五度目の人生でも「君を愛することはない」と言われたので、私も愛を捨てました

たると

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冷ややかなナイフ

数日後、静寂を美徳としていたはずの公爵邸の玄関前が、かつてない喧騒に包まれた。

重厚な紋章が刻まれた大型の馬車が数台、中庭に横付けされている。
屈強な家臣たちが、一つ一つ慎重に、しかし手際よく巨大な木箱を運び出していく。
運び込まれる荷物の隙間からは、微かに魔力の残滓が揺らめき、邸内の空気をピリつかせていた。

それは、世界各地のオークションや秘密の蒐集家から、力と金に物を言わせて取り寄せられた、稀少な魔導書や見たこともない最高級の魔石の数々だった。

「ルチア、これを受け取れ。君の研究に役立つはずだ」

運び込まれた荷物の山を背に、アルベルトはルチアの前に立った。
その表情は、あたかも戦地から輝かしい戦利品を持ち帰った英雄のようだった。
わずかに顎を引き、自信に満ちた瞳で彼女を見下ろす。

彼にとって、これは単なる贈り物ではなかった。
失われつつある彼女の関心を引き戻し、再び自分という「絶対者」の傘下に彼女を繋ぎ止めるための、最高の手札であるはずだった。

ルチアは、かつてこの光景を夢見ていた。
四度目の人生、彼女は魔導の研究に行き詰まり、藁にも縋る思いで彼に請い願ったことがある。

『閣下、どうか……この禁書目録にある一冊だけで構いません。私の研究を完成させるために、公爵家の力をお貸しいただけないでしょうか』

あの時、私は膝をつき、涙を流して彼に縋った。
だが、その時のアルベルトは、手元の書類から視線すら上げず、鼻で笑ってこう言い放ったのだ。

『贅沢を言うな。女の遊びに投じる金も時間も、この家にはない。身の程をわきまえろ』

その言葉が、当時の私の心をどれほど深く切り裂いたか。
今のアルベルトは、そんな過去のことなど微塵も覚えていないのだろう。
彼は今、自分が寛大な婚約者であると確信している。

ルチアは、届けられた品々を一瞥した。
そこには、かつて喉から手が出るほど欲しかった『エリュシオンの失われた数式』の原典があり、伝説の火竜の心臓から抽出されたという真紅の魔石が転がっていた。

それらを確認した彼女は、ふっと短く、乾いた笑い声を漏らした。

「閣下、わざわざお心遣いをいただき、痛み入ります。……ですが、これらはもう、間に合っておりますの」

「……間に合っている? なぜだ」

アルベルトの顔から、自信の陰が差し始める。
彼は戸惑ったように、誇らしげに提示したはずの荷物の山を見やった。

「ルチア、冗談はやめろ。これらは市場には決して出回らない逸品ばかりだ。大陸を跨いで手配させたのだぞ。君のちっぽけな資産で手に入るようなものではないはずだ」

「ええ、その通りですわ。私一人の力では、これらを揃えるのは難しかったでしょう。……ですから、エリオット様にお願いしたのです」

「……何だと?」

「エリオット・アービング様が、彼の家系に代々伝わる私蔵ライブラリを、私のために解放してくださいました。原典はすでにすべて読了し、写本も作成済みです。魔石についても、王立学院の予算で最高品質のものが私の研究室に配備されていますわ。これ以上、私的なコレクションを増やす必要はございませんの」

「……!!」

アルベルトの顔が、屈辱と驚愕で歪んだ。
彼が全力を挙げて用意した「関心を引くためのカード」は、彼が「小僧」と侮蔑していた別の男の手によって、すでに無価値なガラクタへと変えられていたのだ。

「君は……あんな小僧の施しを受けるというのか。公爵家の婚約者が、他家の男に頭を下げてまで……!」

「『施し』ではありませんわ、閣下」

ルチアは、一歩も退かずに彼を見返した。

「これは『投資』です。アービング伯爵も、学院の理事たちも、私の才能を信じ、未来の利益のためにリソースを提供してくださっているのです。……彼らは、閣下のように私の研究を『女の遊び』と笑ったり、私の時間を『無駄』と断じて切り捨てたりする方々とは違うのです」

「っ……!」

ルチアは、かつて彼に言われた残酷な言葉を、一言一句違わずに、冷ややかなナイフにして彼の胸に突き立てた。

アルベルトは絶句した。
自分がかつて彼女に投げつけた言葉が、これほどまでに鋭利で、これほどまでに彼女の心を凍らせていたのか。
その自覚が、今さらになって彼を打ちのめす。

「もう結構ですわ。その荷物は、どうぞ適切な場所へお戻しください。……あ、もしよろしければ、それを必要としている他の研究者に寄付されてはいかがかしら? 閣下が仰る通り、これらは素晴らしい品々ですもの。無駄にするのは、それこそ『非効率』ですわ」

ルチアは完璧な礼を見せると、一度も振り返ることなく屋敷の中へと消えていった。
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