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その後

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 念入りに後を付けられていないか確認した後、ランスが拠点に戻ると既に関わったメンバー全員が集合していた。
「お疲れ様でした、ランス様。予定通り完了しましたか?」
「ああ、問題ない。イザードは殺害し、連続殺人事件の証拠のある部屋に奴を放置しておいた。後は警察が見つけてくれるだろう」
「よかったです。お水をどうぞ」
 シェリーが水をコップに注ぎ、ランスに渡す。ランスは一気に飲み干した。
「さて、後はどうなるかだな。奴は警察にコネクションがあると言っていたが、どう動くか」
「大丈夫でしょう。あそこまで大々的な騒動になり、犯罪の証拠も見つかれば警察も誤魔化すことはできないはずです。きっとイザードが吊し上げられて終わりだと思います」
「約束通り1人、隊長? を生かしておいたよ。そいつが色々話してくれるんじゃないかな」
「リサさんが暴れるので大変でしたっすよー。何回か間違えて打っちゃいそうになりましたね」
「間違っても私に当たってたらあんたは今頃天国ね」

「では、後は続報を待ちましょうか。今日は解散ということで。皆様ありがとうございました」
「ああ、シェリーも良い作戦をありがとう。今日はよく眠れそうだ」

 次の日の朝、ランスはシェリーと一緒にイザード邸に向かう。仕事が終わった後は現場を確認する。これはいつもの習慣としていた。どうなったかを自分の目で確認して、その仕事を終わらせる。これがランスなりの流儀である。

 イザード邸の前にはたくさんの野次馬がごった返していた。警察が追い返しているが、野次馬の数が多く捌ききれていない。
「なあ、何かあったのか?」
 ランスは野次馬の中で見物人の1人に話しかける。
「ああ、そこの貴族邸に襲撃があったらしくてな。なんでも兵士や護衛も含めて全員殺されたらしい。爆発もあったらしくて家の様子がすごいことになってたよ」
「そうなのか、ありがとう。俺も見てみるよ」
 ランスは見物人に例を言うと、シェリーの手を引き1番前に向かう。警察官達の隙間から見えた邸宅の庭は血まみれになっており、2階は1部吹き飛んでいた。調査官と思われる警察達が忙しなく動き回っている。
「危ないので離れてください! 現場検証中です!」
 警察官の叫び声に応じ、ランスはシェリーと共に邸宅を離れた。

「リサ、相変わらずだな。すごいことになっていたぞ」
「ええ、血を見ると興奮するタイプですから。普段は普通の大人しい女の子なんですけどね」
「興奮して止まらなくなったんだろうな」
「全体的な計画はどうでしたか? 問題ありませんでしたか?」
「そうだな…… 部屋のドアが鉄で出来ていたところは予想外だった。隣の部屋からぶち抜いて入ったが、独立した部屋だったら厄介だったな。後は、イザードが証拠の場所を吐かない、もしくは嘘をついた場合は面倒なことになっていた。運が良かっただけかもしれない」
「なるほど…… ローラを連れていくのが良かったかもしれませんね。ピッキングという意味でも尋問という意味でも」
「確かにそうだな。確実性は上がっていた可能性はある」
 ランスとシェリーは拠点に戻り、食事をとりながら反省会をする。食事はステーキ、ミディアムレアで焼き、一緒に食べる。これもいつものルーティンだ。

「ローラは戦闘能力に難があるのがリスクですが、現場でも出来ることは多いですからね。ランス様の警護、もしくは私も参加し警護することで彼女の能力を活かせそうです」
「ああ、そうだな。次回からは場合によってはそれも考えよう」

 1週間後、王都で発生していた連続殺人事件の顛末が明らかになり、話題となっていた。犯人はイザードという貴族で、総勢10名以上に渡る犠牲者がいたとのことだ。逮捕された私兵隊長曰く、定期的にイザードの好みの女性を拉致し、引き渡していたらしい。通常であれば極刑は免れないが、既にイザードは死亡している。

 しかも犯行がわかったのは彼が死体として見つかった邸宅から様々な物的証拠が出てきたからとのことで、その点も話題になっていた。彼を殺害した犯人は見つかっていないが、偶然イザードは殺害されたのか、それとも意図的に狙われたのか。新聞は様々な憶測を書き立て、市民も貴族も噂をする。天罰だというものもいれば、目立ちすぎて粛清されたというもの、被害者の関係者の復讐まで様々な説が出たが、警察は何も手掛かりを掴むことができない。ひっそりと捜査は終結し、被疑者不明という結論が付けられるのであった。

「…… ということで、既に捜査は完了しています。警察としては証拠が何もないことからプロによる粛清だろうという推測を立てていますが、それ以上は掴めていないようです。王家側からもこの調査の幕引きを図るように指示が出ているようで、今後トラブルになることはないでしょう」
 ローラが調査情報をランスに報告する。今回の依頼も問題なく終わったか、ローラが情報網を駆使し調べていたが特に何もヒットはしなかったようだ。
「王家が動いたのか?」
「そのようです。警察としては徹底した捜査をしたかったようですが、王家の介入で断念したとのことです。イザードが連続殺人犯であることがわかったので警察が殺人犯の支援をしていると見られないように、とのことです」
「なるほど。あの姫が絡んでいるのかはわからないが…… まあどうせ気づいているんだろうな。まあ、まず依頼の完了に乾杯だ」

「どうしたんですか、課長。深刻そうな顔をして」
 王国警察の殺人捜査課の課長、デニスが屋上で葉巻を吸っていると部下のモンが心配そうに声をかけてくる。
「いや、例のイザード伯爵の事件だが…… どうにも胡散臭いと思ってな」
「ああ、急に捜査が終わったことですか? あまりにも突然の方向転換だとは思いましたが……」
「ああ、それもある。王家が捜査を止めるよう指示を出したとの噂だ。何かしら裏で動く組織がいるのかもしれないな」

「王家の暗殺部隊なんてものがあるのですか?」
「聞いたことはないが、この10年、あまりにも悪人が殺害される事件が多すぎる。今回のような隠れた悪人から有名な悪人まで大小問わず多くの悪人が殺されている。そしてどれも現場には一切の証拠が残っていない。何かあってもおかしくはないな」
「警察の代行ですかね? そんなのが暗躍していたら気味が悪いですね……」
「代行なんてものではないな。法律による処罰がこの国のルールだ。それを無視して独自に死刑を執行する者がいるのであれば、それはただの殺人犯だ」

「確かにそうですね……」
「俺はこの件は独自に調べてみようと思う。もし俺が殺されたら…… そういうことだと思ってくれ」
「縁起でもないこと言わないでくださいよ。でもまあ何が出てくるかわからないですからね、気をつけてくださいよ」


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