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139.〖ロンウェル〗現在(終)
しおりを挟む「締めくくりが、それって……。他に何かなかったのかよ?」
本当……。塔主様も、ミィーナも……鈍感すぎる。
子供扱いしていたんじゃない。俺にとって、ミィーナだけが特別だった――愛していたんだ。
********
ふと、ミィーナに対してだけ、心のままの自分を出せることに気が付いた。
それを、意識し出してからは。考え、悩んで……辿り着いた答えが――ミィーナの事を、“女性として愛している”ということだった。
俺は案外単純なようで、好いた人に対しては飾らない自分で接したいと、無意識にそうしていたようだ。
でも、ミィーナの目には塔主様しか見えていなくて――塔主様に恋をしている、ということも分かっていた。
それは、ミィーナが魔術塔に来た日から。当人である塔主様以外の、全員が気付いていることでもあった。
俺は自身の想いを知ってからは、ミィーナから恋慕の気持ちを向けられている塔主様を、羨ましいと思っていた。
けれど、人の気持ちをどうにかする事は出来ない。
だったら、せめて――ミィーナの隠されている、全ての情報が知りたかった。
それは、魔術塔内にいる者達はワケありである事が多く。例に漏れず、ミィーナもそうだった。
ミィーナの場合は姓を名乗っていないので、生まれが何処かも分からない。
それで、【塔主の間】には――塔主様が、内部の人間を把握する為。魔術塔にいる仲間達の、個人情報を載せている資料がある。
塔主様が不在の時を見計らい、その資料に載っているミィーナの情報を盗み見た。
すると、ミィーナは……一時騒がれていた有名な家の出であることが分かった。
何故かぼかされている様子の、その詳細も調べたが……。正直、あそこまでの怒りを感じたのは、生まれて初めてだ。
ミィーナに酷い扱いをした奴らが生きていたら、ミィーナにしたことを返してやるつもりだったが、全員が寿命により亡くなっていたため、当分の間はやり場のない怒りに苛まれることになった。
――その後も、自身のミィーナに対する気持ちは日毎にどんどんと膨らみ。俺には何でも話して欲しかった。
それこそ、その暗い過去さえも……――。
だが、ミィーナは、俺が目を背けたくなるようなことを塔主様にした。
信じられなかった、というよりも……信じたくなかった。
少なくとも、その事実を目の当たりにはしたくなかったと――仕事で使っていた資料を置くため、あの時間に【塔主の間】へと行ってしまった自分を責めるしか出来なかった。
しかし、それを見てからも。俺のミィーナに対する恋慕が消えることはなかった――。
********
「……ま、俺の事なんて、ミィーナは全然眼中になかったんだろうな」
想いを伝えれば良かったのだろうが……。ミィーナは塔主様以外の人に対し、一線引いていたところがあった。
――そう、まるで……俺と同じように。
だから、何となく分かるのだ。
もし、俺が気持ちを伝えた場合――ミィーナは、俺から距離を置こうとするだろう……と。
その想いに応えてあげられないのに、想いを向けてくる人の側に居続けることは、お互いが辛い。
だったら、いっそ離れた方が良いと考えてしまうから――――。
「……んっ!」
ミィがザラザラとした舌で、俺の唇を舐めてくる。
ザリザリザリと舐められて、くすぐったい。
――ミィの両脇を持ち、その身体を離す。
「何だよ……? 昼間食べた、鮭の匂いでもしたか?」
7階にあるカフェで鮭定食を食べたから、美味しそうな匂いを感じ取ったのかもしれない。
『みゃ~ん?』
ミィは、首を傾げて『何で離すの?』と言っているようだ。
また、ミィのふわふわとした顔が近づいてきたから、意識を違うところに向けてもらおうと、ミィの首周りを優しく撫でる。
ミィは直ぐに、ゴロゴロゴロ~! と喉を鳴らし、気持ち良さそうに目を細めた。
「本当、お前は……。俺が大好きだな?」
『みゃんっ!』
ミィは返事のような声を出した後、俺の膝の上に座り込み、そのまま目を瞑った。
これは、この膝が痺れるまで退いてくれそうもないなと……。ミィの可愛い寝顔を眺め、笑みを溢した。
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