3 / 11
3
しおりを挟む
其の少女は翼の様な飛行具を付けて、樹上からトモベを見据えていた。褐色の肌と黒い瞳。トモベとは全く異なる種族だった。樹海の奥に樹上生活に適応した別の種族が居る、という話は聞き及んでいたが、実際に目にしたのは初めてだった。 その日トモベはダイオウシダの周囲に群生する白髪蕨を採取する為、朝から樹海に分け入っていた。夢中になって白髪蕨を採取するうち、樹海のこんな奥まで来ていたのだ。細くひょろりとした白髪蕨は、シャリシャリとした食感が特徴で、夕餉の副菜として無くてはならないものになっていた。 少女と目が合った途端、トモベは身体が痺れた様に動かなくなった。長時間目を合わせていた様にも思うが、実はほんの一瞬だったのかもしれない。少女はトモベに背を向けると滑空し、樹海の更に奥へと去っていった。背を向ける寸前、少女はトモベをちらっと見て確かに笑った様に思う。それともあの少女はトモベが見た天女の幻だったのだろうか。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる