夏の破片

関谷俊博

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僕は度々、幻覚を見た。マジックマッシュルームを摂取したことによるフラッシュバックかもしれなかった。フラッシュバックとは幻覚剤によって引き起こされた体験が、突如として再現されることを指す。だが歌舞伎町の雑踏で幻覚を見たことを僕は覚えていた。マジックマッシュルームを摂取する前から僕は幻覚を見ていたのだ。
幻覚はいつも過去の記憶として蘇ってきた。そして登場するのは決まって麻里さんだった。

「トモヒロ!」

麻里さんが僕を呼んでいる…又あの文芸部の部室だ…窓の外ではやはり蝉が鳴いている…

「前世でも恋人どおしだったんだよ。トモヒロ」
麻里さんが真剣な顔で言う。
「誰が?」
僕は麻里さんに訊ねる。すると麻里さんは悪戯っぽく上目遣いで僕を見る。
「私とトモヒロが…」

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