婚約者ダミアンの口から出されるのは、いつだって彼のもう一人の幼馴染――病弱で儚げな子爵令嬢、セシリア・フォスターの名だった。
『すまない、マリエル。セシリアは体が弱くて、僕がついていてやらないと駄目なんだ。君はしっかりしているから、一人でも大丈夫だろう?』
(「しっかりしているから」……。私は、寂しくないとでも思われているのかしら)
本当はしっかり者などではないし、あなたに愛してほしいのに。
文字数 72,960
最終更新日 2026.09.30
登録日 2026.09.29
ジェラルドは、実に誠実で控えめな青年だった。
病床の先代男爵の枕元に通い詰め、手料理や領地の報告を親身になって行い、先代男爵の最期を看取った。
そして、深く悲しむエレノアの肩を抱き、涙を拭いながらこう誓ってくれたのだ。
『エレノア、君の悲しみは俺がすべて背負う。ヴェルダン家の格式や財産のためじゃない。俺は……君という一人の女性を心から愛しているんだ。君のお父上から託されたこの家と、君の笑顔を、俺の命に代えても守り抜いてみせる』
その言葉に偽りはなかったと、当時のエレノアは信じて疑わなかった。
文字数 36,687
最終更新日 2026.09.26
登録日 2026.09.26
「お前を完全に捨てるつもりはない、エルマ。お前には側妃になってもらう」
サイラスは当然の権利であるかのように、高飛車に告げた。
「……側妃、ですか」
「そうだ。正妃はフィリアだが、お前にはこれまで通り、生徒会や王宮の実務、他家との調整をこなしてもらわねば困るからな。フィリアは聖女としての務めで忙しい。泥臭い裏方の作業はお前が引き受けろ。加護無しの身でありながら側妃になれるのだ、光栄に思え」
フィリアもくすくすと意地悪く笑う。
「そうですよエルマ様! 私、難しい書類仕事なんて絶対やりたくありませんから! そういう雑用は全部エルマ様がやってくだされば、私もサイラス様とラブラブでいられますからね!」
二人のあまりにも身勝手な言葉。
エルマはそっと胸に手を当て、静かに立ち上がった。
「――お断りいたします」
部屋の温度が一段下がったかのような静寂が訪れた。
サイラスの顔から笑みが消える。
「……何と言った?」
「私は、貴方の側妃にはなりません。本日をもちまして、王太子殿下との婚約を辞退させていただきます。ならびに生徒会役員も辞任いたします」
文字数 32,282
最終更新日 2026.09.14
登録日 2026.09.14
「本日をもって、僕はお前との婚姻関係を解消し、離縁することにした! この屋敷から出ていってもらう!」
「……離縁、ですか」
フェリシアの声には、動揺の一片すら含まれていなかった。
あまりにも平然とした反応に、エルネストは顔を真っ赤にして怒鳴り散らした。
「そうだ! 離縁だ! お前のような冷酷で、愛のない計算機のような女は、子爵夫人にふさわしくない! 僕は真実の愛に目覚めたのだ! マリアンヌこそが、僕の傷ついた心を癒やしてくれる真の伴侶なのだよ!」
「ええ、エルネスト様。私、エルネスト様とならどんな困難も乗り越えてみせますわ」
マリアンヌがうっとりとした表情でエルネストの胸に顔をうずめる。
「手切れ金として金貨五十枚を渡してやる。本来なら着の身着のままで追い出すところだが、僕の慈悲深さに感謝するんだな。この屋敷の財産、宝石、衣装はすべて没収だ。荷物をまとめたら一週間以内に出ていけ!」
金貨五十枚。そして一週間の立ち退き猶予。
三年間、破産寸前だった子爵領を再建し、彼が女たちと遊興に耽るための金まで捻出してやった対価が、これだった。
「……承知いたしました」
文字数 76,325
最終更新日 2026.09.05
登録日 2026.09.05
「言っておくが、俺が君を愛することは一切ない。君に求めるのは、公爵夫人という名分だけだ」
真冬の湖面のように冷ややかな宣告。
彼は私を見下ろし、畳みかけるように不干渉の条件を突きつけてきた。
「俺は社交界で擦り寄ってくる女という生き物が心底嫌いでな。家柄を振りかざし、愛を乞い、俺の私生活や公務に土足で踏み込んでくる愚か者どもには虫唾が走る。君を妻として迎えるが、俺に愛情を一切求めるな。俺の私生活にも踏み込むな。俺の領分を侵さぬ限り、衣食住の保障とハーヴィ伯爵家の負債完済を約束する。……不服か?」
(えっ……? 『愛することはない』……? 『私生活に踏み込むな』……? ちょっと待って、実家の莫大な借金を全部払ってくれた上に、夫の機嫌取りや煩わしい社交も一切しなくていいということかしら……!?)
これまでは数銅貨のために早朝から泥にまみれ、市場で泥臭く生き抜いてきた。そんな苦労に比べれば、夫からの放置など願ったり叶ったりの天国のような条件だった。
(……実家は救われ、何不自由ない暮らしが保障され、私は誰にも邪魔されずにハーブを育てて過ごせる。……神様、これはご褒美ですか!?)
文字数 38,581
最終更新日 2026.08.20
登録日 2026.08.20
『お前はしっかりしているから』
その言葉を聞くのは、これで何度目だろうか。
ルチアの誕生会の最中、「ミレーナが熱を出した」と聞いて途中で立ち去った時も。
伯爵家が主催した夜会で、ミレーナを「エスコートの練習」と称して連れ歩き、ルチアを壁際に放置した時も。
彼女が体調を崩して静養していた時に、一度も姿を見せずミレーナと乗馬に出かけていた時も。
彼は常に「お前はしっかりしているから」「あいつは手がかかる男友達だから」という言葉で、ルチアの我慢と配慮を当然の権利として踏みにじってきたのだ。
――でも、もう結構。
こんな婚約者は要りません。
文字数 37,860
最終更新日 2026.08.07
登録日 2026.08.07
「伯爵夫人としての最低限の責任すら果たせないのなら、お前はこの家に存在する価値などない。……勘違いするなよ。お前が今こうして上質なドレスを着て、暖かい部屋で美味しいものを食べられているのは、私の『妻』という看板を背負っているからだ。その役割を果たせないお前は、ただの役たたずの居候に過ぎん」
「役た……たず……」
「そうだ。これ以上、私を失望させるな。血筋の途絶えた伯爵家など、社交界の格好の笑いものだ。お前の存在そのものが、私の足を引っ張っているのだよ」
ルシアンはそれ以上エレノアを見ようともせず、背を向けた。
悲しいという感情が、消えた。
悔しいという涙が、枯れ果た。
胸の中に残ったのは、冷たく、澄み切った、絶対的な「無」であった。
(私は、何を恐れていたのだろう?)
憧れていたルシアン・フォン・グランヴェルという男。
彼は「完璧な貴族」などではなかった。ただの、自分のプライドと欲望のためなら平気で他人を踏みにじる、醜く浅ましい愚か者に過ぎなかった。
そんな男の愛を乞い、そんな男の顔色を窺い、自分を責め続けていた自分が、あまりにも愚かしく思えた。
愛が冷め切った瞬間、エレノアの瞳に絶望の影は消え、代わりに冷徹な知性が戻ってきた。
(……許さない)
エレノアは静かにカップをソーサーに戻した。カチャンと澄んだ音が響く。
(私を足蹴にし、私の尊厳を踏みにじったこと……後悔させてあげるわ。ルシアン、そしてマリア)
覚醒した氷の淑女は、静かに、誰にも気づかれぬように反撃の糸を張り巡らせ始めるのだった。
文字数 34,390
最終更新日 2026.08.04
登録日 2026.08.04
「エレミア。お前がアデルス家へ嫁がなければ、我がヴァルハイト伯爵家は破産する」
薄暗い執務室で、父である伯爵が震える手で差し出したのは、重々しい婚姻協定書だった。
そこに捺されていたのは、王都屈指の財力を誇る平民の大店『アデルス商会』の赤黒い蝋印だ。
名門ヴァルハイト伯爵家は、悪質な詐欺と事業の失敗が重なり、三万八千ルブラという巨額の債務を抱えて破滅の淵に立っていた。今月中に借金を返済できなければ、先祖代々の土地も家名も差し押さえられる。
そこに手を差し伸べたのが、平民でありながら金で王都の物流を牛耳るアデルス商会だった。
彼らが求めた条件はただ一つ。
——「長女エレミアを、アデルス商会の跡取りであるユーゴの正妻として差し出すこと」。
——「そして結婚後、伯爵家の血統をもって、平民であるアデルス家に貴族の爵位が授与されるよう全面的に協力すること」。
金はあるが身分がない平民のユーゴ・アデルスと、身分はあるが金がないヴァルハイト伯爵家。
対等な婚姻などではなく、完全な「身売り」だった。
「……お父様。私が嫁ぐことで家が救われるのでしたら、喜んで参ります」
しかしそれは地獄の入り口だった。
文字数 48,047
最終更新日 2026.07.27
登録日 2026.07.27
「――今日も疲れているんだ。すまない、エルザ」
ジュリアンはそう言って、ベッドの端に腰掛けたまま、私を振り返ろうともしなかった。
「いいのです、ジュリアン。王都の政務がお忙しいのは分かっておりますわ。あなたがこうして無事に戻ってきてくださるだけで、私は十分に幸せですから」
彼は私を愛している。
ジュリアンも私に愛を誓ってくれているし、私もそれを疑わなかった。
それなのに――
文字数 56,604
最終更新日 2026.07.07
登録日 2026.07.07
「大丈夫だ。何も心配は要らないから、お顔をお上げ。不完全な者を許し、正しく導くことこそが、高貴なる血に課せられた使命なのだから。……誰にだって、不運な躓きはあるものだよ」
大丈夫。
その耳ざわりの良い、美しい言葉が応接室に響いた瞬間、私の視界は白く冷たく染まっていく。
まただ。
私の胸の奥で、何かがパキリと小さな音を立ててひび割れた。
それがもう何度目の亀裂なのか、数える気力すら今の私には残っていない。
ダミアン・カトプレシス伯爵子息。私の婚約者である彼は、いつだって優しかった。
彼の口から紡がれる言葉は、まるで聖書の一節か、一流の劇作家が書いた戯曲のように高潔で、無垢で――そして、気が遠くなるほどに無責任だった。
文字数 28,218
最終更新日 2026.06.30
登録日 2026.06.30
「ダニエル様、ようこそおいでくださいました。今、お茶をご用意させますわ」
「いや、いいんだ。今日はヴィオラも一緒に連れてきているからね」
ダニエルが半歩身を引くと、その背後から、同じく十四歳の少女がひょっこりと顔を出した。
亜麻色の髪を可憐に揺らし、大きな瞳を輝かせたヴィオラ・レクスン。
ダニエルの従兄の娘であり、幼い頃から彼を「お兄様」と慕って片時も離れない幼馴染だ。
「ロクサーヌ様、ごきげんよう! お邪魔しちゃってごめんなさい。でも、ダニエルお兄様が『ロクサーヌの顔を見に行く』っておっしゃるから、私、どうしても付いていきたくて!」
ヴィオラは人懐っこい笑みを浮かべ、許可も得ずに東屋へ足を踏み入れると、ロクサーヌの隣の席に滑り込んだ。
その遠慮のなさに、ロクサーヌの頬は引き攣る。
さて、私はいつまで我慢しなければならないのでしょうか?
文字数 31,195
最終更新日 2026.06.17
登録日 2026.06.17
「ラングレイ子爵家との婚姻が決まった。相手は現当主のバルト・ラングレイだ」
ラングレイ子爵家。その名はフェリシアも知っていた。
王国の北部に広がる広大な荒れ地を領有する、歴史だけは古い没落貴族。現当主のバルトは若くして家督を継いだが、領地の深刻な財政難と、それに伴う多額の借金に苦しんでいるという。
「ラングレイ家は、我が家からの資金援助を求めている。私はお前の持参金として、彼らの借金の一部を肩代わりすることに合意した。つまり、お前は我が家に対する債務の代わりに、ラングレイ家に嫁ぐのだ」
父親の口から出たのは、娘の結婚ではなく、あからさまな「人身売買」の条件だった。
「お前に拒否権は無い。婚礼は来月、ラングレイ領の本邸で行う。荷物は、必要最低限のものだけを持っていけ。我が家の資産をこれ以上お前のために使うつもりはない。……下がれ」
伯爵は再び書類に目を落とし、対話を打ち切った。
「……分かりましたわ、お父様。ベクソン家のご意向に従います」
文字数 29,805
最終更新日 2026.06.13
登録日 2026.06.13
「セリーヌ、お前を王室に『献上』することになった」
机の上に置かれた書類には、はっきりと『身代金相殺契約書』と書かれているのが見えた。
要するに、売られたのだ。借金のカタとして、生贄として。
「前の侍女は、一週間と持たずに辞めたそうだ。ディミトリ殿下は……少々、お体に差し障りがあるゆえ、気性が激しい。だが、お前のように這いつくばることしか能のない娘にはお似合いの職場だろう。光栄に思え」
セリーヌは、静かに自分の足元を見つめていた。
(ああ、私は本当に、この家で一粒の価値もなかったのだな)
「かしこまりました。お父様。ロアール家の名を汚さぬよう、務めを果たしてまいります」
文字数 68,451
最終更新日 2026.06.07
登録日 2026.06.07
「マリアベル。君との婚約を棄させてほしい。……いや、正式には、僕の婚約者を、ルサルカに変更することに、君の同意をもらいたい」
部屋の空気が、ぴたりと止まる。
妹のルサルカは、ジュリアンの肩に顔を寄せ、可憐に震えてみせた。
「お姉様、ごめんなさい……。でも、私、ジュリアン様なしでは生きていけないの。ジュリアン様も、私を愛してくださって……。お姉様には、ハルデン侯爵夫人の座は重すぎると、ジュリアン様もおっしゃって……」
「お前には、長女としての義務がある。ルサルカの幸せを第一に考えるのが、お前の役目だ。ジュリアン殿は、我が家にとっても最高の婿殿となる。あの子の身体のことも考慮し、ハルデン家が全面的にサポートしてくれると約束してくださったのだ。お前は一歩引き、妹の門出を祝うのが筋というものだ」
(祝う……?)
私の婚約者を奪い、私の名誉を泥に塗れさせ、その上で、笑顔で祝福しろと言うのか。
この瞬間、マリアベルの心は決まった。
文字数 59,747
最終更新日 2026.06.03
登録日 2026.06.03
伯爵家に嫁いだ姉・エルザが死んだ。
主人のジュリアン・マルクス伯爵の直筆とされるその羊皮紙には、長女エルザの死が「不慮の病」として処理され、葬儀も王都の身内だけで速やかに済ませた旨が、酷く雑な筆跡で書き殴られている。
さらに、男爵邸の裏口には、遺体すら入っていない、エルザが実家から持って行った唯一の財産である小さな革鞄だけが「遺品」として無造作に届けられていた。
妹のセシリアは決意した。
姉を殺した連中を地獄に落とそう、と。
文字数 29,574
最終更新日 2026.05.30
登録日 2026.05.30
結婚式当日。
幸せの絶頂で教会へ向かう途中、見知らぬ女に平手打ちされたエリアーナ。
「あなたさえいなければ」と叫んだのは、夫の最愛の幼馴染だという女。
それでも経済的に困窮する実家を救うため、エリアーナは泣き寝入りするしかなかった。
文字数 18,443
最終更新日 2026.05.26
登録日 2026.05.26
「君を愛することはない。私には心に決めた人がいる。形だけの妻として、大人しく過ごしてくれ」
アルベルトの声音には、一切の感情が籠もっていない。
しかし、新婦であるエルザの胸中に去来したのは、悲哀ではなかった。
(……え? 本当にいいの?)
エルザは睫毛を微かに震わせ、俯いた姿勢のまま、必死に口元の歪みを抑えていた。
(愛されなくていい。つまり、妻としての情愛を強要されない。旦那様の機嫌を伺って、夜怯える必要もない。しかも、公爵家の潤沢な予算で衣食住は完全に保証されている……。これって、最高に割の良いニート生活の始まりじゃない!?)
エルザの脳内では、すでに薔薇色の未来予想図が高速で描かれ始めていた。
旦那様にはどうぞ心に決めた愛人の方と、末永く仲良くしていただきたい。
自分はその影で、誰にも邪魔されずに読書をし、お菓子を食べ、庭をいじり、自由という名の果実を貪るのだ。
文字数 58,243
最終更新日 2026.05.20
登録日 2026.05.20
「マリアベル。お前を辺境の領主、ギルバート伯爵のもとへ嫁がせることになった」
突然の通告だった。
マリアベルは驚きもしなかった。
道具としての価値がないと判断されたのなら、切り捨てられるのがこの家の常識だからだ。
「……承知いたしました」
彼女の淡々とした返事に、父はつまらなそうな顔をした。
「向こうも後継者争いで忙しい。お前のような『無能』でも、伯爵夫人の肩書きがあれば、とりあえずの体裁は整う。期待はしていない。二度とこの家の敷居をまたぐな」
文字数 20,807
最終更新日 2026.05.19
登録日 2026.05.19
セイラは、実家であるヴァレンタイン伯爵家で「出来損ないの長女」として虐げられて育った。
ドレスは常に妹のお下がり、食事は冷めきった残り物。
そんな泥のような日々から、王都の社交界を浮名で賑わす当代の寵児、ダミアンに望まれて嫁いだとき、彼女は一筋の光を見た気がしたのだった。
人並みに愛し、愛される温かい家庭。それを夢見ていた。
しかし、現実は残酷だった。
ダミアンが求めていたのは、トロフィーとしての美しい妻でも、情熱を傾ける恋人でもない。
「ハサウェイ侯爵家の格式を汚さず、完璧に家政を取り仕切り、夫の不在を静かに守る、都合のいい従順な女主人の座席」そのものだった。
文字数 22,480
最終更新日 2026.05.18
登録日 2026.05.18
「私は君を愛することはできない。それだけは、今この瞬間にしっかりと覚えておいてくれ」
私は動かなかった。
ただ、静かに彼を見つめ返した。
私の沈黙を「絶望」と受け取ったのか、ヴィルフリートは鼻で笑い、部屋の隅にある一人掛けのソファに深く腰掛けた。
「この婚姻が、親同士が勝手に決めた政略結婚であることは君も知っているだろう。我が侯爵家は、一時の財政難により、君の実家であるローゼンタール公爵家の財力を必要とした。だが、それだけだ。私が心から愛し、生涯を誓った女性は、他にいる」
彼が口にした「他にいる女性」とは、社交界でも噂になっている男爵令嬢のこと。
名前は確か、ミリア。
儚げで、守ってあげたくなるような、庇護欲をそそる令嬢だと聞いている。
「今夜は別の部屋で休む。明日からは、互いに干渉しない生活を始めよう」
バタン、と大きな音がして、扉が閉まった。
その瞬間、私の心は決まった。
文字数 39,903
最終更新日 2026.05.17
登録日 2026.05.17