野蛮令嬢は貧弱令息に恋をする

雨夜りょう

文字の大きさ
17 / 46

17:アリシアの為のドレス

しおりを挟む
「ジュリウス様、初めまして。フェルフェンのアメリアと申します」

「ジュリウスです。今日は婚約者のドレスをお仕立ていただきたく、お呼びしました」

 髪を一つに纏め、凛とした表情をしたアメリアの眼鏡が、陽光に反射して煌めいた。

「パンツ型のドレスを作って欲しいとアンナ様から伺っておりますが、どのようなデザインや色にしたいというご希望はありますか?」

「あ、はい。一応デザインを描いてみたので、確認してください」

 デザイン画には、ジュリウスが思い描いたドレスが細かく描かれていた。
 ドレスの色は空色で、ズボンをスカートと錯覚するくらい、布を使ってゆったりと裾が広がるようになっており、透け感のある布と透けない布地の二重構造。腰を一周するように太めのリボンを巻いて、ウエストが細く見えるように描かれていた。ただし、リボン部分が中央では、アリシアの好みとは外れてしまうだろうと、少しずらした腰よりに配置されていた。ズボンだけでは足りないボリュームを補うように、腰からドレープの軽やかな布がオーバースカート状に足元まで垂れていた。アリシアが動きやすいようにと、中央部は布を省いている。
 上半身も全体的に透け感のある布で作られており、ベルスリーブの袖には軽い刺繍があしらわれていた。

「なるほど、それなら確かにパンツスタイルのドレスになりますね。格式高いパーティーに着ていくのは嫌煙する女性が多いかもしれませんが、自宅用に日常的に着るなら嫌がられないかもしれません。今回はパーティー用とのことですから、見栄え良く、嫌悪感を出させないようにするのは、私の仕事ですね。ご注文承りました。他に要望はございますか?」

「あ、えっと! 袖口の刺繍なんですけど、ノースポールを刺していただくことは出来ますか?」

「ええ、もちろんです。ノースポールですね、承りました」

 他に要望がないならこれで失礼すると、侍女から受け取ったアリシアのサイズが書かれた用紙を受け取り、アメリアは退室していった。

「ジュリウス、何故ノースポールなの?」

「え!? い、いや、あの、ええっと……あ、アリー様のようだと思って。アリー様の銀髪のように綺麗な白色で、愛らしく、花言葉も彼女を体現したようなので。あとは、ノースポールのハンカチをぉ……」

 これ以上ないくらい顔を赤くしたジュリウスに、再度アリシアへの感謝を内心で表したアンナは、軽やかな笑みを浮かべる。

「なら、装飾品にもノースポールを模したものを用意しておくわね」

「あ、ならブローチでお願いします! それなら、アリー様の邪魔にならないと思うので」

 ネックレスや指輪、腕輪なんかは剣を振る際には邪魔になってしまうかもしれない。しかし、ブローチなら邪魔にならず、髪を縛ったリボンにもつけられるので、日常的につけてもらえるのではないかとジュリウスは思った。

「あ、あと。できれば、靴は天色のもので……お願いします」

 天色はアリシアの瞳の色だ。
 にまにまと、からかうような笑みを浮かべているアンナに気が付いたジュリウスの声が小さくなる。

「ふ、ふふふ。ジュリウス、貴方は誰に似たのかしら。うちの朴念仁たちとは大違いね」

「えっと、褒められている、のですよね?」

「もちろん。うちの子たちは、父親を筆頭に、『似合っている』とか『何でも似合うからどれでも良いんじゃないか』しか言わないんだもの」

 兄たちにも婚約者はいたはずだが、それで良いのだろうかと、ジュリウスは頭を悩ませた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

虜囚の王女は言葉が通じぬ元敵国の騎士団長に嫁ぐ

あねもね
恋愛
グランテーレ国の第一王女、クリスタルは公に姿を見せないことで様々な噂が飛び交っていた。 その王女が和平のため、元敵国の騎士団長レイヴァンの元へ嫁ぐことになる。 敗戦国の宿命か、葬列かと見紛うくらいの重々しさの中、民に見守られながら到着した先は、言葉が通じない国だった。 言葉と文化、思いの違いで互いに戸惑いながらも交流を深めていく。

9回巻き戻った公爵令嬢ですが、10回目の人生はどうやらご褒美モードのようです

志野田みかん
恋愛
アリーシア・グランツ公爵令嬢は、異世界から落ちてきた聖女ミアに婚約者を奪われ、断罪されて処刑された。殺されるたびに人生が巻き戻り、そのたびに王太子マクシミリアンはミアに心奪われ、アリーシアは処刑、処刑、処刑! 10回目の人生にして、ようやく貧乏男爵令嬢アリーに生まれ変わった。 もう王太子や聖女には関わらない!と心に決めたのに、病弱な弟のために王宮の侍女として働くことに。するとなぜか、王太子マクシミリアンは聖女ミアには目もくれず、男爵令嬢アリーを溺愛し始めて……。 (頭を空っぽにして笑えることを目指したコメディです。2020年に執筆した作品です。本作を読みたいというお声があったため再掲します)

婚約破棄までの168時間 悪役令嬢は断罪を回避したいだけなのに、無関心王子が突然溺愛してきて困惑しています

みゅー
恋愛
アレクサンドラ・デュカス公爵令嬢は舞踏会で、ある男爵令嬢から突然『悪役令嬢』として断罪されてしまう。 そして身に覚えのない罪を着せられ、婚約者である王太子殿下には婚約の破棄を言い渡された。 それでもアレクサンドラは、いつか無実を証明できる日が来ると信じて屈辱に耐えていた。 だが、無情にもそれを証明するまもなく男爵令嬢の手にかかり最悪の最期を迎えることになった。 ところが目覚めると自室のベッドの上におり、断罪されたはずの舞踏会から1週間前に戻っていた。 アレクサンドラにとって断罪される日まではたったの一週間しか残されていない。   こうして、その一週間でアレクサンドラは自身の身の潔白を証明するため奮闘することになるのだが……。 甘めな話になるのは20話以降です。

婚約破棄されましたが、私はもう必要ありませんので

ふわふわ
恋愛
「婚約破棄? ……そうですか。では、私の役目は終わりですね」 王太子ロイド・ヴァルシュタインの婚約者として、 国と王宮を“滞りなく回す存在”であり続けてきた令嬢 マルグリット・フォン・ルーヴェン。 感情を表に出さず、 功績を誇らず、 ただ淡々と、最善だけを積み重ねてきた彼女に突きつけられたのは―― 偽りの奇跡を振りかざす“聖女”による、突然の婚約破棄だった。 だが、マルグリットは嘆かない。 怒りもしない。 復讐すら、望まない。 彼女が選んだのは、 すべてを「仕組み」と「基準」に引き渡し、静かに前線から降りること。 彼女がいなくなっても、領地は回る。 判断は滞らず、人々は困らない。 それこそが、彼女が築いた“完成形”だった。 一方で、 彼女を切り捨てた王太子と偽聖女は、 「彼女がいない世界」で初めて、自分たちの無力さと向き合うことになる。 ――必要とされない価値。 ――前に出ない強さ。 ――名前を呼ばれない完成。 これは、 騒がず、縋らず、静かに去った令嬢が、 最後にすべてを置き去りにして手に入れる“自由”の物語。 ざまぁは静かに、 恋は後半に、 そして物語は、凛と終わる。 アルファポリス女子読者向け 「大人の婚約破棄ざまぁ恋愛」、ここに完結。

残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
公爵令嬢アンジェリカは六歳の誕生日までは天使のように可愛らしい子供だった。ところが突然、ロバのような顔になってしまう。残念な姿に成長した『残念姫』と呼ばれるアンジェリカ。友達は男爵家のウォルターただ一人。そんなある日、隣国から素敵な王子様が留学してきて……

「やはり鍛えることは、大切だな」

イチイ アキラ
恋愛
「こんなブスと結婚なんていやだ!」  その日、一つのお見合いがあった。  ヤロール伯爵家の三男、ライアンと。  クラレンス辺境伯家の跡取り娘、リューゼットの。  そして互いに挨拶を交わすその場にて。  ライアンが開幕早々、ぶちかましたのであった。  けれども……――。 「そうか。私も貴様のような生っ白くてか弱そうな、女みたいな顔の屑はごめんだ。気が合うな」

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧井 汐桜香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

処理中です...