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4.家に帰ろう!……ここ、何処?
しおりを挟むどうやら、俺は異世界トリップをしたようだ。
今、外にはナマコのような形をした月が浮いている。太陽もナマコの形だとは聞いたが、眩しいからよく分からなかった。
(こんな意味分かんないとこに来て、もう一週間も経ったんだなぁ。本当、嫌んなるわ……)
『デルデール……。何故、こちらを見ず、話してもくれないのだ?』
(本当、嫌んなるんだよっ!! うっせ! マジ、うっせ~~!! デルデールって何だよっ!? んなの、俺の名前じゃね~し!! お前なんか、視界に入れないし、話したりもするもんかっ!!)
何か、こいつの話だと……。俺は、幼い頃に悪い奴らに拐われ。国どころか世界をも跨ぎ、地球へと持っていかれたんだと聞いた。
そんなの聞かされても、何だそれ? だし。何より、俺の実の名前は【デルデール】だったなんて言われて『はい、そうですか』と簡単に認めることは出来ない。だって、ヤバいだろう。デルデールだなんて……。
『3日後には、我と結婚するのだぞ? 頼むから、それまでには機嫌を直して欲しいのだが……』
「は、はぁっ!? け、けけ結婚ーーーっ!!?」
まさか、頻繁に俺の寸法を測ってたのって、それ用の服を作る為だったのか!? と驚愕する。
普通の服を作る為なのかと思って、あまり気にしてなかったのだ。
「なんだよ、それ……っ!?」
ふざけんなと、バッ!! と振り向いたら。シコシコ~ルは凄く嬉しそうに笑った。
(か、顔だけ見れば最高なんだけどな……。けど、アソコにナマコがついているから無理だ。そんなんついてるから予想していたけど、やっぱり男なんだとも言われたし……)
シコシコ~ルの下半身を見る。
ビンビンにそそり立ったナマコが、美女のような容姿をした人物から生えている。
(……うん、無理だろ)
『愛しい人よ……。そなたは、3日後には我の妻となり――デルデール・シコシコ~ルとなるのだ』
「デル……シコ……」
(ふ・ざ・け・ん・な!! ぜって~逃げてやるっ!!)
△▼△▼△▼△▼
俺は無駄に広い城を抜け出した。
まさか、こんなに簡単に逃げ出せるとは思ってもいなかった。あまりに簡単過ぎて、一瞬、夢の中なのかと思ってしまったくらいだ。
「はっはっは~! 俺が、籠の中の鳥だとでも思ったか!」
嬉しくてスキップしながら、良く分からない森を進んでいて……ふと気付く。
(……あれ? 逃げたのは良いけど、どうやって元の世界に帰りゃいいんだ? なんか、オオカミみたいな鳴き声も聞こえるし……。ど、どうしよう。逃げてからのプラン、なんも考えてなかった)
なんだか、怖くなってしまい。それ以上、進めなくなった時――。
『そこにいたのか……』
シコシコ~ルの、低い声が聞こえた。
「え? え……? ど、どこ?」
声のする方向に顔を向けたが、その姿は何処にも見当たらない。
「あっ……――」
しかし、見覚えのあるナマコが、木から生えているのを見つけた。
――途端に、ニョッキリ! とシコシコ~ルが飛び出してくる。
「ぎぃいやぁあああーーーーーっっ!!?」
(怖っ! 怖っ!! な、なに!? 何で、本体までが出てくんのっ!?)
『我から逃げようとしたな? そんなことは、許さん……』
非常に怒っている様子の、シコシコ~ルに恐怖してしまい。無意識に、ジリジリと逃げるように後ろへと下がったのが――俺の最大な失敗だった。
地面に、俺の身体がガクンと崩れ落ちる。
「えっ? い、痛っ! な、何……っ!? い、ぅう"っ!!」
最初はピリッとした痛み。だが、だんだんとジュクジュクとした凄まじい痛みになっていく。慌てて、その痛みを感じる場所――足首を見る。
「な、に……これ……?」
恐らく腱の場所が、骨が見える程にザックリと切れていた。
「なに、なに……? 痛、痛い……! ぅう"う"……っ!! な、んで?」
まさか、と思い。シコシコ~ルの方を見たら――満面の笑みを浮かべているのが、視界に映る。
『これで、逃げる事など……二度と出来ぬな。もし、そなたが逃げることをしなければ、城の庭までだったら自由にしてやったものを……。だが、これは自業自得。我の元から去って行こうとしたのだからな』
満面な笑みから一変。ほの暗い笑みを浮かべたシコシコ~ルは、俺を優しく抱き上げた。
足首に感じている激痛や、言われた事、この痛みを与えた怖い奴に抱き上げられている事やらで。もう頭がキャパオーバーを起こし、ブツンと目の前が真っ暗になった。
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