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世界最強冒険者の悩み

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「どうしてこうなったんだろうなあ……」深夜のチームラウンジで一人ぼやく。俺の名前はカミト。「世界最強」の称号を得て1年が経っていた。
 田舎の農家に生まれた俺は、15歳になったときに、冒険者になることに憧れた。そしてここ、辺境の大都市サクラに来たわけだ。

  この世には大きく分けて2種類の生物がいる。俺達人間のように言葉を使い、対話ができる種族と、言葉を使えず本能のままに行動する種族がいる。対話ができる種族は後者の生き物を「魔物」と呼び、団結して魔物を除去、生息地を拡大する努力をしている。

  そして魔物を除去することを主な仕事とする職業を「冒険者」と呼ぶ。

  対話ができる種族は皆、3つの魔法を使用できる。そして魔法は炎を出したり雷を出したりする攻撃魔法、盾を出したり体力を回復させる防御魔法、ゾンビを使役するなんてものから明かりを灯すだけまで幅広い特殊魔法の3種類に分類されるそうだ。魔法が目覚めるタイミングは様々で、どのような魔法が使えるかもランダム。多くの者にとっては3つしか使用できない魔法は、自身の職業や未来を決める運ゲーである。1000年に渡り研究が進み、どのような魔法があるのかは大体体系化されているようだが未知の魔法やマイナーな魔法も存在する。そういう魔法を使用出来る者は重宝される傾向にある。

  15歳になった日、いつものように農作業をしていると魔物と遭遇した。その魔物は誰もが恐る「龍」だった。あまりの威圧感に動けなくなっている俺の前に、村で警戒をしていた冒険者達が駆けつけてくれ、死闘の末追い払ってくれたのだ。その時のかっこよさといったら。俺は「冒険者になり、いつか同じように龍を倒したい」と考えた。そして魔物との戦いを行う最前線である辺境で、1番栄えた都市であるサクラにやってきた。

  そこからは全て順調だった。特殊な魔法を取得していた俺は瞬く間に冒険者界のルーキーとして名を馳せる。冒険者を統括する冒険者ギルドには、冒険者の能力を評価し、レベルで評価する魔道具があるが、俺は毎年のようにレベルをアップさせていった。
  
  普通の冒険者は同じようなレベルのメンバーで集まって「チーム」を構築するが、俺のレベルアップのスピードが早すぎるためチームは組めず、一人で様々なチームに混ぜてもらいながら日々のクエスト(ギルドからの依頼)をこなしていった。

  気づけば 10年が経過した。俺は冒険者としての最高峰であるLV9に到達していた。そしてようやく共に戦える4名の仲間を従え、「ヘッズオブドラゴン」というチームのリーダーになっていた。
 チーム名にも名付けた「龍を倒したい」という目標はより燃え上がり、「一人で龍を撃破する」というこの世界最高の偉業に挑戦したいという気持ちになっていた。

  そんなある日、サクラで 10年ぶりに龍の目撃情報が入ってきた。前回の龍と同じ龍であるとギルドは判断し、冒険者として最高クラスであるレベル9だけで構築された臨時チームを構成、目撃地に派遣した。
 俺はそのチームのリーダーを務めていた。今の俺に龍が倒せるのか、そんなことを考えながら目撃地に向かう。

  到着するとすぐにわかった。紛れのない化け物がそこにはいた。尋常ではないオーラを放つ魔物。これが世界最強の魔物「龍」か。龍という魔物は特別な存在であり、数は少ないが1匹1匹が災害レベルの能力を保有している。自由自在に空を飛び、炎のブレスを吐く。身体は非常に大きく、普通の剣では切り裂くことさえできない。

  俺はついに到来した機会に高鳴る胸を押さえながら剣を出す。他のLV9達はオーラに圧倒されて動けないようだ。チャンスとばかりに俺は一人飛び出し龍に向かっていった。

  半日に渡る死闘の末俺は龍を撃破した。前回同様追い払ったのではなく、その首を取ることに成功したのだ。チームメンバーは俺を讃え、冒険者ギルドからは多額の報酬をもらった。そしてギルドの魔道具は俺を、150年ぶりの「LV10」に指定したのである。

  こうして冒険者になって以来の夢であった単独での龍撃破を成功させた俺だが、それ以来ずっとモヤモヤした気持ちになっていた。「これから何をすればいいのだろうか……」早い話が目標を失ったのである。

  そして150LV 10通常の依頼は冒険者ギルドが捌いてくれるが、そうではない依頼、つまりお偉いさんからの依頼は直接チームで対応しなければならない。誰々と誰々は仲が悪い、誰々は誰々より立場が上なのでうまく対応しないといけない。そういう政治的な出来事が増え、疲れは溜まっていくばかりだった。

  特に王都を訪れ、王と面会するイベントは大変だった。こんなにルールがあるのかというほどたくさんのルールを冒険者ギルドから教え込まれ、一時間の面会でクタクタになったものだ。

  目標を達成し、世界最強になった今、どのように生きていくべきなのか俺は考えていた。
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