は迷うことなくそれに従った。
ブン!
機体上半身に激しい横Gが加わり、直後に後方で何かが爆発。至近距離の爆発によろめくドウジをなんとか立て直して、目的地へ滑り込んだ。
ドウジをしゃがみ込ませ、コクピットハッチを開いてパイロットに声をかける。
「おい、生きてるか! ここはヤバいぞ、腰ぬかしてる場合か、早く乗れ!」
――ぅあ、ひゲぁッ……?
まともに言葉にならない発声と共に、彼はこちらを見上げた。二十代後半くらいの若い男だ。グライフを乗せてここまで輸送機を飛ばすくらいだから鉄火場には慣れていそうなものだが、涙と鼻水で顔中ドロドロになっているところを見ると、そうでもないらしい
「あ、ひぁ、たすたすけ助けて……!」
どうにか体の制御を取り戻し、あわあわしながら乗って来る。その様子を横目で見ながら、俺はさっきの機体挙動をログで確認した。
【左腕部装甲モジュールを後方へ射出。指向性爆薬の点火とアルミコーティングの蒸発を記録】
(なるほど……!)
あのビームの威力。追加装甲モジュールで受けるとしても装着したままでは看過できないダメージを受ける。ドウジの管制AIはそう判断して、装甲を分離させ機体後方へ飛ばしたのだ。
「さっきから妙なところでクッソ高機能だな、こいつは……!」
決め手に欠けるきらいはあるが、この引き出しの多さはかなり好みだ。どうやら俺が今後、乗機として使用すべきはこいつのようだった。
「キムラ、死んじまったんだろうなあ」
ARゴーグルを呉れた営業マンの、気合の入った眼光が思い出される。彼が生き延びていれば迷わずドウジ導入を申し入れるところだが。
〈おっさん! おっさん! なんだ今の爆発、大丈夫か?〉
モルワイデとの攻防の合間を縫って、レダが呼びかける。
「安心してくれ! 通信ができるって言うことは、俺は生きてるってことだ!」
〈それにしたって許せねえ! あん野郎、生まれてきたことを後悔させてやっからな!!〉
背部のスラスターを轟音とともに吹かして、ネオンドールが速度を上げる。
「よし、あんちゃん。ちょいと揺れるが、我慢しててくれよ」
俺はハッチを閉めると輸送機パイロットをシートの裏側へと押し込み、ドウジを再発進させた。モーターグリフ同士の交戦は速すぎて、目でとらえるのはかなり苦しかったが、俺は何とかそれらしい方向とタイミングで、機体の手に装備した二十ミリライフルをモルワイデに向けた。
そう、気合と殺気だけは必要以上に漲らせて。
(さあ、俺に気を取られろ……!)
「かーっ……まあしょうがねえよなあ、模擬戦だったし」
ただし、一つだけ現状でも使える装備はある。両手首に隠蔽装備された高周波ブレード「KODZUKA」なる代物だが、さっと諸元に目を走らせた限り、刃渡りが1メートルに満たない。
おそらくごく限定された、他にどうしようもない状況で使う隠し武器。さもなくば電工ナイフのような工具として使うものかもしれない。
「うん……こいつを当てにするのは、やめとこうな……!」
今やるべきことは、視界内をうろちょろしてゴルトバッハを攪乱する事と、あの輸送機パイロットを拾い上げて、安全な地点へ退避させることだ。
「くそったらぁ!! 行くぞぉ!!」
ドウジの脚部に組み込まれたホバージェットノズルが稼働開始。地面からわずかに浮上しつつ、しっかりと足裏でコンクリートを蹴って走り出した。実際に乗って動かしてみれば、この動きはつまり、異様にストライドの長い二足での走行だ。
「……ま、いいんじゃないか? 純粋なホバーよりはコケにくそうだ」
尻を突き上げる衝撃を噛み殺しながらうそぶく。実際これでもセンチネルのガタピシ具合からするとだいぶマシだ。
メーターの表示設定からすると最大で時速二百キロ程度には達するらしいが、擱座位置から件のパイロットまでの距離では、そこまでの加速はできそうにない。
ふと思いついて、上空のレダ機に頭部を向けた。ゴーグルの視界に表示される「通信を?」というサジェスト。
「やっぱりあったか、そういう機能」
ゴーグルを介して再起動手順を示してくれるほどだ、そういう方面でのサポートもないものかと期待したが、大当たりだった。
うなずいて「yes」のタイルを選択する。ドウジから低エネルギーのレーザー発振で信号が送られ、ネオンドールに暗号化通信の送受信リクエストを入れた。
高速戦闘中でもさすがはランキング五位。レダは即座に反応して、俺との回線をつないでくれた。
〈誰だよ、このクソ忙しいときに!〉
蓮っ葉な調子で誰何してくる声には、怒りよりも呆れたという空気が漂っていた。
「レダ! サルワタリだ」
〈おっさん!? 逃げてなかったの!?〉
素っ頓狂な声が耳を撃つ。俺としても残念だが、ここで逃げ出すわけにもいかないのだ。何となれば、今日のこの場をセッティングするに至った発端は俺の思い付きであって。
「乗り捨ててあったドウジを動かしてる。注意はそらせるだろうから、そこんとこなんか上手く利用してくれ。あと、邪魔してすまん!」
〈あはっ……! いいよいいよ、お喋りしてたって、ゴルトバッハ程度に負けるつもりはないから……わかった、そっちもうまくやって〉
「おう!」
彼女の声は俺を何やらほわっとしたいい気分にさせた。勇気が倍加するのを感じながら、うずくまるパイロットへとドウジを走らせる。そこへ不意に、レダから警告――
〈危ねぇ! 後ろ!〉
「げぇ!?」
後方上空についているらしいモルワイデからビームが一閃、俺のドウジが一瞬前にいた位置のコンクリートを赤熱させた。
(ああ、やべえ! やべえ! 次は背中を撃ち抜かれる気が……!)
ARゴーグルに機体側からの緊急操作指示が浮かぶ。俺は迷うことなくそれに従った。
ブン!
機体上半身に激しい横Gが加わり、直後に後方で何かが爆発。至近距離の爆発によろめくドウジをなんとか立て直して、目的地へ滑り込んだ。
ドウジをしゃがみ込ませ、コクピットハッチを開いてパイロットに声をかける。
「おい、生きてるか! ここはヤバいぞ、腰ぬかしてる場合か、早く乗れ!」
――ぅあ、ひゲぁッ……?
まともに言葉にならない発声と共に、彼はこちらを見上げた。二十代後半くらいの若い男だ。グライフを乗せてここまで輸送機を飛ばすくらいだから鉄火場には慣れていそうなものだが、涙と鼻水で顔中ドロドロになっているところを見ると、そうでもないらしい
「あ、ひぁ、たすたすけ助けて……!」
どうにか体の制御を取り戻し、あわあわしながら乗って来る。その様子を横目で見ながら、俺はさっきの機体挙動をログで確認した。
【左腕部装甲モジュールを後方へ射出。指向性爆薬の点火とアルミコーティングの蒸発を記録】
(なるほど……!)
あのビームの威力。追加装甲モジュールで受けるとしても装着したままでは看過できないダメージを受ける。ドウジの管制AIはそう判断して、装甲を分離させ機体後方へ飛ばしたのだ。
「さっきから妙なところでクッソ高機能だな、こいつは……!」
決め手に欠けるきらいはあるが、この引き出しの多さはかなり好みだ。どうやら俺が今後、乗機として使用すべきはこいつのようだった。
「キムラ、死んじまったんだろうなあ」
ARゴーグルを呉れた営業マンの、気合の入った眼光が思い出される。彼が生き延びていれば迷わずドウジ導入を申し入れるところだが。
〈おっさん! おっさん! なんだ今の爆発、大丈夫か?〉
モルワイデとの攻防の合間を縫って、レダが呼びかける。
「安心してくれ! 通信ができるって言うことは、俺は生きてるってことだ!」
〈それにしたって許せねえ! あん野郎、生まれてきたことを後悔させてやっからな!!〉
背部のスラスターを轟音とともに吹かして、ネオンドールが速度を上げる。
「よし、あんちゃん。ちょいと揺れるが、我慢しててくれよ」
俺はハッチを閉めると輸送機パイロットをシートの裏側へと押し込み、ドウジを再発進させた。モーターグリフ同士の交戦は速すぎて、目でとらえるのはかなり苦しかったが、俺は何とかそれらしい方向とタイミングで、機体の手に装備した二十ミリライフルをモルワイデに向けた。
そう、気合と殺気だけは必要以上に漲らせて。
(さあ、俺に気を取られろ……!)
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