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6.和紗side
しおりを挟む両親は、俺の様子に恐怖したようだ。
それは、俺の運命が現れた少し後のこと――。
運命の番と結ばれるというのがあからさまに分かるドラマなんてものを見てしまい。
彰に告白をし、断られたと思っていた時期だった。
両親からすると、俺の目が常に殺気立っていて。もし俺が彰と番になれず、彰の番となる人が現れた場合。俺がその人を殺す可能性があるからと、両親が医者である叔父さんに頼んでくれたようだ。
それで、俺は叔父さんから『彰くんに、筋肉増幅剤を飲ませてみたらどうだ?』と提案されたのだ。
そういうのも、俺が彰を無理やりに番にしたくないと言ったからだろう。
オメガと番契約を結ぶ時に一番気を付けないといけないのが、オメガへの心身的な負担なのだ。
恐怖した状態のオメガと番契約を結んでしまうと、アルファに従うような、オメガらしいオメガになってしまう。それは、絶対に嫌だった。
無理に番にして、怯えさせたり、虐げたりしたいわけではない。
今の性格をした彰のままでいて欲しい。
俺のアルファとしての強さなら、彰を簡単に番に出来る。けど、今までしなかったのはそういった理由からだった。
外堀を埋め、彰には俺しかいないと日々思わせていく。そうすれば時間が掛かっても、最後には俺を選ぶ……と思っていたが――。
彰が違う病院に行き、保護施設に逃げたのには焦った。
毎日、毎日、考えた。やはり、無理に番にしてしまおうか……と。
だが、今の彰がいなくなると考えただけで、勝手に涙が溢れ出す。
それで――どんなに恥をかこうが“彰に許してもらうためだけ”に保護施設へ足繁く通うことにした。
良かったと思ったのが、保護施設の職員が俺に同情的だったことだ。
多分、俺のようにオメガにすがり付くアルファ……――しかも、上位アルファはいないのだろう。
暇があれば長時間滞在し、悲痛な顔をしていれば、職員の人達は徐々に彰の様子を話してくれるようになっていった。
丸一日、仕事が休みになった日。
『今日は仕事が休みだから、ここが閉まるまで待ちたい』と悲しげな表情で職員に言うと。職員は涙目になり、小走りで俺から離れて行った。
それで、企みが上手くいったか……? と思い――。
先程と同じ職員が、笑みを浮かべながら駆け寄って来るのが見えた時。完全に上手くいったのだと安堵した。
普通は、職員からオメガに『訪れているアルファと、面会してはどうか?』ということを言ってはいけない。
それはオメガが、ここも自分を守ってくれないのだ……と勘違いする可能性があり。保護施設に逃げて来たオメガを追い込むことになりかねないからだ。
だが職員の様子を見るに、そうハッキリと伝えられなくとも、彰に何かを言ったことは伝わってきた――全て、計算通りに事が進んだ。
後は簡単だった。
彰は、天然で手の掛かる子を放っておけない性分だ。
俺が抜けたような、馬鹿みたいなことを言い。すがり付くような行動を取ったら、彰は俺への態度を軟化させた。
そして、数回の面会の後。彰は保護施設から、俺の元へ戻って来たのだ――。
***
「彰……。俺、思うんだ」
「ん~? 何を?」
未だ寝転んでいる彰が怪訝そうに、俺を見上げる。
そんな彰に、笑みを向け――。
「俺と彰は、番になる運命だったんだよ」
生物学的には、俺と彰は運命ではないだろう。
だが、出会って――結果的に番になる運命だったということだ。
「番になる運命……か」
俺の言葉を、彰は頷いて肯定し――「きっと、そうだったんだろうな……。お前が俺の運命で良かった」と、可愛らしい笑顔を返してくれた。
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