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第1部
将来の・・・殿下ばんざーい
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うつむいたまま黙っていたマクシムだったが、やがて顔をあげた。
その顔は意外に晴れやかだった。
「自分の夢を簡単に考えすぎていました。言われるとおり、甘いです。ただ夢を語るだけで自分の中の覚悟ができていませんでした。覚悟を決めるまではこの村で、地に足をつけて自分を鍛えます」
「私も。心配してる気持ちを押し通せば、マクシムは危険なことをしないと思っていました。夢を支えることをせずに夢をあきらめさせることしかしてこなかった。私も覚悟が足りませんでした」
マクシムとバーラはお互いの顔を見つめて頷きあう。
「お互いのことを考えていれば、おのずと答えが出てくるような気がします。バーラを不安にさせないように、これから2人で頑張っていきます」
「殿下、ナオ様、ありがとうございました」
2人がヴァレリラルドと梛央にぺこりと頭を下げると、様子をうかがっていた村人たちが一斉に拍手をする。
「いい説教だったよ、ナオ様」
「毎日のように喧嘩ばっかりしていたマクシムとバーラがこんなにまとまってるよ」
「まだ小さいのにいいこと言うねぇ」
「えらいわぁ」
「お綺麗なのに気持ちの強いところもあって、さすが将来の王太子妃殿下ですな」
「めでたいねぇ」
「王太子妃殿下、ばんざーい」
村人たちは梛央とヴァレリラルドの周りに集まって大絶賛を繰り広げた。
「何が王太子妃殿下ですか。ナオ様はもっと尊いお方です」
たとえ小さい村の中だけであろうと、梛央を王太子妃殿下呼ばわりされるのに我慢ができないテュコが怒鳴った。
なによりも、否定せずに嬉しそうな顔をしているヴァレリラルドと、自分のことを王太子妃殿下と呼ばれていることに気付いていない梛央がのほほんとしているのも癪に障った。
そんなテュコに村人たちは顔を見合わせ、
「ああ、そうでしたね」
「そうだそうだ」
大きく頷きあう。
「さすが将来の王妃陛下だ」
「将来の王妃陛下ばんざーい」
「この王国の将来は安泰以外のなにものでもないぞー」
村人たちはさっきよりもっと盛り上がり、
「ちがいます!」
テュコの叫びも届かなかった。
子供たちの昼寝の時間になると、梛央たちも離宮に帰る仕度をした。
「殿下、今日は素晴らしい方をご紹介いただき、ありがとうございます。ぜひまたお連れください」
馬上の人になったヴァレリラルドにイザークが別れの挨拶を述べる。
「ああ、絶対にまた連れてくる」
ヴァレリラルドが強く頷くと、今度は梛央の乗る馬車に歩み寄り、
「ナオ様。自分の村だと思って、またぜひいらしてください。いつでも歓待いたします」
イザークが梛央に別れの言葉をかけた。
「はーい。地引網がしたいからまた来るね。今日はありがとう」
梛央はイザークや、その後ろにいる見送りにきた人々に手を振った。
そのまま、見送りの人々が見えなくなるまで手を振る梛央。
「いろいろあって、楽しかったですね、ナオ様」
馬車の中でドリーンが言った。
「うん。お魚が食べられたし、子供たちも可愛かったし、楽しかった」
梛央は満足げだったが、テュコだけは王太子妃殿下、将来の王妃陛下と梛央が呼ばれたことをまだ忌々し気に思っていた。
離宮に戻った梛央は潮風でべたついている体を入浴でさっぱりさせると、まだ体が火照っているからと、ベビードール姿でカウチに座り、冷たいドリンクを飲んでいた。
「アイナとドリーンもさっぱりしてきていいよ? テュコがいてくれるし、まだお腹もすいてないから特に用事ないし」
梛央に勧められて、アイナとドリーンは顔を見合わせると、
「ではお言葉に甘えて。テュコ様お願いしますね」
「お心づかいありがとうございます」
そう言って下がっていった。
「2人が帰ってきたらテュコも行ってきていいよ?サリーも」
「潮風と波でベタベタなんだ。いまクランツとフォルシウスが着替えてるから、2人が戻ってきたら行かせてもらうね」
「うん」
「私もそうさせてもらいますね。でも、いくら暑くてもガウンくらい着てください。下着姿のままでは護衛騎士たちの目の毒です」
すらりと伸びる梛央の白い足が眩しくて、直視できないテュコはガウンを取りに行く。
ガウンを持って戻って来たときには梛央はカウチでリングダールに体を寄りかからせて眠っていた。
思えば梛央が精霊の泉に落ちてきてから体を動かしたのはカルムの街の散策くらいで、長い時間海から網を引いたり海辺を歩いたりして疲れたのだろうということは容易にうかがえた。
あどけない顔で眠っている梛央を、テュコは微笑ましい気持ちで見つめる。
自分より4つも年上だとは思えない梛央の天真爛漫な言動。何より美しい容姿と華奢な体。
この王国のもっとも大切な、テュコにとっても大切で大事な存在。王太子妃や王妃ではおさまりきらない存在。
テュコはこの先何があっても梛央を護っていきたいと思った。けれど、今の自分ではそんな梛央を軽々と抱き上げたり護ったりすることがまだできなくて、テュコは歯がゆかった。
早く大きくなって梛央を護りたい。
そう願うのはヴァレリラルドだけではなかった。
その顔は意外に晴れやかだった。
「自分の夢を簡単に考えすぎていました。言われるとおり、甘いです。ただ夢を語るだけで自分の中の覚悟ができていませんでした。覚悟を決めるまではこの村で、地に足をつけて自分を鍛えます」
「私も。心配してる気持ちを押し通せば、マクシムは危険なことをしないと思っていました。夢を支えることをせずに夢をあきらめさせることしかしてこなかった。私も覚悟が足りませんでした」
マクシムとバーラはお互いの顔を見つめて頷きあう。
「お互いのことを考えていれば、おのずと答えが出てくるような気がします。バーラを不安にさせないように、これから2人で頑張っていきます」
「殿下、ナオ様、ありがとうございました」
2人がヴァレリラルドと梛央にぺこりと頭を下げると、様子をうかがっていた村人たちが一斉に拍手をする。
「いい説教だったよ、ナオ様」
「毎日のように喧嘩ばっかりしていたマクシムとバーラがこんなにまとまってるよ」
「まだ小さいのにいいこと言うねぇ」
「えらいわぁ」
「お綺麗なのに気持ちの強いところもあって、さすが将来の王太子妃殿下ですな」
「めでたいねぇ」
「王太子妃殿下、ばんざーい」
村人たちは梛央とヴァレリラルドの周りに集まって大絶賛を繰り広げた。
「何が王太子妃殿下ですか。ナオ様はもっと尊いお方です」
たとえ小さい村の中だけであろうと、梛央を王太子妃殿下呼ばわりされるのに我慢ができないテュコが怒鳴った。
なによりも、否定せずに嬉しそうな顔をしているヴァレリラルドと、自分のことを王太子妃殿下と呼ばれていることに気付いていない梛央がのほほんとしているのも癪に障った。
そんなテュコに村人たちは顔を見合わせ、
「ああ、そうでしたね」
「そうだそうだ」
大きく頷きあう。
「さすが将来の王妃陛下だ」
「将来の王妃陛下ばんざーい」
「この王国の将来は安泰以外のなにものでもないぞー」
村人たちはさっきよりもっと盛り上がり、
「ちがいます!」
テュコの叫びも届かなかった。
子供たちの昼寝の時間になると、梛央たちも離宮に帰る仕度をした。
「殿下、今日は素晴らしい方をご紹介いただき、ありがとうございます。ぜひまたお連れください」
馬上の人になったヴァレリラルドにイザークが別れの挨拶を述べる。
「ああ、絶対にまた連れてくる」
ヴァレリラルドが強く頷くと、今度は梛央の乗る馬車に歩み寄り、
「ナオ様。自分の村だと思って、またぜひいらしてください。いつでも歓待いたします」
イザークが梛央に別れの言葉をかけた。
「はーい。地引網がしたいからまた来るね。今日はありがとう」
梛央はイザークや、その後ろにいる見送りにきた人々に手を振った。
そのまま、見送りの人々が見えなくなるまで手を振る梛央。
「いろいろあって、楽しかったですね、ナオ様」
馬車の中でドリーンが言った。
「うん。お魚が食べられたし、子供たちも可愛かったし、楽しかった」
梛央は満足げだったが、テュコだけは王太子妃殿下、将来の王妃陛下と梛央が呼ばれたことをまだ忌々し気に思っていた。
離宮に戻った梛央は潮風でべたついている体を入浴でさっぱりさせると、まだ体が火照っているからと、ベビードール姿でカウチに座り、冷たいドリンクを飲んでいた。
「アイナとドリーンもさっぱりしてきていいよ? テュコがいてくれるし、まだお腹もすいてないから特に用事ないし」
梛央に勧められて、アイナとドリーンは顔を見合わせると、
「ではお言葉に甘えて。テュコ様お願いしますね」
「お心づかいありがとうございます」
そう言って下がっていった。
「2人が帰ってきたらテュコも行ってきていいよ?サリーも」
「潮風と波でベタベタなんだ。いまクランツとフォルシウスが着替えてるから、2人が戻ってきたら行かせてもらうね」
「うん」
「私もそうさせてもらいますね。でも、いくら暑くてもガウンくらい着てください。下着姿のままでは護衛騎士たちの目の毒です」
すらりと伸びる梛央の白い足が眩しくて、直視できないテュコはガウンを取りに行く。
ガウンを持って戻って来たときには梛央はカウチでリングダールに体を寄りかからせて眠っていた。
思えば梛央が精霊の泉に落ちてきてから体を動かしたのはカルムの街の散策くらいで、長い時間海から網を引いたり海辺を歩いたりして疲れたのだろうということは容易にうかがえた。
あどけない顔で眠っている梛央を、テュコは微笑ましい気持ちで見つめる。
自分より4つも年上だとは思えない梛央の天真爛漫な言動。何より美しい容姿と華奢な体。
この王国のもっとも大切な、テュコにとっても大切で大事な存在。王太子妃や王妃ではおさまりきらない存在。
テュコはこの先何があっても梛央を護っていきたいと思った。けれど、今の自分ではそんな梛央を軽々と抱き上げたり護ったりすることがまだできなくて、テュコは歯がゆかった。
早く大きくなって梛央を護りたい。
そう願うのはヴァレリラルドだけではなかった。
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