ダンジョンの核に転生したんだけど、この世界の人間性ってどうなってんの?

未知 道

文字の大きさ
62 / 147

62.目を背けた、後悔

しおりを挟む
 


 俺は、直ぐに炎竜を召喚しようとした。だが、申請しても、承認がされなかった。

 それが何故なのか、思い至ったのは。黒の禁術機も、世界と同期をすることが出来る。だから、同期している炎竜に、何か干渉しているのかもしれない。

 俺が、それを黒の禁術機に聞くと……――。
『世界と同期するのを、ずっと疎かにしてきた炎竜の精神を。そこの場所に押さえ込むなど、容易い』と、吐き捨てるかのようにして言われたのだ――。



 △▼△▼△▼△▼


 どうしよう、どうすれば……?


 黒の禁術機の前であるが、恥も外聞も無く。レイドに口づけたり、一向に立たない陰茎を舐めたりもしたが――意味が無いことだと気が付いてしまった。

 それは、濃厚接触だと時間がかかり過ぎる。
 この、術の進行具合からすると……確実に間に合わない。


「あ~あ~。そんなことしていても、俺の術は絶対に解術出来ない。まあ、良い足掻きを見せてくれたからな――ほら、これをやるよ」


 俺の前に、何かを投げ落とされた。


「え……。なんで?」


 禁術機の本体が、地面に転がっている。


「ん? どうした……? 喜べよ! 俺を破壊することが出来るんだからさっ!!」

 腹を抱えて笑っている、黒の禁術機の行動が信じられなくて。俺は、それを呆然と眺めてしまう。

「おい、おい、おい? 俺ばっかり見ててさ~。そいつ、良いのか? 死ぬぞ? 俺か、そいつ……どちらか一つだ。別に、迷うもんでもね~だろ?」
「――――ッ! く、そ……!!」

 俺は――黒の禁術機を、手に強く握る。

「は、はははははっ!! そうだ! そうなんだよ!! それが、人間だっ!! 所詮、お前も元は人間だ。結局は、そういうもんなんだ……」


 鋭い痛みを、手に感じるが……。それよりも、俺の手に持つ物がパキパキパキと壊れていくのを見ると。
 灰の禁術機の時と同様、モヤモヤとしたものが胸に強く湧き上がってくる――。


「……っ、黒の禁術機、俺は――」
「それ以上言うな!! 偽善者がっ!! いいんだよ! どうせ、もう……これで終わりなんだ」


 そうだ。結局は、俺も選んだ。

 命の選別をした。

 だから、何を言っても。自分を楽にするためだけの、自己満足でしかないだろう。


 俺は、もう何も言えなくなり……。壊れゆくそれを、ただ見ていた。



 ――【パリンッ!!】


 手の中にある禁術機が壊れた。


 直ぐに、レイドを見るけれど……術の進行が止まっていない。

 何故だと思い、黒の禁術機がいたところを見ると――――。


「消えて、ない……?」
「くく……っ! ははははっ!! お前、おつむが弱いな? 俺は言ったぞ? 残留思念が強い、とな。完全に消滅する3日までなら、力は弱くなるが術を使える。しかも、破壊される前にかけていた術に至っては、そのまま解けることも無いからな?」

 なら、レイドは確実に――。

「更にもう一つ、残酷な真実を教えてやるよ。お前が使おうとしている核の力はな――その男がいないと使えない。だから、もう、全て終わりなんだ。終われば良い、こんな世界なんか……」


 黒の禁術機は、笑いながらも辛そうに涙を流している。

 同じだ……。灰の禁術機と――いや、きっと全ての禁術機も……そうだったんだろう。


 ――なんで、こんなことに……?

 俺が、いけないのか?

 ああ……。そう、そうだ……――俺は、自分自身のことから目を背けていた。

 ずっと、ずっと、知らない振りをしてきた。

 炎竜にだって、ちゃんと問い詰めれば良かったんだ。

 特に、レイドは……もしかしたら、俺のことを知っているのかもしれない、とも思っていた。

 懐かしそうな目を向けられた時だってあったし、俺に関する何かを隠しているようにも感じた。

 そして、何よりも……――愛おしいという目で、ずっと、ずっと、俺を見ていて。いつも、大事にしてくれていた。



「……理由、聞くの……後回しにせず。直ぐに、聞けば良かった……」


 ジワジワと視界が悪くなっていき、ボロボロと涙が溢れ出す。

 本当に苦しくて……胸の辺りをギュウッと強く握り締めた。


 そうか……。レイドは、俺が輝石になった時も、炎竜の傷を肩代わりした時も、こんな気持ちを味わっていたんだな。今さら、理解するなんて……――。



 ――ピピ。


【〖幸運に抱かれし者〗の強い苦痛を察知。

 原因を取り除く為に、MAX幸運∞×10の使用を許可しました】


 これは、まさか。

 あの時の――。


 〖確認〗を押す。


 ――ピピ。

【原因の排除をオート設定にしますか?】


 〖YES〗を押す。


 ――ピピ。

【原因の排除=MAX幸運∞×10(残り1回)∶白を喚ぶのみ。

 権限を使用しますか?】


 〖YES〗を押す。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!

めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈ 社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。 もらった能力は“全言語理解”と“回復力”! ……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈ キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん! 出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。 最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈ 攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉ -------------------- ※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? 夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)は、見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!?
幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良ワーウルフの悪友(同級生)まで……なぜかイケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない!恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!?
甘くて可笑しい、異世界学園BLラブコメディ! 毎日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

処理中です...