バレンタインに両思いになったのに

光城 朱純

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授業中なのに

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 あんなことを朝からされて、その後の授業に集中できるはずもなく、授業中にもかかわらず教科書の中身とは関係のないことに思考を巡らせる。

 涼があんなことを始めたのは3年に上がった頃だったはず。春休みの2週間家に帰って、寮の部屋で二人きりになった途端に抱きしめられた。

 その翌日から朝のキスが始まったんだ。はじめは本当に触れるだけだったのに、どんどん濃厚なものに変わっていって、今では……。

 僕はまた、机の上に突っ伏した。思い出して、顔が真っ赤になるのをクラスメイトに見られるわけにはいかない。

 僕と涼の関係はただのクラスメイトでルームメイト。それ以上でもそれ以下でもない。僕が一人で顔を赤くしてるのを見られて、変な噂を呼ぶわけにはいかない。涼は相変わらず人気者なんだから。

 横目でチラッと涼の方を見る。僕の気持ちなんてお構いなしに、涼しい顔して授業を受けてる。

 こんな風に思い出して動揺して、顔を赤くさせてるのなんて、僕だけだよね。

 涼はあんなこと慣れてるのかな。あんなにかっこよくて、チョコレートだってあんなに貰ってくるんだ。女の子とだって……。

 ツキン。胸の奥に棘が刺さった様な痛みが走る。こんなこと、考えていちゃだめだ。せっかく、涼が僕のこと選んでくれたのに。今だけかもしれない。それでも良い。もう少しだけ、幸せに浸っていたい。

 胸の痛みを払い落とすように、僕は少しだけ頭を振った。醜い嫉妬も、一緒に飛んでいってしまえば良いのに。

 頭を振って、深呼吸をすると、初夏の空気が胸いっぱいに広がる。テストが終われば、夏休みだ。

 僕は授業に集中しようと、改めて教科書に視線を向ける。教科書の文字と睨めっこしていると、またむくむくと違う思考が頭の中を占拠し始める。

 涼がしたいこと、僕は多分わかってる。あの濃厚なキスの後、抱きしめられることも、ベッドに押し倒されることだってある。

 僕だって興味がないわけじゃない。高校三年生の健全な男子なら、女の子相手にそういうこと、想像したことがないやつなんていないだろう。

 涼のことが好きだって言ったって、夏の制服の生地の薄いスカートから透ける太腿には目を奪われるし、体育の後の汗で張り付いたブラウスが浮かびあがらせる下着のラインにはドキッとする。

 クラスメイトの女の子に、そんなこと思うなんて申し訳なくて、一生懸命目を伏せるけど、伏せた先には短い靴下を履いたスラッとした足が目に入って、目のやり場に困るんだ。

 そう、僕だって男だから。押し倒される側じゃなくて、押し倒す側になりたい時もある。キスが降ってくるのを待つのじゃなくて、降らせる側になりたい時もある。

 でも、そんなこと涼には言えない。言って、嫌われるのが怖い。涼に言えないことがどんどん増える。

 
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