しき神つかい

関谷俊博

文字の大きさ
上 下
12 / 20

12

しおりを挟む
ぼくたちは、また歩き始めた。
「景晴はよみがえって、何をするつもりなんですか?」
「おそらくは復讐」
ぼくがたずねると、賀茂さんは答えた。
「自分を封じこめた賀茂と安倍の血を引く者を殺し、その後、流罪のうらみを晴らしていく。つまりは皆殺しだよ」
「皆殺し…」
「それは、この村にいる者の恨みと一致しているんだ。自分たちを差別し、軽蔑してきた者に復讐したい。恨みを晴らしたい。その恨みの念が景晴のよみがえりに力を与えているんだよ」

しばらく行くと、賀茂さんは足を止めた。
「もう五芒星の中心だ。すぐそこに鬼塚はある」
ぼくは、焼け残った木々の間に、不自然に置かれた大きな石に気がついた。
「親父。あれじゃないか?」
美波も石を指さした。
「たぶんな。だが気をつけろ」
ぼくらは、ゆっくりと慎重に、その石に近づいた。
石には見たこともない文字が、一面に書かれている。
「間違いない。鬼塚だ。だが、おかしい」
賀茂さんは首をひねった。
「おかしい? ここに景晴が封じこめられているんでしょう?」
「いや」
ぼくがたずねると、賀茂さんは首をふった。
「この塚には何の気配もない」
そのとき、草をふむ音がした。そして、焼け残った木のかげから、女の人があらわれた。その顔を見て、ぼくは息をのんだ。
「良くきたな」
母さんは言った。
しおりを挟む

処理中です...