夏の破片

関谷俊博

文字の大きさ
上 下
28 / 34

26

しおりを挟む
僕と佐々木が「千年王国」の本部に着いたとき、背後の車は五台に増えていた。
「千年王国」の本部は教会を模した白亜の巨大施設だった。
本部の前に停まるや否や、車から大勢の黒服の男が飛びだしてきた。
本部の扉は施錠されているようだったが、男達はその扉を蹴りとばし、教団内へとなだれ込んだ。僕と佐々木も後に続こうとしたが、二人の男に阻止された。
揉み合うような激しい物音や怒号。後から数台のパトカーも到着した。警官達も次々と教団内へと入っていく。
そのとき教団内部から高い悲鳴が幾つも上がった。
「何かあったな」
佐々木が呟いた。
やがて救急車のサイレンの音が鳴り響き始めた。
しおりを挟む

処理中です...