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一章
敗北
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クレアは目の前の行動の理解が出来なかった。
もう既に二人の頭上には勝敗表示が出ているにも関わらず、ルメロは倒れたミゼルを攻撃している。ミゼルからは血だまりが周りに広がっていた。
それからハッとクレアは自分を恥じた。
何をやっているのかと、そんな状況分析よりもまず友を助けるべきではないのかと。
それからの行動は速かった。
「やめなさい!」
そう言ってミゼルに襲いかかっていた植物の鞭を纏めて一度に切り払おうと横薙ぎに剣を振るう。
すると、クレアとルメロの二人、そして観客たちが驚く。
植物が消えたのだ、焼け付き朽ちたように。
「なっ!! ……さすがだね、学年首席は……」
自分ではないと言おうとしたが、そんなことよりもミゼルが先だと彼に駆け寄った。
だが、不思議な事に確かに身体や服に血が付いているのに、どこにも傷が見当たらない。
クレアには意味が分からなかった。
取り敢えず、保健室に連れていこうと彼を抱える。
「そいつに起きたら伝えてくれないかなぁ……雑魚は雑魚らしく振る舞えと……よろしく頼むよ」
「そんなこと……言う必要がありません」
それで終わりとばかりにその場から離脱した。
######
「……んぅ?」
目を開くと知らない場所だった。
どうやら自分は白いベッドで眠っていたらしい。
「ふぁぁぁ」
何だか少し体が重たい。
そこへ何処からか声を掛けられる。
「起きられましたか?」
それは間違いなくクレアだった。
「あ、うん。それでここって?」
「保健室ですよ……それでどうしてここで眠っていたのか覚えていますか?」
ああ、そうか。俺は……。
「負けたんだな……」
「……ええ、そうなりますね。でも、あの試合、中々良かったですよ? とても魔法を覚えたての人の動きではありませんでしたよ。……ですが、あのルメロというあの人、勝負がついているというのに、ミゼルくんに攻撃していました。あの態度はあり得m……」 「え! ちょっちょっ待って待って! あいつ、生身の俺に攻撃したの? それであいつ生きてんの?」
クレアは何を言っているのだろうと言う顔で頷いた。
「……? はい、彼は何処にも傷を負ったようには見えませんでしたが?」
「そ、そうか。それならいいんだ」
うーん、何であれが発動しなかったのか。やっぱりまだ俺でも分かっていない法則でもあるのだろうか?
「あ……そういえば、ミゼルくんは確かに攻撃を受けていたようですが、気が付けば何処にも傷がありませんでした。……もしかしてミゼルくんが言っていた独自魔法ですか?」
「……そんなところ」
そう言ってお茶を濁した。あの呪いのことを話す気にはなれない。
だが、俺がそう言うと、クレアは考え込むようにして一瞬遠くを見ていた。
「まあ……何はともあれミゼルくんが無事なようでなによりですね」
「まあ、負けちゃったからマイナスポイントだけどな」
「……それでも、今のペースで成長していけば、きっと大丈夫です。必ず強くなれます」
学年首席であるクレアにそう言ってもらえると大変嬉しかった。たとえそれが慰めの類であろうとも。
「ありがとう、クレア。でももう遅いから寮に戻った方がいいんじゃ……」
時計はもう夕方の七時を表していた。
「そ、その前に……」
照れた様子で、クレアはこちらに目を向けた。
「……学生証に連絡先の登録……しませんか?」
と、赤みが指した顔で訊ねてきた。
なんとなくだが、クレアの人となりが分かってきたような気がする。
恐らくクレアは友人など、今ままでいなかったのだろう。だからどうやって距離を詰めればいいのか分からない。
それゆえに慣れないことをする時は、たどたどしく照れながらするのだ。そのせいなのか、どこか友人というものに対して、彼女は神聖視しすぎているのだ。
ーーまあ、そういう俺も、友がどういうものなのかをクレアに決して上から言えるような立場ではないけどなーー
そう自嘲する。
友とは小さい頃に引き離されて、それ以降ほとんど会うこともなく、巻き込む形で殺してしまっている。
だから。
「ああ、俺からも頼むよ。そしてこれからもよろしくな、クレア」
せめて今出来た友人を守ろうと。
そう心に決めた。
もう既に二人の頭上には勝敗表示が出ているにも関わらず、ルメロは倒れたミゼルを攻撃している。ミゼルからは血だまりが周りに広がっていた。
それからハッとクレアは自分を恥じた。
何をやっているのかと、そんな状況分析よりもまず友を助けるべきではないのかと。
それからの行動は速かった。
「やめなさい!」
そう言ってミゼルに襲いかかっていた植物の鞭を纏めて一度に切り払おうと横薙ぎに剣を振るう。
すると、クレアとルメロの二人、そして観客たちが驚く。
植物が消えたのだ、焼け付き朽ちたように。
「なっ!! ……さすがだね、学年首席は……」
自分ではないと言おうとしたが、そんなことよりもミゼルが先だと彼に駆け寄った。
だが、不思議な事に確かに身体や服に血が付いているのに、どこにも傷が見当たらない。
クレアには意味が分からなかった。
取り敢えず、保健室に連れていこうと彼を抱える。
「そいつに起きたら伝えてくれないかなぁ……雑魚は雑魚らしく振る舞えと……よろしく頼むよ」
「そんなこと……言う必要がありません」
それで終わりとばかりにその場から離脱した。
######
「……んぅ?」
目を開くと知らない場所だった。
どうやら自分は白いベッドで眠っていたらしい。
「ふぁぁぁ」
何だか少し体が重たい。
そこへ何処からか声を掛けられる。
「起きられましたか?」
それは間違いなくクレアだった。
「あ、うん。それでここって?」
「保健室ですよ……それでどうしてここで眠っていたのか覚えていますか?」
ああ、そうか。俺は……。
「負けたんだな……」
「……ええ、そうなりますね。でも、あの試合、中々良かったですよ? とても魔法を覚えたての人の動きではありませんでしたよ。……ですが、あのルメロというあの人、勝負がついているというのに、ミゼルくんに攻撃していました。あの態度はあり得m……」 「え! ちょっちょっ待って待って! あいつ、生身の俺に攻撃したの? それであいつ生きてんの?」
クレアは何を言っているのだろうと言う顔で頷いた。
「……? はい、彼は何処にも傷を負ったようには見えませんでしたが?」
「そ、そうか。それならいいんだ」
うーん、何であれが発動しなかったのか。やっぱりまだ俺でも分かっていない法則でもあるのだろうか?
「あ……そういえば、ミゼルくんは確かに攻撃を受けていたようですが、気が付けば何処にも傷がありませんでした。……もしかしてミゼルくんが言っていた独自魔法ですか?」
「……そんなところ」
そう言ってお茶を濁した。あの呪いのことを話す気にはなれない。
だが、俺がそう言うと、クレアは考え込むようにして一瞬遠くを見ていた。
「まあ……何はともあれミゼルくんが無事なようでなによりですね」
「まあ、負けちゃったからマイナスポイントだけどな」
「……それでも、今のペースで成長していけば、きっと大丈夫です。必ず強くなれます」
学年首席であるクレアにそう言ってもらえると大変嬉しかった。たとえそれが慰めの類であろうとも。
「ありがとう、クレア。でももう遅いから寮に戻った方がいいんじゃ……」
時計はもう夕方の七時を表していた。
「そ、その前に……」
照れた様子で、クレアはこちらに目を向けた。
「……学生証に連絡先の登録……しませんか?」
と、赤みが指した顔で訊ねてきた。
なんとなくだが、クレアの人となりが分かってきたような気がする。
恐らくクレアは友人など、今ままでいなかったのだろう。だからどうやって距離を詰めればいいのか分からない。
それゆえに慣れないことをする時は、たどたどしく照れながらするのだ。そのせいなのか、どこか友人というものに対して、彼女は神聖視しすぎているのだ。
ーーまあ、そういう俺も、友がどういうものなのかをクレアに決して上から言えるような立場ではないけどなーー
そう自嘲する。
友とは小さい頃に引き離されて、それ以降ほとんど会うこともなく、巻き込む形で殺してしまっている。
だから。
「ああ、俺からも頼むよ。そしてこれからもよろしくな、クレア」
せめて今出来た友人を守ろうと。
そう心に決めた。
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