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第21話
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「じゃあ乾かしていくぞ」
ダレス様は肩にかかっていたタオルで優しく髪の毛の水気を取ってくれる。
その間手持ち無沙汰なため何気なく口を開く。
「あの、お話って何ですか」
「あー…正直話したいことよりも聞きたいことの方が多いのだがいいか?」
不思議に思いつつ「はい」と答えるとダレス様は少し声を鋭くして言葉を続けた。
「例のクソ狸の護衛、どうするつもりなんだ」
「その選択は本人に委ねようと思います。ただ、あのまま帰しては酷い目に遭うことが目に見えていたので何とかして帰さないようにしただけです」
「……」
「手合わせの最後、彼はラズワルド様の言葉が聞こえた瞬間戦い方を変えました。まるで脅されているような戦い方から読み取るに裏で何かあるのは確実でした」
私はあの瞬間のことを思い出しながら話す。
間近で戦っていた私だから分かったが、一瞬彼は泣きそうな酷く怯えた表情になった。
その隙が見えたからこそ私のような細身でも屈強な体格をした彼を地面に倒すことができたのだ。
「決着がついた後、彼に『ラズワルド様の元から逃げたいか』と思い切って聞いてみました。彼は最初何も答えませんでしたが『もし逃げたいならこの国で暮らしていけるように支援する』と言ったら頷いてくれました。だからこそあの場でイゴール陛下にお願いすることができたのです」
そう言って軽く振り返ると不機嫌そうに顔を歪めたダレス様を目が合う。
「……どうされました」
「…何が」
「不機嫌じゃないですか」
「当たり前だろう」
ダレス様はタオルをテーブルの上に置いてから溜め息交じりに口を開いた。
「何故そこまで優しくなれる。怪我をさせられただろ。それにあそこで負けていたらお前はあの狸の愛人になっていたんだぞ」
「それに関してはしょうがないですよ。怪我は勝負なので仕方ないですし、愛人については知らなかったようですし」
「でも見ているこっちとしては心配で仕方ない」
ダレス様は少し不貞腐れたような表情をして私の頬に手を伸ばしてくる。
そのまま優しく撫でられたので好きにさせていると彼は真面目な表情で私を見つめた。
「サイラス、お前はもう少し自分を大切にした方がいい」
「してるつもりですが……でも多分今後もこういうことはありますよ。相手が誰であろうと手合わせの時は本気でぶつかりますし」
「そうじゃなくてな……」
ダレス様は何か言いづらそうに言葉を詰まらせると私から手を離す。
それから何かを言おうと迷っていたようだが結局それが言葉になることはなかった。
「これは追々伝えよう」
「何でですか」
「多分今伝えても上手く伝わらないだろうから」
「失礼な」
軽いやり取りを経るにつれて段々と付き合っていた時の様な雰囲気に戻っていく。
それをお互い察しているようでどちらともなくクスクスと笑い合った。
その温かく柔らかい雰囲気に段々と瞼が下がってきてしまう。
「ダレス様」
「ん?」
「素で居て欲しいということで少し我が儘を言わせていただきます」
「なんだ?」
「眠たいです」
欠伸を噛み殺しながら思い切って言ってみるとダレス様はククッと笑う。
「分かった。俺も疲れたしもう寝ようか」
「じゃあベッド使ってください。私はソファーでも寝れるので」
「何言ってるんだ。一緒にベッドで寝るぞ。そんなに狭くならないだろ」
ダレス様に手を引かれながらベッドに入り込るとその柔らかさに意識が持っていかれそうになる。
元々枕も2つ置いてあるため、ダレス様は私が使っていない方の枕に頭を乗せた。
「おやすみ、サイラス」
「…おやすみなさい、ダレス様」
優しく頭を撫でられる心地よさには抗えず、私はあっという間に夢の世界へと旅立ったのだった。
ダレス様は肩にかかっていたタオルで優しく髪の毛の水気を取ってくれる。
その間手持ち無沙汰なため何気なく口を開く。
「あの、お話って何ですか」
「あー…正直話したいことよりも聞きたいことの方が多いのだがいいか?」
不思議に思いつつ「はい」と答えるとダレス様は少し声を鋭くして言葉を続けた。
「例のクソ狸の護衛、どうするつもりなんだ」
「その選択は本人に委ねようと思います。ただ、あのまま帰しては酷い目に遭うことが目に見えていたので何とかして帰さないようにしただけです」
「……」
「手合わせの最後、彼はラズワルド様の言葉が聞こえた瞬間戦い方を変えました。まるで脅されているような戦い方から読み取るに裏で何かあるのは確実でした」
私はあの瞬間のことを思い出しながら話す。
間近で戦っていた私だから分かったが、一瞬彼は泣きそうな酷く怯えた表情になった。
その隙が見えたからこそ私のような細身でも屈強な体格をした彼を地面に倒すことができたのだ。
「決着がついた後、彼に『ラズワルド様の元から逃げたいか』と思い切って聞いてみました。彼は最初何も答えませんでしたが『もし逃げたいならこの国で暮らしていけるように支援する』と言ったら頷いてくれました。だからこそあの場でイゴール陛下にお願いすることができたのです」
そう言って軽く振り返ると不機嫌そうに顔を歪めたダレス様を目が合う。
「……どうされました」
「…何が」
「不機嫌じゃないですか」
「当たり前だろう」
ダレス様はタオルをテーブルの上に置いてから溜め息交じりに口を開いた。
「何故そこまで優しくなれる。怪我をさせられただろ。それにあそこで負けていたらお前はあの狸の愛人になっていたんだぞ」
「それに関してはしょうがないですよ。怪我は勝負なので仕方ないですし、愛人については知らなかったようですし」
「でも見ているこっちとしては心配で仕方ない」
ダレス様は少し不貞腐れたような表情をして私の頬に手を伸ばしてくる。
そのまま優しく撫でられたので好きにさせていると彼は真面目な表情で私を見つめた。
「サイラス、お前はもう少し自分を大切にした方がいい」
「してるつもりですが……でも多分今後もこういうことはありますよ。相手が誰であろうと手合わせの時は本気でぶつかりますし」
「そうじゃなくてな……」
ダレス様は何か言いづらそうに言葉を詰まらせると私から手を離す。
それから何かを言おうと迷っていたようだが結局それが言葉になることはなかった。
「これは追々伝えよう」
「何でですか」
「多分今伝えても上手く伝わらないだろうから」
「失礼な」
軽いやり取りを経るにつれて段々と付き合っていた時の様な雰囲気に戻っていく。
それをお互い察しているようでどちらともなくクスクスと笑い合った。
その温かく柔らかい雰囲気に段々と瞼が下がってきてしまう。
「ダレス様」
「ん?」
「素で居て欲しいということで少し我が儘を言わせていただきます」
「なんだ?」
「眠たいです」
欠伸を噛み殺しながら思い切って言ってみるとダレス様はククッと笑う。
「分かった。俺も疲れたしもう寝ようか」
「じゃあベッド使ってください。私はソファーでも寝れるので」
「何言ってるんだ。一緒にベッドで寝るぞ。そんなに狭くならないだろ」
ダレス様に手を引かれながらベッドに入り込るとその柔らかさに意識が持っていかれそうになる。
元々枕も2つ置いてあるため、ダレス様は私が使っていない方の枕に頭を乗せた。
「おやすみ、サイラス」
「…おやすみなさい、ダレス様」
優しく頭を撫でられる心地よさには抗えず、私はあっという間に夢の世界へと旅立ったのだった。
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