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天邪鬼な王子様
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ノレスティアは現在十七歳。王立貴族学校の三年生である。
「まぁでもさ、そうは言っても王族なんて所詮は政略結婚じゃん?一夫多妻ができるから二番目三番目は好きな人をお嫁さんにもらってもいいよ、なんて言われてもさ。結局はこの呪いのせいで人に好きって伝えられないわけだし。そもそも人を好きになるって事が無駄なんだよきっと」
黒髪に金色の目をした少年がそう嘯いている。
中庭の隅にある大きな木の枝にぶら下げられているブランコに立ち乗りしながら、膝を曲げたり伸ばしたりして大きくブランコを揺らしている。傍らにたつ壮年の男性が揺れるブランコに合わせて黒い目を行ったり来たりさせながら適当に頷いている。
「まぁ、お世継ぎに恵まれれば二人目三人目の奥さんを無理やりもらう必要もないでしょうねぇ」
「だよね! だったら、愛を告げられなくても問題ないよね!」
壮年の男性の言葉に少年はパァと顔を輝かせ、ブランコから身を乗り出す。男性の方はブランコの板から少年の顔のほうへ視線を移動させると苦笑いをして言葉を続けた。
「でも、政略結婚だからって愛の無い結婚でいいってこともないでしょうよ。俺のいた国でも、見合い結婚ってのが有りましたけどねぇ。出会いが恋愛じゃないってだけで、ちゃんと愛を育んで仲睦まじい夫婦がほとんどでしたよ」
「うぐぅ」
男性からの指摘にしかめっ面を作った少年は、膝に力を入れてブランコを思い切り漕ぎ出した。どんどん振り子の巾が大きくなるブランコを視線で追いかけつつ、男性はやはり苦笑いのまま。
「ノレスティア王子殿下。好きな子に好きって言えないからって現実逃避しても仕方ないですよ」
「うるさーい!別に好きじゃないやい!国で決められた許嫁だからって別に好きじゃない!現実逃避っていうな!アキラ!」
「あっ」
大きくこいでいたブランコから、アキラに文句をつけるために身を乗り出したノレスティアはバランスを崩して落っこちてしまった。
アキラは、落っこちたノレスティアの元に駆け寄ってブランコの縄を掴んで動きを止めた。大きく揺れたブランコの板が起き上がった王子の頭にあたって追加ダメージを与えないようにだ。
「大丈夫ですか。頭打ってませんか?」
「うん。でも膝を擦りむいた」
地面にぺたりと座り込んで、自分の膝をじっと見つめるノレスティア。白いズボンにじわりと赤いシミが浮いてきたのをみながら、じんわりと涙がこぼれてきた。
アキラが頭の上にそっと手のひらを置いて、ゆさゆさとその頭を揺らしてやった。
「医室へ行って消毒してもらいましょう。その後は、俺のふるさとの恋を告げる詩なんかを教えますから」
「恋を告げる詩なんか教わっても、どうせラティエンヌに向かっては言えないよ……」
恋多き王様から四代後になるノレスティア。彼にも『好きな人に愛を伝えられない呪い』はしっかりと引き継がれていたのだった。
「まぁでもさ、そうは言っても王族なんて所詮は政略結婚じゃん?一夫多妻ができるから二番目三番目は好きな人をお嫁さんにもらってもいいよ、なんて言われてもさ。結局はこの呪いのせいで人に好きって伝えられないわけだし。そもそも人を好きになるって事が無駄なんだよきっと」
黒髪に金色の目をした少年がそう嘯いている。
中庭の隅にある大きな木の枝にぶら下げられているブランコに立ち乗りしながら、膝を曲げたり伸ばしたりして大きくブランコを揺らしている。傍らにたつ壮年の男性が揺れるブランコに合わせて黒い目を行ったり来たりさせながら適当に頷いている。
「まぁ、お世継ぎに恵まれれば二人目三人目の奥さんを無理やりもらう必要もないでしょうねぇ」
「だよね! だったら、愛を告げられなくても問題ないよね!」
壮年の男性の言葉に少年はパァと顔を輝かせ、ブランコから身を乗り出す。男性の方はブランコの板から少年の顔のほうへ視線を移動させると苦笑いをして言葉を続けた。
「でも、政略結婚だからって愛の無い結婚でいいってこともないでしょうよ。俺のいた国でも、見合い結婚ってのが有りましたけどねぇ。出会いが恋愛じゃないってだけで、ちゃんと愛を育んで仲睦まじい夫婦がほとんどでしたよ」
「うぐぅ」
男性からの指摘にしかめっ面を作った少年は、膝に力を入れてブランコを思い切り漕ぎ出した。どんどん振り子の巾が大きくなるブランコを視線で追いかけつつ、男性はやはり苦笑いのまま。
「ノレスティア王子殿下。好きな子に好きって言えないからって現実逃避しても仕方ないですよ」
「うるさーい!別に好きじゃないやい!国で決められた許嫁だからって別に好きじゃない!現実逃避っていうな!アキラ!」
「あっ」
大きくこいでいたブランコから、アキラに文句をつけるために身を乗り出したノレスティアはバランスを崩して落っこちてしまった。
アキラは、落っこちたノレスティアの元に駆け寄ってブランコの縄を掴んで動きを止めた。大きく揺れたブランコの板が起き上がった王子の頭にあたって追加ダメージを与えないようにだ。
「大丈夫ですか。頭打ってませんか?」
「うん。でも膝を擦りむいた」
地面にぺたりと座り込んで、自分の膝をじっと見つめるノレスティア。白いズボンにじわりと赤いシミが浮いてきたのをみながら、じんわりと涙がこぼれてきた。
アキラが頭の上にそっと手のひらを置いて、ゆさゆさとその頭を揺らしてやった。
「医室へ行って消毒してもらいましょう。その後は、俺のふるさとの恋を告げる詩なんかを教えますから」
「恋を告げる詩なんか教わっても、どうせラティエンヌに向かっては言えないよ……」
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