【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜

光城 朱純

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討伐って何ですか?

ベルンハルトの仕事 3

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「ま、まだ何かあるのか」

「奥様があれ以上何も仰らないのに、私が口を挟むことはできません。ですが、魔獣討伐から戻られます間、僭越ながら私が執事長を務めさせていただきますことを、お許し下さい」

「ヘルムートが代わってくれるのであれば、安心だ。よろしく頼む」

「ありがとうございます。それでは、しばしの間、執事長に戻ります」

 ヘルムートは深々と頭を下げ、その後ゆっくりと姿勢を正した。

「ベルンハルト様。ご武運をお祈り致しております。いってらっしゃいませ」

 ベルンハルトの顔を真っ直ぐに見据え、ヘルムートは再度深く頭を下げる。
 それを横目で見ていたリーゼロッテも、慌ててその仕草を真似た。
 自分の夫が、ロイエンタール家当主が、危険を伴うであろう場所へ向かうのだ。わからないことばかりとはいえ、その深刻さだけは流石に理解している。

「いってくる」

 そう言うとマントを翻し、広間の奥に備え付けられた扉へと向かう。
 その扉は他の扉に比べ重厚な造りになっており、アルベルトが鍵を開け、扉開いてベルンハルトが通り抜けるのを待っていた。

 ベルンハルトが広間から出ていくのを、その雰囲気に圧倒され、息を呑んで見送ると、扉が閉まるのを合図にリーゼロッテは大きく息を吐いた。

「ヘルムートさん」

「はい。いかがいたしました?」

「わたくし、色々なことを一度に聞かされて、頭が混乱しているの」

「そうでしょうね」

「流石に今回はちゃんとお話していただけますね?」

 ヘルムート相手に、再度広間の空気を凍てつかせたのはリーゼロッテだ。

「かしこまりました」

 ヘルムートはその空気に臆することなく、軽やかに笑ってみせた。


 リーゼロッテの私室で長話をするわけにもいかず、二人は広間から近くの談話室へと場所を移動し、庭でそうしてくれるように、ヘルムートがお茶を淹れてくれる。
 それを一口飲んで、リーゼロッテはようやく気持ちが落ち着いていくのを感じた。

「ヘルムートさんは元執事長だったんですね。どおりでお茶が美味しいはずだわ」

 いつでもその時の環境に合わせて、温度や苦味が調整されているのも、腑に落ちる。

「奥様のお好みがあれば仰って下さい。次からはそれをご用意いたしますよ」

「いいえ。季節と共に茶葉が移り変わっていくのも楽しませていただいているもの。今のまま、ヘルムートさんが選ばれたものを淹れてください」

「おや、奥様もそう仰るのですね。以前、ベルンハルト様も同様のことを仰っていました」

「まぁ。そうでしたの。さぁ、ヘルムートさんもそこへ座って。ゆっくりお話を聞かせて」

「ベルンハルト様にも、そう問い詰めてやれば良かったのです」

「そ、そのようなこと、できません」

 リーゼロッテは小刻みにその頭を左右に振った。
 ベルンハルトとは何とか距離を縮めようとしているのに、その相手を問い詰めるなど、できるわけもない。
 そもそも、今から討伐に赴く相手のことを、こんなことで煩わせるわけにはいかない。

「こらえて、くださったんですね。奥様、この度は愚息二人が大変失礼致しました。これはこの城の使用人としてではなく、父親として父親代わりとしての謝罪です」

「父親代わり?」

「ベルンハルト様のご両親は他界されておりますので、それ以降は私がアルベルトと同様に育てていたのです。ただ、奥様への気遣いにこれほどまでに欠けているとは、思いも寄りませんでした」

「まだわたくしがこちらに来て四ヶ月も経ちません。ベルンハルト様が何も仰ってくださらないのも仕方ないわ。それほど目くじらを立てることでもないの」

「そうでしょうか」

「もちろん、何もかもを話して下されば、とも思います。ですが、人は誰だって隠したいことを持ってるものよ」

 自分の城の中ですら仮面を外すことなく、その下にも仮面をつけているベルンハルトの、隙のない笑顔を思い出す。

「とはいえ魔獣の討伐は、事前に教えていただきたかったですね。心配でたまりません」

「ベルンハルト様は一週間ほどで戻りますよ。きっと無事にお戻りになりますから、大丈夫です」

 不安を押し込めることができず、下を向いてしまったリーゼロッテに、ヘルムートが優しく声をかけた。
 その声が、言葉が、まるでヘルムートの淹れてくれるお茶の様に、じんわりとリーゼロッテの心を温める。

「べ、ベルンハルト様以外の方はどちらにいらっしゃるの? 騎士の方は?」

「魔獣の討伐にはアルベルトと二人で向かっております」

「何故?!」

 ヘルムートの言葉に、リーゼロッテは衝撃を受ける。
 城の中にも外にも普段以上の人の気配を感じてはいなかったが、まさか二人で向かったなど、考えもしなかった。
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