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第3部
もう、ちゅぅ……(むりむりむり)
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大勢の人々に幸せそうに手を振るアシェルナオと、誰の目にも見えないがその周りで一緒に手をふる精霊たち。
『ナオ、ちゅっちゅだよー』
『しあわせちゅっちゅだよー』
ぴかとぐりがアシェルナオを唆す。
『ナオ、ち……』
みっちーも加わろうとして、言葉を止めた。
幸せそうに飛び回っていた他の精霊たちも動きを止めて、空の一角を見つめた。
「もう、ちゅぅ……」
ちゅぅはしないよ、と囁こうとしたアシェルナオは、精霊たちの異変に気付いて同じ方向の空を見つめる。
次第に精霊たちから緊張や動揺の気配が強まり、アシェルナオも表情を硬くした。
何かはわからなかったが、精霊たちが警戒するものの気配が、アシェルナオにも伝わってきた。
「ナオ、どうかした?」
急に動きを止めて空を見上げるアシェルナオに気づいて、ヴァレリラルドが問いかける。
だがアシェルナオから返事はなく、不思議に思ったヴァレリラルドも同じ方角を見上げる。
主役である2人の変化に、並び立つベルンハルドやテレーシアたち、バルコニーにいる者たち、バルコニーの下に集まっている人々も次第に同じ方向を見上げた。
「警戒を」
異変に気付いたグルンドライストが小声で、だが緊張が伝わる響きで、ティスに伝える。
ティスは頷き、気配を消してバルコニーから退場した。
バルコニーの後方に控える者たちも何かしらの不穏な空気を感じて、警戒モードに入る。
やがてアシェルナオたちが見上げる方角の空に、一点の黒い雲が現れたかと思うと、それは見る間に大きな塊となり、青空を飲み込みながらぐんぐんと近づいてきた。
いままで感じなかった風が急に強くなる。
「あれは……あの時と同じだ」
「民衆を避難させましょう」
ケイレブの声に、クランツも反応する。
あの時とは、17年前に梛央が飛竜に攫われた時の天気の急変をさしていて、
「ここは任せて、ケイレブは避難の誘導を」
サリアンが言うと、ケイレブは頷くと同時に駆け出す。
「クランツも行って。ナオ様のことはここにいる者たちで護る」
フォルシウスもクランツに視線を向ける。
「頼む。愛してる」
素早くフォルシウスの頬にキスすると、クランツは颯爽と退場して言った。
サミュエルやマフダルをはじめ、護衛騎士たちもすぐに臨戦態勢に入れるように身構える。
風がさらに強くなり、集まった人々は乱れる髪や飛ばされそうになる帽子を手で押さえていた。
「ナオ、私が護るから」
今度こそアシェルナオを自分の手で護るために、ヴァレリラルドがアシェルナオの盾になる。
生き物のように黒雲が膨れ上がりながら見る間に差し迫り、もう少しで王都に達しようとしていた。
心に得体の知れない不安が広がり、心と体が重くなるのを人々は感じていた。なにかとてつもなく恐ろしいものが近くまで来ている。そう思わせる黒い雲が王城の建物のすぐ近くまで近づいてきていた。
ぽつり、ぽつり、と大粒の雨が落ち始め、明らかに異常な天候の急変に、民衆の方々で悲鳴があがる。
アシェルナオはそれまで無言で空を見上げていたが、自分たちを祝福するために集まってくれた人々の悲鳴を聞いて、広場を見下ろした。
貴族席ではハルネスが頭を抱えるようにし、それをクラースが庇っていた。スヴェンとトシュテンは頭を低くして待機するように回りに指示を出していた。
混乱する人々を目の当たりにしたアシェルナオは、再び空に目を向けると、それまで空全体を覆うように膨らんでいた黒い雲が、王城に近づくにつれ先端が細くなり、意志を持つ生き物のように自分の方に向かっているのを見つけた。
尖塔の上ではドレイシュとブロームが黒い雲の方向を変えようと、光と風の魔法をあわせたものをぶつけていたが、膨大な瘴気の塊である黒い雲は微塵も方向を変えなかった。
「これは、一体何があったというんですか!」
続けざまに魔法を放つブロームは、一向に効果が見えないのに焦れていた。
「わからん。だがすさまじい瘴気だ。この瘴気に当てられたら愛し子が危ない。愛し子が倒れたらこの国はすべて瘴気に呑まれるぞ」
大粒の雨に打たれながら、ドレイシュは限界まで光魔法を放つのをやめなかった。
上でのやりとりなど知る由もないヴァレリラルドは、
「ナオ! 建物の中に入ろう!」
尋常ではない状況に、アシェルナオを中に連れて行こうと肩に手をかける。
「大丈夫! 受け止める!」
アシェルナオは黒い雲を見つめながら叫ぶ。
「ナオが受け止められるものじゃない。ナオを危険に晒すことなんて出来ない」
「そうだ、ナオ。中に避難するんだ」
ヴァレリラルドの説得にアネシュカも加わる。
「ナオ様、さあ中へ」
テュコもナオの側に歩み寄る。
「こんなにたくさんの人が集まってお祝いしてくれたのに、先に避難するなんて出来ない。みんな、手伝って!」
アシェルナオは自分の肩に捕まっていた精霊たちに向かって叫んだ。
『むり』
ひぃが即答した。
『ぼくたちにもむり』
ちゃーも同意する。
『むりむり』
みっちーが首を振りながら言った。
※※※※※※※※※※※※※※※※
お声かけ、エール、いいね、ありがとうございます。
嬉しいです。生き延びてます。 人(-ω-`*)
仕事量はんぱなくて(直属の上司が仕事丸投げして休み取ったから!)
ついに6時台から職場で仕事始めてますよ(^∇^)アハハハハ!
・・・
『ナオ、ちゅっちゅだよー』
『しあわせちゅっちゅだよー』
ぴかとぐりがアシェルナオを唆す。
『ナオ、ち……』
みっちーも加わろうとして、言葉を止めた。
幸せそうに飛び回っていた他の精霊たちも動きを止めて、空の一角を見つめた。
「もう、ちゅぅ……」
ちゅぅはしないよ、と囁こうとしたアシェルナオは、精霊たちの異変に気付いて同じ方向の空を見つめる。
次第に精霊たちから緊張や動揺の気配が強まり、アシェルナオも表情を硬くした。
何かはわからなかったが、精霊たちが警戒するものの気配が、アシェルナオにも伝わってきた。
「ナオ、どうかした?」
急に動きを止めて空を見上げるアシェルナオに気づいて、ヴァレリラルドが問いかける。
だがアシェルナオから返事はなく、不思議に思ったヴァレリラルドも同じ方角を見上げる。
主役である2人の変化に、並び立つベルンハルドやテレーシアたち、バルコニーにいる者たち、バルコニーの下に集まっている人々も次第に同じ方向を見上げた。
「警戒を」
異変に気付いたグルンドライストが小声で、だが緊張が伝わる響きで、ティスに伝える。
ティスは頷き、気配を消してバルコニーから退場した。
バルコニーの後方に控える者たちも何かしらの不穏な空気を感じて、警戒モードに入る。
やがてアシェルナオたちが見上げる方角の空に、一点の黒い雲が現れたかと思うと、それは見る間に大きな塊となり、青空を飲み込みながらぐんぐんと近づいてきた。
いままで感じなかった風が急に強くなる。
「あれは……あの時と同じだ」
「民衆を避難させましょう」
ケイレブの声に、クランツも反応する。
あの時とは、17年前に梛央が飛竜に攫われた時の天気の急変をさしていて、
「ここは任せて、ケイレブは避難の誘導を」
サリアンが言うと、ケイレブは頷くと同時に駆け出す。
「クランツも行って。ナオ様のことはここにいる者たちで護る」
フォルシウスもクランツに視線を向ける。
「頼む。愛してる」
素早くフォルシウスの頬にキスすると、クランツは颯爽と退場して言った。
サミュエルやマフダルをはじめ、護衛騎士たちもすぐに臨戦態勢に入れるように身構える。
風がさらに強くなり、集まった人々は乱れる髪や飛ばされそうになる帽子を手で押さえていた。
「ナオ、私が護るから」
今度こそアシェルナオを自分の手で護るために、ヴァレリラルドがアシェルナオの盾になる。
生き物のように黒雲が膨れ上がりながら見る間に差し迫り、もう少しで王都に達しようとしていた。
心に得体の知れない不安が広がり、心と体が重くなるのを人々は感じていた。なにかとてつもなく恐ろしいものが近くまで来ている。そう思わせる黒い雲が王城の建物のすぐ近くまで近づいてきていた。
ぽつり、ぽつり、と大粒の雨が落ち始め、明らかに異常な天候の急変に、民衆の方々で悲鳴があがる。
アシェルナオはそれまで無言で空を見上げていたが、自分たちを祝福するために集まってくれた人々の悲鳴を聞いて、広場を見下ろした。
貴族席ではハルネスが頭を抱えるようにし、それをクラースが庇っていた。スヴェンとトシュテンは頭を低くして待機するように回りに指示を出していた。
混乱する人々を目の当たりにしたアシェルナオは、再び空に目を向けると、それまで空全体を覆うように膨らんでいた黒い雲が、王城に近づくにつれ先端が細くなり、意志を持つ生き物のように自分の方に向かっているのを見つけた。
尖塔の上ではドレイシュとブロームが黒い雲の方向を変えようと、光と風の魔法をあわせたものをぶつけていたが、膨大な瘴気の塊である黒い雲は微塵も方向を変えなかった。
「これは、一体何があったというんですか!」
続けざまに魔法を放つブロームは、一向に効果が見えないのに焦れていた。
「わからん。だがすさまじい瘴気だ。この瘴気に当てられたら愛し子が危ない。愛し子が倒れたらこの国はすべて瘴気に呑まれるぞ」
大粒の雨に打たれながら、ドレイシュは限界まで光魔法を放つのをやめなかった。
上でのやりとりなど知る由もないヴァレリラルドは、
「ナオ! 建物の中に入ろう!」
尋常ではない状況に、アシェルナオを中に連れて行こうと肩に手をかける。
「大丈夫! 受け止める!」
アシェルナオは黒い雲を見つめながら叫ぶ。
「ナオが受け止められるものじゃない。ナオを危険に晒すことなんて出来ない」
「そうだ、ナオ。中に避難するんだ」
ヴァレリラルドの説得にアネシュカも加わる。
「ナオ様、さあ中へ」
テュコもナオの側に歩み寄る。
「こんなにたくさんの人が集まってお祝いしてくれたのに、先に避難するなんて出来ない。みんな、手伝って!」
アシェルナオは自分の肩に捕まっていた精霊たちに向かって叫んだ。
『むり』
ひぃが即答した。
『ぼくたちにもむり』
ちゃーも同意する。
『むりむり』
みっちーが首を振りながら言った。
※※※※※※※※※※※※※※※※
お声かけ、エール、いいね、ありがとうございます。
嬉しいです。生き延びてます。 人(-ω-`*)
仕事量はんぱなくて(直属の上司が仕事丸投げして休み取ったから!)
ついに6時台から職場で仕事始めてますよ(^∇^)アハハハハ!
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