小さな初恋

村人A

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小さな、小さな物語

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これはまだ私が幼かった頃のお話。

今では、この記憶が全部残ってるわけでもない
でも、君との写真を見るとあの日の出来事はまるで昨日のように蘇ってくるよ。






これは私が幼稚園に通ってたころのお話。

私は絵本をみていつか自分の前にも現れる王子様を想像して夢みていた

白馬に乗った金髪の王子様?
危ないところを助けてくれる優しい王子様?

そんな王子様を夢見ていた。



幼稚園の帰り道、私はついに王子様に出会った。


「あるこ~あるこ~!」

幼稚園で習った歌を元気よく歌い
道で見つけたきれいな花を手にスキップでもするんじゃないかってぐらいはしゃいでいた帰り道。

ふと道をみると
近所のわんちゃんがリードで繋がれ外にでていた

そのわんちゃんは
おおきくって、飼い主のおばさんがいないと「ワンワン!」と大きな声で吠えるんだ。
そんなわんちゃんが小さかった私にはとても怖く感じた。

じーっと目が合うこと数十秒。
耐えきれなくて少し歩こうとする。

ジャリジャリ
靴が地面と擦れ音がでる

「ワンワン!ワン!ワンワン!」

その音に反応して
わんちゃんはリードがいっぱいいっぱいまでピーンとはりワンワンと鳴き続ける。

「ふぇ、うぇーん!!」

鳴き声が怖くてその場にしゃがみこみ大きな声で私は泣いてしまった。


そんな時

「おい、うるさいぞ」

さっきまで鳴いていた鳴き声が聞こえないとふと顔をあげると
真っ黒の髪の毛の男の子が目に入った。

その子は私に近づいてきて
頭ぽんぽんと撫でると、同じ目線までしゃがみ声をかけてくれた。

「大丈夫か?ごめんな驚かしちゃったな」
少し眉を下げしょんぼりとした顔になる。

「だ、だいじょうぶ
お兄ちゃん、ありがと!」

そう言って私は彼にギュッと抱きついた。

「それなら良かった。
お家どこ?送ってあげようか?」

「いいの?」

「うん、いいよ?」

首をコテっと彼は傾けて私の顔を見る。
「やったー」っと、声をあげ
私は彼の手を握り帰路についた。

握った彼の手は
私の手なんかよりもとても大きくって
彼の背は
私なんかよりもとても高くって

彼のそんなところが、私は好きになった。




それが、彼と私の出会い

彼にとってはちっぽけな1日だったとしても
私にとっては、その日はとても大きな1日になった。
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