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僕は四谷にある「黙示録の子羊」主催の自己啓発セミナーの会場へと向かっていた。インターネットの検索では、午後一時半からビルのホールで、その自己啓発セミナーが開催される予定になっていた。
真夏の太陽は、身体に食い入るように眩く輝き、僕の首筋を焼いた。全てを焼き尽くすような午後の陽射しだった。
僕は自分の記憶に自信が持てなくなっていた。正気…狂気…正気…狂気…。ルーレットの赤と黒のように、事実と虚構の境界線は曖昧に霞んでいた。
或いは二河百道図のように、狂気と正気の境を僕は歩いているのかもしれなかった。二河百道…。善道が著した「観無量寿仏経疏』には「二河百道」の比喩が説かれている。法然や親鸞が自身の著作で言及するに至り「二河百道」の有様は掛け軸にも描かれるようになり「二河百道図」と呼称されるようになる。
「二河百道図」では中段から下に、細く白い線が描かれている。そして、この細く白い線が、極楽浄土へと至る道である。
白い線の右には水の河が逆巻き、左には炎の河が燃え盛っている。そして背後からは、盗賊と獣の群れが迫っている。旅人は躊躇う。何れにせよ、盗賊と獣の群れから逃れる為には、前に進むしかないのである。
動けないでいる旅人に、東岸から釈迦牟尼如来が呼びかける。
「逝け」
西岸からは阿弥陀仏が呼びかける。
「来たれ」
仏の声に誘われ、かくして旅人は極楽に往生を果たす。
しかし僕の二河百道は極楽へと至る道ではない。此方に転べば正気…彼方に転べば狂気…。導くのは釈迦牟尼如来や阿弥陀仏では勿論ないだろう。だが誘うものが何であろうとも、僕は構わなかった。
或いは僕は既に道を踏み外しているのかもしれなかった。麻里さんはアドレッセンスにしか存在し得ない幻影に過ぎないのかもしれない。
僕は既に狂っているのか。麻里さんは僕の頭が創りあげた存在なのか。蜃気楼か逃げ水のような存在を、僕は追い求めているのだろうか。
真夏の太陽は、身体に食い入るように眩く輝き、僕の首筋を焼いた。全てを焼き尽くすような午後の陽射しだった。
僕は自分の記憶に自信が持てなくなっていた。正気…狂気…正気…狂気…。ルーレットの赤と黒のように、事実と虚構の境界線は曖昧に霞んでいた。
或いは二河百道図のように、狂気と正気の境を僕は歩いているのかもしれなかった。二河百道…。善道が著した「観無量寿仏経疏』には「二河百道」の比喩が説かれている。法然や親鸞が自身の著作で言及するに至り「二河百道」の有様は掛け軸にも描かれるようになり「二河百道図」と呼称されるようになる。
「二河百道図」では中段から下に、細く白い線が描かれている。そして、この細く白い線が、極楽浄土へと至る道である。
白い線の右には水の河が逆巻き、左には炎の河が燃え盛っている。そして背後からは、盗賊と獣の群れが迫っている。旅人は躊躇う。何れにせよ、盗賊と獣の群れから逃れる為には、前に進むしかないのである。
動けないでいる旅人に、東岸から釈迦牟尼如来が呼びかける。
「逝け」
西岸からは阿弥陀仏が呼びかける。
「来たれ」
仏の声に誘われ、かくして旅人は極楽に往生を果たす。
しかし僕の二河百道は極楽へと至る道ではない。此方に転べば正気…彼方に転べば狂気…。導くのは釈迦牟尼如来や阿弥陀仏では勿論ないだろう。だが誘うものが何であろうとも、僕は構わなかった。
或いは僕は既に道を踏み外しているのかもしれなかった。麻里さんはアドレッセンスにしか存在し得ない幻影に過ぎないのかもしれない。
僕は既に狂っているのか。麻里さんは僕の頭が創りあげた存在なのか。蜃気楼か逃げ水のような存在を、僕は追い求めているのだろうか。
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