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104.自覚のち、逃亡
しおりを挟む光粒の種が出る期間は、だいたい一週間程度だと決まっている。
昼間は、その種が少ししか出ず。夜になった時に、大量に噴き出るのだ。
時間が限られているからと。空気の淀みが多い、各地の中心部に散らした方が良さそうだという話になり。昼間は休めそうなところで休息を取って、夜になってから行動するようにしていた。
その間、またレイドと炎竜が喧嘩を始めたり。各地を回っている俺達のことが噂になってるのか、人間達が追いかけて来たりと、色々と大変だったが……。
なんとか、一週間以内に、全ての各地を回ることが完了した。
そして、驚くことに。俺のダンジョン内に生えている、光粒の花は元気なのか。
国に戻ってからも、ダンジョン内に種を大量にふわふわと飛ばしている。
それを見て。そんなに慌てて、全国を回る必要はなかったかな~と、頭にくっついてくる種を払いながら思っていた。
△▼△▼△▼△▼
「炎竜も、本当ありがとうな! マジで助かった」
『このようなこと、お安い御用じゃ。――……にしても。こんなに貴重なものを、本当にワシが頂いて良いのかの……?』
炎竜は、人形の状態になっていて。クリムルのお酒が入ったグラスを、ユラユラと揺らしている。
「いいの、いいの! これは、俺の分だからさ。ほら、気にせず飲めよな!」
レイドにあげる2本の他に、実はもう1本あって。自分用に残していた。
炎竜には、今回凄く助けられたし。勿論、全部ではないけど、半分くらいはあげるつもりだった。
『ホッホッホッ!! では遠慮なく、頂くとするかの』
炎竜は一口飲み。大層お気に召した様子で、その味を称賛している。
「レイドは、どう……? 美味しい?」
「ああ、美味しい」
俺が話し掛けるまで。レイドは無言で、チビチビとお酒を口に運んでいた。
昔からだけど。レイドって美味しいものを食べたり、飲んだりすると、無言になるんだよな。
炎竜は、お酒を一口飲む毎に。ペラペラと、その味を褒め称え。
レイドは、ひたすら無言で、お酒を飲み進めている。
正反対の反応を見せる、レイドや炎竜が面白くて。俺は、それを笑って眺めていたら――ふと、前から思っていたことが頭に過る。
「――俺は、ほぼ永久的に生きるみたいだけどさ……。炎竜は、何かで消滅する可能性もあるし。レイドは……。人間だから、いつか死んじゃうんだよな?」
炎竜は、その何かを起こさないように、俺が気をつけるつもりだけど。レイドは、人間だからいつか終わりが来る。
まだまだ先だし。今、それを気にしなくても良いことなんだろうが――。
何だか、それを想像しただけで……。胸が引き絞られている感覚がして、気分が沈む。
「ヤマダ、俺は死ぬことはない。いや、死ぬことが無くなった……と言った方が正しいな」
レイドは、何ともないような顔をして、そう言い。また直ぐに、チビチビとお酒を飲んでいる。
「……へ?」
死ぬことが無くなった……? なに、それ??
俺は意味が分からなくて、ポカンとしていると……。炎竜が、レイドの言葉に対し。肯定するように頷いていた。
『うむ、そうじゃな~。奇跡的にも、全てが良い方向に収まってくれたの』
「え……? ごめん、2人共さ。俺にも、分かるように説明してくれない……?」
レイドも、炎竜も。自分達の中では、納得している事だからか。その経緯を抜かして、結果から言うところがある。
それで、俺はいつも理解が出来ない。
『ああ、そうじゃな~。主には、それを言っておらんかったの……。前に、ワシが自然の無機物から生まれた、と言ったのは覚えておるかの?』
「うん、覚えてる」
あの時は、状況が状況だったけど。炎竜が無機物の存在だって言われたことが、凄く衝撃的で……。だから、その事はしっかり覚えていた。
『そのように、ワシは自然から生まれるからの。自然の力が、ワシの活力になっておるのじゃ。ワシが生まれた当初……。人間が生まれる以前は、何があろうと消滅すること自体があり得んことじゃった。それは、ワシの身体に傷がつこうと、勝手に自然が治癒してくれておったからじゃ。しかし、世界の歪みにより、それが行えなくなっていたようじゃがの……』
「世界が汚れて、壊されていく度に……。それも、徐々に出来なくなってたってこと?」
結果、世界が壊されることで、それを行う力がなくなり。炎竜に、一切治癒が出来なくなってた……ってことかな。
『そうじゃな、ただ……。己を傷つけることなどは、そうそうないことじゃからの。ワシは、あの時になって漸く現状に気がついたんじゃ』
あの時……――禁術機と対峙した時か。
「そうか、そうだよな……。炎竜に傷をつけられる人も、そうはいないし。そりゃ、確かに分からないな。……今は、元あった形には戻ってるのか?」
『戻っておるぞ。無いとは思うが。仮に、あのような状況になったとしても。直ぐに回復するから、問題はないの。まぁ、先ほど言ったように――本来、ワシの存在は不滅であるからの。だから余計に、あの時に消滅するという事態になったのには、だいぶ驚いたんじゃよ』
へぇ、そうだったのか……。炎竜は、自然から生まれてるから、年も取らないのかな? なんか、凄い存在だ。
……ん? じゃあ、まさか。レイドは、その性質をも引き継いでるから、死なないってこと……?
「それってさ。レイドも、炎竜と同じ性質を持ってて……不死だってことか?」
『うむ……。あのままじゃったら、人間としての生の長さで終えたじゃろうが……。この地が、完全に清浄されたことにより。これが続く限りは、レイドも永久的に生きておるじゃろう。正直、ここまで、ワシの性質を引き継いでいるとは思っておらんかったからの。それを知った時は、ワシも驚いたわい。ホッホッホッ!!』
じゃあ、レイドも……。ずっと、俺達と一緒にいられるのか。
レイドに視線を向けると。未だに、チビチビとお酒を飲んでいる。
その表情は、ふにゃりと緩んでいて。なんだか、とても可愛く見えた。
『主、レイドと共にいれると分かって。安心したかの~?』
「え……?」
炎竜に視線を戻すと。ニマニマとした笑みを浮かべていた。
「な、なんだよ、炎竜……?」
『あ~あ~、妬けるの~! 主に説明もせず、酒に夢中になってるような飲兵衛に、そんな顔を向けるなんて――よし! 今がチャンスじゃの~~!!』
炎竜に、ブチュ~~!! と頬にキスをされた。
「ちょっ!? は? な、なにすんだよっ! 炎竜、絶対に酔ぱらっ……――ヒッ!!?」
なんか、スゲー寒気が……。
後ろを、恐る恐る振り向く。――レイドが、氷のような目をこちらへと向けていた。
『あっ! ワシ、用事があるんじゃったっ! じゃ、またの~~!!』
炎竜は、俺達の言葉を待たずに。空間魔法を使い、この場から一瞬で消えてしまった。
「――まっ、待てよっ! 卑怯だぞっ!!」
もう、この場にはいない炎竜へと、俺は悪態をつく。
「ヤマダ……。俺は、お前達にとって……ずっと邪魔な存在だったのか?」
レイドは顔を歪め。ふいっと、俺から視線を外した。
「えぇ? なんで、そうなるんだ……?」
「炎竜に、よく見とれていただろう? 確かに、顔かたちは……。普通では見られない程、端正だからな」
「はぁ?」
炎竜に見とれてた……? いつだよ、それ?
顔かたちは。まぁ、美形かもしれないけど……。
炎竜は、人間の姿だと――腰につくほど長い、波打つ漆黒な髪に。金色の目をしている。
雰囲気は、神話に出てくるような彫の深いイケメンって感じだ。
地面に視線を落としているレイドに、目を向ける――。
レイドは――肩ほどある長さの、真っ直ぐな鮮やかな赤い髪に。髪の色を、もっと濃くした綺麗な赤い目をしている。
格好良いんだけど、その中には美しさもある不思議な感じで……。どこか近寄りがたい、ミステリアスなイケメンって表現がしっくりくる。
いや、顔かたちのことを言うなら――。
「レイドのが、スゲー好みなんだけど……」
「えっ!?」
バッ! と。レイドは、俺に視線を戻し、目を見開いている。
「俺が、好み……? 本当か? ……炎竜よりも?」
「だから、そうだって言ってるだろ! 本当に、なんだよ? そんなに驚くことか? 流石に、好みじゃなきゃ……。禁術機のことがあっても、あそこまで身体を許したりなんてしないだろ」
今、考えても。他の誰かと、あんな濃厚な絡みをするなんて……考えただけでも鳥肌が立つ。
それは、レイドとだから出来たのであって……。もし、【赤、紫の禁術機】の時に、他の人間が術にかかっていたとしたら、何がなんでも禁術機の方しか狙わなかった。
ってか、普通はそうするんじゃ――ん? あれ? それって、まさか……。
お、俺、レイドのこと……――。
「ヤマ――」
「うあああーーーっ!! 俺も、用事思い出したぁああーーーーっ!!!」
「え? ヤマダ……っ!? まっ……――」
レイドに、言葉を返すこともせず。俺はダンジョンを消し、ダダダダダーーーーーッ!!! と猛ダッシュで森から出た。
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