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ロイスナーに来て、二度目の冬
再び雪が降り積もる 9
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「ん? 今、私のこと呼んだわよね?」
「はい。呼びました」
「そうよねぇ。だから出てきたっていうのに、まるで化け物にでも遭ったみたいなんだもの」
「まさかあんな声でも聞こえるなんて思ってもなくって。お身体は大丈夫ですか?」
「聞こえるとは、少し違うから。体はもうかなり良いわ。心配かけたわね」
リーゼロッテの問いかけに、レティシアが笑顔を見せる。昨日に比べその余裕のある顔は、それだけ回復が進んだ証だろう。改めて龍の回復力に驚かされる。
「実は、ディース領へと行きたいのです」
「ディース? どうして?」
「城の食糧が尽きてしまいそうで、ベルンハルト様が目を覚ます前に用意しておきたくて……それで、一刻も早く戻ってきたいのです!」
「ははぁん。龍の翼で行こうって? そんなこと、よく思いつくわねぇ」
「お願い、できませんか?」
「んー。構わないけど、行けてディース領の結界の前までよ? それ以上先には入れないわ」
「それで十分です! そこから先は馬車を手配します」
「そしたら、クラウスに乗ってもらっていいかしら? 帰りは荷物もあるのよね?」
「はい」
「私が行ってあげられれば良いのだけど、まだ少し痛みが残ってるところもあって……ごめんなさいね」
昨日の傷を見れば当然だろう。それでも、クラウスの翼を貸してもらえるのであれば、何も問題はない。
「無理を言って、すいません」
「何でも言ってって言ったのは私よ。約束は守るわ」
リーゼロッテの頼みを聞き入れたレティシアは、すぐにクラウスを呼び、リーゼロッテとアルベルトを乗せたクラウスが、その身をディース領まで飛ばした。
前回ディース領へと赴いた時は馬車で丸一日。その大半の距離を龍の背中に乗って一気に進む。翼が一度はためけば速度はぐんと上がり、ロイスナーの領地を出て、ディース領に入る直前まであっという間であった。
ロイスナーを抜け、ディースが近くなった頃から、風と雪はその勢いを弱まらせ、街道の雪も気にすることのないぐらい薄いものになる。雪で道が閉鎖されてしまうのは、ロイスナーだけなのだ。
「クラウスさん、ありがとうございました」
クラウスの背中から降り、リーゼロッテが改めてクラウスに頭を下げる。
「レティシア様のご命令ですから。帰りもこちらでお待ちしております」
クラウスが動く理由はいつだってレティシアの為。レティシアの体を気遣い、寄り添って飛んでいた昨日の光景が思い出される。
「よろしくお願いします」
クラウスから離れ、少し進めばディースの門だ。アルベルトは門を確認するとアマーリエに向けて書状を送り届けた。春に訪れた時、ヘルムートがやっていたことと同じ光景が繰り返される。
門で馬車を借り、ディースの城へ向けて進む道中、リーゼロッテはアルベルトに魔法の話を打ち明けた。
土魔法が使えること。レティシアに連れられた森の中で魔力石を手に入れたこと。今回のものは全てその時に生み出したものだということ。そして、ロイスナーの城には必要ないと言われ、ヘルムートに預けていたことまで。
「ベルンハルト様はこれを持てば王都に戻れると仰っていたわ。そんなつもりないのに」
「ベルンハルト様は奥様のこと、本当に大切に思っていらっしゃいます」
ベルンハルトの行動をかばうように、アルベルトが言葉を返す。
「ふふ。ありがとう。大切に思ってくださってるのわかってます。だから、わたくしの戻る場所はベルンハルト様のいらっしゃる所だと、きちんとお話したの。それに、これを染めるのも大変だと聞いたわ」
リーゼロッテが胸元に光る魔力石に手を添えれば、アルベルトも当時を思い出すように宙を仰ぐ。
「それを染める時は、割らないようにとどれだけ心を砕いていたか……」
「あら? 本当?」
「え? 今、口に出して?」
「えぇ。ふふっ。本当?」
「あ、いや、そんな、ことは……」
「違うの?」
「え? いえ。違いませんが」
無意識に口から出てしまった言葉を取り繕おうと、慌てふためくアルベルトが可愛らしく、リーゼロッテは揶揄うように言葉を投げかける。
「ふふっ。嬉しいわ」
ベルンハルトの気持ちを少しでも垣間見ることができたからか、しどろもどろになるアルベルトを揶揄うのが楽しいからか、リーゼロッテは心から嬉しそうに笑う。
それは王女として正しいことではないし、貴族として褒められたことでもない。それでも、その顔はこれまでリーゼロッテがアルベルトに見せたどの表情よりも美しく、可憐に見えた。
間もなくディースの城の前へと馬車が到着した。前回は中庭へと案内されたが、今回は城の門の前にアマーリエが待っていた。
「アマーリエ!」
門の前に停まった馬車の中からリーゼロッテが声をかけると、アマーリエが穏やかに微笑んだ。
「リーゼ、ここではなくあちらの離れの方へ馬車を回して下さる?」
アマーリエが手で指し示す方角に、目の前の門よりも一回り小さいものが見える。正式な門を通るわけにはいかない理由は、やはりリーゼロッテのせいだろうか。
「はい。呼びました」
「そうよねぇ。だから出てきたっていうのに、まるで化け物にでも遭ったみたいなんだもの」
「まさかあんな声でも聞こえるなんて思ってもなくって。お身体は大丈夫ですか?」
「聞こえるとは、少し違うから。体はもうかなり良いわ。心配かけたわね」
リーゼロッテの問いかけに、レティシアが笑顔を見せる。昨日に比べその余裕のある顔は、それだけ回復が進んだ証だろう。改めて龍の回復力に驚かされる。
「実は、ディース領へと行きたいのです」
「ディース? どうして?」
「城の食糧が尽きてしまいそうで、ベルンハルト様が目を覚ます前に用意しておきたくて……それで、一刻も早く戻ってきたいのです!」
「ははぁん。龍の翼で行こうって? そんなこと、よく思いつくわねぇ」
「お願い、できませんか?」
「んー。構わないけど、行けてディース領の結界の前までよ? それ以上先には入れないわ」
「それで十分です! そこから先は馬車を手配します」
「そしたら、クラウスに乗ってもらっていいかしら? 帰りは荷物もあるのよね?」
「はい」
「私が行ってあげられれば良いのだけど、まだ少し痛みが残ってるところもあって……ごめんなさいね」
昨日の傷を見れば当然だろう。それでも、クラウスの翼を貸してもらえるのであれば、何も問題はない。
「無理を言って、すいません」
「何でも言ってって言ったのは私よ。約束は守るわ」
リーゼロッテの頼みを聞き入れたレティシアは、すぐにクラウスを呼び、リーゼロッテとアルベルトを乗せたクラウスが、その身をディース領まで飛ばした。
前回ディース領へと赴いた時は馬車で丸一日。その大半の距離を龍の背中に乗って一気に進む。翼が一度はためけば速度はぐんと上がり、ロイスナーの領地を出て、ディース領に入る直前まであっという間であった。
ロイスナーを抜け、ディースが近くなった頃から、風と雪はその勢いを弱まらせ、街道の雪も気にすることのないぐらい薄いものになる。雪で道が閉鎖されてしまうのは、ロイスナーだけなのだ。
「クラウスさん、ありがとうございました」
クラウスの背中から降り、リーゼロッテが改めてクラウスに頭を下げる。
「レティシア様のご命令ですから。帰りもこちらでお待ちしております」
クラウスが動く理由はいつだってレティシアの為。レティシアの体を気遣い、寄り添って飛んでいた昨日の光景が思い出される。
「よろしくお願いします」
クラウスから離れ、少し進めばディースの門だ。アルベルトは門を確認するとアマーリエに向けて書状を送り届けた。春に訪れた時、ヘルムートがやっていたことと同じ光景が繰り返される。
門で馬車を借り、ディースの城へ向けて進む道中、リーゼロッテはアルベルトに魔法の話を打ち明けた。
土魔法が使えること。レティシアに連れられた森の中で魔力石を手に入れたこと。今回のものは全てその時に生み出したものだということ。そして、ロイスナーの城には必要ないと言われ、ヘルムートに預けていたことまで。
「ベルンハルト様はこれを持てば王都に戻れると仰っていたわ。そんなつもりないのに」
「ベルンハルト様は奥様のこと、本当に大切に思っていらっしゃいます」
ベルンハルトの行動をかばうように、アルベルトが言葉を返す。
「ふふ。ありがとう。大切に思ってくださってるのわかってます。だから、わたくしの戻る場所はベルンハルト様のいらっしゃる所だと、きちんとお話したの。それに、これを染めるのも大変だと聞いたわ」
リーゼロッテが胸元に光る魔力石に手を添えれば、アルベルトも当時を思い出すように宙を仰ぐ。
「それを染める時は、割らないようにとどれだけ心を砕いていたか……」
「あら? 本当?」
「え? 今、口に出して?」
「えぇ。ふふっ。本当?」
「あ、いや、そんな、ことは……」
「違うの?」
「え? いえ。違いませんが」
無意識に口から出てしまった言葉を取り繕おうと、慌てふためくアルベルトが可愛らしく、リーゼロッテは揶揄うように言葉を投げかける。
「ふふっ。嬉しいわ」
ベルンハルトの気持ちを少しでも垣間見ることができたからか、しどろもどろになるアルベルトを揶揄うのが楽しいからか、リーゼロッテは心から嬉しそうに笑う。
それは王女として正しいことではないし、貴族として褒められたことでもない。それでも、その顔はこれまでリーゼロッテがアルベルトに見せたどの表情よりも美しく、可憐に見えた。
間もなくディースの城の前へと馬車が到着した。前回は中庭へと案内されたが、今回は城の門の前にアマーリエが待っていた。
「アマーリエ!」
門の前に停まった馬車の中からリーゼロッテが声をかけると、アマーリエが穏やかに微笑んだ。
「リーゼ、ここではなくあちらの離れの方へ馬車を回して下さる?」
アマーリエが手で指し示す方角に、目の前の門よりも一回り小さいものが見える。正式な門を通るわけにはいかない理由は、やはりリーゼロッテのせいだろうか。
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