英雄の軌跡

オウル

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序章

近代史

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 勇者伝説の時代を経て、人類は再生と繁栄の時代を迎えた。

 壊れた街を立て直し、恐怖に支配されていた森を開墾し、文化を花開かせた。
 人々は踊り、詩人は歌い、子を産み、人の時代が到来した。

 世界の人口は爆発的に増え、魔物の恐怖から生き延びた国家は超大国として君臨した。
 人の種としての繁栄は永遠に続くかと思われた。

 しかし、人が自らの欲望を制することができなかった。

 魔物という共通の敵を失った人は、今度は同胞で争うことを選んだ。

 大地に存在する希少資源の争奪、文化や技術の独占、領土や領民の支配。
 人の欲望は加速度的に大きくなり、多くの人の運命を巻き込んでいった。

 賢く良識のある者たちがそれに気が付いた時には、既に手遅れだった。

 切っ掛けは些細なことであったと記録されている。
 ある超大国同士の偶発的な事故により戦争が勃発。
 多くの国の利害関係を背景に、瞬く間に世界規模の戦争へと拡大した。

 勇者と魔物の王との最終決戦の争いが八日目に決着がついたのに対して、人同士で行われたこの戦争は終結まで七年以上かかった。
 終結までに犠牲となった人の数は魔物との闘いの数倍にも及んだ。

 もはや開戦の理由すら不明瞭になっていた戦争は、国家の衰退と共に自然消滅的に終結した。
 人は二度と同じ過ちを繰り返さないために、国家連盟を樹立。
 連盟憲章を作成し、各国が署名することで戦争への軛とした。

 人同士が世界規模で争ったこの戦争は“世界国家戦争”と呼ばれ、人の黒い歴史として記憶に新しい。


 王立図書館 主席学芸員 パウパトネラ・マリス著 「人の過ち」より抜粋
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