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第三章
母と娘
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ブレイン35 第三章 石枝隆美
八
振り向くと莉子が立っていた。中学から一緒で、高校時代の1番の親友だ。
「ねぇ、数学の宿題出たんだけどさ、私全然わかんなくてさ、あとで教えてくんない?」
私は数学が得意だった。
「あ、あ…うん。いいよ。」
「何どしたの?なんかあった?」
「いや、ちょっと気持ちが追いつかないだけ。」
「何?周藤くんの事?めぐのこと好きに決まってんじゃん。早く告っちゃいなよ。」
「え?あ、あ~そうだよね。周藤くんかっこいいから早く告白しないと彼女できちゃいそうだもんね。」
「そうだよ、うかうかしてらんないよ~。」
莉子はいたずらな笑みを浮かべた。
学校に着くと、莉子は隣のクラスなので別れ、教室に入った。
周藤くんと目が合った。
周藤くんとは中学の時出会い、私が両親の離婚で荒れて、学校をサボっていると、学級委員だった彼は家まで来て、ノートを持ってきてくれた。そして、「どうしたの?まだ体調悪い?」と聞いてくれて、「親が離婚して辛くって…」と事情を話すと、「そっか。離婚はしょうがないことなのかわからないけど、きっと南部が大人になれば大したことのないことだよ。でもお母さんを悲しませてはダメだよ。きっと一番傷ついてるのはお母さんだから。」と言って助けてくれた。それ以来ずっと好きで、気持ちを温めてきた。
高校時代は女子から人気があった周藤くんと付き合ったことによってクラスの女子から嫉妬され、孤立してしまった。私はいたたまれなくなって、結局自分から別れを切り出した。
過去に戻ったから、やり直したほうがいいのだろうか。それにしても、どんどん過去に戻っていってる…私は不安に駆られた。考えてもどうなるのかわからないし、悪い夢を見てるのかもしれない、そう自分を納得させた。
九
私が学校で孤立していた時、お母さんは嫉妬したい人には嫉妬させときなさいと言って慰めてくれた。
私はお母さんに相談することにした。
「お母さん、ちょっと悩み事があるんだけどさ、聞いてくれない?」
「何?なんでも話してちょうだい。」
「学校でね、好きな人がいるんだけど、とっても人気がある人なんだ。だから私がもし付き合えることになったら、周りから浮いちゃうかもしれないの。どうしたらいいかな?」
「…芽美、本当に好きな人が見つかった時は決して自分の気持ちを裏切っちゃダメよ。自分に正直に生きるの。その方が後悔しないし、素敵な生き方だと思うわ。」
私は堂々とクラスの女子がいる前で、周藤くんを屋上に呼び出した。
「好きです。付き合ってください。」
「俺も前から好きだった。」
「…本当に?」
「でもクラスの奴らにバレたら面倒だなと思ってたけど、さっき堂々と呼び出されてびっくりしたよ。勇気あるんだな。」
「こそこそするの嫌だったから。」
「そっか。俺も見習うよ。」
教室に帰るとクラスの女子たちはこちらを見て、驚いた目を向けている。私はどうだと言わんばかりに胸を張って歩き、自分の椅子に着席した。私は中身は35歳だ。高校生の子達に負けるもんか。
不思議とクラスの女子たちに認められ、
「南部さんってすごいよね。」
「ほんとほんと。みんなの前で周藤を誘うなんてできないよね。」
「そうかな。」
私は得意げになった。
十
次の授業が始まるチャイムがなり、先生が教室に来て、「起立、礼。」の号令で座った途端、視界がぼやけた。
目を開けると、お母さんが居間で泣いていた。私は中学生の時の制服を着ている。
「お母さん、どうしたの?」
「あっめぐちゃん…なんでもないの。」
「なんでもないわけないじゃない。お父さんと喧嘩したの?」
「…お母さんが悪いのよ。お父さんがいつまでも仕事をしないで家にいることに耐えられないのよ。」
「お父さんなんで仕事しないの?」.
「きっともう仕事が嫌になったんでしょうね。最近は競馬に行って、お金を稼ぐつもりなんでしょうけど、負けてはふて寝しての繰り返しよ。」
「お母さん、私…大きくなって立派に働くから。もう少し待ってね。」
「ありがとう。めぐちゃんは私の宝物だわ。」
私は中学生の頃、お母さんの気持ちも知らないで、離婚したことを不満に思い、友達と遊びに明け暮れて、ろくに帰らなかった。そんな時、先生に「両親が選択したことなんだから、しょうがないだろ。将来の為にもっと勉強して、親孝行をしなさい。」と、怒られた。私はその時、なんでそんなこと先生に言われなきゃいけないのと反発したが、今は先生は私のことを思っていってくれたんだと感謝している。でも当時の私はそれを理解することができなかった。
私はお母さんに、スーパーは寒いのでレッグウォーマーを買ってあげることにした。大型ショッピングセンターに行き、プレゼントを買うついでに2階にある絵画コーナーに行き、絵の具も買った。絵を描いていると、嫌なことを忘れられる。昔も今も同じだ。
莉子とは美術部で一緒だった。
「めぐ、しおりのデザイン考えた?」
美術部のボランティア活動があり、駅前のお祭りでイラストが描かれているしおりを配る予定らしい。
「まだ考えてないよ。」
「そっかぁ。最近、めぐ遊びに誘っても遊ばなくなったよね。なんかあったの?」
「家が色々ゴタゴタしててね、私がお母さんを支えなきゃいけないんだ。」
十一
夢を見ていた。
小学生の頃は幸せで、両親は仲良く、よくテーマパークに連れて行ってくれたし、お母さんは絵本の読み聞かせもしてくれた。
運動会にはお母さんが豪華な弁当箱を作ってくれて、お父さんが「恵、一位になるんだぞ。」と言うと、お母さんが「あなた、一位じゃなくてもいいじゃないの。めぐちゃんは自分の力を出しきれればいいのよ。」と言って、私が「めぐみ、実力あるから大丈夫だよ。」なんて言うと、三人で笑い合ったこともあった。
赤ちゃんの時の記憶はないが、お母さんが頭が良くなるように童話を歌って聴かせてくれたり、お父さんがお風呂に入れてくれたそうだ。私は大切に育てられた。
いつだったかお母さんに名前の由来を聞いた。新芽が出て来た時の感動に似てたから芽美と名付けたらしい。
「お母さん、ありがとう。」と言って、再び目を開けると、35歳に戻っていた。
久しぶりに実家に帰った。35歳に戻るとやけにお母さんが小さく見えた。お母さんの背中に向かって今度は私が守るからと呟いた。
十二
一年後
「お母さん髪変なってない?」
「大丈夫、綺麗よ。」
私はウェディングドレスを着て、結婚式の準備をしていた。私は周藤くんと結婚することになった。
「お母さん、今までお世話になりました。私にたくさん愛情を注いで育ててくれてありがとう。お母さんのおかげで今日まで不自由なく暮らせることができました。これからもよろしくね。えへ、スピーチの練習しちゃった。」
「もう、めぐちゃんってば…化粧が取れちゃうじゃない。…お母さんの方こそ、めぐちゃんにお礼を言わなきゃいけないのよ。めぐちゃんがいたから、離婚しても頑張んなきゃ、めぐちゃんを一人でも育て上げなきゃって頑張ってこれたのよ。お母さんの生きがいだったわ…幸せになるのよ。」
「うん、絶対に幸せになるね。」
八
振り向くと莉子が立っていた。中学から一緒で、高校時代の1番の親友だ。
「ねぇ、数学の宿題出たんだけどさ、私全然わかんなくてさ、あとで教えてくんない?」
私は数学が得意だった。
「あ、あ…うん。いいよ。」
「何どしたの?なんかあった?」
「いや、ちょっと気持ちが追いつかないだけ。」
「何?周藤くんの事?めぐのこと好きに決まってんじゃん。早く告っちゃいなよ。」
「え?あ、あ~そうだよね。周藤くんかっこいいから早く告白しないと彼女できちゃいそうだもんね。」
「そうだよ、うかうかしてらんないよ~。」
莉子はいたずらな笑みを浮かべた。
学校に着くと、莉子は隣のクラスなので別れ、教室に入った。
周藤くんと目が合った。
周藤くんとは中学の時出会い、私が両親の離婚で荒れて、学校をサボっていると、学級委員だった彼は家まで来て、ノートを持ってきてくれた。そして、「どうしたの?まだ体調悪い?」と聞いてくれて、「親が離婚して辛くって…」と事情を話すと、「そっか。離婚はしょうがないことなのかわからないけど、きっと南部が大人になれば大したことのないことだよ。でもお母さんを悲しませてはダメだよ。きっと一番傷ついてるのはお母さんだから。」と言って助けてくれた。それ以来ずっと好きで、気持ちを温めてきた。
高校時代は女子から人気があった周藤くんと付き合ったことによってクラスの女子から嫉妬され、孤立してしまった。私はいたたまれなくなって、結局自分から別れを切り出した。
過去に戻ったから、やり直したほうがいいのだろうか。それにしても、どんどん過去に戻っていってる…私は不安に駆られた。考えてもどうなるのかわからないし、悪い夢を見てるのかもしれない、そう自分を納得させた。
九
私が学校で孤立していた時、お母さんは嫉妬したい人には嫉妬させときなさいと言って慰めてくれた。
私はお母さんに相談することにした。
「お母さん、ちょっと悩み事があるんだけどさ、聞いてくれない?」
「何?なんでも話してちょうだい。」
「学校でね、好きな人がいるんだけど、とっても人気がある人なんだ。だから私がもし付き合えることになったら、周りから浮いちゃうかもしれないの。どうしたらいいかな?」
「…芽美、本当に好きな人が見つかった時は決して自分の気持ちを裏切っちゃダメよ。自分に正直に生きるの。その方が後悔しないし、素敵な生き方だと思うわ。」
私は堂々とクラスの女子がいる前で、周藤くんを屋上に呼び出した。
「好きです。付き合ってください。」
「俺も前から好きだった。」
「…本当に?」
「でもクラスの奴らにバレたら面倒だなと思ってたけど、さっき堂々と呼び出されてびっくりしたよ。勇気あるんだな。」
「こそこそするの嫌だったから。」
「そっか。俺も見習うよ。」
教室に帰るとクラスの女子たちはこちらを見て、驚いた目を向けている。私はどうだと言わんばかりに胸を張って歩き、自分の椅子に着席した。私は中身は35歳だ。高校生の子達に負けるもんか。
不思議とクラスの女子たちに認められ、
「南部さんってすごいよね。」
「ほんとほんと。みんなの前で周藤を誘うなんてできないよね。」
「そうかな。」
私は得意げになった。
十
次の授業が始まるチャイムがなり、先生が教室に来て、「起立、礼。」の号令で座った途端、視界がぼやけた。
目を開けると、お母さんが居間で泣いていた。私は中学生の時の制服を着ている。
「お母さん、どうしたの?」
「あっめぐちゃん…なんでもないの。」
「なんでもないわけないじゃない。お父さんと喧嘩したの?」
「…お母さんが悪いのよ。お父さんがいつまでも仕事をしないで家にいることに耐えられないのよ。」
「お父さんなんで仕事しないの?」.
「きっともう仕事が嫌になったんでしょうね。最近は競馬に行って、お金を稼ぐつもりなんでしょうけど、負けてはふて寝しての繰り返しよ。」
「お母さん、私…大きくなって立派に働くから。もう少し待ってね。」
「ありがとう。めぐちゃんは私の宝物だわ。」
私は中学生の頃、お母さんの気持ちも知らないで、離婚したことを不満に思い、友達と遊びに明け暮れて、ろくに帰らなかった。そんな時、先生に「両親が選択したことなんだから、しょうがないだろ。将来の為にもっと勉強して、親孝行をしなさい。」と、怒られた。私はその時、なんでそんなこと先生に言われなきゃいけないのと反発したが、今は先生は私のことを思っていってくれたんだと感謝している。でも当時の私はそれを理解することができなかった。
私はお母さんに、スーパーは寒いのでレッグウォーマーを買ってあげることにした。大型ショッピングセンターに行き、プレゼントを買うついでに2階にある絵画コーナーに行き、絵の具も買った。絵を描いていると、嫌なことを忘れられる。昔も今も同じだ。
莉子とは美術部で一緒だった。
「めぐ、しおりのデザイン考えた?」
美術部のボランティア活動があり、駅前のお祭りでイラストが描かれているしおりを配る予定らしい。
「まだ考えてないよ。」
「そっかぁ。最近、めぐ遊びに誘っても遊ばなくなったよね。なんかあったの?」
「家が色々ゴタゴタしててね、私がお母さんを支えなきゃいけないんだ。」
十一
夢を見ていた。
小学生の頃は幸せで、両親は仲良く、よくテーマパークに連れて行ってくれたし、お母さんは絵本の読み聞かせもしてくれた。
運動会にはお母さんが豪華な弁当箱を作ってくれて、お父さんが「恵、一位になるんだぞ。」と言うと、お母さんが「あなた、一位じゃなくてもいいじゃないの。めぐちゃんは自分の力を出しきれればいいのよ。」と言って、私が「めぐみ、実力あるから大丈夫だよ。」なんて言うと、三人で笑い合ったこともあった。
赤ちゃんの時の記憶はないが、お母さんが頭が良くなるように童話を歌って聴かせてくれたり、お父さんがお風呂に入れてくれたそうだ。私は大切に育てられた。
いつだったかお母さんに名前の由来を聞いた。新芽が出て来た時の感動に似てたから芽美と名付けたらしい。
「お母さん、ありがとう。」と言って、再び目を開けると、35歳に戻っていた。
久しぶりに実家に帰った。35歳に戻るとやけにお母さんが小さく見えた。お母さんの背中に向かって今度は私が守るからと呟いた。
十二
一年後
「お母さん髪変なってない?」
「大丈夫、綺麗よ。」
私はウェディングドレスを着て、結婚式の準備をしていた。私は周藤くんと結婚することになった。
「お母さん、今までお世話になりました。私にたくさん愛情を注いで育ててくれてありがとう。お母さんのおかげで今日まで不自由なく暮らせることができました。これからもよろしくね。えへ、スピーチの練習しちゃった。」
「もう、めぐちゃんってば…化粧が取れちゃうじゃない。…お母さんの方こそ、めぐちゃんにお礼を言わなきゃいけないのよ。めぐちゃんがいたから、離婚しても頑張んなきゃ、めぐちゃんを一人でも育て上げなきゃって頑張ってこれたのよ。お母さんの生きがいだったわ…幸せになるのよ。」
「うん、絶対に幸せになるね。」
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